『オークに襲われた村』

■ショートシナリオ


担当:

対応レベル:1〜3lv

難易度:難しい

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:13人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月22日〜06月29日

リプレイ公開日:2004年07月01日

●オープニング

 江戸から2日ほど離れた小さな村。村にはそれらしい名物も無く、強いてあげるならごま豆腐が美味しいと言うだけの何の変哲もない村であったら、その村がオークの襲撃を受けたのは非常に悲劇という他は無かった。
 数匹のオークとそれを指揮するオークリーダー。漆黒の黒南蛮鉄の鎧に身を包み、左手には江戸畳一畳ほども有る巨大な盾を携え、右手にはハルバードを構えている。
 その西洋兜に隠れた素顔は、豚ではなく、野生のイノシシの物であった。
「コロシテ、ウバエ(オーク語)」
 片言のオーク語で命令を出すそれは西洋の冒険者の鎧を着込んだバグベアである。
肉厚の有る鎧を着込んだそれに対して、村はなすすべも無く乗っ取られてしまった。
 所々に、元々は人間だった物の破片が飛び散っている。
 農家に有る蓄えの食料を口にして、満足そうにオーク達は勝利の雄叫びをあげていた。

「豚どもの頭がイノシシとは笑わせる。」
 一人の浪人らしき人物が黒南蛮鉄で身を包んだ者の前にゆっくりと姿を現し、そしてふてぶてしい笑いを浮かべながら、腰の刀を抜き、ゆっくりと間合いを近づく。
「オレはこの村の人間に雇われた用心棒さ。あんたらみたいな怪物や山賊から村を守る様にな。
もっとも、こんな数で襲ってくるとはオレも予想はしてなかったがな」
 浪人はそう言って黒南蛮鉄の化け物ににらみを利かせた。
 敵の大将首を落とせば敵の戦意は下がる。雑魚は放っておいても逃げ出すだろう。
 そう判断したからこそ、一番に敵のボスらしき者に挑みかかったのである。
「ニンゲン‥‥ノ、モノノフ‥‥カ。(ジャパン語)」
 すっと腰を落とす黒南蛮鉄の化け物。
浪人は一足飛びに間合いを詰め、渾身の一撃をもって上段からの鋭い撃ち降ろしの一撃を放った。

「ガキィィィィィィン!!」

 鋭い金属と金属のぶつかる甲高い音。男はにやりと笑った。兜越しに敵の頭をたたき割ったと確証したからである。だが、それが間違いだと気がついたのはそれから数秒後の事であった。
 黒南蛮鉄の化け物は左手に携えていた盾を扱い、男の攻撃を受け止めていたのだ。
だが、接近戦では右手のハルバードでは攻撃出来ない。懐に入った男の優位は変わらないのだ。
「コンド‥‥ハ、コチラ‥‥ノ、バン‥‥ダ!!(ジャパン語)」
 そう言って半歩右足を引き、右足を軸にして右回転を行う。遠心力を付けたハルバードが、黒南蛮鉄の怪物を中心に時計回りに回転してゆく、そして、その刃は加重を乗せて男の左脇腹に食い込んだ。
 半歩の差が勝敗を決した。
 食い込んだハルバードの刃はその遠心力と重さを持ってして男の胴体から上下へと男をまっぷたつに切り裂いた。男の目から光が失われる。
 元は人間だった物の肉塊と暖かな血が空中を舞い、そして大地に帰った。
「コノマチヲ、ワレワレノネジロニ‥‥スル。(オーク語)
 黒南蛮鉄の化け物の言葉に、複数のオーク達は従い、村で一番大きな家(庄屋の家)に
奪った食料や戦利品を持ってゾロゾロと集まっていった。
 ちょろまかす者は居ない。皆彼に服従している。
 どうやら庄屋の家を根城にして、村を乗っ取る気で居るらしい。
「いやです。話して下さい。」
「お願い助けてぇ」
 どこからともなく2人の女性の声が聞こえた。どうやら長者の家の村娘達が納屋に隠れていたのを彼らが発見し、ボスの所に連れ出して来たようだ。
「ボス・生きの良いニンゲンノ娘です。頭から丸かじりにしてやりましょうか?」
 オークの一匹がオーク語でボスにふたりの村娘を献上した。
 黒南蛮鉄の化け物はふたりをゆっくりと、まるで品定めでもするかのように確認すると、一人の娘を解き放った。
「オマエハ‥‥ニガシテヤル、オマエハヒトジチ‥‥ダ」
 村娘の一人を解放し、もう一人は小脇に抱えて、庄屋の家の中へと消えていった。
戦利品を持ったオーク達もその指示に従う。

