約束の場所へ 思い出の竪琴

■ショートシナリオ


担当:BW

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月25日〜10月30日

リプレイ公開日:2004年11月02日

●オープニング

 その日、ギルドにその依頼が持ち込まれたのは、ちょっとした偶然だった。

「とある場所まで行きたいので、護衛をしてくれる冒険者を雇いたいのですが‥‥」
 これだけ聞けば、しごく単純な依頼に思える。
 いや、実際にやることは単純なのだが、少し面倒な事になっていた。

 実はこの日、全く同じ場所へ、同じ日に向かう二人の依頼人から、別々に似たような護衛の依頼が出されていた。
 それぞれの依頼の違う点といえば、依頼人の性別と、目的地の山を登る際に予定しているルート。後は、依頼人がギルドを訪れた時間帯くらいのものだ。

 楽師である依頼人の話はこうだ。
「丁度、新しく曲を作ろうと四苦八苦していた時期の事です。私は、自分で納得がいく曲が作れずに困っており、新しい刺激を求めて各地を放浪しておりました。その山を訪れたのも、そんなある日の事です。私は、そこで一人の女性に出会いました。彼女は私の側にやってきて、私の奏でた音楽に合わせて、歌を歌ってくれたのです。その歌声の素晴しさは、まさに天使の歌声と呼んでも過言ではありませんでした。私は彼女のその歌声に感動した気持ちを曲にし、それは自分でも驚くほど素晴しいものになりました。彼女の方もその曲を気に入ってくれたみたいで、すっかり打ち解けた私達は、一年後、再びその場所で会うことを約束したのです」

 ここまで聞けば、もうお分かりだろう。
 人づてに聞いた話によると、最近になって、その約束の場所へ行く道中に、野犬や山賊の類が出没するようになってしまった。
 そのために護衛を依頼したい‥‥と、そういうわけだ。

 依頼人がギルドを立ち去った後の事。

「どうして、相手の女性も同じ依頼を出しているって教えてやらなかったんだ?」
 近くにいた冒険者の一人が、二人の依頼を受け付けたギルドの女性係員に訊ねた。
「だって、その方が素敵じゃありませんか。運命に導かれるように出会った二人。それぞれに苦難を乗り越えて、約束の地で再会を果たしてこそ、それを成しえた時の感動はより大きくなるはず‥‥そう思いませんか?」
 ニコニコと営業スマイルで応える係員。
「‥‥本当は、仕事の報酬を減らしたくなかっただけだったりして‥‥」
「そ‥‥そんな事ありませんよぉ〜‥‥」
 この時、冒険者達は彼女の額に一筋の汗が流れた事を見逃さなかった。

●今回の参加者

 ea3418 ブラッフォード・ブラフォード(37歳・♂・ナイト・ドワーフ・イギリス王国)
 ea6251 セルゲイ・ギーン(60歳・♂・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 ea7214 サイザル・レーン(70歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea7864 シャフルナーズ・ザグルール(30歳・♀・ジプシー・人間・エジプト)

●リプレイ本文

 偶然か、それとも必然か‥‥。
 人の出会いとは、いつも不思議なものだ。
 そして、時に、それは素晴しい奇跡を生む。
 願わくは、あの場所で、もう一度‥‥。

「素敵なお話っ! 二人が再びめぐり合えるように、私、頑張るよっ!」
 キラキラと瞳を輝かせながら、シャフルナーズ・ザグルール(ea7864)は依頼人の楽師と握手を交わす。
「そういえば、楽師さんのお名前、何ていうの? 教えてほしいな」
「あ、申し遅れました。私、リュカといいます」
 慌てて自己紹介をする依頼人のリュカ。
「どのような形であれ約束は大切だ。リュカ殿、私達が必ず無事に目的地まで送り届けてみせよう」
 シャフルナーズに負けず劣らず、ブラッフォード・ブラフォード(ea3418)も気合十分といった感じである。
「友人に代わりに出てくれと誘われたんじゃが‥‥。全く、なんでこんな老いぼれが冒険にいかにゃならんのじゃ」
 なるべく周りに聞こえないように、セルゲイ・ギーン(ea6251)はポツリと愚痴をこぼした。
「‥‥おや、よく見れば、わしより年上に見える人間がおるじゃないか。わしら老人もまだまだ元気じゃということを思いしらせてやろうかのぅ」
 そう言って、セルゲイはサイザル・レーン(ea7214)に話しかける。
 確かに、実年齢ではサイザルの方がほんの少し上だが、エルフと人間という、二人の種族の違いを考慮に入れれば、二人が生きてきた時間の量は倍以上の差がある。
「そう言われましても、実は私、まだ一つも魔法を使えないのです。そんな私が、護衛依頼で役に立てるでしょうか‥‥?」
 やや自信のなさそうに、サイザルは答えた。
「なぁに‥‥、大切なのは能力だけではあるまい。それに、わしら年寄りは、若い者を暖かく見守ってやるのが良かろうて‥‥。では、そろそろ行くとするかのう‥‥」
 言って、歩き出すセルゲイの後姿を見送りつつ、サイザルは小さなため息とともにこう呟いた。
「これでも、気は若いつもりなんですがねぇ‥‥」

