【RK】ゴーレム(とその主)ハント

■ショートシナリオ


担当:長谷 宴

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月28日〜12月03日

リプレイ公開日:2006年12月06日

●オープニング

「う〜、寒い。遅くまで飲んでるんじゃなかったなあ・・・・ん?」
 キエフから徒歩で1日ほどのとある町、冷え込みが一段と厳しくなった深夜にしっかりしているとは言えない足取りで帰宅する若者の目に入ったのは一つのランタンの灯りとそれを持つがっちりとした体躯の人影、そしてその人影に付き従うかのようにある二つの角ばったフォルムの大柄の影だった?
「・・・・何だろう?」
 ふと疑問に思うまま、足を進めてしまったのがその若者の運の尽きだった。はっきりとその二つの影を確認できるまで近付いた彼は、そのランタンの持ち主と付き従う影をみて驚きの声を上げる。筋骨隆々としながら魔術師風のローブを羽織る働き盛りの年頃のハーフエルフの男と、その男に従う二体の小柄なジャイアントほどはある木の人形――ウッドゴーレム。
 にひぃ、と笑った魔術師風の男が発する嫌な雰囲気を感じ取った若者は途端に一歩後ずさり、そのまま振り向いて逃げ出そうとした。が、背後のほうでなにやら呟く声と茶色の発光があったかと思った次の瞬間、若者は身体が急に重りをつけられたかのように動きづらくなってしまっていることに気付いた。
「うぅむ、坊や、引き締まっているとは言いがたいが、それでもあまり無駄の無いよい身体をしておる。どおれどおれ、じっくり調べてみよう、アディーン、『全力で服を脱がしてやりなさい』」
 逃げようとした若者を追っていた一体のゴーレムは、動きの鈍くなった若者を捕まえると先ほど男が言ったこと通りにぽーいぽーいと服を脱がす。
「ぎゃー、やめてーお嫁に行けなくなるー!」
「何を言うか。安心しなさい、このウッドゴレームのアディーン君とドヴァー君は幸い手馴れている。大船に乗ったつもりで身を任せなさい」
 立派な口ひげを撫でながら男はゴーレムたちに指示をだしあーんなことやこーんなことを行っていく。そして、若者の悲鳴が何度も響いたり、狂化したんじゃないかと思える男の嬌声が何度も響いたりして・・・・
「ゴーレムニストの情けだ。裸のままいては風邪を引いてしまうからな、寝袋に入ってなさい」
 裸体に何だか色んな跡のついた若者は、寝袋にしっくりと包まれ、厳重に縛られたままそのまま置いておかれ、朝になってようやく救助されましたとさ・・・・。


「『RK』がまた出たのか。分かった、依頼を受け付けよう」
 口元に手を当て深刻そうな表情をした冒険者ギルドの受付係がそういうと、依頼人と思わしき男性達は何度も頭を下げてうれし涙を流しながらギルドを去って行った。その様子をみた冒険者の男は、ギルド員に子細を尋ねる。
「ああ、聞いていたのか。ではまず、『RK』をしっているか? そうか、知らないか・・・・分かった、説明しよう。『RK』とはある行動を行う連中のことだ・・・・『Rear Killer』、男性の『後ろ』を狩る者、と言う意味なんだが」
 すぐさま回れ右して立ち去ろうとした冒険者だったが、時既に遅し、ギルド員ががっちり袖を掴んでいる。
「それが、ここから1日ほどの町で現われた。既に被害が数件報告されている。魔術師のがっちりとした男、そしてその男が従える二体のウッドゴーレム・・・・そう、ゴーレムニストが今回の敵だ」
 相変わらず真剣な表情で続けるギルド員。尚も逃げ出そうとする冒険者。その様子にこの手の依頼の匂いを感じとったのか、距離をとるもの、男性冒険者に向かい十字を切るもの、知り合いの男性冒険者の背中を無理やり押してこの依頼についての説明を聞かせようとするものなど、反応は様々である。
「大体のパターンは、この男に物珍しさか何かで近付き、魔法をかけられ動きを鈍くされたあと、ゴーレムと一緒になんと言うか・・・・RKするらしい。たとえ助けようとしても、もう一体のゴーレムが見張りについているため、手が出せない。それで、手に負えなくなってこちらに依頼が回ってきたってこった」
 ちなみに、救いの手が出せないのか、それとも出さないのかそこのところの真相は闇の中である。
「今までRKはその性質上、単独で事に当たることが多く厄介でこそあったがそう倒しがたい相手でもなかった。・・・・が、ゴーレムという新戦力を得てやつらは変わった。心してかかれよ!」
 最後まで似非シリアスを貫き通す、係員だった。

●今回の参加者

 eb6615 ルシー・ルシール(54歳・♀・バード・シフール・フランク王国)
 eb7544 王 寅(34歳・♂・武道家・河童・華仙教大国)
 eb9345 ヴァン・デスカル(25歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb9400 ベアトリス・イアサント(19歳・♀・クレリック・エルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