‥‥それから2日後。解き放たれた村娘は命からがら江戸の町にたどり着くと、冒険者ギルドのドアを叩いた。

『お願いです。ねぇさんを助けて下さい。』


●今回の参加者

 ea0023 風月 皇鬼(31歳・♂・武道家・ジャイアント・華仙教大国)
 ea0240 王 笑猫(34歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea0920 白夜 躯(29歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea1381 大桐 秋獅郎(30歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea1426 鬼剛 弁慶(35歳・♂・浪人・ジャイアント・ジャパン)
 ea2144 三月 天音(30歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea2557 南天 輝(44歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2741 西中島 導仁(31歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 ea2838 不知火 八雲(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea3055 アーク・ウイング(22歳・♂・ウィザード・人間・ロシア王国)
 ea3192 山内 峰城(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3874 三菱 扶桑(50歳・♂・浪人・ジャイアント・ジャパン)
 ea3899 馬場 奈津(70歳・♀・志士・パラ・ジャパン)

●リプレイ本文

●猛々しくも荒々しくも

 風が吹く。戦いの風が吹く。しんみりと身体にしみこむようにして。
鬼剛弁慶(ea1426)がシャリンシャリンと六角棒をならし村の正面から中へと入っていく。
7人そのメンバーの顔ぶれは微妙にこわばっている。
 オークの数が分からないためか、それとも‥‥。
 西中島導仁(ea2741)も負けじと日本刀を抜き意気揚々と町の中へと入っていった。その後ろに5人。7人は正面に立ちはだかる4匹のオークと、黒南蛮鉄の西洋甲冑に身を包んでいるバグベアと対峙していた。まるで荒野のガンマンのような対峙である。
「面白い。オマエタチは面白い」
 身の丈2mのバグベアと身の丈2mのオークではブレスセンサーでは見分けることは出来ない。それ以上にオークはゴブリンに比べて強敵である。その強さは尋常では無いだろう。それらを4体+1体目の前にして少々気圧される面々である。

「行くぞ、化け物!!」
 風月皇鬼(ea0023)が一体のオークへと間合いを詰め攻撃を仕掛けた。彼の蹴りが一匹のオークの側頭部にヒットする。だが、オークは微動だにすることはない。純粋に威力が足りないのである。
 それに追撃するのは王笑猫(ea0240)。彼のソニックブームがまたしてもオークの身体を直撃するが、これもオークの前では涼風の様な物なのか微動だにしない。
 武道家ふたりが一体のオーク相手にして手こずる形と成った。
 山内峰城(ea3192)が別なオークへ攻撃を仕掛けた。
 彼の日本刀の攻撃はオークの肩を切り裂いた‥‥が、どう見ても軽傷。傷は浅い。
山内に寄って手追いに成ったオークに対して、三菱扶桑(ea3874)が刀を振るう。
 刀はオークの横腹を削るがやはり浅い。達人の太刀裁きだが、オークへのダメージは少しづつ削るのが手一杯の様子だ。
「むが!!」
 オークのハンマーが勢いよく振り回される。それを十手で受け止める馬場奈津(ea3899)。パワーに押されて後方へと押し流されるが、それでもオークの恐怖の一撃を受け流したことは賞賛に値するだろう。
 一体のオーク相手に2人の武道家と3人の剣士が相手をする形で対峙している。
そして、もう一体のオークが前に出てくるのを鬼剛と西中島が相手をする。
「まずは数を減らしましょうか!!」
 西中島のダブルアタックが交差する。左手のダガーと右手の日本刀。ダガーのダメージはほとんど無いが、それでもオークを同様させるのには十分だ。
 そして、その隙を狙ったかのようにして、鬼剛のメタルロッドの渾身の一撃がオークの土手っ腹たたき込まれる!! メタルロッドの痛烈な加重が加わる。それは並の剣士の数倍の破壊力である。目の前のオークはそれが直撃し、あばら数本をへし折られ、一気に瀕死のダメージを被りそのまま後ろへよろよろと後ろへ倒れ込んだ。それを見ていた他のオーク達が汗を流す。
「ソイツはオマエタチではムリだ。オレが直接やろう」
 長さ2.5mのハルバードを軽々と片手で振り回し、バグベアは、メタルロッドを構えた鬼剛の前へとズイとその身体を踊り出させ、その戦いを楽しもうとしていた。


