『謎の温泉教団の温泉宿4』

■ショートシナリオ


担当:

対応レベル:1〜4lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 30 C

参加人数:15人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月01日〜10月09日

リプレイ公開日:2004年10月07日

●オープニング

●秋晴れの朝突然の出来事
 晴れた空。秋空が綺麗な紅葉の季節。
 謎の温泉教団の温泉宿でも紅葉が綺麗な季節に成りました。
 相変わらずの説明で申し訳ないが、謎の温泉教団は、八百万の神を信仰する宗教団体で、温泉には神が住んでおり、温泉に入ることが教義と成っている団体である。
 温泉に入るための礼儀作法には厳しいがそれ以外はおおむねざっくばらんである。
 彼らは温泉寺に住み、檀家の者達も温泉へといざなう。
 温泉寺の裏はもちろん温泉である。温泉に入り身体を癒し、心を癒し、平和に生きていこうと言うのが彼らの考え方である。
 石灯籠の明かりの中でのんびりと温泉に入るのが彼ら流のやり方だ。
温泉脇には屋台が数軒並んでいる。甘酒や蜜柑酒、冷えた瓜や無花果などが売られている。

 秋の味覚松茸も、裏山のでたんまりと取れ、甘酒を片手に土瓶蒸しを楽しむ人達、山の清流で取れた虹鱒を使った鱒寿司に甘美の声を上げる者達、鯨肉のステーキ丼を笑顔で頬張る人達。野生の黒豚の肉で作った焼き豚(串焼きの様な物)を頬張り満面の笑みをあげる物達、謎の温泉教団の温泉宿は温泉を楽しみながら紅葉と食欲の秋を満喫する人達でいっぱいであった。
 無論温泉と女体を楽しむ者達も多い。
 うら若き乙女によるマッサージのサービスを堪能することも出来るサービスや、真夜中に女性従業員の入浴を覗くことが出来る覗き部屋なども好評で連日連夜客足の絶えない状況が続いている。
 竹林の温泉の中では竹のニオイ香しく温泉を満喫することが出来る。温泉宿としては大繁盛を納めていた。連日連夜の満員御礼に嬉しい悲鳴は鳴りやまなかった。
 現在別館を新設中であり、こちらが完成すれば更なるお客の獲得に乗り出せるだろう。

 春夏秋冬を楽しみながら温泉教団は温泉と嗜んでいた。そんなある日の事である。

「頼も〜う。誰かいないのか〜。頼も〜う」
その日謎の温泉教団の温泉宿の門を叩いたのは一風変わった人達だった。
 全身を西洋鎧に身を包み、腰にクレイモアを携えた身長2m程の女性。
 全身西洋甲冑に身を包み、ハルバードと巨大な楯を携えた身長2m程の男性。
 全身ガマの油にまみれながら、フラフラと飛んでいるシフール(女性)
 そしてオークが6匹ほど‥‥‥‥‥‥オーク!?

 仲居さんが顔を引きつらせながら接客している。
「金を払えば客だろう。魔物といっても差別してもらっては困る。私を含めて9名程。皆身体のあちこちに傷が有ってね。湯治に来たんだ。ヨロシク頼むよ。あっそれから私とシフールのララディ以外は人間の言葉が分からないから、シフールのララディを通して注文が行くと思うのでそこの所ヨロシク頼むよ。」
 そう言って彼女アリサは普通よりずっと多めの料金を支払った。
「小判を‥‥こんなに‥‥」
 仲居さんの顔色が変わる。
「‥‥はい、温泉教団には温泉に関する取り決めが有りまして、それさえ守ってもらえれば、人間でもジャイアントでもドワーフでもシフールでも豚鬼でも皆フレンドリーにやっていきたいと思っております‥‥‥‥」

 案外あっさり彼らはお客として受け入れられた。

 こうして前代未聞のモンスターが温泉宿に泊まると言う珍事件が発生した。
いや、いつも珍事件が発生してる温泉教団では日常茶飯事かもしれないが‥‥
「まぁ褌集団が岩場の上から飛び込んでくるよりはマシですやろ。取りあえず冒険者でも雇って一緒に泊まってもらって、何か問題が発生したら止めてもらえば良いでしょう」

