罠の中のドラゴン

■ショートシナリオ


担当:BW

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月09日〜08月14日

リプレイ公開日:2006年08月17日

●オープニング

 キエフ冒険者ギルド。
 ここには様々な問題を抱えた人々が、冒険者達の力を借りるべく集まってくる。
 そして、今日もまた‥‥。
「飼っていたドラゴンに逃げられた!? 大変じゃないですか!?」
 ギルド員の女性が上げた大きな声に、その時カウンター付近にいた冒険者達は一斉に彼女の方を振り向いた。
「落ち着いて下さい。ドラゴンとは言っても、騎乗や荷運びにも使われる、おとなしいフィールドドラゴンです。仮に町の中で逃げ出したとしても、大暴れして人を襲うようなことは滅多にありませんよ」
 冷静に言う依頼人の男性の言葉に、大声を上げた自分が急に恥ずかしくなったのか、ギルド員の女性は慌てて平静を取り繕う。
「失礼しました。でも、ドラゴンなのですよね。幾多の魔物の中でも、特に強大な力を持つことで知られる、あの‥‥」
「確かに、その辺の馬や犬や猫と比べれば別格の生き物ですけれど‥‥まあ、それは今は置いておきましょう。もう一度、最初からご説明しますね」
 依頼人の話を纏めると、こうなる。
 先日、一匹のフィールドドラゴンを連れ、数人の仲間と共に開拓途中のある地域に向かっていたところを賊の一団に襲われた。依頼人とその仲間は何とか賊を退けることができたが、その戦いに驚いて、フィールドドラゴンは逃げ出してしまったのだという。
 問題は、そのドラゴンの逃げた先というのが、麻痺性の毒の牙を持つ巨大な蜘蛛、グランドスパイダが多数生息している森であること。
「地面に長い縦穴を掘って獲物を待ち構えている毒蜘蛛です。下手な賊なんかより、よっぽど恐ろしい森の狩人。素人が無闇に近づけば、どうなるか‥‥」
「そこで、冒険者の力を借りたい‥‥と、そういうわけですね」
「ええ。よろしくお願いします」

●今回の参加者

 ea2970 シシルフィアリス・ウィゼア(20歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 ea9563 チルレル・セゼル(29歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb1317 ロゼリオン・フロレアル(23歳・♀・バード・エルフ・ノルマン王国)
 eb5288 アシュレイ・クルースニク(32歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5685 イコロ(26歳・♀・チュプオンカミクル・パラ・蝦夷)
 eb5763 ジュラ・オ・コネル(23歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5780 レティスタニア・クローディス(29歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)

●リプレイ本文

 冒険という言葉は、危険を冒すことを意味する。
 つまり冒険者とは、危険を冒す者。
 そう、どのような危険があろうとも彼らは挑む。
 待ち受けるのは毒牙。
 求めるのは竜。

