『オークを従えし魔物 3』
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■ショートシナリオ
担当:凪
対応レベル:1〜4lv
難易度:難しい
成功報酬:1 G 32 C
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月14日〜10月20日
リプレイ公開日:2004年10月23日
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●オープニング
落ち葉が積もり、紅葉が楽しめる静かな山奥に、金属と金属のぶつかり合う音がこだまする。
巨躯の鎧武者と巨躯の西洋甲冑の戦士との戦い。
一方は身長約1.8m程。赤褐色の武者鎧に野太刀を装備したホブゴブリン戦士(茶鬼戦士)。
もう一方は身長は約2.4m程。ヘビーアーマーにヘビーシールド、ヘビーヘルムのヘビー三点装備でガチガチに固め、ハルバードを携えたバグベア(熊鬼)。
ぶつかり合うお互いの武器が火花をあげるほどの強烈な一撃同士のぶつかり合い。
ホブゴブリン訛りのオーガ語とバグベア訛りのオーガ語とで金切り声を上げながら武器を振るう。
「戦いとは常に2手3手先を読んで闘う物だ。良く憶えておくのだな(茶鬼訛りのオーガ語)」
バグベアの足場へ向けてスマッシュをたたき込むホブゴブリン戦士。土が上がりそれが目つぶしの替わりになる。だがそれを楯で受け流し、ハルバードを振り下ろすバグベア。ホブゴブリン戦士はそれを野太刀で受け止める。だがあまりの重い一撃に片膝を着く。
バグベアは動きの止まったホブゴブリン戦士に楯で一撃を放つ。だがその攻撃を左手で受けそのまま後方へ転がり間合いを開くホブゴブリン戦士。
「戦争とは算術だ。だが、戦闘とは気迫と気迫のぶつかり合いだ。違うかね?(熊鬼訛りのオーガ語)」
バグベアとホブゴブリン戦士の会話は、実際にはもっと単純な金切り声だ。
だが、意味合いだけ取るならそう取れる。
実際の彼らの言語能力は酷く単調で単純だ。鬼族の知力はサルに毛の生えた程度の物だし、その言語はイヌ達の様に単純明快である。
咆吼と咆吼のぶつかり合い。雄叫びと雄叫びのぶつかり合いでなのである。
だが、鬼族は戦闘種族だ、闘って闘って闘って生き、そして戦いの中で死んで行く。
追い打ちのハルバードの一撃を放とうと身構えるバグベアの身体に数本の矢が飛来する。
バグベアが目線を流したその先には弓を構えたホブゴブリンが3匹。
「言っただろう。2手3手先を読むのだと(茶鬼訛りのオーガ語)」
ホブゴブリン戦士の渾身の一撃。そしてそれを楯で受け止めるバグベア。形勢は一転する。っが助っ人が現れたのはホブゴブリン側だけではなかった。
3匹のオークを引き連れ西洋鎧を着た女性戦士が現れる
その身長は約2.1mその右手にはクレイモアが握られている。
「リキロス!! 大丈夫か!? (ジャパン語)」
リキロスと呼ばれるバグベアに走り寄る西洋鎧の女性アリサ。その動きを見てホブゴブリン戦士は剣を引き、後方へと引いて行く。
「ふん。決着は次の機会まで取っておこう。戦力は圧倒的にこちらが有利なのだからな(茶鬼訛りのオーガ語)」
そう言って戦線から離脱するホブゴブリン戦士。当たりは一時的に静寂を取り戻した。
猿山の猿の如くゴブリン(小鬼)とオーク(豚鬼)達は縄張り争いをしていた。
先に助っ人を雇ったのは小鬼側。茶鬼と茶鬼戦士を招き入れ圧倒的有利のままで縄張りを手にするかに思われた。
そこにオーク(豚鬼)側の助っ人として現れたのがバグベア(熊鬼)と6匹の精鋭オークを引き連れたアリサ(ジャイアント)である。
彼らはいくつかの山森の場所を取り合って戦争を続けていた。
「敵のゴブリンは20匹以上。それにホブゴブリン数匹とホブゴブリン戦士の助っ人付き。
こちらの戦力はケガをして動けないオークが数匹、動けるオークが数匹。精鋭オークが6匹、それにアリサねぇさんとリキロスにぃさんと‥‥私は戦力外だよ?」
通訳シフールのララディが現状の戦力を計算する。
「同考えても分が悪い‥‥仕方がない‥‥最後の手段に出るか‥‥」
アリサはそう言って大きくため息をついた。
「最後の手段?」
