みぃちゃんを探せ
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■ショートシナリオ
担当:中舘主規
対応レベル:1〜3lv
難易度:普通
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月25日〜08月30日
リプレイ公開日:2004年09月02日
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●オープニング
極々一部に限られているけれど、暇も金も持て余している人々は確かに居る訳で。そういう人々の暇の潰し方、金の使い方というのは、一般階級な冒険者には奇異に見える事もある。
奇異に見えても依頼人のすることだから、ツッコミなんて入れられません。下手すりゃ報酬が下げられちゃうもの。ねぇ?
本日朝一番に、1人のご婦人がギルドに駆け込んでいらっしゃいました。身につけているものや十分に食べてますよと言いた気な体格から察するに、身分の高い方のようです。
「こちらで冒険者に依頼を出せると聞いたのだけれど」
丸々とした指にこれでもかと指輪を付けたそのご婦人、成り上がりなお貴族様にはまま有りがちの高飛車な態度でギルドのお姉さんに話しかけました。
内心ムッとしながらも、これが仕事だからと割り切っているギルドのお姉さんは、にっこりと笑顔のままで左様でございます、と答えながら依頼を書くべく羊皮紙を取り出しました。
「良うございましたわ。では、こう書いて下さいな。『宅のみぃちゃんを探して欲しいざます。報酬はたっぷり差し上げるざます』とね」
その後、お姉さんはこのご婦人からさんざん「みぃちゃん」の事を聞かされました。
好物は卵と鳥肉、しかも卵はその日産みたてのものじゃないとだめだとか、全長(身長のまちがいかも?)は1m60cmとペットとしては大型だとか‥‥。
みぃちゃんの事を聞きながら、もしかして普通じゃない(エチゴヤのラインナップにはない)ペットなのかな〜とお姉さんは思ったようですが、依頼人のご婦人は一方的にまくし立てて、結局確認できなかったとの事。
帰り際、ご婦人はお姉さんにこう言ったそうです。
「みぃちゃんを探すなら、宅に来て欲しいざます。まだ宅の近所にいると思うざます」
所変わりまして。ご婦人のお屋敷では大変な騒ぎになっていました。
「お、奥様のペットが逃げ出した〜!?」
使用人のみなさんは上へ下への大騒ぎ。恐らくこの場を静められるだろう旦那様は、遠隔地にある領地を見回るために留守にしています。
そこへご婦人が戻ってまいりました。
「奥様ぁ〜」
泣きついたのは、ご婦人より年輩の使用人頭のおばあさま。元凶は自分(のペット)にあるというのに、ご婦人は悪びれもせず言い放ちました。
「なんざます? 騒々しい」
「奥様のペットのみ、み、みぃちゃんが‥‥」
怯える使用人頭をしり目に、ご婦人は目を輝かせました。
「見つかったざますか!!」
「いえ‥‥食料庫から鳥肉を盗んで食べたようでございます」
力なく首を振る使用人頭を見て、ご婦人は落胆しました。
「あの人が帰ってくる前に見つけださなきゃ、みぃちゃんが処分されてしまうざます!」
以前にも同じような騒ぎを起こし、次にみぃちゃんが逃げ出したら即処分すると旦那様に言い付けられたため、ご婦人は焦っているようです。
使用人頭が見つからなきゃ良いのにという本心を隠して頷くと、ご婦人はあっという間に立ち直って断言しました。
「大丈夫ざます。今冒険者ギルドにみぃちゃんを探す依頼を出してきたざますから、すぐに見つかるざます」
おーっほっほっほっと屋敷に高笑いが響き渡り、使用人たちはどうでも良いから早く見つけてくれと願うのでありました。
●リプレイ本文
●ご婦人との対面
「みぃちゃんが何かっておっしゃるの??」
