『メイドインジャパン 放蕩娘の冒険記1』

■ショートシナリオ


担当:

対応レベル:1〜4lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 30 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月07日〜10月15日

リプレイ公開日:2004年10月16日

●オープニング

■メイドインジャパン
 江戸から北東へ4日ほど進んだ山奥の小さな村に西洋風の大きなお屋敷が有りました。
 屋敷の主人の名前はアルフォンス。当年取って125才のドワーフの元騎士です。
 若い頃に数々の武勲を重ね、今では喰うに困らない程度の蓄えを持ち、この東の国ジャパンの片田舎で、老後の余生を静かに送る為に引っ越してまいりました。
 私有地にはぶどう園を作り、梨園を作り、ワインを作り、果実酒を作り、慎ましくも一人娘(養女)とメイドさん達数名と質素ながらも静かな生活を送っておりました。
「やはり平和が一番じゃ。私が戦場で冒険者として生き残って来れたのも、儂がみんなよりずっと臆病者だったから、生き延びてこれたのかもしれんのぉ。後は娘が、一人娘が元気に育ってくれれば、後は何も言う事はないんじゃがのう」
 夕日の差し込むベランダで、丸テーブルで静かにワインを楽しむ初老の老人。それが彼の今の姿である。
 だが、親の心子知らずという奴か、その娘は元気に冒険者を目指していた。年の頃は数え年で15才。戦災孤児で5才の時にアルフォンスの手に引き取られてからはすくすくと元気に成長していった。いや、元気すぎるのが彼女の難点なのである。
 見た目はだけなら艶やかな髪と白い肌、絶世の美女と呼んでもおかしくない彼女。アルフォンス曰く『儂があと100才若ければ、娘ではなく妻にするんじゃがのう』と言う彼ご自慢の娘である。
 だが、闘う父親を見て育ったせいか、彼女の感覚は偏っていた。

「私は大きくなったらお父様みたいな立派なドワーフの騎士に成るの」
 それが彼女が物心ついてからの口癖である。
 今では『ドワーフの』は取り除かれてしまったが、それでも騎士に成る夢は捨てきれない様子。毎日剣の修行に励み、オーラの技の修行に励み、日々鍛錬に鍛錬を積んでいるおてんば娘に成ってしまったのだ。
 アルフォンスの胸の内は旗本の冷や飯食いの婿養子でももらって、静かに平穏な生活を送ってもらいたいと言うのが願いでは有るのだが。

「私ももう15才だし、ソロソロ冒険の一つも経験して置いた方が良いわよね?」
 ある日娘ソレイユはお父さんに内緒で、メイドが止めるのも聞かずに、倉に有ったお父さんご自慢の刀を一本片手に持ってコボルト討伐の旅に出てしまった。
 メイド達は大騒ぎ、それを聞きつけたアルフォンスも頭を抱える始末。
「仕方がない。困ったときは冒険者に頼むのが一番だ」
 アルフォンスはメイド達を通して冒険者ギルドに依頼を出した。
『無事に娘を連れ戻してください』っと

メイド曰く
『何かモンスターでも倒せば満足して帰ってくるんじゃないかしら? お嬢様におケガが無いように身の回りの護衛と警護をお願い致します』っだそうな。
 一応にお嬢様付きのシフールのメイドさん達が一緒に冒険に参加してくれるそうですが戦力外なので、お嬢さんの身の回りの世話だけに止めておきましょう。

