山賊たいじ?

■ショートシナリオ


担当:

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 97 C

参加人数:13人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月14日〜06月24日

リプレイ公開日:2004年06月23日

●オープニング

 江戸から北へ5日ほど進んだ山奥で、密やかに山を掘るドワーフ達のキャンプがあった。人立ち寄らぬ静かな山の中腹で、良質の鉄を求めて、人知れぬツルハシを振るい、スコップを使って土を掘り出す彼らは、山師であり、掘り師であり、鍛冶師である。そう、彼らは良質を鉄鉱石を求め、そこから刀を作り出す、生粋の名工達なのである。
 彼らは村長と領主の許可をもらい、数週間の期限付きではあるが、採掘を許されている。
 3人のドワーフと1人の人間の女性の4人組は、山の中腹の平坦な場所に、ゲルと呼ばれるテントを張り、何日にも渡って泊まり込み、良質の鉄を求めて山を掘っていた。
「フム‥‥この山には良い鉄が眠っている。良い鉄のインゴットが出来そうだ。」
 彼らは一度鉄をインゴットとして精製してから山を下り、刀に加工するようだ。それでも良質な鉄鉱石を探すのは非常に困難で難しい。良い鉄インゴットを作るためには、良い鉄鉱石を掘り当てなければ成らないのである。
「今回の収穫は良さそうだな」
 簡易版の炉を用いてテントの近くで鉄鉱石を溶かし、鉄を精製するドワーフたち。彼らの食事は山の麓で買い出しをしてきた干した魚や山で取った肉類である。それを鍋で煮詰めてみそ味で頂いている。標高があり、肌寒い山の上では、鍋は一番のごちそうである。ジャパンでの彼らの生活も結構長かったりするのである。

 数日の山作業の中で彼らは思いがけない事件に遭遇した。食料の買い出しに山を下りた娘が山に戻れなくなってしまったのである。峠の茶店で一息ついた村娘は見てしまった。いつも利用する山道に山賊が出没し、旅人の金品を奪い、乱暴狼藉を働いていると言う話と、その被害に遭ったけが人達を。他にも山に戻る獣道は存在するが、途中でオークが出没し、人間達を襲うと言われている。このままでは、食料を仲間達に届ける事が出来ず、彼らは飢えてしまうだろう。娘はなけなしの私財をなげうって、冒険者を雇うことにした。

『 山に出没する山賊達を何とかしてください。 』

●今回の参加者

 ea0031 龍深城 我斬(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0076 殊未那 乖杜(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea0437 風間 悠姫(32歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea0537 伊勢千子 村正(47歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0567 本所 銕三郎(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0861 緋邑 嵐天丸(25歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0901 御蔵 忠司(30歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea0914 加藤 武政(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0959 アルファルド・ルージュルペ(29歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea1059 麻生 空弥(28歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2160 夜神 十夜(29歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2478 羽 雪嶺(29歳・♂・侍・人間・華仙教大国)
 ea2769 希龍 蒼馬(33歳・♂・侍・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●山賊さん出てきてください。
 彼ら山賊の出る山間の麓の茶屋に足を運び、ごそごそと下準備を始めると5人の人間が商人に化け、4人の人間が前後にふたりづつ警備に当たり、隊商に偽装していた。
 偽装した隊商へ盗賊達を攻撃させ、おびき出すのがねらいである。
「あのぉ大丈夫なんでしょうか?」
 本所銕三郎(ea0567)に話かける今回の依頼人の娘。本所は商団から服を借り袖を通しながらゆっくり答えた。
「あぁ、大丈夫だ。何も心配することはない」
 おぼつかない言葉で本所は娘に心配するなと話しかけた。その理由は彼女の服装だ。山に籠もっての作業をメインにしている為、袖の無い服と、おへそと太ももを露わにした西洋腰巻きと言う非常に露出度の高い服装をしているのである。ジャパンでは異例に露出度が高いため少々目のやり場に困る。
「んっ、アレは‥‥」
 山間の、右手が崖、左手が傾斜に成っている山道。そこで 緋邑嵐天丸(ea0861)は何かを見つけた。道の真ん中に大八車が転がしてあるのである。
「 こんな所に何で大八車が転がしてあるんだ?」
伊勢千子村正(ea0537)がそれをどかそうとするが、ひっくり返っている為一人では何とも出来ない。だが、それこそが、彼らの思うつぼであった。そう、その彼らとは。
「ぐっうぐ」
 御蔵忠司(ea0901) はその身に矢を受け地に伏した。ヒザに刺さった矢の部分から血がにじみ出してきているのが分かる。
「くっ、こんな事をするのは誰ですか!!」
 御蔵が矢の飛んできた方向へと目線を送る、斜面となる山林に弓を構えた男達が5人。
「しまった。計られた」
 羽雪嶺(ea2478)が悲鳴を上げた。彼だけではない。伊勢千子も緋邑も本所も御蔵も商人に扮している面々には皆矢が1〜2本刺さっている。返しがついているのである。それを抜くことは出来ない。
「くっ、外道が」
 風間悠姫(ea0437)が剣を抜き、山間の斜面を駆け上がる。それを見越したのか、5人の盗賊達は我先にと山間の奥へ奥へと逃げてゆく。
「逃がすな。追え!!」
 龍深城我斬(ea0031)が言葉を放ちながら風間をおうようにして山間へと昇ってゆく。
加藤武政(ea0914)と麻生空弥(ea1059)もそれに続くようにして後を追った。