 相変わらず困ったことが有ったら冒険者と言う発想はそのままらしい。

かくして、前代未聞の依頼は発生した。
『オーク達と温泉宿に泊まって問題が起こらないように警護してほしい』っと言うものだ。
 もちろんお客様なので余り迷惑に成らないようにさりげなく‥‥っだそうな。

 果たして一体全体どうなってしまうのであろうか‥‥。

●今回の参加者

 ea0238 玖珂 刃(29歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea0243 結城 紗耶香(29歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea0264 田崎 蘭(44歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea0299 鳳 刹那(36歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea0758 奉丈 遮那(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea1347 李 鈴華(19歳・♀・武道家・シフール・華仙教大国)
 ea2948 如月 妖乱(34歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea3535 由加 紀(33歳・♀・忍者・パラ・ジャパン)
 ea4083 橘 雪菜(32歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea4599 燎狩 都胡(26歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5209 神山 明人(39歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5989 シャクティ・シッダールタ(29歳・♀・僧侶・ジャイアント・インドゥーラ国)
 ea6000 勝呂 花篝(26歳・♀・浪人・パラ・ジャパン)
 ea6158 槙原 愛(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea6333 鹿角 椛(31歳・♀・志士・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●夜のとばりの中で
 夕日が西の山に沈み、黄昏れる時刻。
 石灯籠に火が灯る。屋台の提灯にロウソクの明かり灯る。
 昼のお客様がお宿で酒盛りを始める頃。夜のお客様である信者達が岩風呂へと足を運ぶ。
 現在温泉は竹林温泉と岩風呂の二つが存在するが、深夜の竹林温泉は覗き部屋のお客様用のサービスアピールとして、深夜の岩風呂は信者の方の入浴用として解放されている。
 だが、今回はオーク客と言うトラブルの種を招き入れたため、彼らには深夜までの間の夜の岩風呂を解放し、そこへと誘った。もちろん冒険者も一緒である。
「私はオーク達がトラブルを起こさないように、一緒に泊まってもらって、オークから警護して欲しいとお願いしております。お客として皆さんに泊まってくれとは言った覚えはないんですか‥‥」
 お客気分で依頼を受けていた冒険者達に取りあえず釘を刺し、彩花は仕事へと戻っていった。
 部屋を用意され、食事を用意され、酒も用意されてる。客と変わらないのは依頼料が入る事くらいなのだが。
「まぁそれはともかくいっぱいやろう。せっかくの振舞酒を飲まないのは申し訳ない」
 田崎蘭(ea0264)がそう言って、どぶろくの入った2合徳利と杯を両手に岩風呂へと足を運ぶ。全裸、普通なら前を隠すのだが、彼女にその思考は無いらしい。両手は酒で埋まっている。
 さらにお湯に浮かべる大きな桶とどぶろく2合徳利3本を抱えて、鹿角椛(ea6333)が付き従う。こちらも両手に荷物で前を隠す余裕は無いようだ。
「おや、先客さんがおられる様で‥‥失礼しますよ」
 森の動物と言って良いのだろうか、傷だらけの猪が頭に手ぬぐいを乗せて湯の中に居る。
 首までお湯に浸かり、目を細めてゆっくりと温泉と堪能している。
 鹿角椛はかけ湯を浴びて、ゆっくりと湯船に入って温泉の満喫した。
 元々岩風呂のお湯の温度は低く40度前後を保っている。長時間の入浴でじっくり身体を温めるの為の物である。ふたりはお互いに杯を交わしのんびりと湯の中でどぶろくを呑み交わしながら、石灯籠の明かりの中で温泉を満喫していた。
「やっぱり、風呂の中で飲み交わす酒ってのは最高だね。椛の字」
 鹿角椛が杯一杯飲む間に田崎蘭は杯三杯を飲みほす。そのペースは速く、すっかり出来上がっている。そして、徳利二つを空けた時点でようやく先客が居る事に気がついた。シフールである。
 シフールが猪の肩の上に座り、耳元に寄りかかりながら温泉に浸かっている。頭にはシフールサイズの手ぬぐいを乗せてのんびりゆったりといった感じであろうか?
「おう、丁度いいところに。どうだい、一杯やらんか?」
 田崎蘭がシフールに杯を進める。シフールは猪になにやら耳打ちすると、猪の顔がそっと杯に近づく鹿角椛はそのまま杯を猪の口に持って行くと、猪にどぶろくを飲ませてしまった。
「見境ないですね。蘭さん」
 鹿角椛があっけにとられてそれを見つめる。蘭はそれを気にすることなく何杯もの酒を猪に進め、猪はそれを断る事無く飲み干して行く。心なしか猪の頬が赤く成った様にも見える。それが、酒で赤くなったのか、胸を露出している二人の美女による物なのかは分からないが。
「失礼する」
 その言葉と同時に、湯気の向こうから身長210cm程の巨躯の女性が姿を現した。
 女性としては美人の部類に入る顔立ちだが、筋肉質、全身傷だらけの女性である。よく見るとそれは刀傷であることが見て取れる。
 彼女は湯を浴びると、静かに湯船に身を沈め、『ほふぅ〜』と息を吐きながら湯に浸かると、こちらの方へとゆっくり近づいてきた。
「美女に囲まれて、嬉しそうだな。リキロス」
 言葉を受けてすっくと猪が立ち上がる。だが、それは従来の猪の姿ではなかった。
 首から下は熊。首から上は猪の出で立ちはバグベア。そう、オーガ族の熊鬼である。
「ありゃアンタがリキロスさん? これは気が付きませんで」
 胸を露わにした状態の2人が状況の変化に驚きを見せる。リキロスは二人の胸に目線を流し、少し頬を赤らめながら、湯から上がると、洗い場の方へと足を進めていった。
「彼、結構人間の女性とか好きみたいなのよ。良かったらつきあってみる?」
 アリサの言葉に田崎蘭と鹿角椛の二人は微笑を浮かべた。

