『オークを従えし魔物 2』
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■ショートシナリオ
担当:凪
対応レベル:1〜4lv
難易度:難しい
成功報酬:1 G 30 C
参加人数:12人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月15日〜09月23日
リプレイ公開日:2004年09月24日
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●オープニング
江戸から北へ三日ほど進んだ山間の渓谷、深夜、谷川のほとりで一人の女性が水を飲み額の付けられた傷を濡れ手ぬぐいで癒していた。彼女はジャパンに置いては珍しく2mの巨躯に西洋甲冑を着込み、クレイモアを帯剣した西洋風の出で立ちであった。それだけでも珍しいのだがその肩には一匹のシフールと従えており、そしてなによりその背後には数匹をオークまでもを従えていた。
彼女はこの辺では名の知れた山賊である。
山賊が山に出るというのは、田舎の町では早々に珍しいことではない。
浪人崩れ、冒険者崩れ、そんな連中が食うに困って山賊を働く、そんなことは日常的に起こりえる事だからだ。
しかしオークを従えた山賊、ましてや西洋甲冑に身を包んでいると言うのは殆ど例が無かった。それ故にその噂はたちまち近隣に広まり、そのウワサを聞きつけた冒険者と一戦交え、彼女は手傷を負って逃げていた。
「まさか冒険者があれほどの腕前とは‥‥これはどこかで再起を図る必要がある‥‥」
彼女はそう言ってはっと、当たりを見回した。川の向こう側に人の気配を感じたからである。それが人なのか、モンスターなのかは分からないが。
「大丈夫? 私が見てこようか?」
シフールの娘はそう言って川の向こう側へとすぃ〜〜っと飛行しそしてそそくさと戻ってきた。
「大変、アリサちゃん。向こうに人じゃないけど人が倒れてる」
アリサとは西洋甲冑に身を包んだ娘の名前である。
余談ではあるが、シフールの娘の名はララディと言う。
銀色の髪をツインテールに纏め、白いブラウスに黒いスカート。黒いリボンで髪を纏め、黒いリボンで首元を縛っている。西洋風の出で立ちのシフールである。
アリスはララディに言われるままにして河を渡った。鎧を着ていることが幸いして、川に流されることは無かった。
彼女が見つけたのは、自らと同じように西洋甲冑に身を包み、右手にはハルバードを左手にはヘビーシールドを装備した全身傷だらけに成って倒れているバグベアであった。
そっと近寄るふたりに対してバグベアはうつろな瞳でジッと見つめた。
「人か‥‥私も年貢の納め時の様だな‥‥(バグベア訛りのオーガ語)」
バグベアの言葉を(オーガ全般の言葉を)理解出来るシフールは通訳に入り、ふたりの中を取り持った。バグベアもまたオークを従えた山賊まがいの行いをしており、冒険者に打ちのめされて谷底に転落したのだと言うことを。
「ならばバグベアよ。私に手を貸して欲しい。もう一度山賊として成り上がる為に、一緒に徒党を組み、冒険者達に一泡吹かせてやろうではないか?」
アリサの言葉にバグベアは深く静かに首を縦に振った。無論シフールの通訳があったればこそではあるが。
「オレの名はリキロス。リキロスと呼んでくれ相棒」
そう言って手をさしのべたリキロスの手をアリサはしっかりと握りしめていた。
いつしかオーク達が集まり喚起し、涙し、拍手が谷底で木霊していた。
それから数日後。半ば傷の癒えていない2人ではあったが、6匹のオークを従えて、近隣の村に襲撃をしかけ、村長(むらおさ)の家を占拠し根城にし、村長の一人娘を人質に取って村に立てこもっていた。
偶然にも収穫されたばかりの大量の米が村長の家の倉には蓄えられていたこともあり、オーク達一行は粥を作って質素ながらに暖かい生活を送っていた。
「すまないな娘さん。アンタに悪気は無いのだが、冒険者を呼び出すダシに使わせてくれ」
アリサはそう言って村長の娘を人質にして村長の家に立てこもった。
村長の娘お由美は縛られる訳でもなく、オーク達の食事係として働かされていた。
もちろん見張りは付いているが。
「実はワシも村々を襲ったときに村長の家に立てこもって、村長の娘を人質に冒険者を呼び寄せたことがある。お互い考える事は一緒なのかも知れないな」
バグベアの言葉に微笑を浮かべるアリサ。
アリサとリキロスの(ララディが通訳に入っているのだが)会話を聞きながら、震えながらにして村長は固唾をのんでいた。
