【ぷろでゅーす】出撃ぼーんないつ

■ショートシナリオ&プロモート


担当:鳴神焔

対応レベル:フリーlv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:4人

サポート参加人数:1人

冒険期間:05月22日〜05月27日

リプレイ公開日:2008年05月28日

●オープニング

 キエフにも遅い春が訪れ、冒険者ギルドにも暖かな日差しが降りそそぐとても穏やかな日。ここの所深刻な依頼が続いていたせいか、受付嬢は気を休めるときが少なかった。もちろん依頼があることはギルドにとって望ましいことであったりはするのだが、やはり平和がいい。受付嬢は目を閉じると胸いっぱいに春の空気を吸い込んだ。
―――カラン。ギギィ・・・・
 訪問者を告げる銅製の鈴の音が響き渡り、扉が開く音が辺りに響き渡る。幸せな時間は終わりを告げ、受付嬢はっその身体に鞭打って仕事モードに切り替えた。
「いらっしゃいませ、ご用件は―――」
 言葉は途中で行き場を失う。受付嬢の眼前に広がるのは世にも奇妙な光景であった。
 ゆっくりと開かれた扉から最初に姿を見せたのは青白い顔をしたヒョロヒョロの男性。物語に出てくる王子様のような衣装に身を包んでいるが、その体躯と口から流れ出る赤い筋が全力でそれを拒否していた。つづいて現れたのは頬のこけた青白い顔を浮かべ、あまりにも不釣合いな絢爛豪華な鎧に身を包んだ十人ほどの青年たち。先頭の男を筆頭に皆鞘に収められた武器を杖代わりにしているのがとても印象的だった。全員がゆるりと扉から現れるその様はまさしくアンデッドの群れを思わせる姿である。
「あなたは確か・・・・」
 先頭の男性の顔をまじまじと見つめていた受付嬢は、以前あった依頼を思い出した。そう、オカマの母親(父親? )が息子に自信をつけて欲しいと頼み込んできた依頼だ。そのオカマの息子が今目の前にいる。
「ヘポポイ・ポヨヨーンさん、でしたよね?」
 受付嬢の問いかけにゆっくりと首を縦に振るヘポポイ。
「はい・・・・ごほっ・・・・実はこの間我が母君から正式に騎士団を任されまして・・・・」
「騎士団・・・・ですか?」
 相変わらずしゃべる度にヘポポイの口元から赤い筋が流れ出す。
 筋肉の塊がドレスを着たあの大男を何のためらいもなく母君と呼べる辺り実は大物なのかもしれないと思いながら、受付嬢は後ろに控える男たちをちらりと見た。
(骨と皮が鎧を着せられてる・・・・)
 それが騎士団と呼ばれた彼らの第一印象だった。最初にアンデッドに見間違えたのも彼らの顔にあまりに生気と呼べるものが感じられないからだ。とはいえ彼らがアンデッドなわけはなく、れっきとした人間であることは言うまでもないが。
「騎士団の初任務は世のため人のためでなくてはならないと母君に言われまして・・・・それならばとこうしてギルドを尋ねたわけなんで・・・・かはっ」
 そっと白いハンカチをヘポポイに渡しながら受付嬢は現状ギルドで預かっている依頼を思い出していた。しかしほとんどが冒険者で埋まっているためほとんどが残っていなかった。まして彼らのような人間でもこなせる依頼となればなおさらである。
「困ったわ、現状で紹介できるような依頼なんて・・・・」
 受付嬢が申し訳なさそうにやんわりと断ろうとしたとき、訪問者を告げる鈴が再び鳴り響いた。勢い良く駆け込んできたのは一人の少年。
「冒険者ギルドへようこそー」
 いつでも笑顔を忘れない受付嬢は小さな来客ににこりと微笑んだ。が、受付嬢の前にいるヘポポイと騎士団がワンテンポ遅れてゆらりと振り向いたため、少年は叫び声をあげて倒れてしまった。

