【もんてかるろ】魅惑のだんさー。
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:鳴神焔
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月03日〜06月08日
リプレイ公開日:2008年06月08日
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●オープニング
極寒の地ロシア。
まだまだ開拓途中にあるロシアにおいて人々が暮らしていくためには様々な努力が必要であった。土地の大部分を森が覆い隠し国間の移動すら時間がかかる為、それぞれの都市で独自の文化を築き上げていた。
ここキエフでもそれは例外ではない。
かつて開拓のための労働や辛い冬の寒さに苦しむ人々を元気づける為、類い稀なる美貌を持つエルフや有志のバードたちが集まってダンス集団を設立した。彼らが魅せる舞の数々は人々の心を虜にし、彼らが拠点としていたキエフ郊外の劇場は連日のように多くの人で賑わっていた。
彼らは自らをモンテカルロと名乗り、公演で得た収入を国や各ギルドの活性化にと寄付してきた。
全盛期には宮廷楽団と並ぶ程の地位を築き上げたモンテカルロだったが、やがてキエフだけではなくより多くの人々に元気を与えるために旅一座とその姿を変えてキエフから旅立ってしまった。
当時、後見をしていた貴族、有力者の多くはそのことを大層残念に思い、キエフの中で第二のモンテカルロとなる者たちを召集した。最初は皆モンテカルロをもう一度見たいと劇場へと足を運んだが、そこはやはり本家の物に見劣りする即席の集団。人々に感動を与えるには程遠く、次第に客も減っていき人々の記憶からもその存在を忘れ去られ、現在では古ぼけた劇場でひっそりと存在するだけとなっていた。
長い冬が終わりを告げ、柔らかな太陽の光が心地よくなり始めたこの季節。
街外れにある劇場に三つの人影があった。
「ねぇ、あたしたちいつまでこんなことしてるのかしら」
影の一つが呟く。周りには白い造花が大量に積み上げられており、現在進行形で影の手元から生み出されている。
「仕方ないじゃない。こうでもしなきゃ生きていけないんだから」
答えた別の影からは赤い造花がこれまたすごいスピードで積み上げられていく。
「伝統を守っていくってのはそんな生易しいことじゃないのよ」
しみじみと語る影の周りには青い造花。
「だけどお姉ちゃん!」
「劇場にいるときは座長って呼びなさいって何度も言ってるでしょ」
白に包まれた影の抗議を青の影がピシャリと制する。
「でも確かにこのままじゃあたしたちダンサーの名が廃るわね」
赤い影が手を止めてそう言うと同意を示すようにこくこくと頷く。
「わかってるわ。あたしたちの夢はもう一度モンテカルロを復興し、この劇場にかつての賑わいを取り戻すこと」
赤い影の言葉にゆっくりと頷く残りの影。
「まずはモンテカルロの名をキエフに広めないといけないわ。そのためにあるところに協力をお願いしたの。きっと良い返事がもらえるわ」
その日キエフの冒険者ギルドで依頼書と共に一通の手紙が張り出された。
―――冒険者の皆様へ。
私たちは伝説を受け継ぐダンサー集団、その名を『もんてかるろ』と言います。
今回は皆様の中で私たちと共に公演に参加していただける方を募集いたします。
私たち乙女三人の相手をしていただく殿方がいらっしゃれば嬉しいですわ。
今回の演目は演劇とダンスの融合をコンセプトにしたものです。
中にはステキなトキメキシーンもございます。
もちろん女性の方も大歓迎ですので奮ってご参加くださいませ。
●リプレイ本文
●約束の日。
冒険者たちが公演の参加を表明し、いよいよ顔合わせとなったこの日。待ち合わせの場所には三つの人影があった。
「どんな方たちが来るのかしらね」
ピチピチになった白いドレスに身を包んだ影の一つがそわそわとした様子で辺りを見回していた。
「冒険者の方たちですもの、きっとステキな方々に違いないわ」
