新種族現る！？
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■ショートシナリオ＆プロモート担当：鳴神焔 対応レベル：フリーｌｖ 難易度：普通 成功報酬：0 G 65 C 参加人数：6人 サポート参加人数：-人 冒険期間：04月30日〜05月05日 リプレイ公開日：2008年05月03日 |
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●オープニング
これは町外れで起こっているとある事件についての証言を集めたものである。証言Ａ：アムステル・ブリガンさん（仮名：２４歳男）
「ひぃぃぃっ！！あ、あのことだけは言わないでくれっ！もう思い出したくないんだぁぁぁぁっ！」
証言Ｂ：リッチモンド・カールトンさん（仮名：２１歳女）
「あんの変態たちね！？ 今度会ったら絶対許さないんだからっ！ え？ 何されたかですって？ あたしのことブスって言ったのよ！ 寄ってたかってヒドイと思わない！？ 」
証言Ｃ：カイマムール・レイナードさん（仮名：４０歳男）
「おぉ、あの連中か。何？ 被害？そんなもん受けとらんよ。変な格好だったから良く覚えておるが、ただ通りすがっただけだ。確か･･･新ハーフエルフの到来とか言っておったぞ？ 」
証言Ｄ：キース・バイエルさん（仮名：２５歳男）
「あら、新ハーフエルフのことね？ もっちろん知ってるわよぉ？ だって、あたしに新しい世界を教えてくれたんだもの♪ え？ それが何かって？ いやぁん、そんなこと言える訳ないじゃなぁい♪ 」
どうもこの事件には被害者とそうでない人の差が激しいようだ。
被害を受けた人は大なり小なり精神的苦痛を受けているようなので、何とかして欲しいということだ。
もちろん新ハーフエルフなどという種族は存在しない。しかも犯人たちの中には普通に純血のエルフもいるようだ。
冒険者諸君に告ぐ。
この事件の犯人を捕まえてはくれないだろうか？ 街の平穏は君たちの手にかかっている。
●今回の参加者
eb7780 クリスティン・バルツァー（32歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国）eb9726 ウィルシス・ブラックウェル（20歳・♂・バード・ハーフエルフ・ビザンチン帝国）
ec0866 マティア・ブラックウェル（29歳・♂・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国）
ec2055 イオタ・ファーレンハイト（33歳・♂・ナイト・人間・ロシア王国）
ec4271 リディック・シュアロ（33歳・♂・ナイト・人間・神聖ローマ帝国）
ec4638 リリー・リン（35歳・♀・クレリック・人間・イギリス王国）
●リプレイ本文
●キエフは変態さんがお好き。まず手始めにしなければならないのは情報収集、というわけで思い立った一行は被害者の皆さんに話を聞きに行くことにした。
最初は一番怖がってた男性。
「苦しゅうない、襲われた状況を出来るだけ詳しく聞かせるがよい」
ぺったんな胸を反って上から目線で語りかけるはクリスティン・バルツァー（eb7780）。当然語ってくれるわけがなくクリスは凹んでしまった。そこで登場したのがリディック・シュアロ（ec4271）。手拭いでてかてかになった顔で男性に状況を聞き出す。
男性から聞き出せた情報は二つ。
このキエフでもお構いなしに露出度の高い服装をしているようで、攻撃されたというよりは口付けの嵐に見舞われたらしい。
「春になると現れる変態さん‥･･そんな風習聞いたことありませんけれど」
「世の中知らない方がいいことだってあるんだ」
小首を傾げて尋ねたのはリリー・リン（ec4638）、そしてそのリリーの肩をぽむと叩くはイオタ・ファーレンハイト（ec2055）。まだ何もしてないのに何故か涙目だ。きっと彼は知らなくていいことを知ってしまったんだろう。
続いて二番目の女性。
ここは同じ女性ということで聞き手に回ったクリスとリリーだったが、やっぱりクリスは凹んでしまった。何とか撫でこしながらリリーが女性から話を聞く。
