藪をつついて‥‥?
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:永倉敬一
対応レベル:1〜4lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 0 C
参加人数:4人
サポート参加人数:1人
冒険期間:09月09日〜09月14日
リプレイ公開日:2005年09月19日
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●オープニング
「あーあ、何で草刈りなんかやらなきゃいけないのよう。面倒くさいなあ」
「何言ってるのよエビータ。あなた普通の授業も面倒くさがってるじゃない」
ぷーっと頬を膨らませて不満そうなエビータにドーラは呆れたように言う。
学校の美化も生徒達の立派な務めの一つ。彼女達のクラスは今日は草刈りをやる事になっていた。三十人の生徒は一列になって一斉に草を刈り始める。
「何かこう、バーッと草を刈れるような魔法無いの? ドーラ」
「あるも何も、私たちまだ基礎しか教わってないじゃない。ほら、さっさとやらないといつまで経っても終わらないわよ!」
いつまでも駄々をこねるエビータ。ドーラは半ば切れ気味に答えると、エビータはしぶしぶと草を刈り始めた。
しばらくしてエビータは何かに気付き、顔を上げて周りを見る。
「どうかした? エビータ」
「今何かガサガサ音がしなかった?」
「皆で草刈ってるんだから当たり前でしょ」
「それとは違う音だよー」
何を言ってもドーラに信じてもらう事はできず、仕方無しに作業を再開するエビータ。だがやはりどこか不安でキョロキョロと落ち着かない。
ガサッ。
「ほ、ほらまた!」
エビータはたまらずドーラに抱きつく。
「何よ、もう!」
ドーラは迷惑そうにそれを引き剥がすが、さすがに気になってあたりを見回す。
ガサガサッ
今度ははっきりとドーラにも聞こえた。確かに草刈りとは違う物音する。
「へ、へ、へ‥‥」
ふと、エビータが青ざめた表情で固まっている。彼女の目線の先、そこには一匹のヘビがこちらを睨んでいた。
「ヘビだー!!」
叫びながら先生の所へ猛ダッシュする二人。彼女達の行動に他の生徒達はパニックになる。
「皆こっちに逃げるんだ!」
先生は生徒を避難させ、危険が無いか確認に入る。
「これは‥‥」
調べた結果、バイパーが二匹確認できた。
「誰も咬まれなかったのが幸いだな」
先生はそう言って、ギルドの方に毒蛇の駆除を依頼することにした。
●リプレイ本文
「あら♪ 可愛い学生さんがいっぱいねぇ♪ この中で将来良いオトコになりそーな子とかいたら、今のうちに予約入れておこうかしらね?」
キッシュ・カーラネーミ(eb0606)がクスクスと、パピーフォームの子供たちを物色するような目で見ていた。
「まさか、これのために集合場所をここにしたわけじゃ無いだろうな?」
陸琢磨(eb3117)はジト目でキッシュを見る。彼女はそんな事ないわよーと、そ知らぬふりをするが、目線は子供たちに釘付けだ。
「その手にしてるのは何?」
デメトリオス・パライオロゴス(eb3450)が、キッシュが手に持っている紙を見つける。
「ああ、これは友達に頼んでバイパーの習性とか調べて、わかったことを書いてもらったの」
「いいお友達を持ってるんですね」
セラフィマ・レオーノフ(eb2554)は紙を見せてもらいながら言う。紙には大まかな特徴など、わかったことをメモのように書き綴ってあった。
「これなら情報収集の手間は省けますね」
デメトリオスも丁度バイパーについて調べようと思ってたところなので渡りに船だった。
「ならさっさと行こう。こいつが目的を忘れんうちにな」