微笑を浮かべながら言うのはこれまたピチピチの赤いドレスの影。
「これで・・・・ようやく伝説の舞台を甦らせることができるのね。長い道程だったわ」
感慨深く空を見上げながら呟くのはピチピチ青ドレスの影。
三つの影がそれぞれに思いを馳せながら待つその姿は、ひと目見た街の人々を恐怖に陥れることとなった。
三人が三人ともドレスがピチピチなのにはもちろん理由があった。ドレスというのはそのサイズに差はあれど、元々は女性を美しく見せるための装飾である。その鮮やかなドレスを筋肉ムキムキの男が着たらどうなるのか、それを実際目の当たりにした街の人が逃げ出すのも無理はない。
そう―――もんてかるろの三姉妹とは他ならぬ巨大なオカマの三兄弟だったのだ。
そして約束の時。
しかし三姉妹の予想を裏切って現れた冒険者の数はたったの二人だった。
「へーい、そこのお嬢さん、俺と一緒にお茶しなーい?」
そこら中の女の子に片っ端から声をかけているのはハヤト・ユタンポ(ec5028)。一体何のためにこの依頼を引き受けたのか、彼の頭には既に公演のことなどこれっぽっちもなかった。
「私はこの腕で公演をサポートしよう」
そういって何故か調理道具を取り出すアルファ・アルファ(ec5038)は三姉妹に向かってにっこりと微笑を投げかける。
「ねえクシュリナお姉ちゃん・・・・」
そんな二人の冒険者の様子に困惑の様子を浮かべる白いドレスの巨体オカマ。クシュリナと呼ばれた青いドレスのオカマも何やら溜息をつきながら頭を振った。
「それで・・・・どうするのこの二人」
「ふふ・・・・ふふふ・・・・いいわ。やれるだけやってみましょう? こんなことでアタシたちは挫けないわっ! いいわねバルサ、フロワーズ!」
不気味な笑みを浮かべるクシュリナの言葉に力強く頷く二人のオカマ。
こうして世にも奇妙な五人の稽古が始まった。
●稽古、それは辛く厳しいもの・・・・?
公演開始とされる日まで残り三日。
その限られた時間の中で依頼達成に気持ちが向いていない冒険者二人とやる気満々のオカマ三人の奇妙な日々が幕を開けた。
とはいえ当然稽古などする気のない冒険者が一所に留まるわけもなく、そのほとんどの時間が冒険者とオカマの追いかけっこと化していた。
「なぁ、いいだろう? 俺といいことしようぜー?」
「えぇー? どうしよっかなー♪」
街の外れでいちゃいちゃする男女が一組。男は言うまでもなくハヤトだが、女の方もまんざらではない様子。
「さぁ、もっと人気の少ないところに・・・・」
女の肩に手を回すハヤトとその感触にほんのりと頬を朱色に染める女。女がゆっくりとハヤトのほうに顔を向けたそのとき、女の顔が突如恐怖を色を浮かべる。怪訝そうな表情を浮かべたハヤトはその後ろに迫り来る巨大な殺気を感じ、恐る恐る後ろを振り返る。
「ハ〜ヤ〜ト〜ちゃ〜ん?」
そこにいたのはまさしく鬼―――ではなく怒りでこめかみをピクピクと震わしている白ドレス、フロワーズであった。
「こんなところで何油売ってるのかしら?」
そう言いながらフロワーズはガッシとハヤトの頭を鷲掴みにすると、そのまま宙へとぶら下げた。
「まっ・・・・待って! 話せば・・・・話せばわか・・・・んんんーーーっ!!」
ハヤトの必死の抗議はフロワーズの熱い口付けと共に風に消え去り、やがて抵抗を続けていたハヤトの手足の動きもパタリと止まる。どうやら余りのショックで気を失ってしまったようだ。
一緒にいた女はその余りの光景をただただ呆然と見ていた。
「あなた」
「はっはひっ!!」
突然声をかけられた女はびくんと震えて聳える巨大なドレスを見上げた。
「この男はアタシのだから手を出さないようにね」
フロワーズの鬼気迫る様子に思いっきり首を縦に振り、その場から逃げるように去っていった。
その後ハヤトのナンパが成功することは二度となかったという。
一方その頃、何を思い立ったのか鹿を捕りにいくと飛び出したアルファは森の中で息を潜めていた。もちろん鹿を捕る気などはない。元々やる気のない公演の練習などに付き合ってられないと逃げ出したわけなのだが・・・・