「アリサさんは何でオークを連れて温泉なんかに来たんですか?」
 アリサに質問するのは結城紗耶香(ea0243)と玖珂刃(ea0238)。二人は恋人同士。二人は温泉を嗜みながらアリサが何故ここに来たのかその目的を聞き出そうとしていた。
「理由は2つ、一つは帰り道だったから、もう一つは戦い続けて身も心もボロボロに成った仲間達に一時の休息を与えたかったからだ」
 そう言ってアリサは微笑を浮かべた。彼女はオークを仲間と言った。そう彼女に取ってオークもバグベアも仲間なのである。それは一般人には理解出来ない思考である。
 やがて6匹のオーク達が温泉へと入る。
 そしてゾロゾロと湯船に向かって歩いて行くオーク達。それを燎狩都胡(ea4599)が言葉で制する。
「あーっ、だめだめ! お風呂つかるときは掛け湯して、体を軽く洗ってからて決まってんの! ちゃんと泡も落としてね。お湯が毛だらけになったら、次の人が困るでしょ? 温泉は、次のひとのことも考えて入るん! わかりましたか? (えっへん)」
 言葉は通じていないが、声をかけられたので動きが止まるオーク。通訳のララディがオーク達に耳打ちをすると、オーク達はマズ身体を洗うべく洗い場の方へと向かった。
「はーい、オークちゃん達ぃ背中を洗いますよ〜」
 湯女としてオーク達の背中を流す鳳刹那(ea0299)。
 彼女の姿が超過激な露出服で、袖のないへそを露出した前閉じタンキニ風の上着と超ミニの巻きスカートだけである。しかも布が薄く、お湯に濡れてピンク色の肌が布を通してすっかり見えてしまっている。有る意味とてもエロティックである。下着は着けていない。
 ゴシゴシとオークの背中を擦る刹那。オークは黒い肌の者、ピンク色の肌の者、茶色い肌の者の3種類が存在しているが、どれも全身に体毛を生やし、いわゆる豚と同等の肌をしている。有る意味洗いがいのある存在である。
 勝呂花篝(ea6000)も同様の服装でオーク達の背中を洗う。
 泡が立たない位に汚れた身体を洗っているために、垢擦りが垢で一気に埋まって行く。
「それでは私もお願いしようか?」
 洗い場にどかっと座るアリス。筋肉質で全身刀傷だらけではあるが、それなりに女性っぽい身体をしている。よく見れば黒髪と黒い瞳が美しい。
「はいはい、喜んで、マッサージもさせてくださいね」
 そう言って花篝がスノコに寝かせたアリサの身体を手ぬぐいでゴシゴシと洗う。アリサは何処を触られても無抵抗。おそらく他人に背中を流してもらうなどと言う経験は初めてなのだろう。
「はい、それじゃマッサージするので裏返ってくださいね」
 うつぶせから仰向けにアリサをひっくり返し、胸をまさぐる花篝。筋肉質で鳩胸ではあるが巨乳‥‥いや爆乳‥‥いや魔乳。バスト130cmの豊満な胸をゆっくりと優しく揉みほぐす。
 彩花に身体で教えてもらったマッサージを我流で練習といった感じであろう。
「アリサ‥‥さん」
 マッサージを受けているアリサに橘雪菜(ea4083)が話しかける。
「ごめんなさい。私たちは旅館の経営の為に‥‥沢山のオークを倒してきました‥‥ひょっとしたらアレはアリサさんの縄張りだったのでは‥‥」
 おそるおそる質問をする雪菜。アリサはマッサージを受けながら、静かに答える。
「そうかも知れない‥‥がっ、私は、この近くの山々を縄張りにして、オーク達と山賊家業で生計を立てて来た‥‥。おまえたちがオークを倒している以上に、私は冒険者や商人達を倒して来た‥‥と思う。出来る限り殺さないようにと心がけて来たが、そんな物は言い訳でしかない。所詮この世は弱肉強食、弱者が強者に淘汰されるのは仕方がないことさ。お前達に負けたオークは、お前達より弱かった。それだけの事さ」
 そう言ってアリサは静かに微笑を浮かべた。その胸には花篝が顔を埋めているが‥‥。
「貴方結構いい人なんですね。ちょっとビックリです」
 シャクティ・シッダールタ(ea5989)は温泉上がりの火照った身体でアリサと話をしてみた。シャクティの瞳には彼女は悪人には映らなかった。なぜなら彼女の言葉には嘘が無かったからだ。シャクティも裸。彼女も裸。そしてお互いの言葉も嘘のない裸の言葉。それがシャクティの豊満な胸には心地よかった。おなじジャイアントと言うことにも親近感が湧いたのかも知れない。

