迫るゴブリンの群れ
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■ショートシナリオ
担当:BW
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 48 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:04月19日〜04月25日
リプレイ公開日:2007年05月01日
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●オープニング
キエフ冒険者ギルド。
ここには様々な問題を抱えた人々が、冒険者達の力を借りるべく集まってくる。
「随分と暖かくなったもんだな‥‥」
窓の外。町を行き交う人々の姿を横目に見ながら、何人もの冒険者達が今日もギルドへ足を運ぶ。
ただ、同じように繰り返される毎日の中にも、小さな変化はある。一番分かりやすいのが、気温の変化だ。朝、目が覚めてベッドから出る。暖かなぬくもりから離れれば、冷たい空気が身を襲う。けれど、その寒さも日を追うごとに和らいで‥‥。
「そういえば、天気の良い日が増えたよなぁ‥‥」
「少し前まで雪ばっかり降ってたのも、今じゃすっかり雨だ。時が経つのは早いもんだな」
日や地域によってはまだ防寒着も必要だが、それでも随分と過ごし易い日が続くようになったと、冒険者達は互いに話す。
「だが、活動しやすくなったのは、俺達人間だけじゃないみたいだぜ」
冒険者達の会話が聞こえたのか、カウンターから身を乗り出して、一人の係員がそう言った。
「今入った依頼だ。キエフから東の方、村の近くの森にゴブリンの群れが住み着くようになったんで退治してくれとさ」
ゴブリン。オーガ種の中でも臆病で、貧相な子供のような成りをしている魔物である。しかし、それゆえに性格は姑息で狡賢く、集団で無防備の者を攻撃し、無抵抗の者をいたぶるのを最も好むという。
「少し数は多いが、まあ難しい仕事じゃない。というわけで‥‥」
集まっていた冒険者達を見回して、係員は言葉を続ける。
「さあ、仕事だ。腕に自信のある奴は、こっちに来な!」
●リプレイ本文
遺跡、洞窟、密林‥‥。
竜、精霊、アンデッド‥‥。
世に秘境は数あり、そこに潜む魔物達も無数。
しかし、遠く離れた地に出ることだけが、冒険とは限らない。
そこに、自分達の手を必要とする者がいるのなら‥‥。
暗黒の国という言葉がある。ロシアの三分の一を占める広大な森を指す言葉だ。
そのほとんどは全くの未開の地であり、このロシアという国は、森を切り拓いて作られた小さな街や村が点と線で繋がるような形で構成されている。
故に、多くの人々は常に、森の中に潜む魔物の恐怖と隣り合わせの生活を送っている。
森の中を旅人達が歩いていた。人間とシフールの男二人組みだ。
人間の方は怪我でもしているのか、腕に白い布を巻いており、シフールは人間の肩に、少しぐったりした様子で掴っていた。旅の途中で不慮の事故にでも遭ったのだろうか。
その二人の様子を、森の中から見ている者達がいた。
子供のような人影だが、人ではない。オーガ種と呼ばれる人に近い形を成した魔物。その一種、ゴブリン。
『ゴブ‥‥』
『ゴブ、ゴブ』
ゆっくりと、森の木々に隠れ旅人を包囲していくゴブリン達。そして‥‥。
「‥‥おやおや、こりゃ又、随分と引っかかってくれたようでがんすなぁ」
その人間の男、阿倍野貫一(ec1071)は嬉しそうに口元を緩め、拳を構えた。そう、彼は旅人などでは無い。依頼を受け、このゴブリン達を掃討にきた冒険者の一人。
「ふっふっふ‥‥」
その貫一の肩の上で、ぐったりとしていたシフールが不適に笑う。
「この咽返らんばかりの筋肉の臭い‥‥。これぞ、わしが求めた筋肉と戯れる場所‥‥」
背中の羽根をピクピクと動かしながら、満面の笑みを浮かべる彼の名はティート・アブドミナル(eb5807)。
「本当に筋肉がお好きでがんすなぁ。ただ‥‥拙者が臭うみたいに言われるのは少し嫌でがんす‥‥」
ゴブリン達の身体はどちらかと言えば貧相で、この場で筋肉質な肉体を持っているのは貫一だけであった。
「小さなことは気にしてはいかんのじゃ。まずは挨拶代わりに得意の魔法を一発‥‥」
――ポテリ。
派手に動いたせいか、貫一の肩からずり落ちて地面に顔をぶつけるティート。
「‥‥痛いのじゃ」
「体調が悪い人は無理してはいかんでがんす」
ひょいとティートを拾い上げる貫一。実は、貫一の腕の怪我などはゴブリン達をおびき寄せるための演技であったが、ティートがぐったりしていたのは本当である。保存食を買い忘れたがために、キエフを経ってまともに食事を摂れぬこと三日目。口にしたのは、遠くジャパンは紀州産の梅干し少々のみ。肉体的にはかなり辛いものがあった。
しかし、そんな事はゴブリン達には関係無い。こうして二人が話している間にも、じわりじわりと距離を詰めてくる。
「う〜ん‥‥さすがに一人では戦えないでがんすね。ここは‥‥逃げるでがんすよ!!」
言うが早いか、包囲の薄いところを狙って駆け出す貫一。
『ゴブッ!?』
慌ててゴブリンは貫一に向けて棍棒を振り下ろすが、それを当たる寸前のところでかわし、貫一は包囲を抜ける。
急いでゴブリン達も後を追う。
「‥‥な〜んて、でがんす」
――ヒュッ!
