京都緊急警護

■ショートシナリオ


担当:

対応レベル:7〜13lv

難易度:難しい

成功報酬:4 G 18 C

参加人数:7人

サポート参加人数:6人

冒険期間:05月28日〜06月03日

リプレイ公開日:2006年06月05日

●オープニング

●京都緊急警護
 大津町奉行神楽坂紫苑は頭を悩ませていた。
 五条の宮の一念発起によって京都の治安は最悪である。
 これは何とかせねばならない。
 現在京都と五条の宮との戦いは続いているが、現状が隣国近江には届いてこない。
「このままでは後手後手に回るのは必定。何か対策を練らねば成らぬな」
 大人と言うのは大義名分がないと動けない。
 軍というのもまた必定である。
「京都の治安回復というのはどうでしょうか? 京都は今戦乱に乗じて治安維持がおぼつかないご様子。なれば我々近江武士団の手で京都の治安回復を!」
 神楽坂紫苑に意見する物が居た。名を京極鹿之助。京極家当主の京極弓近の一人娘で男装の女性である。
 京極家は近江当主浅井長政の浅井家との仲が余り宜しくないため、現在神楽坂家の神楽坂紫苑に媚びを売ってる状態である。

「しかし、京都の警備は黒虎隊や新撰組‥‥諸侯の見まわり組みなども出回っておる故‥‥今、我らが動けば衝突するやもしれぬぞ?」
 神楽坂紫苑の言葉を制する京極鹿之助。
「何をおっしゃいます! 京都は平織家領地! 安祥神皇様を守るのは平織家の勤め! 五条の宮の無い京都を治めるのは我々平織家臣の勤めであります」
 その言葉に心を打たれた(?)神楽坂紫苑。兵を動かすことを決める。

「分かった。京都治安回復のため、兵300を貸し与える。だが、兵士達は京都の地理に不慣れ、冒険者の手を借りて治安回復に努める良い」
 神楽坂紫苑の言葉に頭を下げる京極鹿之助。
「ははっ! この京極鹿之助、張り切って京都の治安回復に努めます!」

 そんなわけで冒険者募集。京極鹿之助と共に、京都の治安回復のお手伝いをお願いします。
 また、治安回復の為の良い案が有ればどしどし募集したいと思います。
 そんな依頼が京都冒険者ギルドへと届いた。

●今回の参加者

 ea6476 神田 雄司(24歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb0921 風雲寺 雷音丸(37歳・♂・志士・ジャイアント・ジャパン)
 eb1421 リアナ・レジーネス(28歳・♀・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 eb1528 山本 佳澄(31歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb2244 クーリア・デルファ(34歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 eb2404 明王院 未楡(35歳・♀・ファイター・人間・華仙教大国)
 eb2704 乃木坂 雷電(24歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)

●サポート参加者

エヴァーグリーン・シーウィンド(ea1493)/ ハルカ・ヴォルティール(ea5741)/ デュランダル・アウローラ(ea8820)/ 十野間 空(eb2456)/ 明王院 月与(eb3600)/ チサト・ミョウオウイン(eb3601

●リプレイ本文

●京都緊急警護
 寄らば斬る。寄らば斬る。
 我ら近江の無頼漢。
 寄らば斬る。寄らば斬る。
 我ら近江の古強者なり。

 武者鎧に身を固め。
 弓や槍で武装した近江武士団が300名。
 馬に乗ってゆっくりと西へ西へと移動している。

 先頭を進むのは京極鹿之助。
 男装の麗人にて朱色の武者鎧に身を包み、甲羅盾を背中に背負っている。
 先日当主で有った父が病死(?)して、お家お取りつぶしになりかけたが、浅井長政の温情で次期当主に抜擢され、無き父の汚名(?)を返上をするべく近江の鷹派の急先鋒である。

 京都の入り口で冒険者達と合流する。
 しかし、どこから見ても物々しい出で立ちである。
 今から戦場に向かうと言っても納得出来る集団であるから。

「京都の諸君! 我々は近江武士団である! 京都の治安回復に参った! ゆすりたかりは切り捨てる! 乱暴狼藉切り捨てる! 治安を乱す物は切り捨てる! 邪魔する物も切り捨てる! 安心して商いに励んでくれ!」
 京極鹿之助はそう言って高らかに声を上げた。