●山賊のアジト?
 15分ほど山間を上り詰めた場所に山間に洞穴を発見した。盗賊達5人はその洞穴の中への逃げ込んでゆくようだ。罠かも知れない。4人の頭に不安がよぎった。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず‥‥か、とにかく今は経験を積まないとな。何をするにしても、まずは強くならないと話にならないからな‥‥」
 罠で有ることを覚悟した上で、麻生空弥が腰の剣を抜いてゆっくりと洞穴へと近づく。彼の鼻につんと血のにおいがしたのは、それからまもなくしてからのことである。
「うわ、あっあぁ、たっ助けてくれ!!」
 洞穴の中から悲鳴が聞こえる。
 不振に思いながら刀を構えて洞穴に近づく面々、洞穴から人影が近づいてくるのが分かる。それは、盗賊なのか、それとも人なのか、近づいてくるそれはもとは盗賊だった物を引きずる様にして現れた、オークの姿であった。
 6匹のオークが、絶命し血まみれに成った2人の盗賊を引きずりながら洞窟の入り口へと現れた。そこに盗賊を追ってきた集団が鉢合わせする形と成ったのだ。
「おやぶん。まだ仲間が居たみたいだ。(オーク語)」
 オークの言葉に、奥からゆっくりと表れたのはバグベアである。首から上がイノシシ。首から下が熊のオーガ。それが豚顔のオークを引き連れているのだから滑稽である。
「お前達が、盗賊を倒してくれたのか? 半分は礼を言うぜ」
 加藤 武政が刀を抜いて対峙する。バグベアはスッとこちらを見ると静かに質問に答えた。
「縄張りを守っている‥‥ダケダ。この山は、オデタチの縄張り‥‥ダ(ジャパン語)」
 そう言って、オーク達のボスは加藤や麻生達をジッと見つめながら答えた。
「闘うのなら、相手になるぞ。ここはオデタチの縄張り‥‥だ。(ジャパン語)」
 ゆっくりと、たどたどしいジャパン語で威圧をかけてくるバグベア。
 4人の足が震える。バグベアが自分達より数倍強い敵であることを感じ取っているのである。それは、浪人や侍としての、戦いに身を置く者の直感と言っても良いだろう。
 何も知らない三下ならば、攻撃を仕掛けて返り討ちに会っているに違いないのだ。
「せめて‥‥その盗賊の死体を渡してもらえるか?」
 羽がおそるおそる。ゆっくりとした言葉でバグベアに話しかけた。
 バグベアはあごでオーク達に指示を出すと、オーク達は盗賊2体の死体を彼らの前に差し出した。話の分かる化け物達であると多少は関心する。
「オデタチは、ヘイワを望むワケでも、人間がスキなワケでもない。今は良いコトがアッタデ、キゲンガ良いダケ‥‥ダ。オデタチは闘うコト大好き‥‥ダ」
 辿々しいジャパン語で説明しながら2体の盗賊の死体を差し出すバグベア。オーク達は戦利品を持って、既にここを後にするところらしい。
「後3人‥‥居たはず何なのだが‥‥知らないか?」
 こちらも片言の言葉で話しかける風間悠姫。そんな風間をジッと見つめ、ニヤリと笑うバグベア。彼はどうやら風間が気に入った様だ。
「他は逃げた。西に逃げた。ソレよりオマエ、べっぴんダナ。オデの嫁に成るか?」
 そう言って、スッと風間の胸に手を伸ばすバグベア。胸を触られながら、落ち着き払った口調で風間は静かに一言だけ答えた。
「考えさせてもらおう」

