蜘蛛退治

■ショートシナリオ


担当:

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月02日〜10月07日

リプレイ公開日:2004年10月08日

●オープニング

「はいはーい、依頼を探しにきたのよね?」
 冒険者ギルドに足を運ぶと、待ってましたとばかりにギルドの娘が近づいてきた。
「ついさっき入ったばかりの依頼があるのよ。
 依頼主は若い薬師なんだけど・・・・」
 最近、田舎から研究の為に出来たという若い薬師だ。
 話を親身に聞き、聞いた症状に一番あう薬を調合し、渡される薬はどれも良く効くのだという。
 腕の確かさは口コミで次第に評判になり、薬師が店を開く近所では、ちょっとした有名人なのだとか。
「いつも薬草を探しに行く森があるのだけれど、そこに大きな蜘蛛が巣を作って困っているんですって」
 足の先まで含めれば1mを超える大きさ、毒々しい黄色と黒の縞模様。
 依頼者の語る特徴から考えると、恐らくはグランドスパイダ。
 土の中に巣を作り、牙に麻痺毒を持っている巨大蜘蛛である。
「数は2匹。
 一緒にいるわけじゃないけれど、近い場所にそれぞれ巣を作っているみたい」
 戦う時はもう一匹の巣穴に落ちないように気をつけないとね、そう彼女は言う。
 確かに。
 2匹を相手にするのは辛いかもしれない。 
「それからね・・・・できたら蜘蛛の毒牙を持ち帰って欲しいっていうの」
 薬師は研究の為に単身田舎から出てきたぐらい、研究熱心である。
 今は新しい解毒薬の作成に力を注いでいるとか。
「その研究に使うのですって。無傷で持ち帰ってくれたら報酬とは別に買い取るそうよ」
 にこり。
 返答を待って彼女は冒険者達に微笑んだ。

●今回の参加者

 ea6085 ガイ・マードゥリック(33歳・♂・僧侶・シフール・エジプト)
 ea6087 ノラ・ルイード(24歳・♀・レンジャー・シフール・イギリス王国)
 ea6153 ジョン・ストライカー(35歳・♂・ナイト・シフール・イギリス王国)
 ea7359 ギヨーム・ジル・マルシェ(53歳・♂・ウィザード・シフール・ノルマン王国)

●リプレイ本文

「発見しまシタですネ、この向こうの木陰に1つ巣があるですネ」 
 ギヨーム・ジル・マルシェ(ea7359)は地図を持った手で仲間達に合図を送る。
 彼が見る方角、確かに地面に穴があるのを仲間達も確認することができた。
「樹のお客さンゴメンネ?」
 ギヨームは持っていたナイフを抜くと、樹の幹に印をつける。
 今日二回目のこの行動は、グランドスパイダの巣の位置の目印だ。
「2つ印をツケたネ」
 ツケと言っても払いのツケ違うネ、と呟いて、ギヨームはふと出発時を思い出していた。
 
「おや? シフールばっかりでビックリしてますネお嬢さン?」
 ギヨームの言葉に、冒険者ギルドの娘は素直に頷く。
 彼女が冒険者ギルドに所属してどのぐらい年月が流れたのかはわからない。
 だが。
 彼女の経験の中でも珍しいことであっただろう・・・・集まった冒険者が全てシフールというのも。
 これがシフール限定で募っていたのなら別だが、この場合偶然シフールばかりなのであるから。
「大丈夫ですっテ」
「そう言われてもね・・・・」
 溜息混じりに娘はどん、と机の上にバスケットを置いた。
「外へ出かけるのに食料持たずにいくなんて、飢えて動けなくなったらどうするの」
 出発直前。
 用意されていた地図を受け取りに来た冒険者達であったが、彼らはギヨーム以外、食料を持たずに旅立とうとしていた。
 遠出ではないという考えからかもしれないが・・・・いざというときに空腹で動けないでは意味がない。
 そこで保存食を用意していたギヨーム以外の三名分、娘は酒場で弁当を作ってもらってきたのである。
「ツケだからね、ちゃんと覚えてなさいよ」
 旅立つ4名の背中に向けて放たれた娘の言葉。

