No! リアキラ☆5(ファイブ)

■ショートシナリオ


担当:長谷 宴

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:5 G 55 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月30日〜06月04日

リプレイ公開日:2007年06月08日

●オープニング

「やあ、諸君! 最近暖かくなったなぁ!」
 やたら陽気に声をかける係員に、冒険者達はざっ、と一律に一歩後退。この係員がもって来る依頼大抵はろくでもないのに、更に不気味な(そう言ったら傷つくだろうが)笑顔を浮かべて冒険者達に声をかけてきたのだから、これはもう不穏な未来を予測しない方が無茶というものだ。
「ところで、春になると増えるもの知ってるか?」
 あいも変わらずにこやかな表情で尋ねる係員。耐えられなくなった冒険者の1人が、ポツリと呟くように返す。
「‥‥変態?」
「イグザクトリィ! 正解だよボーイ。何か肌の露出が増えるとか裸コートでもそんな寒くないとか、そんな理由らしいがなぁ!」
 朗らかに続ける係員。が、いつの間にか回り込み、逃げ出そうとする冒険者の退路をさり気に断っている。その見せ付けてくるキラリと光る白い歯や満面の笑みといい、そのオーバーな言動といい、何か今日の係員は嫌過ぎる!
「それでご察しの通りに『変態さん逝ってらっしゃーい』な依頼なんだがちと厄介でなー、なんでもこの季節になって出てきたのが『封印を解かれた』かららしいのだよ」
 時が止まったかのように、唖然として硬直する冒険者達。数秒の静寂の後、再び世界は動き出す。っていうか冒険者が騒ぎ出す。
「ちょ、変態に封印とかどういうことだよぉ!?」
「そんな馬鹿な依頼があるかぁ!」
「っていうか早くここから出しなさいよぉ!」
 ぎゃあぎゃあ喚く冒険者が落ち着くのを待っていた係員だが、終わりそうにない冒険者の正当な疑問と抗議にとうとう堪忍袋の緒がぷっつん。
「だからそれに答えてやるから黙れやぁーっ! 俺だって、俺だってもうこんな役回りは懲り懲りなんだよぉーっ!」


「昨年末、密かに猛威を振るった変態がいた。奴らは強く、そしておぞましかった。いろんな意味で。討伐に出た者も結局倒すことは出来ず、氷の柩に閉ざし、気温の上がりにくいところにそれらを封じることで何とか危機を回避した。――だが、その戒めは解けて、いや溶けてしまった。そして奴らは動き出し、着々と犠牲者の山を築いている。そう、やつらRK5、通称リアキラ☆5が!」
「り、リアキラ☆5ですって!?」
「知っているのか受付嬢!?」
 係員の口から語られる今回の事件の発端、そして敵に反応する冒険者とか受付嬢。ってかどこにいたんだ受付嬢仕事しろ。
「彼女が驚くのも無理はない。表向きには討伐した、という話になっていたのだからな。‥‥奴らは、5人で構成されるRK、既に聞きなれたと思うが『RearKiller』、男性の後ろを狙う者だ。そしてやつらは、その中でもトップクラスの実力を持っているRKが5人集まったユニットだ。RearRearでKillKillなおっさん5人、集まってるという意味でリアキラ☆5っていうことらしい。‥‥何やってんだか、いい年して」
 大きくため息をつく係員だが、とりあえず仕事ということで説明を続ける。
「あーと、その構成だがリーダーの『バーバチカ』が月魔法の使い手で、蝶のマスク。火魔法の使い手『アゴーニ』、そして水魔法の使い手が『ヴァダー』、それとマスコット? のシフールのおっさんが1人いるらしい。ちなみに全員すばらしくむっちりした肉体をご所持なされている」
「数、足りなくねぇ?」
「今一団として確認されているのはその3人だ。元々、封印の場所はバラバラだし、男好きな男5人所帯、難しい年頃だし、色々あるんだろう」
 うんうん、と1人で頷き勝手に納得する係員。
「た、たしかにいい歳してそんなことやってると社会的に難しいと思うけど、いいのかそれで‥‥」
「気にするな。もっとも、奴らの実力はホンモノ。油断はするなよ。しかも、同好の士ということで、オークとかオーガとかまで引き連れてるらしい。姿の見えない他のRK2人も気になる」
 何とか心身ともに無事で帰ってきてくれよ‥‥お前ら、かけがえのない人材なんだからな、こういうの対策の。
 あんまり聞きたくない激励の言葉を背に受けながら、冒険者達はRK退治に赴くのだった。

