【ケンブリッジ奪還】少年達を救え〜討伐編
|
■ショートシナリオ
担当:中舘主規
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月21日〜09月26日
リプレイ公開日:2004年09月29日
|
●オープニング
●ケンブリッジの異変
「なに? モンスターがケンブリッジに!?」
円卓を囲むアーサー王は、騎士からの報告に瞳を研ぎ澄ませた。突然の事態に言葉を呑み込んだままの王に、円卓の騎士は、それぞれに口を開く。
「ケンブリッジといえば、学問を広げている町ですな」
「しかし、魔法も騎士道も学んでいる筈だ。何ゆえモンスターの侵入を許したのか?」
「まだ実戦を経験していない者達だ。怖気づいたのだろう」
「しかも、多くの若者がモンスターの襲来に統率が取れるとは思えんな」
「何という事だ! 今月の下旬には学園祭が開催される予定だというのにッ!!」
「ではモンスター討伐に行きますかな? アーサー王」
「それはどうかのぅ?」
円卓の騎士が一斉に腰を上げようとした時。室内に飛び込んで来たのは、老人のような口調であるが、鈴を転がしたような少女の声だ。聞き覚えのある声に、アーサーと円卓の騎士は視線を流す。視界に映ったのは、白の装束を身に纏った、金髪の少女であった。細い華奢な手には、杖が携われている。どこか神秘的な雰囲気を若さの中に漂わしていた。
「何か考えがあるのか?」
「騎士団が動くのは好ましくないじゃろう? キャメロットの民に不安を抱かせるし‥‥もし、これが陽動だったとしたらどうじゃ?」
「では、どうしろと?」
彼女はアーサーの父、ウーゼル・ペンドラゴン時代から相談役として度々助言と共に導いて来たのである。若き王も例外ではない。彼は少女に縋るような視線を向けた。
「冒険者に依頼を出すのじゃ。ギルドに一斉に依頼を出し、彼等に任せるのじゃよ♪ さすれば、騎士団は不意の事態に対処できよう」
こうして冒険者ギルドに依頼が公開された――――
●モンスター討伐
ケンブリッジ魔法学校の一クラスであるウィザード養成クラスの一つにモンスターが攻めて来た。
町の中心部に近かったため、子供たちは既に先生と共に避難していたが、少年が2人行方不明になっていた。避難した子供たちの話から、少年たちは校舎に残っている可能性が高い。
子供たちを救出するためにも、これらモンスターを討伐しなければならない。
校舎の外にいるのは狂暴化したドッグを連れたホブゴブリン2匹とゴブリン数匹。
先生たちの話だと、常に1か所にいる訳ではなく、校舎の周囲を行ったり来たりしているらしい。場所や作戦如何では挟み撃ちにされる可能性もあるので注意が必要だろう。
「大丈夫、きっと先生が気付いて助けに来てくれるよ、ね?」
お守りの猫のぬいぐるみを抱いて問いかけてくるロイド少年に、ネイサン少年は当たり前だろーと答える。
しかし、強気な口調のネイサンも実際はまだ子供。よく見ればネイサンの手はロイドの上着の裾を握りしめていた。
その頃、キャメロットの冒険者ギルドは一斉に依頼が貼り出されたため、混雑していた。その依頼のほとんどがケンブリッジに関するものだったため、ケンブリッジの状況の緊急性がわかる。
そして、この依頼もまたケンブリッジからのものだった。
「校舎内に残っていると思われる子供2人が救出されるためにも、モンスターを討伐してほしい。
9月27日はケンブリッジの学園祭が開催される予定です。
学園祭が開催されるも否も、全てはケンブリッジ奪還に懸かっているでしょう。
キャメロットの冒険者よ! 今こそ立ち上がる時なのです!!」
●リプレイ本文
●討伐
用意された馬車に乗り込み、丸2日掛けて到着したケンブリッジは、至る所でモンスターが闊歩していた。
「なんて事だ‥‥」
一度にたくさんの依頼が出された事である程度の予想はしていたが、現実は予想をはるかに越えていた。
だが驚いてばかりもいられない。一行は依頼を完遂させるべく行動を開始する。
到着したウィザードクラスの校舎の近くで、先生と思われる人物が一行を待ち構えていた。
「キャメロットで依頼を受けて下さった方々ですね!」
自分たちはモンスターを討伐するために来たのだと告げると先生は頷いた。
「私の知る限りでは、校舎の外にいるモンスターはあちらにいるようです」
そういって先生の指差したのは、校舎の向こう、体育館とは反対のほうだった。
8人は早速、討伐戦のための準備にかかった。
まず手始めにアイン・エクセルス(ea1886)がブレスセンサーで周囲の呼吸を探査する。すると先生が先ほど言っていた通り、校舎の向こうと体育館の傍に自分と同じくらいの大きさの呼吸するものが1つずつとそれぞれの傍に小さいものが1つずついる事が分かった。
小枝を拾って、アインは地面に校舎や体育館とそれぞれの呼吸の位置を描いてみせた。
「分かれてるのか‥‥」
八田光一郎(ea6140)が腕を組んで考え込む。
「多分、大きい方がホブゴブリンで小さい方が犬だと思います。それと‥‥」