ご婦人は心外だと言わんばかりの顔でこちらを見ております。これを確認しておかなければ、対応できる事でも対応できなくなるのですから仕方ないのですが。
「申し訳ありません。お教え願えますか?」
フェシス・ラズィエリ(ea0702)さんが再度丁重に頼みますと、ご婦人はようやく、みぃちゃんは蛇だと教えてくれました。
「やっぱり蛇なんですかぁ」
と満面の笑みを浮かべて身を乗り出したのはノリコ・レッドヒート(ea1435)さんです。
「私も大きい蛇とか飼いたいなぁって思ってたんですよー」
ノリコさんの言葉に、ご婦人の機嫌も直ったようで、というか、蛇がいかに可愛いかという話で2人は盛り上がっております。趣味の世界の話は留まる事を知らない勢いですが、それでは依頼を遂行できませんので、適当なところで本題に入ることにいたします。
「私たちの予定では屋敷の外に焚き火を一定間隔で置くことでみぃちゃんが出ないようにするつもりですので、ご近所の方や旦那様へは盗賊の予告状が届いたので警備に冒険者を雇ったと説明すれば、みぃちゃんが逃げたことは内密にできると思います」
アリシア・ハウゼン(ea0668)さんの提案に、ご婦人は深くうなずきました。
続いて、フォリー・マクライアン(ea1509)さんが罠の説明と部屋を借りることの承諾を得ますと、すぐに罠作成のためにレオン・ユーリー(ea3803)さんと共に席を立っていかれました。
●みぃちゃんを探せ!
使用人たちには部屋へ出入りするときは必ずドアを閉めること、部屋に入ったときは暗がりなどに注意すること、みぃちゃんを見つけたときは冒険者8人のうちの誰かに知らせることを徹底させました。
屋敷の外では、フェシスさんが使用人に手伝ってもらいながら、焚き火を設置しています。屋敷の中ではアリシアさん、ノリコさん、エリンティア・フューゲル(ea3868)さん、シーン・イスパル(ea5510)さんがエリンティアさんのブレスセンサーを併用しつつ、食料庫や台所を調べていました。
シーンさんの予想に反し、ご婦人はみぃちゃん1匹しか蛇を飼っていませんでしたので、通気口等の蛇が出入りできそうな穴は片っ端から網を掛けて塞いでいきます。
「さすがに食料庫は涼しいわね」
通気口を塞ぎ終わって立ち上がったシーンさんの呟きに皆さん頷きます。もちろん、外気に比べたら涼しいという程度ですから、蛇が動けなくなる程低温な訳ではありません。
残念な事に、食料庫にみぃちゃんはいませんでしたので、屋敷の別の場所を探す事にしました。
「人より小さいなって大きさの呼吸しているものは居るにはいたんですけど‥‥」
エリンティアさんのブレスセンサーに反応する数多くの個体の中から、人よりも小さなものは数体感知できたようですが、そのうちのどれがみぃちゃんなのかはわかりませんし、大体の方角しかわかりませんので、エリンティアさんは困惑していました。
「じゃあ分かれて探してみようよ」
目標物の方角を確認したノリコさんとシーンさんとアリシアさんはエリンティアさんと分かれて捜索に向かったのでした。
●罠完成
フォリーさんが考えた罠を作るため、レオンさんと数人の使用人はある部屋で作業をしていました。
食料庫と台所を結ぶ廊下の途中にあるその部屋は、半ば物置きのようになっていて、罠を仕掛けなくても、物陰にみぃちゃんが隠れていそうな雰囲気があります。元々換気の時くらいしか開けられない窓も閉め切ることにしました。
天井に渡した棒にロープを掛け、檻を釣り上げます。ロープの反対の端は開け放たれたドアのノブに括りつけられ、閉めると檻が降りるような仕掛けをしました。餌は分けてもらった鳥肉と生きている雌鶏です。
鳥肉の臭いを廊下や部屋の入り口近くに付けて、部屋の中、吊るされた檻の真下に鳥肉と雌鶏を置きました。
コッコ、コッコと少々うるさいのが玉に傷ですが、これもみぃちゃんを捕獲するためと言ったら、ご婦人は二つ返事で了承してくれました。
