【古城探検隊】秘密の部屋。

■ショートシナリオ&プロモート


担当:鳴神焔

対応レベル:フリーlv

難易度:難しい

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:6人

サポート参加人数:1人

冒険期間:05月12日〜05月17日

リプレイ公開日:2008年05月15日

●オープニング

 キエフから一日程行った先にある川添いの街。そこはかつて大きな勢力を持った蛮族が支配していた街だったらしく、その周辺には大小様々な遺跡が存在し、その昔トレジャーハンターや歴史学者たちがこぞって探索のために街を訪れていた。
 今回の依頼人であるゴーリキは、現在も探索を続ける一人である。
 ほとんどの遺跡は彼等によって暴かれ、解明されていたのだが、ただ一つだけ例外が存在した。
 それが古城バムラエフである。
 数ある遺跡の中でも特に異彩を放ち聳え立つそれは、何人をも受け入れては数々の挑戦をことごとく跳ね退けてきた。人々はいくつもの文献や書物を参考にしながらも幾度となく攻略を試みたが、その難易度の高さから誰一人奥に進めなかったという。
 やがて人々は畏怖の念を込めてバムラエフのことをこう呼ぶようになった。

 不落の老城、と。

 その老城に異変が起きたのは数日前のこと。今まで城の中には生物の痕跡はほとんどなく、せいぜい鼠がうろついている程度だった。しかし最近になって突如大量のモンスターが発生したというのだ。よく余所から来たモンスターが朽ちた城を住み処にするという話はあるのだが、今回はその類ではないようだ。もし余所からモンスターが移動してきたのなら、その痕跡が必ず城周辺にも残っているはずだが、調査の結果そんなものは発見されていない。

「そこで冒険者の皆様の出番というわけです」

 史学者ゴーリキは一枚の紙を受付嬢に手渡した。そこにはバムラエフ城の大まかな見取り図と調査結果が纏められており、ゴーリキはその中の一つの点を指差した。

「今回私が調べたいのはこの地点なのですが、モンスターがうろついてるせいで近寄れないのです。そこで調査が終わるまでの間だけ護衛を頼みたいと思いまして」

 ゴーリキは報酬となる金の入った革袋をカウンターの上に置くと、深々と頭を下げた。

「くれぐれも城の中を荒らすことの無いようにお願いします」

 冒険者の皆様へ。
 今回はゴーリキの護衛が最優先ですので、ゴーリキが調査できない状態にならないようにお願いします。なお遺跡内での盗っ人行為は厳禁です。万が一何かを発見してもゴーリキに届けて下さい。

●今回の参加者

 ea1671 ガブリエル・プリメーラ(27歳・♀・バード・エルフ・ロシア王国)
 ea8785 エルンスト・ヴェディゲン(32歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 ea9527 雨宮 零(27歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb5706 オリガ・アルトゥール(32歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ec4804 櫻乃宮 瑠璃(26歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 ec4851 テレーゼ・エンゲルハルト(23歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)

●サポート参加者

アド・フィックス(eb1085

●リプレイ本文

●探検開始
 目の前に聳え立つバムラエフ城。不落の古城という二つ名は伊達ではなく、まるで人々の侵入を妨げるかのごとくその姿を眼前にさらけ出していた。
「私はこれまで何度かこの城を調査してきました。しかし、目新しい発見は何一つ得られませんでした」
 穴が開くほどに地図とにらめっこをしながら話すのは史学者ゴーリキ、今回の依頼人だ。冒険者たちはこのバムラエフに入るのは初めてということで彼の案内に従って進むことにした。日中とはいえ城の内部は閉鎖された空間になっており、ほぼ暗闇の状態であった。
 今回の目的はモンスターの発生の謎を探るゴーリキの護衛。ゴーリキに調査に専念してもらうため、一行は彼を囲むような布陣で進んでいく。
「モンスターの謎の大量発生、ですか。確かに気になりますね」
 腕を組んで考えるような仕草をするのは雨宮零(ea9527)。彼は体力的な余裕からランタンを持って先頭を歩いていた。その隣を歩いていたオリガ・アルトゥール(eb5706)は零の言葉に頷いた。
「キエフってどうしてこう・・・・胡散臭い話が多いのでしょうか」
「最近遺跡関係にはデビルの影がつきまとう。ここも例外とは言えないかもしれないな」
 オリガの疑問をなぞるように付け加えたのはエルンスト・ヴェディゲン(ea8785)。考古学を生業とする彼にとって遺跡というのは興味が尽きないもの。さらにデビルが関わっているとなれば放っておくわけにもいかなかった。
「でも神秘的な場所ですよね」
 灯りに照らされた城内部を見回しながら櫻乃宮瑠璃(ec4804)は感嘆のため息をついた。良く見れば過去この城には立派な装飾があったのだろう、それを象徴するものがそこらかしこに散らばっている。もちろん荒らされた後の無残な姿になったものばかりだが。
「久しぶりの故郷で気合入るわ〜」
 左の拳を右手で包み込んで気合を入れたのはガブリエル・プリメーラ(ea1671)。どうやら子供の頃に飛び出して以来のキエフで随分やる気のようだ。
「ゴーリキさん、調べる場所の目星はついているのですか?」
 ふとした疑問を口にしたのはテレーゼ・エンゲルハルト(ec4851)だ。
「えぇ。だいたいの見当はついているので、後は調査するだけです」
 恐らく随分下調べをしたのだろう、ボロボロになった書物を見ながらゴーリキは答えた。
「そろそろモンスターが発生した領域に入るぞ」
 ブレスセンサーで辺りを探っていたエルンストは一行に注意を呼びかけた。
「私は調査に集中しますので、皆さん宜しくお願いします」
 ゴーリキの言葉に頷いた一行は現在調査されている中で最深部にあたる広間へと足を進めた。