「うー、ユー荷物持ちすぎよ‥‥。そのままだったら間に合わなかったかもしれないわ」
「何か、勿体無い気がするんだよね」
 シフールの道化師、ルシー・ルシール(eb6615)は、王寅(eb7544)に、身体を振るわせながらそう言う。寅は荷物が多すぎて彼本人だけでは移動すらやっとというありさまだったため、仕方なく彼女のペット、ハスキーで荷物を運ぶ手伝いをさせていた。もっともそういう彼女も、ノリで参加したためかこの季節必須アイテムである防寒服一式を持っておらず、道中ひどくつらい思いをしている。食事も宿泊場所も依頼人持ちとはいえ、冒険に行くには寅とは対照に準備が少なすぎた。
「あーあ、ったく、先行きが思いやれらるぜ‥‥こりゃやっぱりあの手しかないな」
 そんな様子を見ながらイギリス出身のエルフのクレリック、ベアトリス・イアサント(eb9400)は嘆く。‥‥とはいっても、彼女はルシーを超える荷物の少なさ、同じく防寒服を持っていないという状態。ガタガタ震えながらの発言である。まあ彼女の場合、依頼の遂行に対する人数の少なさからくる不安も含まれるのだが。元々ギリギリの人数だったが現場に来たのは更に少なく3人。
「‥‥とにかく、早く宿につかないとマズイわ。せめて日が出ているうちに」
 日中であればひどい寒さを感じてはいてもまだ何とか動ける。が、日が暮れてからの冷え込みは流石に危険だ。そんなわけでルシーの言葉にせかされたわけでもないが、一同は足早に宿を目指した。ハスキーの元気な声で鳴いた。
 ‥‥ところで、今回退治すべきRKって夜に出るんじゃなかったっけ? 前途多難である。


「いやいやいやいや遠慮しておきます。あ、みたところそのままでは凍えてしまいそうなのでココに防寒服、置いておきますね、ではっ!」
 兎すら超越してるんじゃないか、と思えるスピードでベアトリスが話を持ちかけた依頼人の1人である男はあっというまにその場から立ち去った。おもわず「凄いね」と感想を交渉を見守っていた寅などは漏らさざるを得ない。
「ちっ、しけてんねーまったく。自分達の町じゃんか。‥‥とりあえず、これは借りておくけどさ」
 ブツブツ文句を言いながら防寒服に袖を通すベアトリス。が、着て暖かさを感じたら「気前がいいねえ」とご満悦の様子。さっきと言ってることが一致しないくらい彼女は気まぐれである。
「うーん、ミーはよく分からないけど、やっぱり一般人は巻き込んじゃダメなんじゃ?」
 同じく防寒服に身を包んだルシーが、ベアトリスに言う。
 今回彼女がしていた交渉の内容は、住民である彼らに囮かつ戦力になってもらおうというものだった。冒険者の数が足りないためRK退治には難が生じるのではないかと案じてのことで、彼女は何とか説得するつもりだったが、やはり上手くいかなかった。もっとも依頼に一般人を巻き込むのは基本的にNGであるという認識が冒険者一般にはある。冒険者にたのむような仕事は基本的に一般人では解決できなかったものばかりで、下手に危険に晒すわけにはいかないからだ。
「ったく、しっかりケガだって治してやるし相手の魔法も直接傷を負わせるもんじゃ無いって説明したんだけどなー」
 被害者の話を聞いた時の情報から、恐らく敵RKは地の魔法であるアグラベイションを使うと彼女は読んでいた。行動に制限がかかるがそれだけで、そう危険ということは無い。万が一怪我してもよほど深い傷でなければリカバーで回復を試みることが出来るし。そう思っての合理的であるはずの提案だったが、すげなく拒否されてしまった。‥‥まあ、負わされる傷はリカバーじゃ治せなそうだし。もし彼女が誘う話術が巧みだったら結果は変わっていたかもしれないが、実のところ拒否されて逆に平和だったといえるかもしれない。
「まあ、そう気を落とさないね。おれが鎧をまとって中肉中背の好青年を演じて囮やるよ」
 まあ、そう寅がそう言って引き受けたことで一応の解決にはなった。重い荷物にも理由がしっかりあったのである。