「こんな感じで良いかな、後はみぃちゃんが誘導されてくれれば‥‥」
しかし、初日はみぃちゃんが罠の近くに現れる事も、捜索網にかかる事もなかったのです。
●みぃちゃん確保
何日目かの夜、屋敷が静まり返った頃、ほんのわずかな音が廊下を移動していました。
これまでどこに隠れていたのか、アリシアさんやノリコさん達が懸命に探しても見つからなかったというのに、今廊下を移動しているのは、まさしく蛇。みぃちゃんでした。
ちろちろ覗かせる割れた舌先で、何を感じたのか、先ほどよりもいくぶん速度を上げて移動していきます。
夜通しの見張りをしていたからか、罠を張った部屋の向かいの部屋でフォリーさんはうつらうつらとしていました。幾分徹夜に強いレオンさんが代わりに廊下を見張っていますと、視界の端で何か動く気配を感じました。
はっとして目を凝らしてみてみると、廊下に置いてあった家具の影に細長いものがするりと入っていくのが見えます。
レオンさんは振り返り、フォリーさんを軽く揺すぶります。
「‥‥ん?」
寝ぼけているフォリーさんに身ぶり手ぶりでみぃちゃんが廊下に現れた事を告げます。もちろん、廊下からは目を離しません。
レオンさんの真剣な表情と、身ぶりを何とか読み取って事態を理解したフォリーさんは、同じ部屋で休んでいたシーンさんを起こして、皆さんを起こすよう頼むと、そっと移動して罠の部屋の入り口を見張ります。
そうこうしている内に、みぃちゃんが部屋に入っていくのをレオンさんが見届け、フォリーさんとそっと廊下に出ました。
2人に続いて夜目に自信のあるシーンさんもやってきて、部屋の中を覗きます。
ほぼ同時に部屋の中にいた雌鶏がコケーッと悲鳴を上げました。
鎧戸の隙間から差し込むわずかな月明かりの中、シーンさんは雌鶏の隣に置いてある(ご婦人の要望で毎日新鮮なものに変えられていた)鳥肉をみぃちゃんが飲み込むところを確認しました。
「今よっ」
シーンさんの合図にフォリーさんは扉を閉めました。室内で檻がかたんと降りる音が聞こえます。
レオンさんがそっと扉を開け、フェシスさんがランタンをかかげて中を見てみると、檻の中でとぐろを巻いたみぃちゃんが寛いでいます。
雌鶏は夜目が聞かないながらも、命の危険から脱しようと努力していたらしく、檻の外でバサバサと暴れていました。
まずはうるさい雌鶏を捕まえて頭に袋をかぶせておとなしくさせ、フェシスさんと共に来た使用人に移動させます。
次にシーンさんがスネークチャームを唱えてみぃちゃんを操る事に成功すると、檻からみぃちゃんを出して飼育用の部屋まで移動しました。
騒ぎを聞き付けて依頼主がやってきました。飼育部屋の中でシーンさんに懐いているみぃちゃんを見つけるや、
「んまぁ〜っ」と声を上げると、シーンさんのところへやってきました。
先にシーンさんの側にいたノリコさんやレオンさんを押し退けて、ご婦人はみぃちゃんを抱き上げます。
「良く戻ってきたわねぇ。もう2度とママのところから出ていっちゃいけませんよぉ」
既にチャームは解けているはずなのですが、ご婦人の手の中から移動しないところを見ると、脱走癖はあるもののおとなしい個体のようです。
「みなさん、ご苦労さまざます。報酬はちゃんとお支払いするざますから、みぃちゃんの脱走の事は内密に。よろしゅうございますわね?」
みぃちゃんに対する態度とはうってかわって横柄な(使用人に言わせるといつも通りの)態度に飽きれつつも、
「承知しております」
と皆さん声を揃えて答えるのでありました。
風の便りによりますと、このご婦人、シーンさんが使ってみせたスネークチャームに並々ならぬ関心をお持ちになり、自分で修得したいと我がままを言っていたようですが、即座に旦那様が却下なされたようです。
本当に、暇も金も持て余している人の中には、一般階級な人々には奇異に思える事を望む人がいるものなのですね。