ここで聞き出せたのは二つ。
犯人は女性に対しては唾を吐きかけたり悪口を言ったりなどの嫌がらせをしてくること。そして相手は五人組であること。小さいのが三人と巨大なのが二人。
続いて被害にあっていない中年の男性。
予め冒険者ギルドからの紹介を受けていたせいか話はスムーズに進む。おじさんと話をしたのはウィルシス・ブラックウェル（eb9726）。ここでは犯人は街外れの街道に出没、というか待機してるっぽいことがわかった。女装して話を聞こうかとも思ったウィルでしたが、おじさん相手だと危ないのでやめましょうという提案を素直に受け止めた。
最後は何故かオネエ言葉の男性。
こちらの話を聞きだしたのは同じくオネエ言葉のマティア・ブラックウェル（ec0866）。形は違えどどこかしら共通点を感じたのか二人は井戸端会議宜しく話し込んでいた。話の中でマティアは男性に一夜の危険な遊びに誘われたが笑顔であっさりと断った。
「アタシ、婚約してるコがいるの♪ ゴメンね〜」
ここで得られた情報は犯人たちは夕方あたりに活動するらしいということ。
必要な情報はだいたい揃ったと判断した一行は早速囮作戦を実行することにした。
●半分な人たち。
辺りが夕闇に染まる頃、街外れの街道を二人のうら若き男性が歩いていた。マティアとイオタの囮コンビである。
「で････何で俺は問答無用で囮役なのかな」
と、ブツブツとぼやきながら歩いているのはイオタ。彼とて歴戦を潜り抜けてきた猛者であることは間違いないのだが、どうにも貧乏くじを引いてしまう宿命にあるようだ。しばらくは餌に食いつくのをじっと待つしかないと考えていた一行だったが、それらは意外に早く接触してきた。
二人の前に現れたのは少し小さめのエルフだった。三人ともじっくり見なければ女性と間違えてしまうほどの美貌の持ち主だったが、あまりに露出の高い、というか葉っぱしかつけていないその格好はもう明らかに普通の人ではない。
「お兄さんたちぃ？ ちょっと遊ばなぁい♪」
予想通りの口調で話しかけてくる二人の露出狂を確認すると、マティアはすぐさまウィルにテレパシーを送った。
物陰で潜んでいた捕縛班の四人は、その合図で出るべきか判断しかねていた。皆一斉に襲ってくるものだと思っていたために、聞いていた人数より少ない犯人たちをここで捕まえてしまっていいものかを迷っていたのだ。とはいえ野放しにするわけにもいかない。
と、マティアが怒った表情を浮かべて露出狂二人の前に出た。
「自称新種族なのはまぁいいわ。でもね････他人様に迷惑を掛けるのは許せないのよっ！」
怒声混じりで一喝すると、プラントコントロールで一人を縛り上げるマティア。縛られた犯人はどういうわけか恍惚の表情を浮かべているが、動けないことには変わりない。一人確保。
残り二人の方はマティアの合図で動き出していたリリーのコアギュレイトとリディックのスタンアタック、ウィルのムーンアローで既に戦闘不能になっていた。
「さぁ！ アタシの靴の裏をお嘗め！ それともこのままキエフの海に沈めてやろうかしら…フフフ☆」
捕らえた三人を前にして高飛車な台詞を言ってのけるのはマティアだ。本人は冗談のつもりだったのだろうが、目が本気だったためにウィルとリディックが苦笑しながらマティアを宥める結果になってしまった。
そんな中、そわそわする男とわくわくする女が一人ずつ―――イオタとクリスである。
これまでの経験上これで済むわけがないと感じていたイオタは辺りに神経を張り巡らせていた。一方クリスはまだイオタが襲われないのかと待ち侘びながら、装備していたうさ耳をぴょこぴょこさせていた。
「キエフには春になると変態が沸く慣習があるって話は聞いていたが････こりゃまた物好きっつーか････世界は広いってのはこういう事を言うのかね」
苦笑しながら現れた変態のキツさを実感していたのはリディック、そして困ったような顔で同意を示したのはリリーだった。
「やっぱり････噂は本当だったのですね」
「キエフにいれば当たり前ですよ」
さらっととんでもないことを言ってのけたのはウィルである。どうやらキエフのダメな一面ばかりを良く見てきたようだ。
「む？ 何か来るぞ！」