「ミーは対象外ネ、大丈夫大丈夫」
 明るくにっこりと笑顔を浮かべて、ギヨームはそれを記憶の棚の中に仕舞い込んだ。
「ジョンさン、これで2つ見つかったネ」
 振りかえったギヨームの視線の先で、ジョン・ストライカー(ea6153)が満足そうに頷いた。
「おーし、つーことで作戦趣旨を説明するぞ。集合だ」
 ジョンの号令でパタパタと羽音をさせながら集まるシフール冒険者。
 全4名が今回のミッション参加者である。
「ノラ、お前は巣の近くまで近づき土蜘蛛を補足。
 補足次第、挑発なり攻撃なりして巣から引きずり出してこい」
「誘い出しだね、まかせてー」
 ジョンの言葉に今回参加冒険者内、唯一の女性であるノラ・ルイード(ea6087)が元気に頷く。
 動きが素早く回避の上手いノラは、確かに囮として優秀であろう。
「ゴエモンは罠を作成しておいてくれ。ノラはそのフォローも頼む」
 ・・・・ゴエモンって誰ですか?
 と、ツッコミをいれる者はここにはいない。
「おう、まかせておけ。神聖ローマ軍でもぶったぎってやるぜ!!」
 そしてわかったとばかりに頷くガイ・マードゥリック(ea6085)。
 ガイ・マードリック、エジプト生まれの56歳ファイター。
 ゴエモンの愛称の元は不明である。
 そんなガイに鷹揚に頷きを返し、ジョンの作戦説明は続く。
「罠で足を止めたところを、俺がアイスチャクラで急所を狙いうつ。
 怯んだところをゴエモンが得意の抜刀術でぶった切ってくれ。
 ギローム殿、アイスチャクラを」
「ミーにお任せネ。じょんさンにアイスチャクラ渡すヨ」
 ジョンの言葉を受けてギヨームが笑顔を見せた。
 ノラ、ゴエモンときてギヨームだけ殿と敬称がつくのは、彼がジョンより年上だからだろうか。
「受けは使わず基本は回避だ。牙を痛めず回収する必要があるからな。
 後はこれを二回繰り返す」
 くるりと三名を見まわし、2度を強調するように指を二本立てるジョン。
「まあ不都合も出るだろうが、各自臨機応変に。
 それでは作戦開始!」
 ジョン・ストライカー、天才策略家(自称)。
 自称が取れるのはまだ未来のことである。
 そう、何故ならまず目の前で起こった出来事は、彼の作戦想定外であったし。


 こんにちは、ノラ・ルイードです。
 何か文が違うって?それは気にしちゃいけないよ。
 今回は誘き出しが僕の任務なんだ。
 じゃあ任務に挑む前に、いつもの合言葉いってみよー!
「LET! TRY! 冒険者合言葉!!」
 あ、ポーズは忘れずにね?
 最初はびしっと指差して、はい。
「片手に、長剣」
 別に長剣に限らないけれど、力押しは最後の手段。冒険者でも即斬りは犯罪者だよ。
 相手の種類を見極めようね!
「懐に、星の金貨」
 お金は肖像画に使おう! 後のことは考えなくていいよ。他の国に旅するなら福袋を買うのも手だね!
「唇に、古ワイン」
 古ワインはいいよね、無料だし! ガッツポーズで力説だよ!
 でも食い逃げはしないように気をつけてね。マナー違反も気をつけよう。
 さあ、ここまで来たら心得は完璧♪
 キミの思いの丈を背中に込めて、ベストポーズでアピールだ!
「背中に人生を!」
 決まったね!
 ・・・・・・あれえ?
 ジョーン、何か世界が違うよ。どうかした?
 ジョンはきっと考え事でもしてるんだね。蜘蛛出てこないし。
 ガイは罠作成終わった? そう、それじゃ後は蜘蛛が出てくるのを待つだけだね。
 しかたないなあ、行ってくるか。
 じゃあいってきますー・・・・・・・・・・あれ?
 暗い上に何かねばねばするよー。
 ねばねばねばねば。
 そういえば。
 グランドスパイダは巣の入り口に網を張って、糸の動きで獲物がかかったことを知るって聞いた覚えがあるね!
 ・・・・ってことはぁ。


