絶賛修行ちう。

■ショートシナリオ&プロモート


担当:鳴神焔

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:5人

サポート参加人数:1人

冒険期間:05月09日〜05月14日

リプレイ公開日:2008年05月12日

●オープニング

 真っ暗な闇と静寂が辺りを支配する頃、一つの影が村外れの墓地に立っていた。黒いフードを目深に被りさらには辺りの闇に溶け込むかのような真っ黒なローブを羽織った人影は、何やらブツブツと呟きながら立っていた。
 しばらく影はそのままの姿勢でいたが、呟きのようなものが終わると一つの墓の前へと移動し、その墓をトントンと叩いた。少しの静寂の後、墓の土がもこもこと動き始める。やがて動き始めた土から一本の手が勢い良く飛び出した。その手を見た影はわずかに見える口元をにやりと緩めると、ゆっくりとフードを背中に回す。
「ふふ・・・・完璧だわ・・・・私だってやればできるんだから」
 闇の中に怪しげな含み笑いとくねくねと動く手だけが残された。

 数日後、冒険者ギルドに一人の少女の姿があった。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょう?」
 いつものスマイルを浮かべた受付嬢は肩で息をする少女に水を出した。少女は受付嬢から水を奪い取ると、一気に飲み干してグラスを机に叩きつけた。
「お願いがあるの!」
「何か困ったことでもありましたか?」
「大アリよ! ちょっと聞いてくれる!?」
 少女はカウンターに身を乗り出すと、興奮したように事の顛末を話し出した。
 少女が住む村はキエフから二日程行ったところにある小さな村だ。その村で今ひとつの事件が起きていた。それは村の墓場で夜になるとズゥンビが大量に発生するというものだった。
「お墓からでてきちゃったんですか?」
 少女の情報を紙に書きとめながら、受付嬢は少女に尋ねた。少女は首をふるふると横に振ると、しきりに辺りを見回し人がいないかを確認して受付嬢を手招きして自分に近寄るよう合図した。
「ここだけの話なんだけど・・・・最初は私がクリエイトアンデットの練習をしていたせいかと思ったんだけど、私一回しかやってないのよね。でもどこからかいっぱい出てきちゃって。あたしの手には負えないのよ」
 少女はひそひそ声で申し訳なさそうにそう告げた。
「つまり・・・・どこからか現れてしまったズゥンビたちを始末してほしいと」
「あ、後それとっ!」
 少女は事務処理に取り掛かる受付嬢を慌てて呼び止めると、顔を赤らめて恥ずかしそうに、だけどどこか偉そうにもう一つの依頼をお願いした。

 冒険者の皆様へ。
 今回は村に発生したズゥンビを退治すると共に少女に魔法についてレクチャーするのが依頼です。少女は随分偉そうな感じですけど、まだまだお子様です。うまく教えてあげてください。

●今回の参加者

 ec3096 陽 小明(37歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ec4040 ユリア・ヴォアフルーラ(35歳・♀・神聖騎士・人間・ロシア王国)
 ec4270 シリウス・ディスパーダ(27歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ec4800 ルゥン・レダ(31歳・♀・ジプシー・人間・イスパニア王国)
 ec4894 セリア・クルギス(21歳・♀・バード・シフール・フランク王国)