 少年が目を覚ましたのはそれから少し後だった。
「それでどんなご用件ですか?」
 受付嬢は泣きじゃくる少年の頭をそっと撫でると優しく問いかけた。
「うん・・・・実はボクの村で今盗賊が暴れてるんだ。それで・・・・ボク何とかしたくて・・・・頑張ってここまで来たんだ」
 嗚咽を漏らしながらポツリポツリと話し出す少年。どうやらよくある盗賊退治のようだ。しかも話を聞く限りではただのならず者と言ったところだろう。ならば冒険者が同行すれば即刻解決できる程度の依頼である。ヘポポイたちがついて行った所で大した問題ではないだろう。
「わかりました・・・・けふっ・・・・悩める人々を救うは騎士団の勤め・・・・げふん・・・・その依頼、お受けいたしま・・・・がふあっ」
 吐血しながら爽やかに微笑むヘポポイにびくっとする少年と頭を抱える受付嬢。
「あたしのヘポポイちゃんならばすぐ解決するわよぉん♪」
 どこからともなく響き渡る野太い声に受付嬢と少年は辺りを見回す。そして行き着いた先はギルドの天井だった。二人がその姿を確認すると同時に巨大な筋肉の城が上空から舞い降りた。その身に纏ったピンクのフリフリドレスに薄い紫のおさげ髪の筋肉は、澱んだピンクの唇から投げキッスを受付嬢と少年に投げつけた。
「あ・・・・アプリコットさん」
 頬を引きつらせながら受付嬢は筋肉の名前を呼んだ。
「さぁヘポポイちゃんの私設騎士団、ぼーんないつの初陣よぉん♪ 気合入れていきましょぉん♪」
 勝手に話を進めるアプリコットにさらに頭痛の種が増えたと嘆息する受付嬢であった。

●今回の参加者

 ea3785 ゴールド・ストーム(23歳・♂・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
 ea6282 クレー・ブラト(33歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb5180 エムシ(37歳・♂・カムイラメトク・パラ・蝦夷)
 ec1621 ルザリア・レイバーン(33歳・♀・神聖騎士・人間・ロシア王国)

●サポート参加者

シャリン・シャラン(eb3232

●リプレイ本文

●移動も立派な冒険です。
 少年の依頼を受けた四人の冒険者とヘポポイ率いるぼーんないつの面々はならず者に襲われていると言う村への道を進んでいた。依頼自体はひどくありきたりなもので、要はならず者をひっ捕らえれば解決するだけの簡単なものなのだが―――
「あの・・・・もう少し急いで欲しいんだけど・・・・」
 思いっきり不安な表情を浮かべながら少年は冒険者の方をちらりと見た。そんな少年の方に申し訳なさそうに苦笑を浮かべたのはエムシ(eb5180)。
「すまない・・・・本来ならばもう着いているはずなのだが」
 そう言いながら後ろの方をゆっくりと振り返ったエムシはその光景に大きくため息をついた。
 カラン、カラン―――がしゃーん
 不気味な音と盛大な音が入れ替わりに辺りに響き渡る。冒険者の後ろからついてきていたはずのヘポポイと騎士団たちはキエフを出てからずっとこの調子だった。そう、三歩進んですぐこける―――
 いくら冒険者にとって訳のない相手とはいえ、ならず者は一般人には十分脅威となっているはず。もしかしたら怪我をしている人たちもいるかもしれない。その思いが少年の脳裏に常につきまとっているのだが。
「大丈夫だ。何も心配する事はない。私達が行くのだから・・・・」
 少年の不安を感じ取ったルザリア・レイバーン(ec1621)が柔らかな笑みを浮かべて少年の頭をそっと撫でた。ルザリアの視界の端で騎士団がガラガラと崩れ去っていたが何も見えてないと言い聞かせることでスルーすることにした。
「このまま放っておくわけにもいかへんし・・・・少し休憩しましょか」
 既に崩壊寸前の騎士団を見ながらクレー・ブラト(ea6282)はそう提案する。明らかに食の細そうなヘポポイたちのために保存食を調理したものを騎士団に振舞おうと早速準備に取り掛かかるクレーは物陰から何やら不穏な視線を感じていたが、そっちを見るとトラウマになりそうだったのであえて見ないことにする。
「やぁ・・・・こうして食べると保存食というのもなかなか・・・・がふっ」
 にこやかに感想を述べながら吐血するヘポポイ。さらに騎士団の面々は保存食を前にして歯が欠けるという大惨事に見舞われている。
「うぅ・・・・もう・・・・ダメかもしれない・・・・」
 さめざめと涙を流し遠くにいる両親に心の中でごめんなさいと謝る少年であった。
 一行がようやく村を視認できる範囲までたどり着くと、そこには先行して偵察をしていたゴールド・ストーム(ea3785)の姿があった。
「何か面倒なことになってんな・・・・」
 普通に村にたどり着いただけの一行、しかしその後ろに広がる光景はもう全てを忘れて逃げ出したくなるぐらいショッキングなものだった。ゴールドは今回準備を手伝ってもらったシャランにヘポポイの占い結果をこっそり聞苦笑を浮かべたゴールドは村に入る前に調べてきた情報を仲間に伝える。
 ゴールドによればならず者は三人組、棍棒のようなものを振り回しては村人を脅してやりたい放題らしい。主に弱い者を人質に取るなどして暴挙を繰り返しているようだが。
「許せまげふっ・・・・許せませんね・・・・しかし我々が来たからにはもう安心でごべはっ・・・・安心です。さぁ、行きますよ騎士団の皆さん」
 全く安心できないヘポポイの言葉に応えようとする騎士団は右の拳を天高く掲げ―――ようとして転ぶ。同時にヘポポイの口から飛び散る鮮血。
「頭が痛い・・・・」
 冒険者と少年の盛大な溜息が村の入り口に響き渡った。