●今回の参加者

 ea2970 シシルフィアリス・ウィゼア(20歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 eb2488 理 瞳(38歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 eb5634 磧 箭(29歳・♂・武道家・河童・華仙教大国)
 eb5818 乱 雪華(29歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb6853 エリヴィラ・アルトゥール(18歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ec0843 雀尾 嵐淡(39歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

 うふふふ‥‥あははは‥‥きゃははは‥‥
 もし、その行為が熱く日差しの強い、夏の水辺などで若い男女のカップルが行ったのなら、それは絵になっただろう。人によっては強い怒りを浮かべたかもしれないが、それもその行為自体が羨ましいもであるからだ。
 だが、今はまだようやく暑さというものを思い出しかけたような季節で――街道から少し離れた、木々に囲まれ鬱蒼とした川辺で――月明かりが頼りの夜で――水を掛け合ってる二人は男同士だ。
 1人は磧箭(eb5634)、褌一丁の河童の武道家だ。彼の頬を伝うのきっと掛け合った飛沫だけじゃないだろう。空を見上げ他界した両親に想いを馳せているのを一部冒険者が目撃している。ここいらではあまり知名度のない種族なので餌もとい囮としてどうか気にかかっているが、多分大丈夫だろう。立派な男の子なのだから。
 もう片方の、ときどき身体黒く光らせデティクトライフフォースを使用して周りにRKが近付いてこないか調べているのは、ジャパンの僧兵、雀尾嵐淡(ec0843)。まあ、本人も半分気付いているが、多分使いたて程度の効力では範囲が狭いため、引っかかった時には既に美味しく頂かれちゃう5秒前っていうのが関の山だろう。そんな彼だが、この悲しき運命によって決定した囮行動にもそれなりに真剣に取り組まざるを得ない。残念ながら。



「ぁー‥‥でもオッサンはヤだなぁ‥‥せめて残り2人が美形なら‥‥それでその2人がデキてたり‥‥いやいや、いっそオッサン達でもうまくイメージできれば‥‥」
 で、そんな業の深い水浴びから少し離れ待機している女性冒険者達。きゃっきゃうふふしている贄もとい勇敢なる囮を送り出す時には「見方によっては美味しい出番」とか「Mデスカ」などどフォローになってないフォローを送っていたり。その中でも既に心ここになく、自らの妄想世界へ旅立ってしまっている者が約一名。『妄想女子』シシルフィアリス・ウィゼア(ea2970)だ。
「ソノ調子でフラフラ出テ行カナイデクダサイヨ‥‥」
 そんなシシルフィアリスを呆れた目で見る理瞳(eb2488)は釘を刺す。が、返ってきた答えは
「あぁ‥‥多分大丈夫です‥‥やっぱり妄想と比べて現実は色褪せちゃいますから」
 左様ですか。
 

「‥‥あ、やべっ。来――」
「3人でもリアキラ☆5! 参上よん♪」
 嵐淡が探知した時には残念ながら予想通りで、もう近付かれていた。というか多分それよりも音が先に聞こえていたはずだが、どうも水音で届かなかったらしい。
 そんなわけで、筋肉が暑苦しい男が三人と、背後の「グフフフ」なオークやオーガ、そしてマスコット的おっさんシフールの登場です。
「いよいよですね‥‥! やはり敵を尻、いや知り己を知れば百戦危うからずだそうなのでちゃんとこれから起こることを堪の‥‥いや観察しないと!」
「あ、あんなの相手したくないって言うか見れないよー‥‥視線逸らすから、機を見て教えて‥‥」
「さて、さっさとハグストーンでも仕掛けますかー‥‥」
 俄然盛り上がるシシルフィアリスと対照的に、本気でまだ見るべきじゃない、視線を逸らすエリヴィラ・アルトゥール(eb6853)と、オーガやオークの動きを抑えるた効果を持つハグストーンを設置するのを口実に敢えて目の前で起こる惨状を気にしないようにする乱雪華(eb5818)だった。