●サポート参加者

リディック・シュアロ(ec4271

●リプレイ本文

●重い空気。
 目的地に日が昇っているうちに着くために一行は朝一でキエフを出発していた。もちろん今回の相手はズゥンビ、活動は主に夜になるわけなのだが念のため昼のうちに情報を集めておいたほうがいいと考えてそうすることにしたのだ。当然依頼人の少女は道案内として同行していたのだが。
 少女は困惑していた。せっかく冒険者という願ってもない魔法の先生が傍にいるのに、少女を包む雰囲気はとてもそんな温いものではなかった。もちろん冒険者一行は少女の身勝手な行動に心底腹を立てていたからなのだが、少女にはまだそこまで理解できていない。最初に重い口を開いたのはユリア・ヴォアフルーラ(ec4040)だった。
「そもそも何を目的にクリエイトアンテッドなどという魔法を練習していた」
「えっ・・・・そ、それは・・・・うまくできないとあの方に怒られるし・・・・それに私は一回しか使ってないし・・・・」
 ぶっきらぼうに少女に尋ねるユリア。突然の言葉にびくっと体を振るわせた少女は、怒りに満ちた冒険者のほうを恐る恐る見ながら呟くように答えた。それを聞いたユリアはさらに眉を吊り上げて少女に詰め寄る。
「一体にしか掛けていないと言いながら、ではその一体をどうするつもりだったのだ」
 冷たく言い放たれた言葉に少女は答えることができなかった。自分が仕出かしたことの大きさを少女は理解していなかったのだ。ユリアの言葉で少女はようやくそのことを理解したのだろう。このとき冒険者たちは大きな勘違いをしていたのだが、それは後にわかることとなる。
「理由はどうあれ村で魔法の練習をするなんて非常識すぎますよ」
 少女の右肩に腰をかけて優しく怒ったのはセリア・クルギス(ec4894)。
「魔法は遊びの道具じゃないの! 使い方を間違えると危険だし、自分が仕出かした悪い事はいつか必ず自分に跳ね返ってくるのよ。今回みたいに死者を冒涜するような真似は二度としちゃダメ!」
 ルゥン・レダ(ec4800)は子供を諭す母親のように人差し指を少女の額にあてながら怒った。しばらく俯いて肩を震わせていた少女だったが、やはりそこは子供。嗚咽を漏らしながら泣き出してしまった。そんな少女を見て少し不憫に思ったのか、ユリアは少女の頭をそっと撫で目の前に躍り出た。
「魔法は便利ですけど、一歩間違えば非常に危険なものになるのです。よく覚えておいてくださいね?」
「うぅっ・・・・えっく・・・・ごめんなさい・・・・」
 ずっと前を歩いていた陽小明(ec3096)は、ふとその歩みを止めるとちらりと少女の方に目をやって呟くように、しかしはっきりと言葉を発した。
「力を持てば使いたくなるのはわかります。しかし、それを思うまま振るうのでは唯の暴力です。」
 師の教えを反芻しながら噛み締めるように小明は少女に言い聞かせた。
 その中で一人無言でひたすら歩き続けているのはシリウス・ディスパーダ(ec4270)。いくら子供とはいえやっていいことと悪いことがある、そう考えている彼はしばらく依頼人とは口を利かないことを選択していた。
 こうして重い空気のまま一行は問題の村へと歩を進めていた。

●わらわら。
 夜の闇がひとしきりの空を包み込んだ頃、冒険者たちは村の墓場に到着していた。昼の間に村での情報収集は済んでいる。事前に集めるには充分なほどの情報が集まっていた。今回村に現れたズゥンビは十体、特に村人を襲うということはなくただ徘徊しているだけのようだが。
 一陣の冷たい風が墓場を吹きぬけ影が蠢く。どこからかズゥンビたちが冒険者たちを取り囲む形でのそりと現れた。
「何とも気分の悪い依頼だが困っている民がいるのなら放ってはおけまい。・・・・死して尚、苦しめられているズゥンビ達のためにも早々に決着をつけるとしよう」
 そう言って手にしていた剣をスラリと抜き放つシリウス。小明はその刀身にそっと触れてオーラを送り込む。淡い光と刀身に宿る力を確認したシリウスはズゥンビの一画に向かって走り出した。小明はそのまま自らの鉤爪にもオーラを流し込みズゥンビの一画を見据えた。
 シリウスが向かった先とは反対側のズゥンビにはユリアがコアギュレイトを放ちズゥンビたちの動きを封じていた。しかし囲まれたような布陣に一体ずつの魔法をかけていたのでは手間がかかる。とりあえず数体の動きを鈍らせたユリアは剣を抜きズゥンビたちに斬りかかる。
 ルゥンはその中心で魔法の詠唱に入っていた。レミエラの効果でルゥンの胸の辺りに光の点が浮かび上がり紋様の形を象っていく。セリアはその柔らかな光に浮かび上がるズゥンビの影を確認すると、その影に魔力を流し込む。ズゥンビの足元で小さな爆発が発生しその躯を崩壊へと導く。
 いくら数を揃えたところで所詮はズゥンビ、着実にその数を減らされていた。
「はぁぁっ!」
 シリウスの刀身が闇夜に一筋の光を走らせズゥンビを切り裂き両断する。
「あるべき場所へと帰るがよい!」
 コアギュレイトで動きを鈍らされたズゥンビは、ユリアのピュアリファイによってその存在を形無きモノへと変貌させていく。
「御免っ!」
 攻撃を仕掛けてきたズゥンビをサイドステップで華麗に交わした小明はそのままカウンターアタックを放ちズゥンビを沈める。
「いっけぇぇ〜!」
 後ろからは、詠唱を終えたルゥンのサンレーザーが一閃。ズゥンビの身体を一筋の光が貫いていく。
「これで終わりです!」
 光に浮かび上がるズゥンビの影にはセリアのシャドウボムが炸裂し、破壊する。
 流れるような冒険者たちの連携の前にズゥンビたちがひれ伏すのにそう時間はかからなかった。

