チブール商会仕入れ依頼1040年3月17日〜鉄

■ショートシナリオ&プロモート


担当:睦月

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 98 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月23日〜03月30日

リプレイ公開日:2007年04月07日

●オープニング

●チブール商会
 アプトの大陸西方、ランの国に基盤を持つ大陸一の豪商。現在西方諸国で苛烈な商戦を展開中であり、メイの国では王宮御用商人の地位を確立している。

●ガッツ・グリル [人間・男性・38歳・チブール商会店主] 〜ゴーレムから棺桶まで〜
 「金さえ払えば女房以外何でも売るよ」と言う、非常に商魂たくましい商人。出自は明かではないが、ジ・アースの物品にも天界の物品にも詳しく、商売という面においては非常に頼りになる人物。恋女房は昔、『ウィザード・ビューティー』という名を馳せた美人精霊魔法使いというが、今はすっかり肝っ玉母さんだそうである。
 「女房のメシが一番」と人に自慢するのが癖で、愛妻家で子煩悩。はっきり言ってバカ旦那である。

●チブール商会の依頼〜鉄鉱石〜
 冬場になって減るものがある。
 動物の皮などだ。動物類は冬になると移動したり普段いない場所に行ったりと、結構めんどくさい。
 まあ、同じ場所に同じモンスターがいるのはテレビゲームの世界の話であり、現実には初心者冒険者が、野良ドラゴンに遭遇して全滅の憂き目を見たりすることもあるのが実際だ。例えが極端だが、別に過去例が無かったわけではない。

 まあそんな話はさておいて、チブール商会から依頼が出た。

 今回の依頼は、鉄鉱石の採取である。とある洞窟に行き、そこでピッケル片手に鉱石の採取をしてほしい。
 鉄鉱石は、武器や防具を作るときに、よく使われる素材である。鉱山類の多くは国や君主が押さえているため通常は一般人の採取などままならないが、そこがモンスターの巣窟ならば話は別である。
 つまり、敵を排除すれば鉄鉱石などの鉱物を採取出来る鉱山があるのだ。
 洞窟はメイディアから二日ほど北に行った村の近くである。そこで三日ほど採掘を行い、出来るだけの鉱石を集めてほしいということだ。
 又、冒険者諸君だけでは手が足りないだろうとの事で、今回は村人が協力してくれる。恐獣を倒しながら村人と協力して、採掘に当る事になる。恐獣は何がいるかは判らないが、恐らく冒険者諸君なら対応できるであろう。村人を守りながら採掘に当たるので、十分気をつけてほしい。

 採掘の成果によって、チブール商会には相当数の品物が店売りされる。アイテム合成をしている者には朗報だろう。
 又、今回から村人が手伝ってくれるので、村人にもチブール商会から卸値にて物品の販売を行うと、チブール商会からの申し出があった。

 村人たちの為にも、是非頑張ってもらいたい。

【地図】
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【A】森の奥の狩り場。鹿などが狩れるらしい。
【B】平原。現在は雪原。ウサギや狸などが捕れる。
【C】森の中。オオカミなどがいる。
【D】炭鉱。何かがいるとされている。ここで鉄鉱石が取れる。
 1マス100メートルぐらい。

●今回の参加者

 ea9001 スラーヴァ・ファチューシン(25歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ea9974 ギヨーム・カペー(35歳・♂・ナイト・ドワーフ・ノルマン王国)
 eb4598 御多々良 岩鉄斎(63歳・♂・侍・ジャイアント・ジャパン)
 eb8162 シャノン・マルパス(23歳・♀・鎧騎士・エルフ・メイの国)
 ec1847 木村 美月(31歳・♀・天界人・人間・天界(地球))

●リプレイ本文

 木村 美月(ec1847)は遂に旅に出た。
 夢であった冒険に、遂に出たのである。腕には大切な関根さんを抱き、胸には新たな出会いとそれに馳せる思いを抱いて。


 3月21日。以前鉄鉱石が取れた鉱山から、また採掘をしようという話が持ち上がった。経験者であるギヨーム・カペー(ea9974)が中心になって話がまとまりつつあった。ドワーフである彼は採掘に関しては自信があった。鼻が利く、と言えばいいのだろうか。ここ、というのが彼には自然に判るのだ。それにより、前回の採掘でも、彼の鼻が役に立った。
 今回も、チブール商会からの依頼だ。初めて冒険に出る美月は内心、少しおどおどしていた。もし、みんなの足を引っ張ったらどうしようと考えていたのだ。初めての旅で何が起こるかと言うことには多少の興味はある。事実、前日あまり眠れなかったのは本人としては内緒にしておきたいところだろう。