インフラビジョンと聞き耳を立てて周囲を探っていたクリスが一堂の会話を遮る。
ガサガサガサ････
草木の揺れる音が辺りに響き渡り、囮役であるイオタとマティアに緊張が走る。捕縛班の皆も一層警戒を強めた。音は段々と近付いて来る。じわりじわりと音が近くなり、一行の緊張もピークに達したとき、突如音が止み黒い巨大な影が囮役の左右から飛び出してきた。
そう、イオタ目掛けて―――
「え････？ ちょっ････うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ！！」
驚くのも束の間、イオタは既に巨大な肉の城に挟みこまれていた。もちろん着衣は葉っぱのみ、さらには妙にオイリーな肉体のためぬるぬる感がイオタを直撃。
あっけに取られる一行の前でひとしきりイオタを楽しむと、大きく跳んでマティアの前に着地する二つの筋肉。しかも一人はイオタを抱きしめたままだ。
「初めましてねぇん、あたしたちが新ハーフエルフよぉん♪」
「アタシがローズでそっちがマリー、二人でローズマリーよぉん♪」
どうやらローズはおさげ、マリーはおかっぱというのが見分けるコツのようだ。
二人が自己紹介のたびにポージングを決めるので、動きで葉っぱが既に取れそうになるがそれはイオタで何とか隠していた。既にイオタの意識は遠いところへ旅立ってしまっていたが、後でこの事実を知ったらさぞかし悲しむことだろう。アーメン。
しばし現実から離れていたマティアは意識を無理やり現実に引き戻してすぐにウィルに合図を送る。
物陰から最初に飛び出たのはリディックだ。その手に鉄扇を携えてローズにスタンアタックを仕掛ける。ローズはそれをかわそうとするものの、物陰からのウィルのムーンアローとリリーのコアギュレイトのコンビネーションにあっさり動きを封じられてしまい、そこにリディックのスタンアタックが炸裂した。
「あぁん、ろぉずぅぅぅぅっ」
「いやん、まりぃぃぃぃぃっ」
まるで引き裂かれた恋人のように手を差し伸べる格好をしながら崩れ落ちる裸の筋肉････いや、ローズ。悲しみにくれるマリーの後ろからマティアがグラビティキャノンを、クリスがファイヤーボムを同時に放つ。
「地面とキッスでもしてなさぁい！」
「汚らわしい変態め。我が炎に浄化されるがよいわ！」
全身で攻撃を受けたマリーだったが、膝を落とすことなくその場で踏み止まる。
「あはぁん････随分やられちゃったわぁん」
息を荒げてなお一同と対峙するマリー。変態であることは確かだが、このマリーは随分強かった。捕らえることは難しいかもしれない、そんな考えが一同によぎった。しかしここで肝心な存在を忘れていた。そう、マリーに捕まえられてたはずのあの人の存在を。
●必殺万年殺し。
「ん････なんだこれは」
目を覚ましたイオタは目の前にぶらさがる何かの正体がわからずにいた。意識は戻ったもののなぜ自分が寝ていたのかまだ思い出せない。
「イオタっ後ろー後ろー！」
イオタが声の方に視線を向けると、クリスがこちらを指差して必死に叫んでいる。
「あらん、気がついちゃったのねぇん？」
自分の頭上から聞こえてくる声。再び声の主に視線を向けると････そこには真っ裸のオカッパが立っていた。そう、さきほどのファイヤーボムで葉っぱが焼けてしまっていたのだ。つまり、今自分の目の前にあるものは････
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ！！！！」
無我夢中で放ったイオタの徒手空拳がマリーの急所にくりーんひっと。
魔法をその身に食らってもなお立っていた強靭な肉体を誇るマリー、しかしやはり鍛えることはできなかったようだ。しばしの沈黙の後、ずずぅんという大きな音と共にマリーは崩れ落ちた。
「うむ。あれが必殺万年殺し････」
皆が呆然と見守る中、一人何故か感心したように頷くクリスであった。
こうして偉大な犠牲と壮大な一撃によって、新ハーフエルフの恐怖は去った。しかし春になればキエフは新たな顔を覗かせるという噂が本当ならば、また第二第三のハーフエルフが現れるかもしれない。
負けるなぼうけんしゃ、戦えぼうけんしゃ。
〜Ｆｉｎ