「ぐっ‥‥とにかくエリベイションで精神を強固にするでござる‥‥心が折れてしまうでござる」 
 蝶のマスカレードで顔を覆う男バーバチカを先頭に現われた集団に内心叫びだしたいほどの恐怖を感じる箭は急ぎオーラで士気を上げる。相手に精神を操ることを得意とする月魔法の使い手がいる以上戦術的にも有効な手段だが、とにかく精神的ショックを耐える必要があったっぽい。そんなおとりを見ると、バーバチカの隣にいた男が突如駆け出してくる。なぜか彼もテンション高めだ。
「うっふっふっふっふー、今アタシはモーレツに燃えちゃってるわぁ〜ん。捕まえてア・ゲ・ル」
 フィーリングで囮たちは悟る。こいつが火魔法の使い手アゴーニで、フレイムエリベイションにより意気軒昂になっているのだ、と。あっという間に距離が迫り、そのたくましい腕が伸びてくる。
「く‥来るなぁっ!?」
 本来は他の二人に使う予定だったが、是非もない。嵐淡はメタボリズムを使用して相手の魔力を空にしようと手を伸ばす、が。
「あら、オイタはダメよ」
 だが、嵐淡の詠唱は失敗し、つんのめった姿勢で手首をつかまれてしまう。正に絶体絶命!
「く、は、はな‥‥」
「どうしても触りたいって言うなら‥‥えいっ♪」
 ぴた。
「あ、あれは‥‥何と言うか自分から掴みにいった形みたいになってる分」
「ざ、残酷だね‥‥見てないけど。うん、見てないんだよ、私は‥‥」
 ショッキングなシーンを目撃してしまい、漏れる感想。
 捕まえられ、宙を掴むしかなかった嵐淡の手は再びに触れた。ただし、『触らせられる』といった形で。生暖かい感覚が手のひらから伝わってくる。
「――ぎいぃぃやあぁああああああああっ!」
 精神が崩れていきそうになる中何とか一瞬の集中をひねり出し、メタボリズムを唱える。成功率も高くなく、抵抗される恐れもあるギャンブル行為だが、今度こそ決死の覚悟が実ったのか――成功。
「いやん、魔力が取られちゃったぁん」
 悲しそうな顔をして、アゴーニは掴んでいた嵐淡をぽいと投げ捨てる。できればもう1人に決めたかったが、無理そうだ。能力的にも、精神的にも。グッバイ嵐淡。オーク達の肉壁に沈んでいく君を俺たちは忘れない。
「ば、馬鹿ッ、そんなふうに圧しかかられたら、痛っ! 痛痛痛痛っ! 止め…止めて…うぎいぃぃぃぃぃ!? 」


「く‥‥や、やられる前にやるしかないでござる!」
 傍観もとい機を窺っている雪華をして「漢の海と化していますねー‥‥」と言わしめるオーク・オーガ方面の凄惨な光景に青くなった箭は、アゴーニに十二形意拳の奥義、龍飛翔を放った。だがその一撃をアゴーニはウィザードらしからぬ身のこなしで辛うじて避ける。驚愕する箭。
「うふふ‥‥燃え燃えになってなきゃ危なかったわね。だけどもおお終いよ! あなたやアタシには聞かないでしょうけど、聞こえるでしょう、この歌が!」
 そういってほくそ笑むアゴーニ。みると後方でバーバチカが歌っていた。無論ただ酔狂で歌っているのではない、呪歌だ! それも‥‥
「ああ、ダメですそんなのいくら想像だからって」
「コノ歌‥‥マズイデスネ。トイウカシシルヨダレヨダレ!」
「あああ見てないのに凄く不快な気分になんか不味いよう」
「何か相当ピンポイントに効果があるような内容ですね‥‥こっちは耐え難いのにむこうのオーガやオークさんと来たら」
 と特別な情動のない女性陣(一部地域を除く)が不快に思う中、雪華の言うとおり目に見えてオークたちの動きが良くなっている。おかげで「頼む‥‥色々失ってしまう前に‥‥無事なうちに助け‥‥」とうめく嵐淡の声が聞こえないほどに。まあ聞こえても多分何も変わんないけど。
「し、しまった奥義直後で動きが上手く‥‥ああ、やめるでござるよぉ!?」
「うふふ‥‥やっておしまいなさいあなたたち☆」
 回避においては達人の域である箭だが、条件が悪すぎた。四方八方からくる肉に抗うことも出来ず飲み込まれていく。ああ合掌。