●さぁ始めよう。
 村に入った一行はゴールドの手引きの元外れにある草原にきていた。
「あの・・・・なぜ・・・・げふん・・・・このような場所に・・・・?」
 咳き込みながら冒険者に尋ねるヘポポイ。それもそのはず、彼は真っ先にならず者を退治しにいくと考えていたのだ。誰のせいで遅くなったのか突っ込みたくなったがあえて言わずに、クレーはいそいそと周りの地面のチェックを始める。
「向かって行くなんて小物のする事です、ヘポポイ様はどっしり構えてりゃあいいんですよ」
 そう言ってヘポポイを持ち上げるゴールド。ここで疑問を持たれてしまってはせっかくの作戦が意味をなさなくなってしまう。実はゴールドはこっそり敵に果たし状を出してこの草原におびき寄せていたのだ。しかもご丁寧に罠まで仕掛けておく徹底振り。もちろん村の人たちに迷惑をかけないようにとの配慮もあったのは間違いない。
「ヘポポイ殿、ならず者が来たぞ」
 ルザリアの言葉に一同が村の方に視線を移すと、一陣の風と共に三人の男が姿を見せた。
 大男と中男と小男―――何だかあまりにありきたりすぎて拍子抜けしてしまいそうになる程の悪人トリオは、恐らく彼らができる最高の悪人顔をしながら冒険者一行の前に現れた。
「おめぇらか! 生意気に俺たちに果たし状なんかを送ってきやがったのは!」
 中男の怒鳴り声が辺りに響き渡る。一瞬の沈黙の後、ヘポポイが前に踊り出てビシっとならず者たちを指差した。
「私たちが来たからにはあなたたちの好きにはさせませんっ!」
 いつもの姿からは想像できない凛とした声で言い放ったヘポポイ。騎士団の連中も何やらポーズのようなものを決めた状態でヘポポイの後ろでならず者と対峙する。妙な気迫を漂わせたぼーんないつの姿にならず者たちは恐怖を覚えて思わず一歩後ずさる。
 しかし―――
「・・・・・・げふあっ」
 最早お約束とも言える赤い霧を吹き出しながらがっくり膝を着くヘポポイと、同じく崩れ去る騎士団。目を覆う冒険者と口を開けたままぽかんと佇むならず者。しばしの間気まずい空気が両者の間を流れていた。
「・・・・て、てめぇらも仲間か!?」
「いや、仲間と言われるとちょっと否定したくなる気も・・・・」
 はっと我に返って冒険者たちを指差して慌てて怒鳴りつける中男に手をぶんぶんと振って否定するエムシ。他の仲間も同様に頷こうとしたそのときだった。
「うちのヘポポイちゃんを侮辱することは許さないわよぉん♪」
 天から降りそそぐような野太い声と共にどこからか舞い降りる巨大な影。影は素早くエムシの後ろに回りこむとがっしとその顔をゴツイ手で挟みこむ。
「な、何をっ・・・・んむーっっっっっっっ!!!」
 何が行われたかは敢えて語るまい。それはもうその場にいる者全員が合掌してしまうような出来事だった。影はしばらくの間楽しんで唇を拭いながら再び空へと帰っていく。心のどこかで戦いたいという思いがあったために思わず言葉に出してしまった一言だったのだが、その結果は戦うよりももっとひどい結果に終わってしまった。
「えっと・・・・そろそろ始めよか・・・・」
「もう・・・・なんなんだよお前ら・・・・」
 脱力感を前面に出して言うクレーに既に涙すら浮かべているならず者たち。少しだけならず者たちに同情を隠せない冒険者たちだった。