「がま‥‥おふろ‥‥」
 身体の洗い終わったオーク達がお湯に入る。それを見張っているのは由加紀(ea3535)。大ガマの術で召還したガマと一緒にのんびりと温泉の湯に浸かる由加紀。そしてガマと肩を並べて6匹のオーク達が温泉に浸かりおとなしくしている。無論ララディの通訳と教育があったればこそなのだが。
 ガマとオークに挟まれて温泉を満喫(?)するのは神山明人(ea5209)。いつオーク達が暴れ出しても良いように、春花の術を用意して温泉の中で身構えている。しかし、まさか体長3mの巨大な蛙が温泉の中を泳いでいる光景は絶句すら覚える。
「皆さん。桜すき焼きが出来ましたよ〜♪」
 何故か調理屋台担当にされてしまった奉丈遮那(ea0758)が馬肉のすき焼きを屋台で作っている。醤油、味醂、そして高価な砂糖をたっぷり使った馬肉のすき焼きは、オーク達は肉料理が好物であろうと言う彩花の予想で特別に振る舞われる料理である。
 そして、その予想通りオーク達はその料理に行列を作って(実際に一列に並んで)料理に飛びついた。
 馬肉、長ネギ、白滝、焼き豆腐。熱々の鉄鍋で作られたそれをお椀によそってもらうと、オーク達は器用にハシを使ってそれをガツガツと口の中に流し込んで行く。肉の味を楽しんでいるのかゆっくり味わって食べている。(残念ながら卵は高価なので無いが‥‥)
 食べ終わるとまた行列に並ぶオーク。永遠と行列の尽きることはない。
「お手伝いしましょうか?」
 蛙の泳ぐ温泉の片隅から、槙原愛(ea6158)が湯から上がり、浴衣に袖を通して奉丈の屋台を手伝うことにした。6匹のオーク達が代わる代わる並ぶ屋台へと。