●今回の参加者

 ea0036 リューガ・レッドヒート(42歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea1966 物部 義護(35歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3597 日向 大輝(24歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3988 木賊 真崎(37歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4352 馬籠 瑰琿(47歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea5428 死先 無為(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5694 高村 綺羅(29歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea5794 レディス・フォレストロード(25歳・♀・神聖騎士・シフール・ノルマン王国)
 ea6846 水無月 怜奈(26歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea7148 柳川 卓也(30歳・♂・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●3匹のメイド達
 慌ただしい屋敷。冒険者が屋敷にたどり着いた時には中は蜂の巣をつついたような騒ぎだった。
 いや、実際ハチの様にパタパタとメイドさんが右へ左へ飛び回っているのである。
 お嬢様付きのお抱えシフールの3人はシフールメイド。
 黒いメイド服に白いカチューシャと白いエプロン、パタパタと羽ばたく羽のメイドさん達である。
「お嬢様を迎えに行きましょう」「いきましょう」「いくですぅ」
 1人目のメイドはバスケットにお弁当のサンドイッチを詰めて。
 2人目のメイドは小太刀を持って。
 3人目のメイドはお嬢様を着替えの入った袋を持って。
「所でメイドさんお嬢さんは一体どんな容姿をしているんだい?」
 物部義護(ea1966)が質問するとメイド達はそろってそれに答える。
「黒くて長い髪のをしています」
「艶やかで色っぽい身体をしています」
「浮世絵に出てきそうなほどの美女だとご主人は言っています」
 3人の言葉を聞いて、フムフムとそれを記憶する物部義護。
「っですまないが、メイドさんの服を一着貸してくれないか?」
 柳川卓也(ea7148)の唐突な発言、だがその言葉に微動だにせずに、メイド達はメイド服を貸し与える。だが、それは彼女達の予備サイズであるためにシフールサイズである。
「いや、そうじゃなくて人間サイズのを‥‥」
 何に使うのか分からないが取りあえず人間サイズのメイド服を用意するシフールメイド達。すると柳川卓也はいきなりそれに着替え始めた。
「木の葉を隠すなら森、メイドさんを守るならおなじ服の方が良いと思ってね」
 そう言ってメイドに扮そうする柳川卓也。メイド達は『あぁそうなのか』と首を縦に振る。
「だいじょうぶ。あなた達は私が守ってあげるから」
 レディス・フォレストロード(ea5794)がメイド達の肩ポンっと叩く。
「ありがとうございます。聖騎士様、それではこれを」
 先ほどのシフールサイズのメイド服を渡されるレディス。何故か彼女もメイド服でメイド達を護衛するハメに成った。
「っで、お嬢様が何処へ行ったか予想出来ますやろか?」
 水無月怜奈(ea6846)がメイド達に質問する。メイド達3人は首をかしげた後にポンと叩いてその質問に答えた。
「裏山でコボルトが出るってウワサがあって‥‥」
「お嬢様はコボルトを倒すのを夢みていたので‥‥」
「おそらく裏山に向かったんじゃないかしら‥‥」
 その言葉を聞くや否や高村綺羅(ea5694)が疾走術でダッシュで裏山へと走って行く。
 水無月怜奈もそれを見つめてあっけにとられている。
「裏山‥‥広いのに‥‥」
 メイドさん達にツッコミをよそに彼女は走っていったきりだった。

