走れ純愛街道

■ショートシナリオ


担当:

対応レベル:1〜4lv

難易度:難しい

成功報酬:1 G 56 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月25日〜11月02日

リプレイ公開日:2004年11月03日

●オープニング

 これは一人の若者が巻き込まれてた、誤解と勘違いの中でのお話です。

 飛脚(ひきゃく)の駿吉(しゅんきち)さんは村一番の足の持ち主。ちょっと酒癖が悪いけど、気は優しくて力持ち。

 ある日の夕方、飛脚の駿吉は隣町へ出かけると言って不意に姿を消してしまった。
 隣町までは駿吉の足なら丸一日有れば付ける距離。所が3日経っても4日経っても駿吉が帰ってこないので、村の人達は彼の消息を心配する。そんなある日の事である。

「大変だ、庄屋さんの娘のお菊ちゃんのかんざしが盗まれた!?」
 村一番のお金持ち、庄屋さんの娘のお菊ちゃんのかんざしが見つからなくなってしまった。そのかんざしは庄屋さんが特注でお菊ちゃんの為に作られた特別な銀細工の一品だ。
 そして、かんざしが無くなる前日、庄屋さんの家の近くをうろつく駿吉が目撃されていた。
「きっと、駿吉が盗んで逃げたんだ、きっとそうに違いない」
 有る村人はかんざしが無くなったのは駿吉のせいだと言い出した。
「いや、奴は酒癖は悪いが人の物を盗むような奴じゃない、きっと何かの間違いだ」
 有る村人はかんざしが無くなったのは俊吉のせいではないのでは言い出した。
「なら、何故やつは姿を消した。何か後ろめたい事が無ければ出てくれば良いんだ」
 村人達はそう言ってなぜ駿吉が帰ってこないのかを不思議に思った。

『ただ一人、当人のお菊ちゃんだけを除いては‥‥』

「よし、ひょっとしたらまだ近くの村や森に潜伏してるかも知れない、冒険者様を雇って駿吉を捕まえてきてもらおう」
 村人達は口々にそう言うと、冒険者を雇い、駿吉を捕まえることに賛成した。
「ここに十両ある。駿吉を捕まえてきた者にコレをやろう、冒険者が捕まえてきてくれた時は人数分頭割りでこの十両を払うことにしよう。さぁみんな、駿吉を捜してきておくれ!!」

 こうして駿吉は10両の賞金首として村人総出で探すことと成った。
『冒険者様へ かんざし泥棒の駿吉を捕まえてきてください』それが今回の依頼である。

 ‥‥一方そのころ、何も知らない駿吉は傷ついた身体を引きずりながら隣村からの帰路をくじいた足を引きずりながら、ただひたすらに村目指して歩いていた。
 実は駿吉、庄屋の娘お菊ちゃんに頼み事を頼まれていた。
 お菊ちゃんは隣村に住む伊達男にぞっこんで、その想いのたけを伝える為に愛用のかんざしと恋文をしたため、駿吉に一つのお願いをしていたのである。
「みんなには内緒で、隣村の伊達男さんにこのかんざしと恋文、そして私の想いを届けて欲しい‥‥と」
 駿吉は二つ返事でokすると、その日の夜こっそりと、隣村へと旅立っていったのだ。
 所が、連日の雨で山道はぬかるみ、ふとした弾みで、駿吉は足を滑らせて谷底に落ちてしまったのである。
『みんなには内緒で‥‥』そう依頼されていた駿吉は誰に助けを求める事もせず、隣村まで身体を引きずりながら何とかかんざしと恋文を届けると、今度は伊達男からの返事の手紙を受け取り、ケガした身体を引きずりながら、お菊の待つ村へと出立したのである。

 自分がまさか賞金首に成っているとも知らず、ただひたすらお菊の為に‥‥。

 まさか自分が指名手配に成って居るとも知らず、ただひたすら純愛を届ける為に‥‥。

●今回の参加者

 ea0660 鎮樹 千紗兎(36歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea1300 瑠 焔龍(30歳・♂・僧兵・エルフ・華仙教大国)
 ea2833 結城 夕刃(29歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3462 咲堂 雪奈(25歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea5906 クローディア・ルシノー(22歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea5986 キサラ・シルフィール(18歳・♀・クレリック・エルフ・ロシア王国)

●リプレイ本文

●嘘? 本当? 真実はいずこ?
 雨が降る。秋の長雨と言うが、その雨は静かに村を、そして現場を静寂へと誘う。
 冒険者達は村長に雇われ、駿吉さんを捕まえてくる事を言いつかった。もし冒険者以外の者が彼を捕まえたのなら、そのものに10両の報奨金が与えられる。
 駿吉はいつのまにやら賞金首としてあげられていた。
「彼がもし盗みをはたらいていないのであれば、3日経っても帰ってこないのはおかしい。
あまりの事にウチの娘は昨日から寝込んでしまっている。早く駿吉を捕まえてしかる後に制裁を加えなければ、村の規律を守ることが出来ん」
 庄屋さんはそう言って冒険者達になるべく早く駿吉を捕まえてくるようにと依頼した。
 真実を知る庄屋の娘お菊は今は体調を崩して床にふせっているという。
 そしてもう一人の真実をしる者、駿吉は行方不明なのである。
 事件はこのまま闇に包まれてしまうのであろうか‥‥。

「あの、お菊さんにお聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
 鎮樹千紗兎(ea0660)が庄屋さんに話しかける。
 男装の麗人である彼を彼女と見破る者は居ない。
「あいにく娘は心労が祟って床についている。話がしたいなら娘の病気が治ってから、駿吉を捕まえてからだな」
 そう言って庄屋さんは娘への面会を断った。
 鎮樹千紗兎は渋々引き下がることとなる。