「ひー」
 ぱくり。
 と、噛まれる寸前に両手のダーツを投げ、蜘蛛が怯んだ隙にノラは穴から飛び出した。
 回避の高いノラだからこそ、何とか逃げられたようなもの。
 巣穴の闇に紛れていた蜘蛛の糸は、ノラの身体に絡みついて普段よりも俊敏さを低下させていた。
「空を落ちる〜ひとすじぃ〜の」
 少しばかり音の外れた歌が聞こえてきたのはその時だ。
 流れ星が落ちるように、ガイが流れ落ちる。
 神聖ローマ軍でもぶったぎってやるぜ!が口癖の彼であるが、今回の敵は残念ながらグランドスパイダ。
 しかし彼のやる気に翳りはないのだ。
「BLABO! 流星脚ッッ!」
「「「「欠片もぶった切ってねー」」」
 仲間達から驚愕の声があがったが・・・・蜘蛛を見据える彼に、気にとめた様子はない。
 ノラを狙う動きまで計算にいれた狙いは正確で、ガイの蹴りはグランドスパイダを捕らえた。
 そのまま地面を蹴り返して・・・・と、戦闘イメージを実行しようとしたガイであったが、それには少し技量が足らず。
 バランスを崩したままの攻撃は危険と判断し、1歩引いて体勢を立て直す。
 そして地面を蹴り、再びグランドスパイダに接近すると勢い良くダガーを抜き放った。
「おらおら動きが遅いぜッ」
 素早く攻撃を繰り出される刃が、煌くたびにグランドスパイダの傷を増やしていく。
 回避力の低下したノラに代り、ガイが前衛を受け持つ形になった為、視野外から攻撃を繰り返せなくなったのは誤算。
 しかし。
 ガイに直撃しそうになったグランドスパイダの足を、飛来した何かが傷つける。
 木漏れ日にキラキラと光るそれは、ギヨームが作り出した魔法の氷盤アイスチャクラ。
「作戦続行だ」
「おう」
 アイスチャクラを再び蜘蛛へと放つジョンの援護を受け、ガイは次々と攻撃を繰り出す。
 ノラに比べればガイの回避はまだまだ危うい。
 だが、それでも大きな傷を負うことはなく。
 ほどなくグランドスパイダは緩慢な動きに変わる。
「ざっくり綺麗にバラシテ晒して供養してやるよ」
 グランドスパイダの腹にダガーを突き立てると、にやりとガイは唇を歪め、その腹を切り裂いた。

 2匹目は1匹目に比べて随分楽な戦いだった。
 巣穴の糸に警戒もしたし、予めの準備も上手くできた。
 個体別の違いはあるが、種族的な動きはそう変わるものではない。同じ土地に住むものなら尚更だ。
 先程同じ種族と戦ったばかりであるために、戦闘時の状況判断もしやすかった。
 2戦を前衛で戦い抜いたガイは傷を負っていたが、それも依頼人から渡された薬で治療を終え。
 ノラが丁寧に蜘蛛の牙を確保して彼らは街へと凱旋を果たすのであった。


「毒消しのサンプルは無理だって。
 安全が確認できないものは渡せないそうよ」
 ギルドへ戻った4名は牙を渡し、作戦の終了を告げた。
 無事に依頼の報酬を受け取ることができたが、牙の報酬については依頼人がその場にいないため翌日払いとなっていた。
 その時、試供品の毒消しを譲って欲しいとジョンがギルド員を通じて依頼人に交渉を持ちかけたのである。
 この言葉はそれに対しての返答であった。
「代りに貰ってきたものと・・・・これが牙の代金ね」
 ジョンには酒と金が、残り三名はそれぞれに金を受け取り・・・・しかし不思議なことにギヨームだけが僅かに多い金額で。
「計算が間違っていないか?」
「間違いないわよ、彼はお弁当いらなかったもの」
 さて、ここで出発前を思い出してもらう。
 ギヨーム以外の三名の為に、彼女は弁当を用意していた。
 その支払いは?
「弁当代金ツケの分、ちゃんと頂いたからね。毎度あり〜」
 くすっと笑うギルド員を見て、ノラは心得に食料の大事さを追記した。

 ・・・・か、どうかは不明である。