【ぷろでゅーす】にゅーかまー参上。
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■ショートシナリオ
担当:鳴神焔
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:3人
サポート参加人数:-人
冒険期間:04月18日〜04月23日
リプレイ公開日:2009年04月27日
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●オープニング
春麗らかなキエフの街。
とは言えまだまだ北の大地は肌寒く、そこらかしこに雪が残っていたりして春の訪れというにはまだ時間がかかりそうではある。そんなキエフの中心付近にある冒険者ギルド。当然毎日様々な人が冒険者に助けを求めてやってくる。盗賊やモンスターを退治して欲しいという依頼が多いようにも思うのだが、実はそうでない依頼もそこそこ舞い込んでくる。特にこの時期のキエフは変わり者が多発する、一番いろんな意味で危険な街―――
そして‥‥そんな変な人がまた一人、ギルドにやってきた。
「ん〜‥‥今日も平和だわぁ〜」
そう呟きながら大きく伸びをしたギルドの受付嬢は、手元に置いてあった受付記録に視線を落とした。
「でも‥‥そろそろキエフ名物が横行し始める時期なのよね‥‥こう静かだと逆に不気味に思えてくるわね」
何かを思い出して遠い目をしながら引きつった笑顔を見せる受付嬢。
それもそのはず、春のキエフにギルドに寄せられる依頼の半分は変態退治になる。しかもその変態が依頼者であることも少なくない。故に受付嬢は多少なりとも被害を被る事になるわけだ。
ギギィ‥‥‥‥
ゆっくりと扉が開かれた、木の軋む音が受付嬢の意識を現実に引き戻した。
『仕事に集中しなきゃ』と気持ちを切り替えていつもの挨拶をしようとした彼女の口は、扉の風景が目に飛び込んできたことで開いた状態で静止してしまった。
「やぁ‥‥こんにちげふあっ」
爽やかな笑顔と共に鮮血を振りまく白銀の鎧に身を包んだ青白い顔の青年。
さらにその後ろにずらりと並んだ騎士風の男たちは、既に顔から生気というものが欠落し、各々の手にした武器を杖代わりにようやく立っているような有様だ。
そして受付嬢はこの集団に嫌というほど見覚えがあった。
「こんにちは‥‥えっと‥‥ヘポポイさんとぼーんないつの皆さん‥‥でしたよね」
彼女の言葉に白銀の鎧を着た青年―――ヘポポイは親指をぐっと上に上げようとして、吐血した。
「それで、今度はどのような依頼を持ってきてくれたのですか? 」
ヘポポイの口元から流れる一筋の赤い筋が気になってハンカチを渡しながら受付嬢はそう尋ねた。
尋ねられたヘポポイは小さく頷くと、懐から一枚の紙切れを取り出して彼女に手渡した。『明日のスターはそこのア・ナ・タ・よ♪』と書かれた一枚のチラシ。危険な香りがプンプン漂うピンク色のチラシにはこう書かれていた。
「‥‥時代のニューカマー大募集‥‥?」
「はい。ついに私たちの時代がきたのです」
何かを超絶勘違いして弱々しく拳を握り締め、ぐっとポーズをとるヘポポイ。
どうやら何かのコンテストのようなものらしいが、チラシに描かれた絵には筋肉質な方々がウェイトレスの姿でウインクする姿が描かれている。
「いえ、あの‥‥」
「どうか、私を一人前の男にしてください!」
ドアップで迫り来る決意に満ちた吐血顔に断る術を持たない受付嬢であった。
●今回の参加者
ec5651 クォル・トーン(30歳・♂・ウィザード・人間・ロシア王国)
ec6381 シャールーン・アッジィーク(28歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・フランク王国)
ec6401 エレーヌ・カーン(28歳・♀・僧侶・エルフ・インドゥーラ国)
●リプレイ本文
●祭典開始。
熱気渦巻くとある村。
年に一度行われる、ハザマによるハザマのための祭典。それがニューカマー祭である。
中には本当にハザマなのかわからないと思えるほどに美しい容姿の者もいるのだが、基本的に肉体美を披露することも条件に含まれているため、参加者は筋肉ムキムキの髭面おぢさんだったりするわけだが。
「あぁ‥‥これが男の中の男なのですね‥‥ゴホゴホ」
相も変わらず口元からタラリと赤い筋を走らせているヘポポイは、隣にいるクォル・トーン(ec5651)に話しかけた。