 あっという間に囮二人が無残に散ってしまった。待機していた冒険者もバーバチカリサイタルに苦しんでいる。嗚呼このまま二人は戦場の花と散ってしまうのか! いや!
「‥‥は、私は何を。早くお仕事しないと。まあ位置的に危険ですけどきっと避けてくれますよね」
 最後の方が棒読みだったりするようやく現実に帰って来たシシルフィアリスが放ったアイスブリザードがオーク達(+他2名)を襲う。それをきっかけに待機組の攻撃が始まった。
「頑張ってね箭さん、嵐淡さん‥‥」
 凍えた男性陣の無事を祈りつつ、小さな体でエリヴィラは猛然と剣を振るう。たちまちオークやオーガ達が斬り伏せられていく。他の冒険者と比べて若いからと言って油断できないポテンシャルを持っているのだ。
「マ‥‥向コウハ巻キ込ムヨウナマネシナイデショウシ」
 瞳も既に毒に染まったその手を晒しており、敵の射線を考慮に入れながらばったばったとオークたちを倒していく。雑魚の相手をしながらも、その得物を狙う視線は本当の標的から目を逸らすことはない。
「魔力を空にできなかったのは誤算だけど仕方がないですね!」
 オークたちの群れが混乱している隙を突いて雪華は一気に駆け抜け、奥の方にいた最後のRKヴァダーを襲う。ぎょっとしたヴァダーだったがすぐさまその手に持っていた氷の輪‥‥アイスチャクラを使用して作った武器を投擲する。こちらも魔術師らしからぬ武器の扱いだった。雪華の白い肌に赤が走る。だが、傷みを堪えてそのまま前に出――捉えれる位置まで来る。
「やめてヴぁーちゃんに手を上げないで――」
 そこに飛び出すのはアゴーニ。魔力がなくなってしまったため最早こういった形でしか役に立てないと悟ったのか。
 雪華の一撃を受け倒れるアゴーニ。そこに駆け寄るのは守られたヴァーダー。
「ど、どうして!? あなたアタシのこと嫌いって‥‥」
「ホント、素直じゃない自分が嫌になっちゃうわ。アタシ、本当はあなたのことぅぐふぎぇ」
「サッサト片付ケチャイマス‥‥プチット」
 唐突に誰も期待していないドラマが始まってしまうところだったが、あっさりと瞳の一撃をその幕を下ろす。続いて、
「もうやださっさと片付けたいよぉ‥‥魔法使われてもいないのに変な夢見ちゃいそう」
「さっさと気絶させます‥‥南無阿弥陀仏ですよ♪」
「やっぱり妄想より優れた現実など存在しないということで」
 女性陣が本腰入れて退治に走る。エリヴィラのスマッシュは鈍重な敵を打ち倒し、雪華のスタンアタックは眠りに似た終わりを呼び、シシルフィアリスのウォーターボムが爆ぜる。あっというまにオークやオーガは宙を舞い、奮戦するもヴァダーは意識を刈り取られ、そしてやっぱり箭や嵐淡は宙を舞う。
「た、大変だよリアキラ☆5が大ピンチここはやっぱりお互いが触りあう愛情奥義うわぁっ!?」
「アンタモ、コッチデス」
 予想外の敗色に慌てるマスコットのシフールのおっちゃんも瞳の手に落ちオークたちの肉へと沈んでいった。


「そ、そんな、アタシの歌が届いていないって言うの‥‥やっぱりアタシ達は5人揃ってこそ‥‥くっ!」
 粗方片付け駆け寄ってくる冒険者を見て青ざめるバーバチカ。冒険者達の恐ろしさはさっきの戦いで十分見知った。
「‥‥お、覚えてなさい!」
「‥‥う、暗闇?!」
 前方にシャドゥフィールドを放つとすぐさまバーバチカは駆け出す。冒険者が作られた暗黒から抜け出す頃には、既にその姿はなかった。


 こうしてリアキラ☆5との戦いは冒険者の勝利に終わった。リーダーこそ逃してしまったものの、他の者は捕らえることができたのだし、問題ないだろう。あの状況ではむしろ十分だ。それよりもむしろ。
「どいつもこいつも、世界の不幸を根こそぎまとめて叩き込んできやがって!
 いい加減、本気で泣くぞ! 嗚咽するぞ! 慟哭するぞ!」
 と言って魂のシャウトをしたり、
「うぅ‥‥色々捨てるということを見くびってたでござる‥‥」
 と隅の方で打ちひしがれてたり者へのケアが必要な気もするが、残念ながらそれはまた別の話。