 彼女がお菊に会いに行ってるその間に、他の一方は駿吉を捜すために山に入った。
 有る者は馬を走らせ、また有る者は獣へと姿を変えて修吉の足取りを追った。
 風が駿吉のニオイを‥‥血のにおいを運んできたのは、それからしばらく後に事である。

 涙も頬を流れない。悲しみも憎しみも、そして喜びも無いそこは静かな世界。
 駿吉は谷底で静かに身を休めていた。
 雨が体力を奪う。それでも身体を休めるしかなかった。
 荷物を届ける事は彼の使命。想いを伝えることが彼の使命。
 それ以上でもそれ以下でもない。彼は一流の飛脚なのだから。
 だが、彼はプロとして致命的なミスを犯した。
 足を痛め、血を流し、今では一人で動けないまでに体力は低下していた。
 雨に打たれながら駿吉は思った。この仕事を終わらせるまでは死ぬわけにはいかないと

「駿吉さん‥‥ですか?」
 瑠焔龍(ea1300)が駿吉に語りかける。意識朦朧とする中で駿吉は首を縦に振った。
 谷底で、岩陰に身を任せ、夜露と雨に濡れ、冷たく成った駿吉。彼は静かに駆けつけた一同に目を向けた。っが静かにそのまま意識を失った。
 結城夕刃(ea2833)が薪を集めて火をおこした。
 偶然にも持っていた火打ち石が役に立つ。
 温かい炎の中で、駿吉はもう一度目を覚ました。
「ここは? あなた達は?」
 おどおどしながら見つめる瞳。そんな彼に咲堂雪奈(ea3462)が静かに語りかける。
「駿吉さんやね? うちらは庄屋さんの命令で貴方を捜しとったんや。あんさんには庄屋さんの娘のかんざしがのうなって、その疑いがかかっとるんよ」
 事のいきさつを聞いた駿吉は、静かに目線を落として答えた。
「それならば‥‥私に疑いがかかるのは無理は有りません。事の真相を今はお話することは出来ませんが‥‥かんざしは私が持っています‥‥これをお菊さんにお届けする様に頼まれているのですが‥‥」
 そう言って駿吉は自らの折れた足に目をやった。もし彼の言うことが本当ならば、駿吉は犯人ではないことになる。いや、かんざしを持っているのだから犯人と言うことになるのだろうか、彼らの中で複雑な心理が交差する。
「駿吉さん、それなら私たちと一緒に付いてきてくれませんか? もし貴方が無実だと言うのであれば、貴方の身の潔白を証明しなければ成りませんし、私たちは庄屋さんに貴方を連れ帰るように頼まれているのです」
 クローディア・ルシノー(ea5906)の言葉に駿吉はまた自らの折れた足に目線を落とした。
「それなら私のウマに乗ってください」
 結城夕刃が自らの乗ってきた馬に駿吉を乗せて運ぶ。一同は元居た村へと静かに戻った。
「遠く、狼の声が聞こえるけど‥‥大丈夫だろうか?」
 キサラ・シルフィール(ea5986)がリカバーの魔法を使って駿吉の足の傷を治療した。だが、一応にも体力の落ちきっている駿吉をそのまま走らせるわけにはいかない。
 馬に乗せたまま村に戻り村長達に引き渡すことにした。
「まって下さい。その前にコレを‥‥お菊さんに渡してください。村の人には内密に‥‥」
 駿吉が鎮樹千紗兎に渡したのは手紙だった。隣村の伊達男からお菊に対する手紙の返事である。千紗兎はそれを持って密かにお菊の元へと忍び込んだ。

 村の人々は村の広場に集まっていた。戻ってきた駿吉と彼の持っていたかんざしが何よりの証拠である。何か言い訳は有るのか? 庄屋様が駿吉に問いただしたが、駿吉は無言であった、何も申し開きはありません。それだけだった。

 村人は広場に集まっている好きをつき、千紗兎がお菊に手紙を運ぶ。お菊は自らの為に駿吉が罪人に成ってしまったことに責任を感じ、寝込んでしまっていたのである。
「これ、駿吉さんから頼まれた手紙‥‥伊達男さんからの返事‥‥読むね‥‥」
 千紗兎はふせっているお菊のために手紙を読んでやることにした。

『お菊さんへ、手紙ありがとう。キミの気持ちがヒシヒシと伝わってる良い手紙だ。そしてキミの愛を受け止めた。だが、今の僕にキミの愛を受け止める事は出来ない。‥‥遊び人の私では、今のキミとは釣り合わないと思うのだ。ボクはこれから商売の勉強をして、お菊さんにふさわしい男になってそれからキミを迎えに行きたいと思ってる。その時まで待っていて欲しい‥‥』

 文にはそう書かれていた。お菊はその手紙に涙した。いや、それ以上に駿吉に涙した。
お菊は駿吉に頼んでいた『村の人達には内緒で手紙を送って欲しい』っと。そして自分の証として愛用のかんざしを付けて文を渡したのである。それがこんな事になろうとは‥‥。
 罪人の汚名受けてまで、文の秘密を守ろうとする駿吉に涙していた‥‥。
「ごめんなさい。私が私が不用意な事を言ってしまったばっかりに‥‥本当にごめんなさい‥‥。お父様には私から言います。だからお父様を‥‥呼んできてください。駿吉さんは何も‥‥何も悪いことはしていないのですから‥‥」

 ひとしずくの涙。溢れるばかりの想い。彼女の心に振るお天気雨はやがてあがるだろう。
 温かい日の光が、3人を照らすことを心より祈っている。そう誰よりも‥‥。