「いや‥‥ここは多分女性だけの祭典なんだよ。ほら、あそこにも女の人がいるじゃないか」
そう言ってクォルは綺麗系のハザマさんを指差し、何とかヘポポイを正常な道に戻そうと試みるが、当の本人はそこらかしこを歩き回る筋肉の塊に目を奪われて聞いてもいない。
「素敵ですねぇ‥‥あれ? そういえば後お二人程いませんでした‥‥?」
ヘポポイは思い出したように辺りをキョロキョロと見回すが、それらしき影はない。
気のせいかと首をかしげるヘポポイの死角で、何やら目をハートに変えたゴツイ髭のおぢさんたちに囲まれて悲鳴を上げている誰かがいたことは誰の記憶にも残っていなかった。クォルの視界にはしっかりと映っていたのだが、それを口に出すと自分も同じ運命を辿らされてしまう気がして思い止まる。
「このままじゃ自分もあんな風にされてしまう‥‥どこかで逃げ出さないとね」
残されたクォルはガクガクと身を震わせながら必死に頭を働かせる。
「さぁみんなぁ〜♪ これからカマの祭典が始まるわよぉ〜ん♪」
必死なクォルを嘲笑うかのような野太い声が、彼の望みを断ち切る死神のカマの‥‥いや、鎌のように脳に響き渡る。
黄色‥‥というよりは茶色の声援が波となって押し寄せ、ついに悪魔の祭典の幕があがろうとしていた。
●間を取るって難しい。
祭典、とは言っても基本的には自分の肉体をさらけ出してその美しさと個性を競い合うという至ってシンプルで、健全なものである。そんな中ヘポポイも自らの衣服を脱ぎ捨て自らをアピールする。その肉体はまるで土から蘇ったばかりのズゥンビ―――いや、まだ肉体によってはズゥンビのほうが肉付きがいいかもしれないと思うほどの貧弱さ。骨と皮しかないというのはこのことを言うのだろう。
当然勝負になどなるわけもないのだが、どうやら健気に参加するヘポポイの姿に一部のハザマの母性本能‥‥いや、父性本能をくすぐったようだ。
「いやぁん、あの子可愛いわぁん!」
「何だか子犬みたいに震えてるわぁん!! お持ち帰りしたいわぁ〜」
そんな不吉な声援が飛び交う。
「あらぁん、飛び入りで参加したヘポポイちゃんは今までとは違った手法で勝負にきたわねぇん」
意外な人気ぶりに会場を仕切る司会者も驚きを隠せない様子だ。普通の男であるヘポポイがこの祭典に打ち解けたのは、余りに男らしくないため、同じハザマなのだろうという勝手な誤認識を会場がしてしまったからのようだ。
そんなこととは夢にも思わないヘポポイ、自分に向けられた声援にまんざらではない様子で、再び骨の浮き出る身体でポージングをする。
「わ、私もこれで皆さんの仲間に‥‥なれるでしょ―――げふげはごばぁっ」
必死にアピールするヘポポイは力が入りすぎて吐血、そのまま担架に乗せられて会場を後にする。勿論その介抱をするという大義名分を得た数名が同行したことは言うまでもない。
その様子をひっそりと見守る影が一つ―――そう、クォルだ。
「依頼人が運ばれていった、これはもう依頼を気にしなくてもいいんだよね」
運ばれていくヘポポイの姿を生温く見守りながらクォルは会場を後にしようとダッシュで村の出口へと走り抜けて―――何やら巨大な力に捕まった。
「あの‥‥離していただけるとありがたいのですが」
巨木のような大男に鞄のように抱きかかえられながらクォルは恐る恐る問いかける。
「あらぁん、あなたのお連れの子が急に倒れちゃって盛り上がりに少し欠けるのよぉん。だからあなたが代わりに出てちょうだい」
野太い声でぶりっ子しながらクォルにういんくをかます大男。
「いえ‥‥私はほら‥‥健全な男子ですからっ」
首をぶんぶんと振りながら答えるクォル。
しかし大男は口元ににやりと笑みを浮かべ、目を輝かせながらクォルにぐいっと顔を近付ける。
「あなたまだ綺麗な男の子なのねぇん! 思わぬ拾い物をしたわぁん♪ みんなぁ〜ここに生娘‥‥じゃなかった、生息子がいるわよぉん♪」
大男の呼びかけに村の至るところからわらわらと湧き出る同じような大男たち。
「な‥‥一体何を‥‥」
「だぁいじょうぶよぉん♪ 最初だけだ・か・ら♪」
なぞの言葉を吐きながら唇を突き出して近付いてくる大男たち。
「いや‥‥そんな、意味がわからな‥‥うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
天地をひっくり返すようなクォルの悲鳴が村中に響き渡る。
その悲鳴が途切れるころ、村の入り口に咲く一本の薔薇がハラリと落ちたとか落ちてないとか‥‥。
〜Fin〜