 依頼初日、キエフ冒険者ギルドでのこと。集まった冒険者達によって依頼人の男性は質問攻めにあっていた。
「あの、ドラゴンのお名前とか外見の特徴などは‥‥?」
「足跡の形とか、分かるかな〜?」
「普段、好んで食べる餌などありますか?」
 順に、シシルフィアリス・ウィゼア(ea2970)、イコロ(eb5685)、ロゼリオン・フロレアル(eb1317)が訊ねた。
「名前はフィル。まあ、想像がつくと思うが安直な名前の付け方をした。皮膚の色は黄色。後頭部に角が四本で足が六本。体長は大人のジャイアントより一回り上ってところだな。餌は虫や小さな動物の類ってところだ。足跡はこんな感じで‥‥」
 と、身振り手振りなども交えつつ順に答えていく依頼人。追加でロゼリオンがもう一つ質問。
「餌を分けてもらうことはできますか?」
「それはちょっとなぁ‥‥。俺は今の時期は、その辺の森から適当なのを捕まえて生きたまま与えていたんでな。それに、今はあいつも餌がいっぱいの森の中だ。もし食い物で釣る気なら難しいと思うぜ」
 ふむふむ‥‥と頷くロゼリオンの後ろで、保存食で手なずけられないかと期待していたレティスタニア・クローディス(eb5780)は残念そう。
「でも、そこのでかい虫みたいのなら、良い囮になるかもしれない」
 依頼人が言って指差したのは、アシュレイ・クルースニク(eb5288)の連れてきていた二匹の月のエレメンタラーフェアリー、ユエとルナ。貴族服とドレスを着せられていて、見た目は実に可愛らしい妖精だが、言われてみれば、ドラゴンなどの目には珍しい虫として映るかもしれない。
「だ‥‥駄目ですからね!」
「「からねー!」」
 何人かの仲間の冒険者から怪しげな視線を受けて、飼い主であるアシュレイは慌ててユエ達を庇うようにして後ろに隠す。当の妖精達はこの状況を理解しているのか、いないのか、アシュレイの言葉を真似て遊んでいた。
「まあ、その件については置いておくとして‥‥。そうだな、糞にはどのような特徴があるか教えてもらえるか?」
 続いてのジュラ・オ・コネル(eb5763)の質問には、依頼人は少し複雑な表情。単純に質問の返答に困ったのか、それともジュラのように若い娘から、糞などという単語が出たことに驚いたのかは分からない。
「食べた物によって違ってくるんで、これというふうには言えないな。それに、俺は学者じゃないんで、他の生き物と比べてドラゴンはどうこうなんて説明はできん」
 最後に、チルレル・セゼル(ea9563)。
「躾の方はキチンとしてあるのかい?」
「仕事をさせる上で必要な範囲で、俺の言う事ならそれなりに聞いてくれるようには躾けてあるが、一応はドラゴンだ。見知らぬ他人が普通に何か言っても、まず聞かないだろう」
「なるほどね。よく分かったよ」
 事前の情報収集は、可能な限りでやっておけば冒険に役立つこともある。ただ、思うように情報が集まらないこともあるし、やり方によっては自分達の立場を悪くしたりもする。今回に限っていえば、まあまあ成功と言えるだろう。
 なお、他の冒険者達とは別に、レティスタニアはその場にいたギルドの職員に対して質問。
「今回は住処で留守番させましたが、ペットを同伴させたくない場合、ギルドや場合によっては依頼人の方に預かってもらえるのでしょうか?」
 まだ冒険者としての活動を始めたばかりのレティスタニアとしては気になっていたことなので、一度聞いておきたかったらしい。
「そうですね‥‥依頼人からの申し出などの特別な事情があれば別ですが、基本的には無理です。仮に、一部の職員が預かっても良いと言ったとして、それはその職員の個人的な行為だと思って下さい。また、そうやって預けられたペットに何か問題が起こったとしても、ギルドとしては責任を負いかねます。預けた相手がそのペットの正しい扱い方を知っているとも限りませんし、やはり飼い主の方が自分で面倒を見るのが一番だと思いますよ」
 と言うのが、その職員の返答だった。

 一行が目的の森に着くまでは、特に何事もなく過ごせた。
 道中、おそらく開拓中の村からキエフに戻るのだろう旅の一団とすれ違った時に、一行のほとんどが若い女性ばかりで、旅の道のりを心配されたりもしたが、しっかりと武装したアシュレイやジュラの格好を見たり、一行がギルドの仕事を請け負った冒険者であることなどを聞いたりすると、励ましの言葉をかけてくれた。
暗黒の国と呼ばれる森の中では、魔物や蛮族と遭遇して面倒に巻き込まれる確率の方が圧倒的に高い。その分、一行にとって、こういう一般人との何気ない出会いや会話は嬉しいものだった。
「さて、聞いた話だとこの森のはずだけど‥‥」
 言いながら、イコロはキョロキョロと周囲を見渡した。
 だが視界に入るのは、鬱蒼と茂った森の植物達ばかり。けして視界が良いとは言えないため、探す相手が身体の大きなドラゴンとはいえ、この中から見つけ出すのには少し苦労しそうだ。
「いつまでも毒蜘蛛がたむろする森の中では、ドラゴンが可哀想です。早く助け出してあげなくてはいけませんね」
「「ねー」」
 そう話すアシュレイの側で、ユエとルナの二匹は相変わらず元気に飛び回っていた。
「グランドスパイダにとっても、妖精は餌に見えたりするのでしょうか? やっぱり囮とか‥‥」
 と、ロゼリオンが何の気なしに思ったことを呟くと、
「駄目です」
「「ですー」」
 当の二匹とその飼い主は半ば真剣に応え、その様子を隣で見ていたチルレルなどは、つい声を出して笑ってしまっていた。
「妖精も魔物から見れば虫と一緒か。まあ、向こうにしてみれば、あたし達もただの餌にしか見られないだろうからねぇ。ある意味で、ここにいる全員、良い囮かもしれないね」
「うっ‥‥。ちょっと緊張してきたかも‥‥」
 あらためて、イコロは十分に周囲の警戒を行うようにしようと思ったのであった。