 流石に冒険者の顔色が変わる。
 京都の面々の顔も唖然とする。

「初めまして冒険者諸君。援助‥‥ヨロシク頼むぞ」
 そう言って鹿之助が馬から下りて冒険者達に握手を求めた。

「お待ち申し上げておりました!近江武士団の皆様方!」
 リアナ・レジーネス(eb1421)が深々と礼をする。

「それでは‥‥兵を2つに分け、一体を北へ、もう一体を西へ配置すると言うのはどうでしょうか?」
 神田雄司(ea6476)が京極鹿之助に意見する。
「師曰く‥‥戦場では兵力を割るのは具の骨頂である。っと有るが、兵力を割るメリットが何処にあるのか、それをお教え願いたい」
 鹿之助がそう言って神田雄司の意見に質問する。
「五条の宮の残党が京都で無差別に暴れない為に、北と西の入り口で目を光らせているのです」
 彼の言葉に鹿之助が少し考える。
「京都は碁盤の目の様に道が引かれていると聞く。っと成ると全ての道の入り口に兵を置く事に成れば、京都の中の警備の手が手薄に成るのでは無いだろうか‥‥」
 鹿之助はそう言って疑問を投げかける。

「はっきりいって、この任は貧乏くじだ。下手をすれば五条軍四千五百を相手にするハメになる。逆に何も出てこなければ京まで出てきて何もしなかったと揶揄されるだろう。だが、この志士、風雲寺雷音丸、臥して平にお願いする。都外縁での警備は誰かがやらねばならぬ任だ。今、在京の各組織ではそれができぬ。どうか、近江三百の兵で、この任を成し遂げて欲しい」
 風雲寺雷音丸(eb0921)がそう言って頭を下げて鹿之助に願い出る。

「頭を上げられよ。風雲寺雷音丸殿。知恵を借りているのは我らの方である。我らの兵は300と数は少ないなれど、近江では泣く子も黙る一騎当千の古強者部隊。礼も法も知らず‥‥ただ豹の如く強いと噂される一団です。例え一万の兵が来ようとも、見事押し返して見せましょう」

 半分以上ははったりが入っているかも知れないが、彼女は本気である。

「噂だが、神楽坂紫苑殿が配下を率いて、三河勢とともに京へ援軍に来るらしい。だが、三河勢も近江勢も京近辺の地形には不慣れだろう。今のうちに、野営地や行軍経路の下調べをしておけば、合流してからが楽になるのではないか?」
 付け加えた風雲寺雷音丸の言葉に胸を張って応える鹿之助。

「安心召されよ。神楽坂紫苑は我が直属の上役にして、近江最強の軍師。既に京の地形は下調べをし、三河勢を美味く京都に導いてくれるであろうよ。では神田雄司殿に兵力五十騎を貸し与えましょう。それで街の北側の警護を。風雲寺雷音丸にも兵力50騎を貸し与えましょう。それで西側の警備をお願い致します」
 そう言って鹿之助は静かに頭を下げた。

「では、私も西組みにご同行いたします」
 リアナ・レジーネスがそう言って西組に同行する。
 野党と化した敵を迎撃する必要があるからである。
 山本佳澄(eb1528)は兵力を完全に二分するように進めたが、どちらかが兵力不足に成ったときに、予備兵力を投入するために、3つに兵力を分けることを京極鹿之助は強く進めた。それに対して山本佳澄は説得する要素を持ち合わせては居なかった。

 クーリア・デルファ(eb2244)は北組に合流した。
 50人‥‥っと言うと少ないように感じるが、実際には馬に乗り鎧を着た武者達が50騎。半数が弓兵で半数は薙刀や槍などを装備してる。
 しかも彼らは徴集兵ではない、武家の次男三男から作られた訓練された兵団である。
 冷や飯食いの次男三男は武芸に秀でている場合が多い。いや、そうならざるおえなかった者達が多いのだ。そんな中でもはみ出し者だが武に優れている者達を集めて作った鷹派の塊がこの集団なのである。
 普通の司令官の下では手に余るために神楽坂紫苑に押しつけたと言われている。

「武器の手入れ‥‥手伝おうか?」
 北にキャンプ地を作りながらの武士団にクーリア・デルファが話しかける。
 武士団はその行為に喜びの笑みを浮かべている。


 街の中‥‥五条大路から二条大路に続く鴨川河原を利用して陣を張る近江武士団。
 当然もめる。検非違使や見廻組、新撰組と異なり、近江軍には本来京都での治安維持活動‥‥今風に言えば警察の様な権限は持っていない。
 故に本来その権限を持っている者達ともめにもめている。