アインは更に校舎の向こうに印を4つ付ける。
「‥‥この4つは中間くらいの大きさだから、ゴブリンじゃないかと」
つまり、校舎の向こうにはホブゴブリン1匹と犬、ゴブリン4匹がいることになる。
「分かれているのなら、こちらも二手に分かれて1か所に集まるようにしよう」
ライカ・アルトリア(ea6015)の言葉に皆が頷いたとき、少し離れて罠を作っていた来生十四郎(ea5386)が手伝っていた恋雨羽(ea3088)と共に鶏肉で作った罠を持ってやってきた。
「これを風上に置いて、犬を呼び寄せれば良い。そうすれば、自然と奴らも1か所に集められるだろう?」
忍び歩きに長けた羽が風下からそっと移動して、校舎の向こうに居るモンスターたちの風上に肉を仕掛けて戻ってきた。
「これで出てくりゃカンタンだがねェ」
狭堂宵夜(ea0933)が戦闘準備をしながら呟いたのを、小さな袋に砂や小石を詰めていたアルノー・アップルガース(ea0033)がたしなめる。
「そんなこと言わないのー。出てこなかったら僕ら自身の匂いを餌にすれば良いんだよー」
そしてアルノーはテレパスを唱えて、ウィル・エイブル(ea3277)に作戦の概要を説明すると、ウィルは頷いて支度を始めた。
校舎の向こう、ホブゴブリンなどモンスターたちがいるのは校庭の隅だった。
焚き火を囲んで寛いだ雰囲気の中、突如犬が鼻をぴくりと動かし、頭を上げて風上を見やる。立ち上がり、しばらく匂いを嗅ぎ続けていたかと思うと、犬はそちらへ行こうとした。
犬を繋いだロープを持っていたホブゴブリンは何事かと立ち上がり周囲を見回すと、体育館の方へ向かっていたはずの仲間が犬にグイグイ引っ張られて行くのが見えた。
近くの茂みに隠れて様子を見ていた羽が犬とホブゴブリンの姿を確認し、合図を送ってきた。7人は臨戦態勢でそっと近付いて行く。
犬は鶏肉を見つけるとしばらく匂いを嗅ぎ、おもむろにかぶりつく。そこへもう一組のホブゴブリンと犬が着くと、犬同士で肉を取り合い出し、ゴブリンたちも騒がしくなったのを聞き付けて、やってきた。
と、最初に肉を食べていた犬が苦しみだした。ホブゴブリンたちが犬の異変に気付いて騒ぎだす。
これを合図に、疾走の術を唱えておいた羽が飛び出して無事な方の犬の喉目掛けて攻撃を仕掛け、続いてアルノーが先ほど作っていた包みを無事な方の犬の鼻面目掛けて投げ付ける。
アルノーに続いてライカが犬に攻撃した段階で、ホブゴブリンたちも武器を構えてこちらに向かってきた。
「よく聞け小鬼ども! 我が名は光一郎‥‥爆熱の武人っ! 八田光一郎だ!」
気迫のこもった名乗りを上げた光一郎がホブゴブリンの前に立ちはだかり、ゴブリンたちの前には十四郎、ウィル、宵夜が出た。
光一郎の気迫に負けじと、対峙したホブゴブリンは怒声を上げて斧で斬り掛かってきた。唱えておいたオーラエリベイションの効果で士気が高まっている光一郎は、ホブゴブリンの攻撃をかわす。
「ぬおぉっ! とぉりゃぁ!!」
右手に持った日本刀での袈裟斬りを盾で受けたホブゴブリンの腹部目掛け、光一郎は左手のダガーを突き出した。
「ぎゃあ」と叫んで半歩下がったホブゴブリンはしかし、反撃してきた。
「やるじゃねぇか! 茶鬼風情がよぉ!!」
かわしきれずにダメージを受けた光一郎は、携帯していたリカバーポーションを一気に飲み干すと再びホブゴブリンに向かっていった。
もう1匹のホブゴブリンは、犬を助けようとライカと犬の間に割って入ってきた。
「!」
ホブゴブリンの斧をかわしたライカは体勢を整え、クロスロングソードで反撃する。そこへライカの後方から真空の刃が飛んできてホブゴブリンに命中する。ライカが振り向くと手を突き出したアインと目が合った。
アインの支援に後押しされるように、ライカはホブゴブリンに攻撃を繰り出した。
ライカがホブゴブリンと対峙している間にも、羽とアルノーは犬への攻撃の手を緩めず、結果犬は絶命した。
ゴブリン4匹との戦いはそれほど長くかからなかった。
十四郎と戦ったゴブリンは攻撃をしてくるものの有効打を与える前に十四郎に屠られてしまったし、宵夜は2匹と戦ったがスタッキングで近付いて、スタッキングポイントアタックで1匹を動けなくした後、十四郎より先に2匹目を片付けていた。
残る1匹とウィルとの戦いは少々長引いたが、宵夜が加勢した途端終了した。
この時点でモンスターはホブゴブリン2匹となっていた。
光一郎が相手をしていたホブゴブリンはスマッシュを撃って逆転を狙おうとしたが、大振りになってしまったために空振り。畳み掛けるような光一郎の攻撃で、他の者が手助けをする必要なく1人で倒してしまった。
一方ライカは1人でホブゴブリンと戦うには技術的に無理があったらしく、犬を相手にしていた羽とアルノーが加勢してようやく瀕死に追い詰めた。
「なんとか全部倒せたね」
そう言いながら校舎裏から戻って見ると、玄関前で少年たちが先生から食事を貰っているところだった。
「助け出せたようで何よりだ」
十四郎が言い、改めて皆で依頼の遂行を実感しつつ、帰路に着いたのだった。