死せる墓守、村を巡る

■ショートシナリオ&プロモート


担当:永倉敬一

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:08月07日〜08月12日

リプレイ公開日:2005年08月10日

●オープニング

「大変だ! トニーがやられた!」
 その知らせを聞いて、村中が騒然とする。
 この村には先月あたりから、教会に隣接された墓地に、夜中スカルウォーリアーが出没して侵入者に襲い掛かるという事態が起こっていた。
 その時点でもかなり危険な状態だったが、教会の主であるクレリックのフィオナは、
「あらあら、頼もしい墓守ができて、とてもいいことです。夜中に墓地に侵入しなければ害はありませんので放っておいても大丈夫ですよ」
 と、前向きというか無責任というか、あまり事態を深く考えてはいなかった。
 そのせいか、以前村長が独断で退治する人員を募集してはみたものの、集まりは悪く、結局退治するには至らなかった。
 仕方なく放置の方向で今までやり過ごしてきた。
 だがそうは言ってられなくなった。
 骸骨はついに守備範囲を村全体に広げ、夜は村中を徘徊し始めたためだ。
 そしてついに犠牲者が出てしまった。
「あらあら、この程度の傷ならすぐに治りますよ。きっと神のご加護があったのでしょうね」
 フィオナは呑気な口調で話しつつ、トニーの治療を済ます。
「冗談じゃないですよ。あの骸骨、ついに村中を徘徊するようになったんですから」
 危うく殺されるところだっただけに、フィオナの言葉はトニーにとっては慰めにもならない。むしろ慌てたそぶりぐらい見せてほしかったぐらいだ。
 だが当の彼女はというと、
「なんて熱心なんでしょう。村の治安まで守ろうとするなんて。夜は仕事を邪魔しないよう家から出ない方がいいですよ」
 だめだこりゃ、彼は心の底からそう思った。

 翌日、フィオナ以外の村の要人を村長宅に集めて会議が行われた。
「もう一度、募集をかけてみますか?」
「うむ、もはや頼れるのは冒険者だけだ」
 満場一致で冒険者を雇う事に決まり、その日のうちに村長は冒険者ギルドのある町へと出発した。

●今回の参加者

 ea0674 イオニス・ツヴァイア(19歳・♂・ファイター・エルフ・イギリス王国)
 ea6484 シャロン・ミットヴィル(29歳・♀・クレリック・パラ・フランク王国)
 ea9144 虞 百花(24歳・♀・僧侶・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb0266 イクス・アーヴェイン(28歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 eb1274 郭 無命(38歳・♂・僧侶・人間・華仙教大国)
 eb2745 リースフィア・エルスリード(24歳・♀・ナイト・人間・フランク王国)
 eb3087 ローガン・カーティス(22歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb3107 ウルグ・アル・アディド(34歳・♂・ファイター・人間・エジプト)

●サポート参加者

功刀 衣流華(ea0195

●リプレイ本文

「おお、よく来てくれた」
 今回の依頼に八人もの冒険者が駆けつけてくれたので、村長の喜びもひとしおだ。
「亡者達は必ずや私たちが祓ってみせます。どうぞ、心安んじてお待ちください」
 郭無命(eb1274)の頼もしい言葉に村長は満足そうに頷く。無命は更に続ける。
「亡者と言うのは往々にして現世に何か強い執着を残すが故に、成仏する事が出来ず世に縛られる物です。村長、今回の件に関して何か心当たりはございませんか?」
 聖職者らしい質問である。
「うむ、昔正義感のある男がいたんだが、そいつは何かの事件の途中で逃げ出して、死ぬまでそれを悔やんでたらしい。おそらくそいつの悔やみきれない思いが形となっているのだろう」
「死んでも尚、使命を全うしようとするその意気込み。騎士の鏡ですね」
 村長の説明に、リースフィア・エルスリード(eb2745)は頭の中で死者にストーリーを勝手に膨らませていく。
「その死者の気持ち、わからないでもないな」
 イクス・アーヴェイン(eb0266)も自分の境遇に照らし合わせる。
「だが、村人に被害が出てしまっては彼のやってる事は迷惑に他ならない。彼には村の用心棒を引退してもらったほうが本人と村の為だろう」
 危うく、死者に同情しそうなところだったが、ローガン・カーティス(eb3087)の言葉に皆、我に帰る。
「まずは情報収集だな。最低でも骸骨の行動範囲は知っておきたい」
「私はフィオナさんと話がしたいです‥‥」 
 イオニス・ツヴァイア(ea0674)が今後の行動について切り出すと、シャロン・ミットヴィル(ea6484)も後に続く。同じクレリックだけあって、アンデッドを放し飼いにするフィオナの行動にシャロンは不満があるようだ。
「骸骨が出るのは夜中だろ? 昼夜問わずに活動してたんじゃ身体が持たんぞ。少しぐらいは睡眠時間がほしいな」
 ウルグ・アル・アディド(eb3107)の言う事ももっともだ。相手が強敵なだけに体調は万全な方がいい。この意見にはイクスも賛成する。
「教会を‥‥始めとして‥‥墓地に‥‥近い家から‥‥聞き込みを‥‥すれば‥‥効率よく‥‥回れて‥‥睡眠時間も‥‥確保‥‥できそう‥ね‥‥」
 虞百花(ea9144)の途切れ途切れな言葉に皆イライラしつつも、その流れで行動する事で意見はまとまった。