 さて、チブール商会に行くと、そこには非常に大きな男がいた。何やら主人と話しこんでいるようだ。時々聞こえてくる内容から、どうやら今回同行するメンバーらしい。そんな美月に気がついたガッツ・グリル(チブール商会店主)が声をかけてきた。
「おぉ、君が今回依頼を受けてくれる人だね。もう準備はいいのかい?」
 大きなはきはきとした威勢のいい声がたずねてきた。思わず気圧されておずおずと
「そうです、木村 美月です、宜しくお願いします」
 と、返す。チブール商会は知らないわけではない。日用品から冒険道具まで扱っているから、自分も日常で使うことが多いのだ。
「お、貴殿も今回の参加者かな?あそうあんまり気負いなさんな。楽にしたらよいぞ。‥‥ふむ、冒険は初めてなのか?」
 大男が話しかけてきた。美月は思わずその大きさにたじろぎながら、無難に挨拶をした。
「よ、よろしくおねがいします‥‥。あ、あの、今回一緒にいって頂ける方ですか?」
「うむ。ガッツ殿から話は聞いているよ。我輩は御多々良 岩鉄斎(eb4598)と申す。貴殿が美月殿じゃな。誰 にでもはじめての一歩があるものだ。小さな勇気だけでよいのだよ。貴殿にはその小さな勇気はすでに持ち合わせておるであろう。心配せんでええ」
「はぁ‥‥。あの、それで、今回は私たちだけなんですか?」
「いや、もうじき来るだろうて。‥‥‥‥ほれ、噂をすれば、だ。」
 御多々良の指差す先にはギヨーム・カペー(ea9974)が、大きな袋を背負いながらゆっくりと歩いて来るところであった。店の扉を開けるなり、ガッツに向かって豪快に話しかけた。
「よう、主人! 頼まれとった採掘、しにきたぞい! もう皆は集まっとるのかの?」
「いやいや、まだだ。もうじき全員揃うと思う。ほれ、そこのお二人さんが今回の参加してくれる人たちだよ。」
 ガッツが顎をしゃくって美月達の事を指した。
「ふむ、おぬし達が今回同行してくれるのだな?採掘は任せてもらってもええ。何せわしの生業だしのう。安心していいぞ。わしはカペー。見てのとおり、ドワーフじゃ。宜しく頼む。」
 そういって差し出された手を美月は一瞬観察した。ごつごつとした、節くれだった手。それを握り返して、びっくりした。不思議と人を安心させるような、暖かな手だったのだ。
「あら、もうみんな集まっているのね。私たちが最後かしら?」
 そういって店のドアを開けて入ってきた者たちがいた。シャノン・マルパス(eb8162)とスラーヴァ・ファチューシン(ea9001)である。ファチューシンは美月に近寄り、手を差し出した。
「私はファチューシン。仲良くしてくださいね。」
「あ、はい、宜しくお願いします‥‥。」
「私はシャノン・マルパス。断っておくが、私は女性だ。以後、気をつけられたい。宜しく頼む。」

    ◆◆◆

 自己紹介が一通り終わったところで、出発する事となった。
 目指す炭鉱までは話に花が咲いた。今回は冒険者だけではなく、村人達もいるので、色々な話ができた。美月も、みんなから色々と質問されて、しどろもどろになりながらも、一生懸命受け答えしていた。今回の採掘の話から、他愛の無い家族の話、この冬の気候の事等、色々な話があった。中でも一番花が咲いたのが、今回の採掘の話だ。領主に許可を得なくても採掘が出来、それが住民にも利益が回ってくるというのだから、村人たちは嬉しくない筈が無い。冒険者たちに守られながら採掘し、それを街まで往復で運ぶのが村人達の仕事だ。美月達も話しに加わり、和気藹々とやっていた。

 数時間後に採掘場に到着した。まずは村人達には入り口付近で待っていてもらい、冒険者達が内部に入ることになった。先頭は御多々良が行く事になった。真っ暗、とまでは行かないが、暗黒に近い状況下、美月と御多々良でランタンを使い道をゆっくり進んでいく。前回の採掘である程度の恐獣は倒されているはずだが、新たな個体が住み着いている可能性は捨てきれない。