●救出作戦

 正面から特攻する陽動部隊とは別に、5人+1名の面々は見張りの敵の扱いと人質を救出するために動いていた。
「こっちが食料を溜め込んでおく部屋です。」
 お香奈さんの案内とアーク・ウイング(ea3055)のブレスセンサーに寄って、部屋の奥に居る2匹のオークと智さんが捕まっている部屋は難なく発見させた。
 予想外に溜め込まれていた食料は減っており、その部屋の天井からお智さんはロープで吊されていた。
「ここは私が相手をさせてもらうのぢゃ」
 三月天音(ea2144)が目の前の2匹のオークに対して剣を抜き、ずずっと間合いと詰める。彼女の身体には炎の魂が燃えていた。(ファイヤーエリベイション)
「オレも忘れないでくれよ」
 正面のオークに一気にブラインドアタックで攻撃を仕掛ける南天輝(ea2557)ふたりの剣士とオークが2匹、その戦力差は歴然としているがやむを得ないのだ。
 彼らが時間を稼いでいる間に、大桐秋獅郎(ea1381)と不知火八雲(ea2838)が吊されていた娘を救出する。
「大丈夫ですか? お嬢さん」
 大桐がそう言って気を失っていたお智さんを肩に抱える。
「長居は無用だ!! 撤退する」
 不知火がふたりのお嬢さんと大桐に声をかけ、屋敷を後にした。
後に残ったふたりの武運を祈って

●黒南蛮鉄の魔物
「確かに、オークを一撃でぶち殺すだけのパワーを持っている様だが当たらなければ意味がない。当たる威力では‥‥鎧の上から決定打を与えられない」
 鬼剛はメタルロッドを構えて静かににらみを利かせていた。
まるでそれは漫画のワンシーンの様に、お互いに3m程の間合いを空けて動かないのである。お互いがお互いに相手の一撃の破壊力を認めており、うかつには動けないのである。
だが、逆を返せば、うかつに動かない限りはその一撃を食らうことはない。ハルバードの一撃もメタルロッドの一撃も、お互いを重傷もしくは瀕死に陥れる一撃には十分なパワーが込められているのである。
「何か言ったらどうなんだ? 人間の言葉が分かるんだろう?」
 西中島が剣を構えてバグベアに語りかけた。彼の剣では鎧の上からではダメージを与えられないことは承知の上で、注意を引くために行ったことである。だが、それは鬼剛の為に行ったことではない。その相手とは‥‥。

 白夜躯(ea0920)がどこからともなく現れ、一瞬にしてバグベアにヒザ蹴りを食らわせ、その場を一瞬にして離れる。ヒット&ウェイの一撃を放った。
「オマエ、なかなかヤル」
 ハルバードでなぎ払いの一撃が放たれたが、それをまるで踊るようにして白夜は回避するとにやりと笑って皆に合図を送った。その合図と共に潮を引く様にして引き下がる面々。
「楽しかったよ。化け物。だが、俺達の目的は人質救出だ。オマエらとの戦闘じゃない」
捨てぜりふを残して町を後にする面々。オーク達の追撃をファイヤートラップで撃破しながら、彼らは娘ふたりを乗せ、予め用意しておいた荷車を馬に引かせて、その町を後にするのであった。