●激戦というべきもの。
 エムシが意識を取り戻すのとイジけたならず者たちが立ち直るのはほぼ同時だった。
「もう許さねぇ! おめぇら、やるぞ!」
 大男の掛け声と共にそれぞれが武器を抜き放つ。
 ゴールドとクレーがならず者たちにまず攻撃を仕掛けるが、もちろん本気ではいかない。何せ下手にヘポポイの活躍を奪えば屈辱的なお仕置きが手ぐすねをひいて待ち構えている。そんな事態にならないためにもヘポポイには一番いいところを持っていってもらわなくては困る。
「ったく・・・・面倒くせぇなぁ」
「そない言わんと・・・・ほら、やられる振りやられる振り」
 一人愚痴をこぼしながらもならず者たちの攻撃を巧みにかわしていくゴールドと苦笑を浮かべながら彼を宥めるクレー。
「うわー、やられるー。ヘポポイ様助けてくださいー」
「あかんっ、このままやとやられるっ」
 思い思いの言葉を出しながら二人は大男と中男をヘポポイの前へと誘き寄せる。普通に考えれば引っかかるはずのない陽動も、既に冷静な判断ができなくなっていたならず者たちには効果覿面だった。自分たちが優勢だと勘違いした男二人は、まんまと冒険者たちが仕掛けた罠に足を取られて地面とキスをするハメに。
「今だヘポポイ殿!」
 ヘポポイの傍で彼をさりげなくガードしていたルザリアはゴールドとクレーの作りあげた絶好のチャンスをヘポポイに伝える。その声に反応したヘポポイは手にしたレイピアを構えて、やぁと掛け声をかけ倒れたならず者に切りかかる―――そして目の前で罠に引っかかって転んだ。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
 しばらくの沈黙。倒れていたならず者も目の前に転がるヘポポイを固唾を呑んで見守る。
 やがて倒れていたヘポポイがゆらりと起き上がり、ならず者と目を会わせた。
 そして次の瞬間―――
「・・・・げぼあっ」
 盛大に舞う血飛沫がならず者たちの顔を真っ赤に染め上げ、天を裂く悲鳴と共にならず者は地に落ちた。
 一方残る小男を相手にしていたエムシは、ヘポポイたちがトドメを刺しやすいようにちまちまとダメージを与え続けていた。思っていたより人数が少なかったため引き付けるまでもない相手ではあったが、先程の黒い影がエムシの脳裏をよぎるため、やはりトドメはヘポポイか騎士団にさせなければいけない。
「ったく・・・・何でこんなこと心配しなきゃいけないんだ・・・・」
 ブツブツと愚痴をこぼしながら小男の攻撃をかわすエムシ。と、その視界に巨大な黒い影が飛び込んでくる。先程の恐怖からか思わず力が入ってしまい、小男を騎士団目掛けてふっ飛ばしてしまう。
「くっ・・・・くそっ!」
 飛ばされた小男が起き上がろうと目を開けると、そこには青白い顔で覗き込む複数の瞳が待ち構えていた。小男を取り囲むようにして不気味に揺れながら覗き込むぼーんないつ。その時小男は天国にいるおばあちゃんが見えたと後に語ったという。

●決着。
 依頼人の少年は連れてきた冒険者たちがあまりに心配だったために、村の大人たちを引き連れて彼らが呼び出したという村外れの草原へと足を運んでいた。邪魔をしてはいけないと大人たちには強く言われたのだが、道中を知っている少年はそれを断固拒否し、腕自慢の大人を従えて万が一のためと様子を見に来たのだ。
「あ、見えてきた! あそこ・・・・」
 そう言いかけて少年は呆然と立ち尽くす。後ろから見ていた大人たちもその光景に驚き、ごくりと唾を飲み込んだ。
 目の前に広がっていたのは全身を鮮血に染めて倒れるならず者と、レイピアを杖代わりにしてあたかも激戦を潜り抜けたかに見えるヘポポイの姿。さらにその周りをゆらゆらと幽霊のように揺れるぼーんないつの面々。
「戦士だ・・・・あやつらこそ本物の戦士だ・・・・!!」
 どういう解釈をしたのか、村の大人たちはそんなヘポポイたちの姿を見て賞賛の声をあげていた。
 その後村では紅の騎士団などという名前でヘポポイたちの活躍が語られたそうだが、それはまた別のお話である。

Fin〜