陸はキッシュを指差しながら言う。その先にはキッシュが、遠くのほうで遊んでる子供たちを見つめていた。
校舎裏の藪は中途半端に草が刈られていて、当時の様子が少しだけ想像できそうな状態になっていた。
「繁殖期は夏から秋か‥‥。となると報告のあった二匹だけじゃないと考えた方がいいな」
陸は先程の紙を読むと、肉眼で蛇が確認できないか目を凝らして見てみる。しかし、別段目がいいというわけではないので特に変わったものは見つけられなかった。
そこへ、デメトリオスとキッシュが遅れてやってくる。
「魔法の使用許可を取ってきたよ。これで作業が楽になるね」
「周りの木を倒さないっていう条件付きだけどね」
二人はどうやら範囲魔法で一気に片付けるつもりらしい。
「魔法ってこういう時には、果てしなく羨ましいですね。さあ、どかんと行っちゃって下さい」
セラフィマは少し離れて、どんな魔法が出るのかワクワクしながら見守っていた。
「では、まずおいらから行くよ」
デメトリオスはそう言ってライトニングサンダーボルトを唱える。
「ひっ!」
バリバリと空気を切り裂く音が鳴り響き、セラフィマは思わず驚きの声をあげる。
電撃が走った部分は草がブスブスとくすぶっているが、途中の隆起してる部分に当たって電気を吸収されてしまったようで、焦げ目は茂みの半分ほどで止まっている。
「意外と効率悪くないか? これ」
陸は焦げ目を見ながら言う。ライトニングサンダーボルトは長距離を一直線に飛ぶとはいえ、範囲は狭いので藪全体をそれで焼き尽くすにはかなりしんどいだろう。
「まあ、ある程度やれればいいよ。キッシュさんもいるしね」
デメトリオスは二発目を少し間隔をあけて放つ。
「あら? あそこ」
キッシュが指を差した先に、何か動く物があった。それは少し焦げているものの、バイパーに間違いなかった。
「レッツ退治!」
セラフィマは槍を構えてバイパーにとどめを刺そうと走り出す。
が、その直後に陸に肩をつかまれて止められる。
「待て、今はまだ危険だ。あれの近くにもう一匹いるかもしれんぞ」
「えー、もたもたしてると逃げちゃいますよ?」
茂みの中へ逃げようとしてるバイパーを見ながら、セラフィマは不満の声をあげる。その間にもデメトリオスはバリバリと矢継ぎ早に電撃を繰り出していた。
「ふう、これ以上は、ちょっと、無理‥‥」
あれから数え切れないほどの電撃を放ったデメトリオス。流石に息も上がってへとへとだ。
藪を見ると、少々いびつではあるものの、見事な縞模様が出来上がっていた。その模様の中には、動く物体が三つほど見える。
「やはり、二匹だけじゃなかったか」
陸の予想は的中した。だが、大きさにあまり差が無いところを見ると、繁殖期とは別で存在していたのかもしれない。
「次はあたしの出番ね。手始めにあの三匹を駆除しようかしら」
デメトリオスと入れ替わりにキッシュが呪文を唱え始める。彼女が唱えたのはアイスブリザード。吹雪が扇状に広がり、三匹のバイパーをまとめて覆いつくす。
「私たちの出番ってあるのでしょうか?」
「さあな」
今のところ何もしてないセラフィマは、魔法使い二人の活躍で依頼が達成されてしまいそうな雰囲気に、少し不安になった。一方陸の方はといえば、意外と落ち着き払っている。
「あっと、この後草刈りするのよね」
アイスブリザードを二回放ったところで、キッシュはあることに気付く。
バイパーを退治した後、一行は特に頼まれてはいないが草刈りをやる事にしていた。
「じゃあ、いぶり出し程度にまんべんなくやっておくわ」
キッシュはそう言って、今度は弱めの吹雪を藪全体に少しずつ吹きかけていった。
「こんなもんかしらね」
全力を出しきらない内に作業が終了した様で、キッシュは特に疲れた様子もなく休憩に入る。
「ようやく出番だな」