●再調査。
 ズゥンビたちを葬った一行は墓場の周辺の探索にあたっていた。もちろん昼間にも調査はしていたのだが、ズゥンビたちが現れるきっかけになったものが気にかかり再度調査をすることにしたのだ。
 この世の理とは反した存在であるズゥンビ。当然その存在は自然に発生するものではなく、何らかの力が働いた可能性は否定できない。
「でも可哀相だよね・・・・出てきたズゥンビも眠りを暴かれただけなんだし」
 寂しそうな表情を浮かべたルゥンが両手を胸の前で組み、祈るように呟いた。
「私たちができるのは再び眠りにつかせてやることだけだ」
 やはりやるせない思いを隠せないのか、ユリアは苦い表情で答える。
「あら、もうやられちゃったんですかー?」
 突然墓場の中にいるとは思えない呑気な声が響き渡る。一行が驚いて声の方に振り向くと白いドレスを着た一人の女性がにこやかな笑顔を浮かべて立っていた。
「・・・・誰だ」
 警戒心を顕わにしてシリウスはスラリと剣を抜き放つ。それをちらりと一瞥した女性は足元にあったズゥンビの欠片を踏みつけた。
「結局普通の死体なんて使っても役に立たないわねぇ〜」
「貴様・・・・!!」
 小首を傾げて言い放つ女性の言葉とその行動に怒りを隠せないユリア。言葉にこそ出さないものの小明も眼光を鋭くして女性を睨みつける。
「死者をなんだと思ってるの・・・・!」
 ただでさえこの依頼に対して感慨深いものを感じていたルゥンは、それを踏み躙るような女性の態度を許すことはできなかった。
「死んじゃったらそれはただの道具と同じよー? そんなものに意味なんてないじゃないー」
 答える女性は以前笑顔のまま、逆にそれが異様な雰囲気を醸し出していた。紡がれた言葉に真っ先に反応したのは小明。地を蹴り一気に女性の傍まで加速すると、そのまま腕を水平に振るう。
 女性に当たるかと思われたその拳は見えない力によって阻まれ、弾かれた。衝突の瞬間一瞬ではあるが半円状の薄い膜のような物が女性の周りに張ってあるのが見えた。灯りがあるとはいえ薄暗い場所であったためはっきりとは見えなかったが、良く見ると黒く淡い光が女性を包み込んでいた。
「・・・・っ!!」
 小明は驚いた表情を浮かべて再び女性との距離をとった。
「せっかく私が種をまいたのに全部台無しですわー。あの子の出来は悪いしもう最悪よー」
 小明の攻撃もまるでなかったかのように佇み、一人しゃべる女性。
「・・・・もしかしてあの女の子に魔法を練習させたのは・・・・」
「あら、あの子ったら誰にも言ったらダメっていったのにしょうがない子ねー。後でお仕置きしなくちゃ」
 ルゥンの言葉に反応した女性は人差し指を顎にあててため息混じりに答える。
「何も知らない少女を弄ぶなんて・・・・ひどい!」
 セリアは女性に向かって弓を番える。相手は人間なのはわかっているが、それでもこの女性をそのままにしておくわけにはいかない。他の者たちもそれぞれに武器を構えた。その様子に女性はため息をついて再びその身に黒い光を纏わせた。
「ごめんなさーい、今はあなたたちと遊んでいる気分じゃないのよー」
 そう言うと女性の身体が奇妙な蠢きを見せ、その姿を一羽の白い鳥に変えて飛び去ってしまった。

●鎮魂歌。
 夜が明けた村、一行は遭遇した女性について聞き込みをしたが、どうやら村人に女性に心当たりのある人間はいないようだった。結果的にズゥンビは全て退治され村に平和が訪れた。依頼人の少女もすっかり反省し、しゅんとした様子で冒険者にお礼を述べた。少女は恐らくあの女性に騙されていたのだろう。そう考えれば少女も被害者なのだ。
 一行は死者に安らかに眠ってもらうための儀式を行わせてほしいと村長に述べ、それにともなってささやかな祭が行われた。シリウスのオカリナの澄んだ音色が響き渡り、ユリアの竪琴が優しい旋律を奏でる。ルゥンは旋律に合わせて神秘的な舞を舞い、それに合わせるようにしてセリアは死者に捧げる鎮魂歌を朗々と歌い上げ、小明は黙祷を捧げた。
 その日村中を悲しくも優しい響きが包み込んでいた。

Fin〜