 一行は、まずフィオナに説教をしに教会に向かう。
「死者はお墓に眠るべきです。‥‥あなたはもう少し聖職者としての自覚を持ってください」
 淡々と、それでいて厳しい口調でシャロンはフィオナに説教を始める。実際のところ、キャリアではフィオナの方が上なのだが、もはやそんな事は言ってられる状況ではない。
「俺はジーザス教は嫌いだが、聖職者なら苦しんでる人を助けてやれよ」
 ウルグも後に続く。
「あらあら、私は怪我人の治療しかできないのでその上で前向きに考えた結果、夜出歩かないという結論に至ったんですよ」
 のほほんと答えるフィオナ。これにはリースフィアも黙ってはいられない。
「じゃあ、急病でどうしても外に出ないといけないときはどうするんですか?」
「うーん、そうですねえ‥‥」
 考え込むフィオナ。結局彼女の答えが出る前に全員に説教をされて、ようやくフィオナは反省する気になった。
「以後気をつけます」
 ふかぶかとお辞儀する彼女の姿に一同は満足し、教会を後にした。
 その後の聞き込みで、スカルウォーリアーの巡回ルートの大まかな予測が立てられると、一行は日没まで睡眠をとり、戦いに備えた。

「あまり眠れなかったな‥‥」
 イクスは今回が初の依頼のために、皆とは離れたところで睡眠をとっていたが、やはり気持ちの高ぶりは抑えられず、あまり寝たという気にはならなかった。
「心配するなって、前衛が四人いるからいざとなったら後ろにまわるといい」
 イオニスはそう言ってイクスの肩をポンと叩く。
「行こう、まずは教会に隣接する墓地からだな」
 ウルグの言葉に皆うなずき、墓地に向かった。
 教会を通りかかる途中、
「あらあら、これから見回りですか? 頑張ってくださいね」
 と、フィオナが入り口で手を振るが、一行は全員無視して見回りを開始する。とはいえ村自体そんなに大きくないので、小一時間ほどで一周できた。
「いないな」
 おもむろにローガンがつぶやく。
「まだ夜は始まったばかりです」
 初回からいきなり出くわすとは皆あまり思ってなかっただろうが、一応気休め程度に無命は皆を元気付ける。
 少しの休憩をはさんで、一行は見回りを再会した。