 15分程歩いたころだろうか、暗闇の中から低い唸り声が聞こえてきた。目的の採掘場所まではまだ距離がある。全員が警戒しながら、ゆっくりと歩みを進める。相手もこちらが何者なのかを警戒しているのである、まだ襲い掛かってはこない。だからといって油断できるものではない。しんがりを勤めるカペーが言う。
「この唸り声はヴェロキじゃ。油断するでないぞ、奴等は群れで行動するからの。単体でくるとは限らん。しっかりと気配を感じ取るんじゃ!」
 そんなの簡単に出来れば何の心配もないのよ!と内心叫びつつ、美月はランタンであたりを照らし出す。しかし、ランタンでは明かりが届かない。ただ、怯えていたのは彼女だけではない。マルパスも内心怯えていたのだ。体力に自信がない分、どうしても不利な戦いを強いられることが多い彼女。だが、彼女には一撃必殺があった。スピアの扱いにかけては自信があったのだ。エルフ故に体力が低い分、技術でそれをカバーするのが彼女なりの流儀なのだ。
 さて、更に30分ほど進んだころであろうか。採掘出来そうな場所に辿り着いた。カペーが地表を見て、判断を下した。ここなら十分な量が採掘できると判断したのだ。
 採掘に入ろうとしたカペーをマルパスが引き止めた。
「カペー殿、お待ちを‥‥。奴等がやってくるようです!」
 優れた視力と聴力を誇る彼女が敵襲を察知したのだ。その瞳の先には、暗闇に潜むヴェロキ達の姿があった。低い唸り声をあげながら、確実に彼女達に近づいてきている。
 御多々良がずい、っと前に出た。ファチューシンも弓を構え、迎撃の態勢を整える。カペーも同じく弓を構え、腰には美月は始めての戦闘でかなりびくついていた。戦闘になったら逃げるのが一番と考えているからだ。だが、今回は逃げるわけにはいかない。村人達を安全にこの場へ呼ばなければならないのだ。そのためにも恐獣をこの場で排除してしまわねばなるまい。
 敵の瞳が不気味にひかりながら見えてきた。どうやら5匹くらいいるらしい。様子を伺いながら飛び掛るタイミングを計っているのだろう。
 だが、それは大きな誤算だった。ファチューシンとカペーの弓が放たれ、それぞれに当たり、特にファチューシンの矢は相手の目を捕らえた。群れを成して行動するヴェロキ達にとってはこれが痛手となった。最初の一頭は倒れたものの、まだ数頭いる。距離はあるものの、ヴェロキ達は一気に距離を縮めて至近距離で闘おうとしていた。
 先頭に立った御多々良がにらみを利かせる中、弓での攻撃を続ける二人。ただ、弓を構えて射るには時間がかかる。肉薄するまでに更に二匹倒せたものの、残り3頭が襲い掛かってきた。最初の一頭が飛び掛ってきたところをすかさず頭を狙って攻撃を繰り出す御多々良。彼の武器がごすり、という鈍い音を立ててヴェロキの頭にめり込む。勢いがとまらないヴェロキはそのままの勢いで美月の足元に落ちていく。あまりの勢いに驚きながらも、なんとか短剣を繰り出す美月。御多々良の頭部への一撃で気を失っていたヴェロキも、流石にゼロ距離での攻撃には耐えられず、絶命した。
 その間にも、カペーとファチューシンは弓で後方からの攻撃の手を緩めない。二人ともこの手の戦闘に慣れている上に、ファチューシンの瞳が非常に良い為、ほぼ確実に矢が相手を捉えていく。現在でいうなれば、AWACS(空中戦闘哨戒機)の役目をファチューシンが行い、相手を倒すと言う直接的な攻撃を御多々良が引き受ける、というパターンがうまくいった。AWACSとF-15戦闘迎撃機のような組み合わせがうまくいった。時には倒し損ねた相手もいたが、流石に最初の戦闘でなれたか、美月も次第に前に出るようになってきた。

 そのころ、最初の村人達が鉱山に入ろうとしていた。流石に冒険者達が先行しているだけあって、何事もなく荷物を運び込む村人達。かなりの人数で、沢山の採掘道具を持込み、袋を用意し、意気揚々と隣人や友人と話をしながら奥深くへと進んでいった。

「たぁっ!」
 暗闇の中、美月の気合の入った声が響く。戦闘に慣れていない為かなりぎこちない闘い方だが、”格闘技”を習い始めたばかりの彼女には大きな戦いであった。マルパスの指示に従いながら戦いを進めていくうちに、段々とコツが掴めて来たようだ。マルパスはというと、自分の前に敵を置かず、側面から攻撃すると言うスタイルをとり、美月と連携しながらカペーや御多々良達をすり抜けた残りを片付けていった。そのおかげで、残ったヴェロキ達もこれはたまらないと思ったのであろう。一頭が雄叫びを上げると、残りのもの達は行動をやめた。どうやらそのヴェロキは現在最高位であるのは自分だと正確に判断し、撤退を決めたようだった。

    ◆◆◆

「うわ! こいつぁすげぇ!」
 村人の驚きも当然であろう。彼らがまず目にしたのは、ヴェロキの躯だからだ。そして体中に汗をかき、肩で息をしている冒険者達。しかし、彼らには大きな被害はなく、村人達を安全に迎え入れると言う当初の目的を果たせたようだった。疲れきってはいたが、当初の目的を果たせたという達成感から、美月は泣きそうになった。初めての冒険で、皆と力をあわせてやってのけたのだ!!
「皆さん、お待たせしました‥‥ここは安全です!」

 そういう彼女の顔には笑顔があった。