●落ちているお嬢様。
 森の中で大の字に寝そべる一人の少女。つい昨日元気に飛び出して行った彼女だが、食料も持たずに飛び出した為にすっかり空腹と疲労で倒れ込んでいる。着流しにふんどし、日本刀と言ったざっくばらんな服装もあいまって、体力の消耗も激しかった。
「おなか空いたなぁ。お弁当もってくるんだったなぁ」
 ぐうぐうおなかを鳴らすソレイユ。その音に導かれるようにして一人の忍者が彼女の元へと訪れた。実際には山をしらみつぶしに走っているので、メチャメチャ時間がかかっているのだが。
「だいじょうぶ?」
 ソレイユに話しかける高村綺羅。ソレイユがおなかを空かしているのを察し、保存食を差し出すと、ソレイユガツガツとそれにかぶりついた。
 ガツガツと保存食にかじりついている彼女にたいして綺羅が話しかける。
「こんな所に一人じゃ危険‥‥敵に囲まれたら最後だから。仲間達が来るから少し待ってて」
 その言葉に素直をに首を縦にふるソレイユ。
「コボルトを倒して一人前として、お父様に見つめてもらおうと思ったんだけど‥‥全然コボルトがみつからなくてさ。危うくコボルト見つける前に餓死するところだったよ」
 二人でのんびり保存食を食べながら、和気藹々とした会話が続く。
「やっとみつけた〜〜〜」
 木賊真崎(ea3988)がバイブレーションセンサーを用いて、お嬢さんを発見したのはそれからしばらくしてのことである。お嬢様は大喜びで握手を求めた。
「ありがとう。二人で結構心細かったんだよぉ」
 メイド達と合流して冒険者道具一式を受け取る。何か知らぬ間にメイドが5人に増えていたり一人だけ人間サイズが混じっているが気にしない、超ざっくばらんな性格である。
「それじゃ着替えるからちょっとしつれい」
 そう言っていきなり服を脱ぎ出すって言うかふんどしを脱ぎ出すソレイユ。
 そしてメイドさん達が用意したソフトレザーアーマーにいそいそと着替える。
 メイドさん達が壁に成ってお嬢様を隠しては居るのだが‥‥天井までの高さが50cmだから全然隠れていないのはバッチリ読者サービスなのかも知れない。
 一同目のやり場に困りながら、彼女が着替え終わるのを待っている。
 しかも、メイド達が用意した鎧はいわゆるビキニアーマーなのである。(この世界にビキニとか水着は存在し無いが、いわゆるそれらしい物を想像してください)胸とお尻と前以外は殆ど隠していない。へそ出し、肩だし、背中だしのそれは、着替える前よりも肌の露出がばっちり増えている。
 腰に改めて日本刀を装備し、お弁当のサンドイッチを食べながら(保存食を食べた後にさらに食べている)彼女はいそいそと冒険の準備を整えて行く。
「ひーふーみーよー14人‥‥これだけ居ればコボルトは怖くないね」
 彼女の中ではコボルトもドラゴンもおなじ扱いなのだろう。
「ケガしない程度にがんばってくださいね。旦那さんから無傷で連れてくるように言われてますから」
 死先無為(ea5428)の言葉にVサインを出してにっこり笑うソレイユ。
 理解してない。理解していないことはばっちりである。

●コボルト(犬鬼)さがし
 そんなこんなで森の中をうろつく事一時間。現れなかったら着ぐるみを着て対処しようかと思っていた矢先にコボルトらしき影が現れた。首から上は狼、直立歩行する何か、取りあえずたぶんコボルトだろう。武器も持っているし!!
「よーし待ってました。出番出番。唸れ我が剣。その力を示せ!!」
 深呼吸一発自らの刀にオーラパワーを付与するソレイユ。
 その威力すさまじく専門クラスのオーラが刀に宿る。
「唸れ!! 必殺!! グレイテスト・ペレストロイカ!!」
 必殺技の名前を大きな声で叫び、コボルトの方へ走って行くソレイユ。大きく振りかぶった一撃は、コボルト手前の樹木に思い切り突き刺さった。
「あっ、またやっちゃった」
 オーラは専門レベルだが、命中率はかけ出し冒険者以下と言う問題を抱えるお嬢様。木に刺さった日本刀を一生懸命抜こうとするが、思い切り刺さっているのでなかなか抜けない。コボルトもいきなり襲ってきた人間がいきなり訳の分からない行動をしているので困惑している。
「わんわんわん。ばうわんわん(犬鬼訛りのオーガ語)」
 コボルトが仲間を呼んで6匹ほどに増える。それを見た日向大輝(ea3597)がソレイユをかばうような形で正面にでる。
「犬鬼くらいに遅れを取らないで欲しいものだ‥‥」
 お嬢さんに聞こえないほど小声でぼやいた後に日本刀を振る。
 無造作に振った日本刀の攻撃を避けることが出来ず、コボルトは負傷し、傷口を押さえる。
「アー私、私が倒すの!!」
 自己主張は強いが刀が木から抜けない。仕方ないのでメイド達が持ってきた小太刀を構えて戦闘に参加することにした。
 馬籠瑰琿(ea4352)刀の抜いてソレイユの護衛に入る。彼女の持ったりした動きではどう考えてもコボルトの攻撃を避けきれないと予想したからである。
「大丈夫かな‥‥本当に‥‥」
 彼女の防御に入る馬籠瑰琿、ソレイユはコボルトと1対1の状況で小太刀を構えている。
そしてコボルトもそんな彼女に際して槍を構えている。
 コボルトの総勢は10匹以上居たはずなのだが‥‥あまりに暇だったために残り一匹以外は倒された後だった。メイドさんに扮した二人もいつの間にか彼女を応援している。
「がんばれーがんばれー」
 声援を受けて小太刀を振るソレイユ。
 それを避けるコボルト。
「すげぇ犬鬼が攻撃を避けるのを初めて見た‥‥」
 そんな不思議な声まで聞こえる戦いであった。