「本来京都の治安を維持する職務に有るおまえたちが無能だから我々がこうして見るに見かねて力を貸してやっているのだ! 我々の素性を問うより、自らの無能さを恥よ!」
 半ばけんか腰に亀盾片手に前に出る京極鹿之助。
 見まわり組みの1班の人数は10〜15名程度。現在目の前の近江武士団は150騎。圧倒的に数で勝っている上にけんかっ早い集団である。何人かは既に刀を抜いていつでも斬りかかれる体勢である。
「おっ憶えておれよ!」
 いちもくさんに去って行く見廻組。どこの藩の見廻組かは分からないが。
「ふん。侍風情が志士を見下しおって。虎長さま、見ていてくだされ、京都の治安はこの鹿之助めがきっと回復してみせましょうぞ!」
 新撰組が聞いたら一触即発に成りかねない問題発言である。

 明王院未楡(eb2404)が去っていく見廻組に平謝りに謝っている。

 近江武士団を京都の中に入れるといざこざが起きる‥‥故に外周の警備に回したい‥‥その目論見は見事に的中したが、どうやって説得すれば良いのか悩む明王院未楡。

「あの‥‥鹿之助様‥‥都の中の事は‥‥民人の信で一日の長がある方々にお任せした方が、混乱が無いでしょう。逆に‥‥今都入りすれば、敵の間者に良い流言のネタを与えてしまいますわ」
 明王院未楡が兵を都の外に出してはどうかと遠巻きに話を持っていく。

「お心使い感謝する。だが、補給の為の要所は都の東に必要である。大津からの食料や木材の輸送を受け取り備蓄する為の陣屋が必要なのだ。兵は一日中飲まず喰わずではおられぬ。メシを喰い、寝る事も必要ゆえ、交代させねば成らぬ。今北の兵50を入れ替えたゆえもうすぐ戻ってくるだろう。敵がくるやも知れぬ北や西で眠らせる分けにもいかぬ。結論的にこの河原に陣屋を張るしか無いのだ。‥‥ここより良い場所が有れば移動するが」

 流石にそう言われて困り果てる明王院未楡。近江は京都の東である。
 東から定期的に兵が連絡や食料の輸送を行うのである。京都の東の外れの河原を利用するしか無いようだ。

 新撰組や見廻組が遠巻きに近江武士団をけん制している。
 乃木坂雷電(eb2704)がそれを説得し、何とか最悪の事態はされられている。

 5月某日。神皇軍が三河勢と近江勢の助力を五条軍を破ったとの報せを受ける。
 三河勢と近江勢合わせて4000に近い。
 米だけで一日に20石は食べるだろう。米俵にすると約50俵。重さにすると3tだ。
 彼らの為の当面の食料が近江からガラガラと大八車に乗せられて運ばれてくる。
 数日分‥‥っと言ってもとんでも無い量であり、それらを炊き出し、近江勢や三河勢に与えるというとんでも無い仕事がいきなり転がり込んでくる。

「冒険者の皆々様には感謝する。わらわの妹分‥‥いや、弟分の鹿之助も世話になっておる様子、そして近江内の不振な動きを警戒し、真っ直ぐ京都に来れなかったことも、重ねて侘びで感謝する。皆よくぞ京都を守ってくださった」
 近江勢指揮官の神楽坂紫苑が冒険者に深々と頭を下げる。
 彼女は既に近江で3番目に偉い地位にある。それが冒険者に頭を下げているのだ。
 普通の頭でっかちのお偉いさんではあり得ない事である。

「紫苑様。京都に来て思いました。京都にも兵を置き休ませる場所を作った方が良いと思います。それと‥‥我々にも見廻組と同じ権限をお与え下さい」
 京極鹿之助が神楽坂紫苑に頭を下げる。
 そこにすかさず紫苑のハリセンが炸裂する。
「ばかもの、何でも強請るのではない! それより先ずこれからもお世話になる冒険者殿達に頭を下げるのが礼儀であろうが!」
 そう言って二発目のハリセンが鹿之助の頭に炸裂する。
「ははっ申し訳ございません。重ねて申し訳ございません!」
 神楽坂紫苑と冒険者に対して深々と頭を下げる鹿之助。

「だが、雲月坂城と清滝川城が陥落したのは事実。京都を守るための城‥‥兵を常駐させる為に城が必要かも知れぬ‥‥帰ったら早速検討してみよう」

 そう言って神楽坂紫苑が陣屋を後にする。
 近江勢と三河勢の面倒を見つつ、多くの課題を残して長い夜は明けるのであった。