「待たれよ貴公。見たところパラであろうと思われるが、ジェントルマンたるものそう身体を隠すものではない!」
 ああ、ホントにいたよ。そんなわけで夜の町を歩いていた歩く鎧状態の寅にゴーレムを率いたRKが声をかけた。ひどくローブが不釣合いな肉体をした彼は腕を組み堂々と立っている。
 それにしても寅にとって誤算である。河童的には中背だったかもしれないが、人間やハーフエルフにしてみれば背が低いというどころではない。
「アディーン君、『彼の鎧を脱がしてあげなさい』。なーに、大丈夫だ。私の趣味は人間もしくはハーフエルフがメインだが、この前はパラだって相手にした。勿論彼らゴーレムも一緒だ、だから、さあ、安心して!」
 余計不安というか恐怖が膨らむようなこともさらっと含ませながら、彼はみずからのゴーレム一体にそう命じる。
「‥‥うーん、見たところ狂化してないわ。素でやってるのねアレ」
 物陰に潜みながらそんな様子を観察するルシーが、ポツリと呟く。あまりに頭のタガが外れてるんじゃないかと疑うような行為だったのでもしかしたら狂化してるんじゃないかと思われたが、どうやら本当に自らの好みに殉じての行為だったようだ。
「これじゃあスリープで元に戻すとは行かないわねぇ‥‥それじゃあ」
 もうちょっと、見物してよう。ホラ、ミー難しいこと考えたくないし。
 折角囮が隙を作ってくれてるのに‥‥そんなひどい。
「あー断れたから折角考えてた作戦使えないしなー。ったく」
 同じく潜むベアトリスも、そんな感じで随分ひねてしまっている。まあもっとも彼女はジーザス教[白]の信徒、更に曲がったことが嫌いなので‥‥
「ったくしょうがねーなー」
 と聖書片手にそれなりに準備。って聖書?!

「や‥‥やさしくしてね」
 ゴーレムに拘束され脱がされ始めた寅は、RKが近付きアグラベイションがかけられたと感じると上目遣いでそう懇願した。その様子は最早受け入れてるんじゃないかと思える程。だめだ、流されてはダメだぞ寅!
 まあ、そう言って脱がすのはゴーレム。手つきがおぼつかなく寅の重い鎧を脱がすのには手間取っている。
「むう、まったくまどろっこしいな‥‥ここは私が」
 痺れを切らしたのか、RKは近付き、ゴーレムに代わり鎧を脱がそうとする。嗚呼、寅は汚されてしまうのか!?
「ぬおおおぅっ!?」
 吠える声と共に、ガブリと噛み付く声。みると、ルシーのハスキーがRKの男に噛み付いている。どうやらもたついた展開に痺れを切らしたのは冒険者達も一緒らしい。
「ユー、ダメよ! 折角待ってたのに面白くないわ!」
「ったく、んなことしてんじゃねーよ。神の教えに背いてんぜ」
 ルシーは理不尽に怒りながら、ベアトリスはやれやれといった様子で出てくる。ハスキーを必死に払いながら驚愕のRKはうろたえる。
「そうそう。こんなんじゃダメ。オレ虎になれない」
 ベキリ。といった音と共に虎も言い放つ。どうやら鎧が脱げて動きやすくなったらしい。彼をぬぎぬぎさせていたゴーレムに傷がついていた
「な、なんだ貴公たちは‥‥まさか冒険者かっ!? ああ、っていうかアディーン君! こ、この、ゴーレムに傷がついたら今のところ直せないというのに‥‥」
 かれのゴーレムの姿を見てわなわなと震えるRKだったが‥‥
「だったらこんなことに使わないね!」
「許されねーぞこんなこと」
 とルシーのハリセンにベアトリスの聖書がRKに叩き込まれる。物理的なダメージは無いようなものだが、心への衝撃は隠せない。
「く、くぅ‥‥ちょちょっとは静まりたまえ!」
 慌てたRKは身体を光らせ詠唱を試みる‥‥が、かけられたはずのルシーは抵抗して見せた。
「こ、この‥‥」
 もう一度、と今度はベアトリスに向けるが同じく抵抗。二人とも体力的は劣るが魔法などには抵抗しやすい。
「もう優しくしないね」
 うろたえるRKは、更に脇でべきべきばきばき言っている様子を見て叫びそうになる。そこでは魔法の太刀を持った寅により彼の分身と言ってもいいゴーレムが無残に傷付けられていたのだ。
「こ、このぉ‥‥もう、もうゆるさんぞぉ!」
 そう意気込むRKだったが。
「‥‥もう眠るがいいわ」
 そういう彼女の高速詠唱スリープに襲われる。一度目こそ抵抗したものの、更に重ねれ抵抗の意思はかなくあっさり眠りに落ちてしまった。
「さーて、残りはちゃったと片付けますかい」
 主が眠ってしまったので命令がなく上手くうごくことが出来なくなったゴーレムもちゃくちゃくと破壊される。その音に再びRKは目を覚ましたが
「う、うおおおおおん、アディーン君!! くっ、ドヴァー君、キミだけは!」
 ゴーレムの惨状に号泣。残った一体をつれ逃走を図る。拘束するだけの物も戦力も冒険者には無く、それを阻むことはできなかった。
 が、この町のゴーレムニストRK騒ぎは収束へ向かった。それ以降RKの姿をみることは無くなったのだ。どうやら愛するゴーレムを一体喪ったのが相当堪えたらしい。


「‥‥なんだかんだいって汚された気分ね。だが、これも虎への一歩とおもって耐えなくては」
「‥‥さみい。ついさっきまで防寒服着ていただけに」
「あーあ、思ったほど楽しくなんなかったなぁ」
 そんなわけで各自色々思いを抱えつつキエフへの帰路に着く。ありがとう冒険者達、キミ達のおかげで再び町の男性は笑顔を取り戻すことが出来た!