『ゴブゥ!?』
ゴブリンの一体が、突然に飛来した矢を受けて苦痛の声を上げる。
「地獄へようこそ、親愛なるゴブリン共」
その言葉と共に姿を現した男の名はヒムテ(eb5072)。
「‥‥母なる大地に連なる親愛なる友人達、我が意に応え‥‥その力示せ!」
――ザザッ!
『ゴッ‥‥』
響く声の後、もぞもぞと動き出した草の蔓に足を取られ、動きを制限されるゴブリンが一匹。
「はぁ〜い☆ 歓迎するわよ、み☆な☆さ〜ん☆」
マティア・ブラックウェル(ec0866)はそう言って、捕らえたゴブリンをきつく締め上げる。口調や外見は少しばかり‥‥というか、どう見てもオカマなのだが、本人曰く、あくまでも普通の男‥‥らしい。とにかく、今ゴブリンを締め上げているのは、その彼の行使した、植物を操る地の精霊魔法の力によるものだ。
――バシュ!!
今度は又別の方向から、ゴブリン達を襲うものがあった。
「殺さなきゃいけないのは、あんまり好きじゃないけど‥‥でも、やらなきゃ!」
放たれたのは閃光。大陽の光を束ね、敵を貫く力となす精霊魔法。使い手の名はイコロ(eb5685)。
――ドサッ。
森の中より現れたその人影は、あっという間に刀の峰を用いてゴブリンの胴を打ち、その意識を闇の淵へと眠らせた。
「ここに来たのが運の尽きです。一匹たりとも逃がしません」
風に外套を揺らし、霞のように軽いと言われる刀を構える女戦士の名はミランダ・アリエーテ(eb5624)。
『ゴ‥‥ッ!!』
『ブゴ‥‥!』
現れた冒険者達に囲われ、逃げ場を失うゴブリン達。数の上でゴブリン達が勝ってはいるが、それでも今回の冒険者達は、こういった集団戦における戦い方を身につけた者が多い。
「さあ、お次はどいつでがんすか?」
右、左。迫り来るゴブリン達に貫一が拳を当てれば、彼らは急所を突く一撃に意識を失い、地に沈む。一撃を耐えられようとも、余計な物を身につけぬ身体であれば、即座に次の一撃を放ち、確実に沈める。
勝てぬと判断し、逃げ出そうとするゴブリン達も出るが、もちろん、冒険者達は見逃さない。
「おーっと、逃んなよ。根性見せようぜ?」
「大地の波動よ、我が意に従い敵を撃て!」
ヒムテの放つ矢がゴブリンの足を貫き、マティアの放つ重力波にゴブリン達は地を這わされる。
「‥‥ええ〜い!! ここで動かず、いつ動くというのじゃ!!」
起き上がることも辛い自分の身体を、フレイムエリベイションの力を持って鼓舞し、飛ぶティート。
「さあ、その筋肉に刻むがいいぞい、わしの炎をのう!!」
――ゴオオオッツ!!
大地に転がったゴブリン達を、地面から吹き上げたマグマの炎が襲う。
後に残るのは、その身を黒く焼かれたゴブリン達の骸。
「はああっ!!」
動きを封じ、意識を奪い。戦いはあっと言う間に冒険者達の優勢となった。
ヒムテの矢が、ミランダの刃が、イコロの魔法が、その魔物達に次々に止めを刺す。
「‥‥さて、あんたで最期ね。それなりに楽しかったわ☆ 今度生まれて来た時は、おイタしちゃ駄目よ、ボーヤ☆」
プラントコントロールによって動きを封じられ足掻くゴブリンに、マティアの最期の一撃が放たれる。
「バイバイ☆」
――ドゴオオッ!!
衝撃が森を揺らす音の果てに、戦いは冒険者達の勝利で終わった。
「筋肉じゃ、筋肉の臭いがわしを呼ぶんじゃ〜!」
「ねえねえ、貫一ちゃ〜ん☆ 一緒にお寝んねしましょ〜☆」
「ふっ、二人とも、少し落ち着くでがんすーーっ!!」
すっかり仲良くなったのか、帰りの道中ではティートとマティアにべったりと引っ付かれる貫一の姿があった。これが共に戦いを終えた男同士の熱い友情‥‥なのかは分からないが。
「‥‥世の中には色んな奴がいるもんだな‥‥」
「う〜ん、仲良しなのは良いことだよ〜」
「いえ、あれは何か違うような‥‥」
三人の男達の熱い戯れを見守るヒムテ、イコロ、ミランダであった。
こうした冒険者同士の出会いもまた、一つの経験。それが又、彼らの新たな冒険に繋がる。
とにもかくにも、こうして無事にゴブリン達を殲滅し、冒険者達はキエフへと戻るのであった。