ララディがそう言ってアリサに質問する。アリサは引きつった笑いを浮かべながらララディの質問に答えた。
「冒険者を雇ってゴブリン(小鬼)を退治する手助けをしてもらう。今まで私たちを苦しめてきた冒険者に助けを求めるのは抵抗はあるが、背に腹は変えられまい‥‥」
そう言ってアリサは冒険者ギルドへ依頼をすることを決意した。
こうして前代未聞の依頼は発生した。
『オークの手助けをしてゴブリン(小鬼)とホブゴブリン(茶鬼)を撃退してください‥‥っと』
●今回の参加者
ea0238 玖珂 刃(29歳・♂・侍・人間・ジャパン)
ea0243 結城 紗耶香(29歳・♀・志士・人間・ジャパン)
ea0437 風間 悠姫(32歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
ea1352 礼月 匡十郎(42歳・♂・浪人・ジャイアント・ジャパン)
ea2900 河島 兼次(40歳・♂・志士・人間・ジャパン)
ea3096 夜十字 琴(21歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
ea3210 島津 影虎(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
ea6415 紅闇 幻朧(38歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
ea6717 風月 陽炎(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
ea7590 時任 志樹(34歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
●リプレイ本文
■オークを従えし魔物
●決戦前夜
夢なのだろうか、幻なのだろうか、それは分からない。
夕闇の中でパチパチと音を立てながら燃える炎。たき火の光。取れたての鹿の肉を捌き、たき火の炎で焼いているオーク達。最も美味しいもも肉の部分をマズはバグベアのリキロスとジャイアントのアリサに差し出すと、残りの肉をナイフで切り分け、それを美味しそうに口に運んで行くオーク達。冒険者にもその鹿の肉はお裾分けとして振る舞われている。無論皿やハシと言った物はない。巨大な肉の塊からナイフで切り取って食べるのである。
バグベアのリキロスは鹿の片足をもりもり囓りながら、頭の上にララディを乗せ、風間悠姫(ea0437)の元へ近づいてくると、右手に握っている新しい肉を差し出した。
物怖じせずにそれを受け取り口に運ぶ風間悠姫。リキロスはそれを見ると少し満足したような笑みを浮かべて、彼女の横に座り、自分の分の肉をバリバリと食している。それに群がり一緒に成ってララディも肉を食べる。
「彼結構シャイでウブだから何も言わないけど、結構貴方の事が気に入ってる見たいだよ」
お肉をモグモグさせながら話すララディ。風間はそれに対しても動じることなくもらったお肉をモグモグとかじりながらリキロスを見つめた。
首から上が猪、首から下が熊。そんな彼に魅力を感じる‥‥のだろうか?
アリサは静かに肉を食しながら河島兼次(ea2900)の方に歩を進める。
「マズおまえたちに一つ頼みがあるんだ。聞いてくれるか?」
肉を口に運びながらではあるが、真剣なまなざしで河島に語りかけるアリサ。
「冒険者ギルドの手前、モンスターが依頼するというのは非情に不味い、だからその辺の事は全て内密に進めて欲しいのだ、我々もいらぬ争いは避けたいのでね」
アリサの言葉に河島は静かにうなずいた。
「お、オーク(豚鬼)さんと一緒に戦うんですか‥‥で、でも、頑張ります!」
味方であるオークにちょっとビクビク、内心怖がりながらも、拳をぐっと握りしめ、気合い上々の夜十字琴(ea3096)。そんな彼女に一匹のオークが優しくお肉を手渡してくれた。それを口に運ぶ琴。彼女を肩の上に抱えてくれるオーク。弓オークに負ぶさるようにして彼女はオークに遊んでもらっている。
「ありがとうオーク(豚鬼)さん」
お肉をもらって上機嫌の夜十字琴。オークにその言葉の意味は分からないが、喜んでもらっているのは理解している。オークもまた肉を頬張り笑みを浮かべていた。
●戦いの時