●逃げる盗賊達
 三人の盗賊達はバグベアとオークの襲撃から辛くも逃げ出していた。どこへ向かうでもなく、一目散にひた走りに走っていた。
「もう、ここまで来れば大丈夫だろう」
 盗賊の頭目らしい男が額の汗をぬぐい、大きく肩を揺らして息をする。
 ポタポタと落ちる玉のような汗が、彼らの疲労を物語っている。
「だが、それを許さぬ者がここにいる」
 夜神十夜(ea2160)が刀を抜くと、ゆっくりと盗賊達との間合いを詰めた。
 盗賊達は一瞬にして顔色を変えると、腰からナタを抜いて構えを取った。
 アルファルド・ルージュルペ(ea0959)も両手にダガーを構え、二刀流でつっこんでゆく。ダブルアタックとシュライクが彼の特記すべき武器なのだ。
「はぁぁぁぁぁぁ」
 希龍蒼馬(ea2769)が大きく息を吸い込み、そしてゆっくりとはき出す。
 見えない波動が蒼馬の周りをゆっくりとまとわりつくようにして発動する。
 オーラ。そう。オーラボディが彼の身体からほとばしっているのだ。初級といえどもその効果は絶大である。
「遠慮無く、油断無く、容赦無く。さぁて、派手に行きますか」
 殊未那乖杜(ea0076)が大きく息を吸い込み、そしてゆっくりとはき出す。
 彼の右手に握られた日本刀にオーラが流れ込んでゆく。
 オーラ使い2人と熟練の戦士の三人を相手にした疲労した山賊。彼らの刃のつゆと消えるまでに、さほどの時間はかからなかった。

●山賊の6人目

「しっかりしてください。大丈夫ですか?」
 けが人をかばい矢を抜こうとする山師の娘しかし、返しがついている矢は抜くことが出来ない。傷口を少し開けないといかんらしい。
「私たちのゲルまで行けば、ヒーラーが居ますから、何とか傷の手当てが出来ます。それまでは我慢してください」
「すまねぇなぁ姉ちゃん。依頼人なのに、俺たちにそんなに優しくしてくれて」
 伊勢千子が山師の娘にホロリと涙の一粒を流した。
「お静と呼んでください。ごめんなさい。何の訳にも立てなくて‥‥」
 山師の娘(お静)がそう言って申し訳なさそうな顔でうつむいている。
「オウオウ、姉ちゃん見せつけてくれるねぇ〜。ふふん」
 6人目の山賊がどこからとも無く現れるとゆっくりと娘の近くへと近づいてくる。
「護衛は皆山に誘い込まれた。後はおまえたちから馬とお荷物を頂くだけだ」
 そう言って無防備に近づいてくる6人目の山賊に対して、御蔵 忠司は隠し持っていたダガーを抜いて、それを山賊へと投げつけた。
 手加減出来ない彼の一撃は深々と盗賊の胸に刺さって絶命させるに至る。
「今良いところなんです。じゃましないでください」
 当たりを見回すと、伊勢千子とお静の成り行きを見つめる他の男性陣面々の姿があった。

●そして

 何とか山賊を撃破(?)し、娘を山師の所へ連れて行った彼らは。3人のドワーフと一人の人間(僧侶)に熱い歓迎を受け、キリタンポ鍋をごちそうになり、傷の手当てを受けた。何とか今回のミッションは辛くも達成されたことになる。
 当初の目的だった盗賊を捕まえると言う事に関しては失敗してしまったが。
「ありがとう。皆さん。お静が出かけてから、すぐにここにイノシシの顔をした魔物がやってきて、縄張りを荒らすなって襲ってきたんです。何とかワケを話して、引き取ってもらいましたが、ずっとお静のコトが心配で、いやぁ山賊を退治して頂いた上に、無事お静を連れてきてくださってありがとうございます。何かお礼をしたいのですが、今は何も出来ません。せっかく作った鎧を、猪頭に持って行かれてしまいましたので‥‥」
 そう言って残念そうに目線を下げる山師達。

 だが、冒険者達の胸は満足している。初ミッションの達成にそして、お静の笑顔を見れたのだから。