木にもたれかかって作業を見ていた陸は、二本の剣を抜いて藪の方へ歩いていく。向かう先は先程アイスブリザードを食らった三匹。まだ生きてるようで、ぴくぴくと少しだけ動いていた。
陸は慎重に藪の中に入って行き、左手に構えたロングソードで次々と止めを刺していく。
一方セラフィマは、他に動く物が無いか藪の手前で耳を澄ませいた。
「聞こえませんねえ」
彼女はそうつぶやくと、槍を構えて草むらをぐりぐりと突き始めた。
「へーびへーび、藪をつついてこんにちはー」
直後、ぐにっとした感触に突き当たる。
「あ、さっきのですか?」
最初に見つけたバイパーは、どうやら先程の三匹とは別のところにいたようだった。
毒蛇と出くわしたにも関わらず、セラフィマは呑気な対応を見せる。それもそのはず、このバイパーも、もう動けない様子だったから。
「えい!」
セラフィマは槍を突き立てて止めを刺した。
「調子はどうー?」
しばらくして、ようやく落ち着いてきたデメトリオスは蛇の捜索をする二人に様子を伺った。
「三匹やったぞ」
「私は一匹やりましたー」
合わせて四匹。二人は一応それらをデメトリオスの元へ運んだ。
「報告の倍の数じゃない」
キッシュが驚いたとも呆れたともとれる言葉をあげる。
「今のところ見つかったのはこれだけだ。で、本当に草刈りやるのか?」
「勿論だよ、蛇の巣穴を探す意味でもやっておかないとね」
陸としてはさっさと退散したいところだが、他の三人は予定通り草刈りをする気満点だ。陸はしぶしぶ付き合うことにした。
小一時間ほどして。
「穴を発見しましたー」
セラフィマは、蛇の巣と見られる穴を発見した。他の三人も穴のところに集まる。
「中は見えるの?」
キッシュの言葉に従って中を覗き込むセラフィマ。
「んー、よく見えませんねえ」
言って彼女は槍でつついてみる。何かコンコンと当たる感じがする。
「ちょっと代わってみろ」
陸はセラフィマと位置を交代して、ロングソードを一気に穴に突き刺す。そして引き抜くと、卵の黄身のようなものが付着していた。
「予想的中だね」
デメトリオスがそう言う最中にも陸は何度もロングソードを突き立てる。
「これでいいだろう」
陸はある程度気の済んだところで、今度は穴を埋める作業に入る。これには全員が手伝った。
「ちょっと可愛そうな気もしますね」
「でも放っておくと、子供たちが咬まれちゃうわよ?」
しんみりとつぶやくセラフィマに、キッシュがすかさず警告を与える。その辺はある意味、弱肉強食かもしれない。どちらにとっても嫌な存在なら、強い方が弱い方を排除するまでだ。
「終わったー」
デメトリオスが、両手を上げて伸びをする。あれから更に一時間が過ぎたところでようやく草刈りにも目処が立った。途中で穴を見つけたものの、蛇を見つける事は無かった。それでも念のため穴は埋めておいた。
「よし、じゃあ報告に行くか」
陸はさっさと草刈りの道具を片付けて、校舎に戻ろうとする。
すると、目の前に二人の女の子が現れた。
「蛇を退治してくれたの?」
おさげ髪の女の子が聞いてくる。
「ええそうよ、ついでに草も刈ってあげたんだから」
キッシュが自慢げに答えると、女の子達は藪だった場所を見る。
「うわあ、本当だ。やったねドーラ、これで草刈りをしなくて済むよ」
「ちょっと待ってよ、エビータ」
うれしそうに走り去っていくおさげ髪の女の子。それを青い髪の女の子が追いかけて行った。
「あれあれ? お礼の言葉もないんですか?」
お礼も言われなかった事にセラフィマは少しカチンと来た。
「全く、教育がなってないな」
陸も同意見らしい。そしてキッシュもそれに続く。
「全ての子供たちがそうだとは思いたくないわね」
「まあ、それを含めて報告に行こうよ」
三人をなだめるように、キッシュが言う。
彼らは小石を蹴り蹴り、校舎の方に戻っていった。