「くそ、油がなくなりそうだ」
「‥‥私もです」
 見回りが三周目も中盤になったあたりで、最初に入れておいた油がだんだん乏しくなってくる。中でもウルグとシャロンは油を一つしか持ってきていないので尚更焦る。
「戻ったら‥‥私の‥油を‥‥出す‥わ‥‥」
 百花は驢馬に予備の油をまだ七つ積んでいる。完全に明かり要因として徹するつもりらしい。
「油の心配する必要はないぞ」
「ああ、おいでなすった!」
 ローガンとイオニス。彼らの視線は暗闇のある一点を向いていた。他のメンバーにはまだ見えてはいないが、彼らの言葉で何かがこっちに向かっている気配が感じられた。
「やべぇ‥‥震えが止まらない‥‥」
 初めての戦闘ということもあって、イクスの身体はガチガチに硬直し、ガタガタと震えている。
「大丈夫です、ちゃんとサポートしますから」
 無命はそんな彼の肩に手をかけ、なんとか緊張を研ぎほぐそうとする。
「ここより向こうの方が広くて被害も少ないと思います」
 リースフィアは見回りの最中に村の地形を把握しておいたため、戦いに適した場所をいくつか知っていた。彼女の誘導により、全員そこで陣形を立て直す。対するスカルウォーリアーはゆっくりと、確実にこちらに迫ってくる。
「まずは視界の確保だ」
 ローガンは持ってきたたいまつにクリエイトファイヤーで火をつけると、スカルウォーリアーの足元に放り投げる。
「こいつを頼む」
 ウルグは自分のランタンを百花に渡し、スカルウォーリアーと対峙する。イオニス、リースフィア、遅れてイクスも後に続く。
「俺の魔法を武器にかければ、あいつに大ダメージを与えられるはずだ」
 オーラパワーを唱える事で何とか震えを抑えることが出来たイクスは、他の前衛のメンバーの武器にも魔法を付与させようとする。
「私はこれがありますので」
 リースフィアの持っている剣はアンデッドスレイヤー。スカルウォーリアー相手にはうってつけの武器だ。
「俺にかけてくれ。相手が相手だけに慎重にいかないとね」
 エルフのイオニスにとってはダメージを増幅させてくれる魔法はありがたいことこの上ない。
「同時に行きましょう」
「‥‥わかりました」
 無命とシャロンは同時にホーリーを唱える。二つのエネルギーはスカルウォーリアーを挟み込むように命中する。しかし敵は何事も無かったように、一番接近しているウルグに向かって攻撃を仕掛ける。
「おっと」
 ウルグは難なくそれを盾で受け止め、チェーンホイップを振るう。すると上手い具合に相手に絡まり、自由を奪う事が出来た。
「いざ、参る!」
 続いてイオニスの攻撃。武器はショートソードだが、オーラパワーで威力が増幅しているので本来ならかすり傷程度のダメージがそれなりに効いてるように見える。
「突いても当たらないんだったな」
 イクスは戦い方を思い出すように剣を振るう。パーティーの中で一番力がある彼の攻撃だけあって、バカン!と、派手な音をたててスカルウォーリアーの骨のいくつかが砕けていく。
「これで、安らかに眠ってください!」
 とどめとばかりにリースフィアが一撃を加えると、スカルウォーリアーはガクリと膝を落とす。しかし戦意は衰えてなく、今尚攻撃を繰り出そうとする。
 それを見て取った無命は、前衛の四人に死者を取り押さえるよう指示をする。
「天に還れず、地を彷徨う事となった亡者を輪廻の輪に導けますように‥‥」
 彼は祈りを捧げた後、ピュアリファイを唱える。すると、スカルウォーリアーは、サラサラと、溶けるように存在を消していった。
「‥‥貴方が、大いなる母の元に往けますように」
 シャロンが死者の冥福を祈ると、百花も無言それに続く。
「これで、もうあいつは巡回しなくていいわけだ」
「ああ、ようやく開放されて、幸せだろうな」
 ローガンの何気ない一言に、イクスは少しだけ死者がうらやましく思った。
「さて、終わったんならさっさと寝よう。夜更かしは身体に毒だ」
 健康管理にうるさいウルグは、既に生活リズムの修正に入りたいようだ。彼の言葉にクスリと笑いながら、一行は村長の家に帰って行った。

 翌日、報告と今後こんな事があったら放置しないという警告を兼ねて、フィオナの所に向かった。
「あらあら、夕べはご苦労様です」
 ニコニコと微笑みながら、フィオナは一行を迎える。
「‥‥もう、あんな事はしないで下さい」
 昨日散々言い聞かせたが、念のためクギを刺しておくシャロン。
「分かってます。今までとは違う方向で前向きに考えますよ」
 分かってるんだか、どうだかよくわからない回答。一抹の不安を感じつつも、一行は村を後にした。