「‥‥この人数では心許無いな。野犬はともかく山賊の数次第では後れを取るやもしれん」
 目的地の山のふもとまで来たところで、ブラッフォードは仲間達を見回してそう言った。
 今回の依頼を受けた者は四人だけ。
 もし、倍の人数がいたなら山賊に襲われる事を心配するどころか、退治してやろうという気にもなったかもしれないが、確かにこの人数では、山賊に出会う事自体を避けたいと思うのが自然だ。
「そうだね。騒がしくして、それで山賊の目、惹いたら大変。人目を惹かない様に、こっそりこっそり登るよ」
 シャフルナーズも同じ考えのようだ。
「それに、私達の目的、山登って約束の場所行く事。山賊退治じゃない」
 そう。彼女が言うように、依頼人を目的地まで無事に護衛できれば依頼は成功。
 無理をする必要はないのである。
「ええ。私としてもその方が助かります。ここは慎重に行きましょう」
 大事そうに荷物を抱え、サイザルも同意する。
 ちなみに、彼が抱えているこの荷物だが、別に、これといって大事な物を入れているわけではない。
 山賊に見つかった時の事を考え、こうする事で、いかにも自分が護衛の対象であるかのように見せかけようとしているのだ。
 例え魔法が使えなくとも、剣を振るう力がなくとも、自分にできるやり方で少しでも依頼人を守ろうとするその姿は、プロの冒険者の姿勢だと言えるだろう。
「まあ、見つかるかどうかは時の運じゃよ。焦らずに、のんびり行くのがよかろうて‥‥。できるなら、わしも争いは避けたいがのぅ‥‥」
 歩きながら、近くを流れる川を穏やかな表情で眺めつつ、セルゲイはそう言って笑っている。
 この落ち着きようは、やはり年の功だろうか。なかなかに掴みどころのない老ウィザードだ。
 このように、山賊との遭遇がない事を冒険者達は祈った
 だが、そうそう思い通りにいかない事は多々あるわけで‥‥。

「ここを通りたかったら、金目の物を置いていきな」
 しばらく歩いたところで、早くも山賊に遭遇してしまった。
 物騒な得物をちらつかせる男達。数こそ十人には満たないようだが、それでも、こちらの数は四人。依頼人のリュカを入れても五人。
 その戦力差は倍近い。
「囲まれたか‥‥。十分に注意はしていたつもりだったのだが‥‥」
 他の者達を庇うようにして、ブラッフォードは先頭に立っている。
 ブラッフォード自身、敵意のある者の接近に気付ける能力は、多少持ち合わせているつもりだったのだが、まだまだ修行が足りなかったようだ。
「‥‥俺が囮になって時間を稼ぐ。皆はその間にリュカ殿を連れて逃げてくれ」
「そんな、無茶です!」
 自らを犠牲にしようとするブラッフォードを、サイザルが止める。
「やれやれ‥‥仕方ないのぅ」
 その時、言い合う二人をよそに、セルゲイが盗賊達の前へと進み出た。
「あん? なんだジジイ、文句でもあんのか?」
 毒づく盗賊に対し、セルゲイはこう言って返した。
「元気がいいのは結構じゃが、今度からは年寄りを馬鹿にすると痛い目に遭うと覚えておくのじゃな‥‥小僧!」
 次の瞬間、セルゲイが何かを呟いたかと思うと、突然、周囲一帯を濃い霧が覆う。
 高速詠唱によるミストフィールドである。
「なっ! こいつ、ウィザードか!?」
「くそっ、何も見えねぇぞ!」
 予想外の事態に混乱する山賊達。
「今です! 急いでここを離れましょう!」
 サイザルのその一言で、仲間達は前に向かって一斉に走りだした。 
「小賢しい真似しやがって‥‥逃がすかよ!」
 だが、その方向にはまだ山賊が一人。
「山賊風情が‥‥。邪魔をするな!」
 霧のために、はっきりとしない視界の中、山賊とブラッフォードは、お互いを狙って剣を振るった。
 そして、ブラッフォードの剣はこの特殊な状況での戦いを制し、容赦なく山賊の体を切り裂いたのである。
 こうして一行は、全力でその場を逃げ出す事に成功した。

 数時間後。
 長い長い道のりを歩き、ついに一行は山頂へと辿り着いた。
 だが、そこにはまだ、肝心の相手の女性の姿はない。
 果たして、彼女は来てくれるのだろうか‥‥。
 一同は周囲を見渡しつつ、その人物が現れるのを待った。
 そして、いよいよ日が沈みかけ、彼らを取り巻く全てが紅く色を変え始めた頃‥‥。
「あ、誰かこっちに来るよ」
 シャフルナーズが、その足音に気づいた。
 現れたのは、もちろん皆が待っていた吟遊詩人の女性だ。それと、やや遅れて、付近の村の住人だと思われる、猟師風の男達が四人ほどやって来る。
「ごめんなさい、リュカさん。すっかり遅くなってしまったみたいで‥‥」
「構いませんよ。お久しぶりですね、フィーナさん。またこうして貴女にお会いできただけで、私は本当に嬉しいですよ」
 乱れた息を必死に整えようとする女性に対して、依頼人のリュカは優しく微笑んだ。
 後で聞いた話によると、彼女はギルドに護衛の依頼を出したものの、十分な人数が集まらなかったため、予定を変更して近くの村の猟師達に無理を言って、ここまで護衛をして欲しいと頼み込んだそうだ。
 そして、無事にここまで辿り着き、こうして一年ぶりの再会を果たしたのである。

 その日、再会の約束をしたその場所で、冒険者達に見守られながら、二人はもう一度、美しい琴の音と歌声をそれぞれに披露した。
 それは、まさに出会いが生んだ、この世の奇跡とも言える素晴しさで、冒険者達の疲れた身体を優しく癒すかのような感じがしたという。
 また、二人の歌と演奏に合わせてシャフルナーズが披露した踊りもまた、夕闇の幻想的な雰囲気の中で、えも言われぬ美しさだったとの事だ。
 こうして、冒険者達は使命を果たし、思い出を胸に、キャメロットへと帰還したのである。