 ――バシュ!
 物が焼き切れるような音がして、巨大な蜘蛛の足が宙を舞った。
 その蜘蛛に対峙するレティスタニアの手には、稲妻を束ねたかのごとき魔法の剣。
「皆さん、ご無事ですか?」
「ああ。こいつら少しばかり体が大きいだけだ」
 その身に齧りつこうとする蜘蛛の牙を避けながら、ジュラは剣の一撃を敵に見舞う。
「見つけた巣には近づかないようにしてるつもりだけど、やっぱり美味そうな匂いでもするのかねぇ。自分の身体が焼ける匂いと、どっちが美味そうな匂いか聞いてみようか」
 チルレルは自分の目の前のグランドスパイダに魔法の火球を喰らわせる。
「そこっ!」
 隙を見逃さず、素早くアシュレイが剣にて一閃。トロイツカヤと名のついた業物の一撃に、巨大蜘蛛は命を絶たれる。
 イコロやシシルフィアリスも、それぞれに魔法で襲ってきた蜘蛛達を追い返していた。
「やはり、奥に行こうとするほど、どう注意してもグランドスパイダとの遭遇は避けられないようですね。ドラゴンは無事なのでしょうか?」
 なかなか見つからないフィールドドラゴンの身を案じ、探すレティスタニアの足は少し早くなる。最初は足跡などを頼りにと思っていたが、日が経っているせいか中々それらしい跡も見つからず、結局、一行は地道な捜索を余儀なくされてしまった。
「まぁ、ドラゴンなんてそう何匹もうろついているわけも無いでしょうから‥‥見つかればソレが逃げた子に間違いないとは思いますけど‥‥きゃ!」
 シシルフィアリスが呟いたその時だった。彼女の脇を抜け、ロゼリオンの飼う狩猟犬、ボルゾイのユベールが前に出た。
「どうしました、ユベール? ‥‥あ」
 ロゼリオンがユベールの走った方を見ると、彼女はその目であるものを見つけた。少し離れた先の森の中を動く大きな影。黄色の皮膚に四本角で六本足のそれは、間違いなく依頼人に聞いたフィールドドラゴンに違いないだろう。
 見失っては大変と、急いで駆け出す一行。

『ソコのイカした角のドラゴンさん? ちょっとお話いいかしら?』
『なんだい、キレーなおねーさん。お話ならオレの背中に乗って、その辺をデートしながらってのはどーだい?』
 ‥‥というのは、シシルフィアリスが目の前の光景に対して勝手に想像した会話の内容。
「何とか分かってくれたようです。これで一緒にキエフまで来てくれるはずです」
 テレパシーの魔法を使い、ロゼリオンがドラゴンの説得を無事に終えたところだった。
「ロゼリオンさん、すごいですねぇ‥‥」
「いえ、それほどでは‥‥」
 この場合、シシルフィアリスがどんな想像をしてロゼリオンを誉めたのか、その内容をロゼリオンが知らないのは実に幸いなことであったに違いない。
「特にケガもないようですね」
 傷があれば治療しようとしていたアシュレイが、ドラゴンの無事を確認して安堵の息を吐く。なお、用心のためかユエとルナは少し離れたところで待機。
「何にせよ、一応の目的は達したわけだ」
「だね」
 チルレルやイコロが笑顔で言い、一行は来た道を戻り始めた。

「意外に、少なかったな」
 帰りの森を抜けてからの、蜘蛛達に対するジュラの感想。
「さすがにドラゴンが怖かったのかもしれませんね」
 レティスタニアの方もそんな風に思ったらしい。
 何にせよ、無事に帰路につけたことを一行は喜びあった。
 そんな中。シシルフィアリスはドラゴンの背に乗るロゼリオンの姿を見ながら、
「すごいなぁ‥‥」
 と何処か遠くに意識がいったような顔で何度も呟いていた。彼女がどんな想像を巡らせていたのかは誰にも分からない。
 そういったことも含めて帰りの道中も色々あったが、最後に一行は無事にキエフと戻り、依頼の成功をギルドに報告したのであった。