 コボルトの放った槍がソレイユを襲う。並の冒険者なら避けるのに苦労しないゆっくりとした全く鋭くない一撃である。それを不慣れな小太刀で受け止めようとするソレイユ。
 小太刀で一度は弾くが、切っ先が彼女の露出した太ももをかすめる。じわりと血がにじむ。苦痛の表情を表すソレイユ、だがそれは中傷にも満たないダメージであることは皆の目にも明らかだ。だが、彼女は片膝を着いて倒れてしまう。じわりと彼女の身体にしみこんで行く毒が、彼女の身体の動きを奪って行くのだ。
「大丈夫かい? お嬢ちゃん」
 リューガ・レッドヒート(ea0036)がロングソードでコボルトを一刀のもとに切り倒すと、スッとソレイユを守りに入った。
「コイツを飲んでおくと良い。解毒薬だ」
 そう言ってソレイユに卵サイズの小さな小瓶を差し出した。
「あっありがとう」
 ソレイユが頬を赤らめてそれを受け取る。露出している太ももの傷痕が多少紫色に変色しているのが分かる。
 ソレイユは受け取った解毒薬を一気に飲み干した。
 足を傷つけたソレイユを自らの馬の上に乗せるリューガ。
「ありが‥‥とう」
 頬を赤らめたままでリューガに話しかけるソレイユ
「あっそれ!? ねぇその剣‥‥私に頂戴♪」
 唐突にリューガにおねだりをするリューガは自らの右手に握るロングソードを見せる。
「コイツはダメだ。コイツは俺のメイン武器だからな」
 ぶっきらぼうに答えるリューガ。するとソレイユは首を横に振った。
「違うのコレ、こっちの小さい方♪」
 ソレイユが指さすのは馬の鞍に括り付けていた明王彫の剣である。長さ60cm位の両刃の直刀で、柄頭に明王の顔が彫られている一品である。
「ねぇコレと交換して、交換♪」
 そう言って彼女は自らの腰に付けていた日本刀を鞘ごと抜いてリューガに突き出した。
「交換成立だね。ありがとう」
 そう言ってリューガのおでこに口づけするソレイユ。
 ソレイユはその行為の後に先ほど以上に赤面した。
「えへへ、想い出の品にするんだ。これ」
 半ば強引に交換した明王彫の剣を嬉しそうに、はな歌交じりにもてあそぶソレイユ。
 リューガはそれ以上、彼女に何か言うことは無かった。

 結局の所コボルトを倒すことは出来なかった彼女であるが、敵の恐ろしさを改めて実感させることには成功した。彼女はこれからおうちでお説教が待っているだろうがそれはまた別のお話と言うことになるだろう。まずはメデタシメデタシ‥‥である。