「村長よ悪いがこの村は我々が占拠した。返して欲しくば冒険者を雇って、我々を追い払うんだな、私たちは冒険者に恨みがある。そう、冒険者に付けられた傷の痛みがな」
それから程なくして村長が冒険者ギルドの扉を叩いた。
どうか、娘を助けてください。どうかモンスターを追い払ってください‥‥っと。
●リプレイ本文
●戦いの序曲
静まり帰る小さな町。
村長の家の入り口でアリサとリキロスは鎧に身を包み静かに佇んでいた。
つかず離れず。それが彼らの今回作戦らしい。
アリサに対して、礼月匡十郎(ea1352)が静かに拳を振るう。
恋にも似た動機が彼を襲うが彼はそれに気づく気配はない。
無論アリサにもそれに気づく事はない。
肉弾の拳は鎧の上から彼女の身体にヒットする。
数発は避け、数発が鎧にヒットする。その機敏な動きに多少の困惑を見せる匡十郎。
多少のダメージは与えたのか、それとも鎧に全て吸収されてしまっているのか、それは分からない。分からない故に拳を止めることはなかった。
「ふぅ、なかなかやるな」
彼女はメタルロッドの攻撃を拳の攻撃をその鎧で受け止めている。
ダメージを与えているのかどうかは、兜越しの顔からは見て取れない。
「オマエハいつぞやの葉亜舞鬼ではないか」
河島兼次(ea2900)剣を抜き前に出る。
「葉亜舞鬼が何なのか私には分からないが、私の名はアリサだ。憶えておけ」
そう言ってアリサはクレイモアを一降りした。
その一撃に匡十郎は吹き飛ばされる。
剣を振り下ろした隙めがけて、兼次の刀が振り下ろされる。
鎧の上から鈍い音がして、彼女の表情に苦痛が浮かんでいるのが分かる。
そんな彼女の顔に向かって、ゲレイ・メージ(ea6177)のウォーターボムが直撃した。
炎が剣に纏われる。それは破壊の為の布石である。
岩倉実篤(ea1050)が剣を抜く、その刃はリキロスの鎧の隙間を狙った一閃である。
炎に包まれた刀の一撃が鎧の隙間を突き、リキロスを襲った。
「グガ、おのれ人間風情が!?(オーガ語)」
痛みの走る中でハルバードを横薙ぎに振る。岩倉はそれは剣で受け流す。
三菱扶桑(ea3874)がそのふたりの間に割って入る。
岩倉がやむなく刀を止め、三菱の動きを窺う。
三菱はぎこちない動きで至近距離戦闘を試みていた。
相手との距離を零にして動けば相手に攻撃されないであろう事が彼のねらいだ。
ハルバードの動きに合わせてぎこちなく動く彼であるが、スタックを習得している訳ではない。
リキロスと岩倉の間に入り、戦闘のじゃまに成っている程度である。
しかも至近距離戦闘に不慣れであるため、自らも剣を振るう事が出来ないのである。
「この中で一番の驚異はその炎の剣か‥‥ならば‥‥」
アリサがリキロスの前に踊り出し、岩倉に倒して、大きく重い一撃を振り下ろす。
岩倉がそれを剣で受け止めた‥‥びきり‥‥鈍い音が聞こえる。
受け止めた剣のつば物に数センチの亀裂が入る。
半歩後ろに下がって状況を確認する岩倉。
どうやら武器破壊技を交えての一撃だったらしい。
やむなく剣を捨て、素手で闘う事を余儀なくされる岩倉。
クローディア・ルシノー(ea5906)が今度は岩倉の拳に火を付ける。
それでも、戦局はややアリサ優位の状態で動いている。
リキロスの渾身のヒザが三菱のボディに炸裂したのは、それからまもなくの事であった。
●人質救出?
建物の中にひそむオーク。鉄弓を持ったオークそして、ララディ達をどうにかして人質を救出しなければならない。今回の任務の重要点は人質救出なのである。
弓持ちのオークの頭の上でオーク達に陣頭指揮を執るララディ。それを知ってか知らずか、ララディとオークを退治する別働隊が屋敷の中にやってくる。
「ごめんなぁ、ねぇちゃん。来ないな事に巻き込んでしもうて」
町長の屋敷の裏庭にて陣頭指揮を執るララディ。
槌持ちのオークが3 斧持ちオークが1 ムチ持ちのオークが1 弓持ちのオークが1 の計6匹のオークがうごめいている。下手な冒険者でも近づかない集合体である。
暁峡楼(ea3488)が忍び足でゆっくりと近づいてくる。それに反応して、一匹の槌持ちオークを向かわせるララディ。1対1の戦いが好みらしい。いや、正確にはララディは他人が闘っているのを見物するのが趣味な様だ。
華麗な蹴りがオークを襲う。オークがひるんだところをナックル付きの拳が襲う。
「本当なら弓持ちオークを倒したかったんだけど‥‥しかたないわね」
そう言って彼女が槌持ちオークに鳥爪撃の重い一撃を放つ。だがそれとほぼ同時に彼女の太ももにオークの槌がヒットする。重い一撃。一瞬で中傷にいたるダメージ。お互いがお互いの一撃でほぼ相打ちの状態に陥る。
形勢を見て取るともう一匹の槌オークを暁峡楼へと向かわせるララディ。