立ち上る朝日がまぶしくて、その中に栄える二人の姿はさらにまぶしく見えた。
西洋甲冑に身を包んだ魔物達、敵に回せば恐ろしいが、味方にすればこれほど頼りに成る物かと改めて実感する。
玖珂刃(ea0238)と結城紗耶香(ea0243)が先陣を切って前を進む。ゴブリンの群れが流れるようにしてそれを阻む、その数なんと20体。風間悠姫と時任志樹(ea7590)のコンビもまた、ゴブリンの群れに立ちはだかって行く。
20匹のゴブリン達は皆竹槍を持ち、ジリジリとこちらの動きを見つめながら、立ち向かおうつもりである。
20対6+バグベア1の戦力でゴブリン共へと特攻してゆく。既に戦争と言うよりはドラマのヒーローの様な存在である。
玖珂刃が刀を持ってゴブリンを切り裂く、返り血を避けながら、結城紗耶香がサポートする。恋人同士の絶妙な動きが舌を巻くほど綺麗に整っている。
風間悠姫が次々とゴブリンを切り裂いて行くその後方でそのサポートをしているのが時任志樹。巨大なガマを召還し、連携で攻撃を行いながら、ゴブリン達を攪乱させて行く。しかしゴブリンの数は20匹。早々に攪乱仕切れる物ではない。しかもその後方にはホブゴブリン達まで控えている。
「この数では拉致があかんな」
河島兼次がゴブリンを引きつける。リキロスが数匹のゴブリンに囲まれるようにして動けなくなっているのを何とかカバーする。最終的にリキロスをホブゴブリン戦士の元へと誘ってやるのが彼らの仕事だと認識している。リキロスもマズ数を減らして、後にホブゴブリン戦士の元へを理解している。だが、数の多さに流石に少々興ざめしている。
●ホブゴブリンとの戦い
足場を崩す静かなトラップが作動する。いわゆる段差落とし穴という奴であるが、山での戦いに成れてしまっているゴブリン達には何処吹く風効果は非常に薄かった。
予想より少ない被害に島津影虎(ea3210)が舌打ちをする。
戦争とは常に予想外の展開が起こりえる物なのだなと理解する。
オーク弓兵の弓が罠にかかった数匹のゴブリンにヒットする。
戦局は互角。いや、我々がやや不利と言ったところであろうか。
「茶鬼戦士は私が何とかする。茶鬼達の方は頼む」
そう言ってクレイモアを構えアリサが出撃する。
今日は鎧は着ていない。褌一つ、サラシ一つ。ほぼ全裸に近い状態で出撃してゆく。
攻撃に重きを置いたシフトなのであろう。
礼月匡十郎(ea1352)がホブゴブリンにダブルアタックEXをたたき込む。
右手の日本刀、左手のナックル、そして頭突きの3方同時攻撃がホブゴブリンを襲う。
そして、紅闇幻朧(ea6415)が分身の術を使い敵を翻弄させながらホブゴブリンを引きつけて行く。
風月陽炎(ea6717)がアリサに挑んできたホブゴブリンを相手にする。旋風の様な蹴り技、そして両手を使った殴り技。素手格闘と得意とする彼の得意なダブルアタックとストライクが唸りを上げてホブゴブリンに炸裂してゆく。
その隙間を縫ってアリサが茶鬼戦士(ホブゴブリン戦士)と刃を交える。
最初の一撃に、スマッシュとバーストアタックを乗せて、2発目の一撃にスマッシュを乗せて、2発の連続攻撃をホブゴブリン戦士に放った。
ホブゴブリン戦士は最初の一撃を野太刀で受ける。っと同時に野太刀に亀裂が入る。
そして亀裂の入った野太刀では2発目の攻撃を受け止めることは出来ない。重量の乗った一撃が袈裟懸けにホブゴブリン戦士を切り裂く。
どす黒い血が辺り一面にほとばしる。
形勢を圧倒的に有利にしたアリサはさらに攻撃の手を休めることは無かった。
勝負は一瞬で決まった。どす黒い血の中にホブゴブリン戦士は絶命する。
そしてその雄叫びにも近い断末魔の中で、ゴブリン達は潮を引くかのようにして武器を捨て山から走って逃げて行く。それを追う必要は既に無かった戦いに勝利したのである。
●そして
「ありがとう。君たちのおかげで勝つことが出来た。本当に礼をいうよ」
返り血で赤く染まったアリサがギルドへの口止め料として多少多めの依頼料を支払う。
そしてにっこりと彼らに微笑んで一つ念を押した。
「この山はしばらくは小鬼達と縄張り争いをしていると思う。いつかまた、貴殿らに対して仕事を依頼するかも知れないその時が来たらヨロシク頼む」
アリサに小さな微笑みに、冒険者達は満面の笑みを浮かべた。