『山賊退治? 2』
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■ショートシナリオ
担当:凪
対応レベル:1〜4lv
難易度:難しい
成功報酬:1 G 4 C
参加人数:12人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月20日〜09月28日
リプレイ公開日:2004年09月29日
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●オープニング
江戸から北へ3日ほど進んだ山奥で、密やかに山を掘るドワーフ達のキャンプがあった。人立ち寄らぬ静かな山の中腹で、良質の鉄を求めて、人知れぬツルハシを振るい、スコップを使って土を掘り出す彼らは、山師であり、掘り師であり、鍛冶師である。そう、彼らは良質を鉄鉱石を求め、そこから鉄を作り作品を作り出す、生粋の名工達なのである。
彼らは村長と領主の許可をもらい、良質の鉄鉱脈を求めて山に住み込んでいる。
3人のドワーフと1人の人間の女性の4人組は、山の中腹の平坦な場所に、ゲルと呼ばれるテントを張り、何日にも渡って泊まり込み、良質の鉄を求めて山を掘っていた。
「今回は豊作だな。このジャパンと言う国はこんな鉱脈に手を付けないなんてなんてもったいない」
そもそもジャパンの鉄の精製方法はタタラ鉄製法である。
砂鉄から鉄を精製するジャパンの人間にとって鉄鉱石を掘ると言う事はなじみがない。
逆に彼らは鉄鉱石を掘り、そこから鉄のインゴットを精製し、インゴットを用いて刀に鎧に加工するようだ。それでも良質な鉄鉱石を探すのは非常に困難で難しい。良い鉄インゴットを作るためには、良い鉄鉱石を掘り当てなければ成らないのである。
簡易版の炉を用いてテントの近くで鉄鉱石を溶かし、鉄を精製するドワーフたち。彼らの食事は山の麓で買い出しをしてきたうどん・里芋・にんじん・カボチャ・ネギ・こんにゃく・あぶらあげ・しいたけ・それにニンニクなどを鍋に入れてみそ味と醤油で味付けして煮込みんだうどん鍋である。標高があり、肌寒い山の上では、鍋は一番のごちそうである。ジャパンでの彼らの生活も結構長かったりするのである。
干し肉片手にうどん鍋(ほうとう)を囲むドワーフ達。
「どうでも良いけどここの山も山賊が出没するらしいですよ。気を付けてくださいね」
食事を作る娘、お静はそう言ってドワーフ達にそれとなくオークが出ることを継げた。
最近オークが村々を襲っているとう話は良く耳にする。だが、せっかく見つけた鉱山を諦める訳にもいかない。
「なら‥‥また冒険者を雇うか‥‥ちょっと懐に痛いがまぁしたかあるまい」
ドワーフの一人がそう言ってうどん鍋をズズっと啜りこむ。
「まぁ最悪現物支給でも良いだろう? このできたてほやほやの野太刀を一本プレゼントするというのはどうだ?」
そう言ってドワーフ達の一人が西洋鎧や武者鎧の並ぶ中から、一本の野太刀を取り出した。
それは見るも鮮やかな店に並べてもおかしくない出来映えの野太刀である。
「試作品だが出来も良いし問題ないだろう? 付けちゃえ付けちゃえ」
程なくして冒険者ギルドに依頼が届く。
『 山に出没する山賊達を何とかしてください。 』 っと
●リプレイ本文
●ゲルでの食事
誰が言い出したのか知らないがその立案はあげられた『全員が二手に分かれ、街道の左右の山道を捜索しながら進もう』そしてその通りに事は進む筈だった‥‥。
彼らに足りなかった物。それはチームワークだ。誰が右に行き、誰が左に行く。誰と誰がコンビを組んで、誰の先頭に立って進んでいく。そんな話合いは成されなかったのだ。
道を挟んで右へ左へ、うねうねと蛇行する山道をそれとなく捜索した。
結局の所山賊らしき人影も山賊の根城らしき建物も発見出来ぬまま、目的のゲルに到着してしまった。
ゲル(ドーム型テント)は4人で住むにはとても大きく、直径が12〜15m程もある。
トイレと炉はゲルの外に有るが、テントの中は板張りで、中央にはいろりが有り、そのいろりを囲んで生活を行っているらしい。中央に柱は無く、トルコ式ゲル(通称:ゆるた)の作りをしたそれは竹の骨組みの上に防水布をかぶせたテントである。荷物は雑多に並べられており、精製された鉄のインゴットや完成された武器や防具、食料や水の入った木箱や樽、酒の入った瓶なども壁にそって並べられている。
天井はやや高く、それでいて壁紙には日本独特の模様などが用いられている。
おそらく日本の古民家や武家屋敷を参考にして内装に手を加えたのであろう。どことなく納得のいかない掛け軸や、何故有るのか理解に苦しむ屏風。さらには部屋の中には畳敷きに成っている場所まであるのだから理解に苦しむ。