負傷した上に2体1(オークも負傷しているが)それを見かねてジェガン・アルバトロス(ea6496)が飛び込みスマッシュEXをオークに放った。
オークはそれを深く静かに見定めて回避する。
地面に日本刀が突き刺さる。そんなジェガンの脇腹に一本の矢が突き刺さった。
弓オークが、そう、ララディの乗った弓オークの放った一撃が彼の身体にヒットしたのである。
「そうは問屋がおろさへんで」
水無月怜奈(ea6846)が走り込んで行く。
ララディの乗った弓オークにまっすぐ直線的に。
だが、それを守るようにして斧オークがその直線を埋める。
弓オークが最初に襲われることを予想し、斧オークをガードに回らせていたのである。
「くっ、じゃまやどけー」
刀を振る。そしてオークの斧を受け止める。
斧につばは無いが、鍔迫り合いがギリギリと行われる。
オークの身長は2m。ゴブリンとは比べ物に成らない戦闘力を有している。
パワーで押されてジリジリと劣勢になる水無月怜奈。
オーク側でも劣勢。アリサ側でも劣勢を極める冒険者達だが、その隙をつき、ティーゲル・スロウ(ea3108)が人質を救出した‥‥そして。
アオイ・ミコ(ea1462)とカシュウ・ラード(ea6268)が空中からララディに襲いかかった。矢をダブルシューティングで投げつけ、それを避けたララディを捕まえ、そしてそのまま彼女の両手を糸でグルグル巻きにして部屋の中に連れ込んでしまったのである。
「えっ!? いや、何をするの!?」
ララディがバタバタと身をよじって逃げようとするが、彼女の上にアオイ・ミコが馬乗りになり、その両足をカシュウ・ラードが押さえつけているため、逃げ出すことが出来ない。
「まじかる薬師アオイミコのおしおきターイム♪ 先ずは首筋にガマの油!!」
売り物にしているガマの油を使ってぬるぬるした液体を服の下に塗り込みんでゆく。
「あぁ!? 私そう言うHなのは苦手なの‥‥。だめ‥‥やめて‥‥ン‥‥」
ララディの身体にガマの油を塗り込んで行くアオイ・ミコ。ぬめぬめぬるぬるした物がララディの身体をアオイの手を共にうごめいて行く。ララディが甘い悲鳴を上げる。
だが、アオイの手は止まらない。
ララディのストッキング、スカート、靴を脱がして、ガマの油を塗り込みくすぐり攻めにするアオイ。身をくねらせて、抵抗するララディだが、むなしくもそれは空回りする。
「あぁ、ダメ〜。やっ、本当にダメ。アッアッアッ、あくぅ〜ん」
くすぐられ、塗りたくられて、息絶え絶えに成るララディ。
彼女が暴れたことにより、部屋の中のあかりのロウソクがコトリと音を立ててふすまに倒れる。
「あっ!!」
3人が同時に悲鳴を上げた。
ロウソクの炎は障子に移りみるみるウチに巨大な炎に成る。
●火消し
アリサとリキロス優勢のままに戦闘を繰り広げていた冒険者達であったが、建物から上がった炎に目を丸くした。そしてさらに驚くことが起こった。それはアリサとリキロスが建物を破壊して、火を消そうと動き出したことである。
「何してるの、早く火をけしてー」
アオイの言葉に冒険者達は皆一斉に建物へ攻撃を仕掛け火を消してゆく。
何とか建物の1/3を破壊し、火を消した後に、皆息絶え絶えの状態でその場に座り尽くしていた。
「まさかオマエが人の為に剣を振るうとは思わなかったぞ」
兼次の言葉にアリサは照れくさそうに微笑を浮かべた。
「私だって好きで闘っている訳じゃない。冒険者が襲ってこなければ、私たちだって静かに暮らしたいと思っているさ。だが、生きて行くには金がいるし、私はこいつらの面倒を見なきゃ行けないんだ」
そう言ってアリサはオーク達とララディを指さした。
「ならばもう人を襲うのは止めろ。そうすれば我々もこれ以上おまえたちに刃を向けることは無い。せめて静かに山奥ででも生活してはくれないか‥‥」
兼次の言葉に静かに首を縦に振るアリサ。
雨降って地固まるとはこのことを言うのだろうか。
「人間に諭されるとは思わなかったな。分かった。これからは静かに、山の中で縄張りを守って生きていくよ。今までに溜め込んだ金もある。山賊や野武士は殺してもかまわないんだろう?」
アリサの言葉に兼次は静かに苦笑した。それを見ていたララディとあおいも笑いを浮かべる。
「ねぇちゃん。困ったことが有ったらいつでも言ってくれ。力になるぜ」
礼月匡十郎の言葉にアリサは静かに微笑を浮かべた。
かくして、因縁めいた戦いに終止符は打たれた。
アリサはリキロスとララディ。オークを引き連れて、オーク達の縄張りとしている山へと帰っていく。これからは静かに今後の人生(?)を送っていくだろう。
彼らの休息がまさか短い物に成ろうとは、このときの三人にはまだ分からなかった。