「さてとお背中流しますネー」
 オーク達がたらふく桜すき焼きを平らげ、ゴロゴロとゴザの上に寝っ転がる。
 食べてすぐ横になると牛になると言うが、豚は食べてすぐ横になると何になるのだろうか?
 そんな中でアリサはマッサージを終え、頬を赤らめながら湯の中へ。リキロスは頭にララディを乗せた状態でのんびりと身体を洗っていた。
 そして、そのリキロスの身体を洗っているのは李鈴華(ea1347)。シフールで有る彼女は身長2mを越える大柄な熊の背中を一生懸命手ぬぐいで洗っている。
「リキロスおじさんが李鈴華にお願いがあるんだって‥‥いいかな?」
 ララディの言葉に李鈴華が首をかしげる。リキロスは脱衣場から今まで身につけていた西洋甲冑‥‥ヘビーアーマーとヘビーヘルム。そしてヘビーシールドのヘビー3点セットを持ち込んだ。
「返り血と自らの血でべったりだから洗うの手伝って欲しいんだって‥‥」
 李鈴華は巨大な肉厚のある西洋鎧にビックリそしてドキドキした。初めて見る鎧への好奇心が、彼女の中で感動を呼んでいた。
 彼女は小判を2枚もらった。それが鎧を洗うお手伝いのお駄賃だ。
 ジャイアントサイズの肉厚のある西洋鎧。べっとりと付いた血を一生懸命落とす二人。
 ララディは手ぬぐい一枚を身体に播いて、リキロスの頭の上でのんびりしている。

 時は深夜。オーク達がやがて満足して部屋に帰って行く。アリサとリキロスは湯に入り身体を温め治している。冒険者に付けられた傷の治癒。それが彼らのもっかの仕事なのである。
 お目付役に如月妖乱(ea2948)が一緒にお湯に入っている。そして、やっと仕事が終わった彩花が一緒にお湯に浸かる。そして、何事も無かったことに安堵の息をついた。
「彩花さん‥‥少し‥‥お話が‥‥」
 そう言って如月妖乱が彩花に寄り添いそっと耳打ちした。
「少し‥‥温泉教団の‥‥教義から‥‥外れるかも知れないけど‥‥別館の方に‥‥蒸風呂を作るって‥‥どうだろう?」
 その言葉に彩花はポンっと手を打って答えた。
「蒸し風呂ですか、良いですねぇ。別館の建築が終わったら、その後に検討してみましょう」
 そう言って彩花はにっこりと微笑んだ。
 妖乱はそんな彼女と肩を並べてお湯に入る事が出来役得かなと笑みを浮かべた。
「‥‥俺達はこの裏山に住むオーク達と合流して、後はのんびりとした生活をする予定だ。先ほど冒険者の方にここに住まないかとも誘われたが‥‥我々は戦闘種族だし、お前達に迷惑をかける‥‥もちろんご近所さんと言う事でこれからは持ちつ持たれつの生活を送りたいとは思っているが‥‥な」
 リキロスの言葉を通訳するララディ。彼女はオーガ知識達人。身振り手振りでオーガ族の通訳をすることが出来る。その言葉を聞いて彩花は営業スマイルを浮かべた。
「お金さえ払ってくださればお客です。種族の違いなんて関係有りません。ご近所さんなら勉強させてもらいます。今後ともヨロシクごひいきに」

 今静かに月が昇り、そして静かに世は老けて行く。
 何事もなく静かな夜。それは冒険者達の努力のたまものであろう。