「皆さん。良くいらして下さいました。私がこのゲルの長(おさ)の岩乃富(いわのふ)です。こうして沢山の皆さんに来て頂いて、私は大変満足しています。きっと山賊が出なかったのも、皆さんにおそれを成してのことでしょう。私たちは山賊がどうなろうと問題では有りません。無事に山師の仕事が出来ればソレでよいのです。そう言った意味ではもう仕事の半分は終わってしまったかも知れないでしょう。どうぞ食事をお楽しみ下さい」
不思議な言い回しと文法でジャパン語で話をするドワーフ。
もちろん彼がジャパン人で無いことは一目瞭然である。
っと言うか、元々ジャパンはドワーフ居ないし(笑)
「それならありがたく頂くとしよう。儂はガフガート・スペラニアスじゃ。鍛冶のついでにファイターなんぞなったが、まぁよろしゅうの。」
今回の冒険者の中の唯一のドワーフ、ガフガート・スペラニアス(ea1254)がほうとう鍋をどんぶりに受け取りハシを使ってハフハフとすすりこんでゆく。月道でジャパンに来たばかりの彼に取ってその食事はとても珍しくそれでいて格別の物であった。
「私も頂こう」
風間悠姫(ea0437)がうどんを啜る。ジャパンの人間なら誰しもであるが、うら若き女性が食事をするのが珍しいのか、それとも何かを感じているのか、ジッと彼女の顔を見つめるイワノフ。そしポンッと手を叩くと一人の男性を指さした。
「僕‥‥ですか?」
加藤武政(ea0914)が呼び出され風間悠姫の隣に座らされる。ほうとう鍋を椀で受け取り、それを啜る。女性と肩を並べて食べるのは久方なので少々頬が赤くなる。
「憶えているよふたりとも」
そう言って湯飲みにどぶろくを注ぐイワノフ。そしてふたりにそっとそれを差し出した。
「羽を伸ばすのは良いけど、帰りの囮作戦、忘れないでくれよ?」
鷹城空魔(ea0276)がそう言って椀に盛られたうどんをずるずると啜っている。
行きの探索では失敗したが、帰りの囮作戦まで失敗すれば面目丸つぶれである。それだけは避けたい。
「大丈夫忘れては居ない‥‥が、私は拠点のこのテントを警護する。街道の方は任せる」
そう言ってうどんを啜るのは鬼剛弁慶(ea1426)。ジャイアントの浪人でスマッシュの使い手である。彼は攻めることよりも守ることが大事だと考えているようだ。
「これ、美味しいね。ジャパンの食べ物なの?」
ほうとうを食べたことのないシフールのレジーナ・レジール(ea6429)がずるずると椀でうどん鍋を啜りこんでいく。確かに美味い、手打ちの麺がみそ味とあいまって何とも言えない味を醸し出している。
「そうか、美味いか。そうかそうか、沢山食べてくだされ。お替わりは沢山あるでな」
そう言ってイワノフがレジーナにうどんをたんまりよそってやると、彼女は嬉しそうにソレをガツガツと頬張って食べていった。
「レジーナ、そんなにがっつくと喉に詰まらせるぞ」
世話焼きなのか藤友護(ea0442)がレジーナの面倒を見ながらうどんを啜る。
皆うどん鍋にうかれている訳ではない。戦いの前の静かなくつろぎなのである。‥‥たぶん。
「帰りは、警護役として行動する安心してくれ。空魔」
出されたうどんをぎこちなく食べる。西中島導仁(ea2741)彼は何かを誘ったようにしてうどんを啜る。
「こんな所に住んでいて寂しくないんですか?」
世羅美鈴(ea3472)がうどんのお代わりをもらいながら質問する。イワノフは照れくさそうにしながらその質問に答えた。
「寂しいと思ったことはないな。時折君たちの様に来訪者が来るし、酒も有る。仲間も居る。それだけで満足しているよ」
そう言って杯に入れられたどぶろくをグイと飲み干した。
「落とし作戦についてなんだけどけど‥‥」
日向大輝(ea3597)が話を切り出そうとしたときに時は既に遅かった。
うどん鍋とどぶろくを勧められるままに受けていた皆はすっかり出来上がっていた。
『寒い山奥では美味い鍋とうどんと酒に限る』のだそうな。
「野太刀、私も欲しいわねぇ」
アイーダ・ノースフィールド(ea6264)がグイグイと酒を飲みながら、くだを巻く。
「分かった次にまた依頼を出すときにはお願いするよ」
なだめ、すかし、酒に悪酔いしているアイーダを横目にしながら、イワノフは接客を続けていく。
「所でねぇちゃん良いからだしてるなぁ」
鹿角椛(ea6333)の全身を舐めるようにして、イワノフが見つめている。
その瞳に少々酔いどれの上着をするりと脱いでその身体を披露した。
うむ。しなやかですばらしい。この鎧をオマエにやろう。ご褒美だ
そう言ってイワノフは彼女にしっくりとした鎧を一つプレゼントした。
「ありがとう。おじさん」
気を良くしたのか、そのままぎゅっとイワノフを抱きしめる鹿角。
一晩の楽しいうどんパーティの末に冒険者達は家路につく。
結局山賊には会うことは出来なかったが、その日の夜から山賊が山に出没するという話はぴたりと止まった。コレも冒険者効果と呼んで良いのだろうか。
どっとはらい。