「見つけたわよ、アルファちゃん」
突如名前を呼ばれて振り返るアルファの目の前には巨大な影があった。
「ク、クシュリナさん・・・・」
「もう逃がさないわよ? 全く・・・・意味のわからない理由ですぐ逃げ出すんだから」
溜息混じりに呟きながらゆっくりと近付くクシュリナと同時にジリジリと退くアルファ。
「このままでは・・・・そうだ・・・・クシュリナさん!」
「・・・・なぁに?」
不気味ににこやかな笑顔を浮かべるクシュリナに、アルファは真剣な顔で語りかける。
「私が何故逃げ出すのか・・・・わかりますか?」
「・・・・?」
「私は・・・・あなたという美しい女性に恋をしてしまったのです」
とんでもないことを言い出すアルファに歩みを止めるクシュリナ。アルファは目を瞑り、次の言葉まで十分に溜めを作る。そして―――
「そう・・・・あなたにならば、私は食べられても構わな・・・・アレ?」
かっと目を見開いて言い放つアルファ。しかし開いた眼に写ったのは自分の顔を巨大な両手で挟み込むクシュリナの姿だった。挟み込んだまま持ち上げられるアルファ。
「あ、あのー・・・・クシュリナさん・・・・?」
「あなたの気持ち・・・・確かに受け取ったわ! 聞いたわね、バルサ!」」
何故か瞳に涙を浮かべながら微笑むクシュリナ。そして持ち上げられるアルファの背後からもう一つの影がぬっと姿を現した。
「聞いたわ姉さん! アルファちゃんは私たちの仲間になるのよね!」
「い、いや・・・・これはその・・・・」
「そうと決まれば早速儀式を始めましょう!」
アルファの呟きも虚しく勝手に進んでいく話。
と、突然アルファの身体がバルサのほうに強制的に向けられた。
後ろからクシュリナに抱きしめられながらバルサと対峙するアルファ。
「ぎ、儀式って・・・・一体何を・・・・?」
「私たち家族になるのよ? 家族といえば・・・・」
アルファの背後でムキムキと筋肉の盛り上がる音と服が少しずつ破ける音が聞こえる。アルファの脳裏にものすごく嫌な予感がよぎる。
「・・・・家族といえば・・・・?」
恐る恐る目の前のバルサに尋ねるアルファ。その言葉ににやりと笑みを浮かべたバルサは自分のドレスを握り締めて一気に引き裂き、その逞しい肉体を惜しげもなくさらけ出した。さらに抱きしめるクシュリナの衣服が一気に破ける。
「裸の付き合いよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「いぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
その日断末魔の悲鳴が森の中にいつまでも木霊していた。
●フィナーレは突然に・・・・?
結局練習はもちろん、宣伝などもできるはずもなく公演の日を迎えてしまった。
全く宣伝をしなかったために劇場に客が訪れるわけもなく、ただ閑散とした舞台だけがひっそりと佇んでいた。
「結局復活できなかったわね・・・・モンテカルロ」
沈んだ顔で呟くフロワーズ。その尻の下には抜け殻と化したハヤトらしきモノが敷かれていた。
「仕方ないわよ。またチャンスはきっとくるわ」
にこやかに微笑みを浮かべて言うクシュリナ。
「そうね。今度依頼するときはちゃんと舞台ができる冒険者の方が来てくれるといいわね」
クシュリナの言葉に頷くバルサ。そして二人の足元には生気の抜けたアルファの姿があった。
「それに・・・・あたしたちには家族が増えたじゃない♪」
そう言って足元のアルファに熱い視線を向けるクシュリナ。
「き、君たちとは共にいけない・・・・私は風来坊だから・・・・」
掠れるような声で必死に訴えるアルファに、フロワーズが徐に近付いた。
「そういえば私はまだ儀式を終わらせてないわね♪」
「そうね! やっぱり三人でしなきゃいけないわね」
「私たち、家族ですものね!」
にやりと笑って服を脱ぎ捨てる三姉妹を見ながら、アルファはもう二度とこの姉妹には近付きたくないと心から思うのだった。
Fin〜