●蝙蝠の群れ。
 広間に足を踏み入れた一行を待っていたのはぽっかりと暗闇を映し出した空洞だった。
「奥に続いているようですね」
 空洞の中をランタンで照らした零は自分の意見を述べた。ゴーリキはその空洞をまじまじと眺めながらしきりに書物を捲っている。
「ここからモンスターは出てきたのでしょうか」
 同じようにその身に宿したレミエラの光で空洞を照らしながらオリガは首を傾げた。確かに空洞の奥にはさらに通路が続いており、暗闇に照らされた空間からは何やら不穏な空気が流れ出していた。
「以前はこんなものはなかったはず・・・・これは大発見ですよ!」
 興奮したゴーリキは鼻息を荒くする。今まで不落と言われた古城の第一歩が目の前に現れたのだ、学者ならば当然の反応であった。
「喜んでるところ悪いが・・・・お出ましだ」
 エルンストが呟いた瞬間、広間の上空をバサバサと羽音が響き渡る。体長一メートル程の巨大な蝙蝠が一行の上空をせわしなく飛び回り、一行目掛けて降下を開始する。その動きは普通の蝙蝠より少し早いだろうか。
「何!? 動きが制限されてない!?」
 驚いた表情を浮かべたエルンストは手にしていたワンドを見つめた。装着しているレミエラは発動している。が、このレミエラの効果の対象はクリーチャー、つまり造られし存在に対してだ。自然に生息する蝙蝠には何の効果もない。
「調査が終わるまで大人しくしていてください!」
 オリガの叫びと共に呪文が発動し襲い来る蝙蝠の一匹がそのまま氷の彫像となって床に激突する。続いてテレーゼのコアギュレイトが蝙蝠の動きを封じ込めて床に落とす。
 しかし魔法を使うものたちにとっては遺跡を傷つけてはいけないというのは一つの足枷になっているのだろう。焦って使い方を誤ってしまうものもいた。
 蝙蝠をシャドウバインディングで封じようとしたガブリエルは、暗闇の中を飛び回る蝙蝠の影を見つけ出せずにいた。暗い中で光源が自分たちにある場合、影は当然天井にできる。しかし天井は暗闇に覆われているため影はできない。影のない状態でシャドウバインディングはできないのだ。
「それならっ!」
 瑠璃はムーンアローを放ち、一番近い敵を標的に迎撃を試みた。しかし、常に動きを止めず入れ替わる蝙蝠たちは同じ種族で形も同じ。一番近いという漠然とした設定に矢は標的を見失ってしまった。その結果―――
「きゃあぁぁぁっ!」
 光る矢は自らを生み出した場所へと帰っていき瑠璃に直撃した。
「大丈夫?」
 隙を見て瑠璃に近寄るテレーゼは慌ててリカバーをかけた。撃たれた傷がみるみるうちに塞がっていく。
「ごめんなさい・・・・」
 申し訳なさそうに呟く瑠璃にテレーゼはにこりと微笑んで首を横に振った。
「ガブリエルさんと瑠璃さん、申し訳ないのですがランタンと松明を持っていただけますか?」
 苦い表情で頼んだのは零。魔法を唱えるために松明を預かっていたせいで剣を振るえず身動きが取れていなかったのだ。それでも敵の目をゴーリキから逸らすように動いていたためゴーリキに被害はないのが幸いだったが。
 ガブリエルと瑠璃はそれぞれに松明とランタンを預かる。零は微笑んで二人に礼を述べると、手にした刀を鞘から滑り出させる。テレーゼのコアギュレイトで落とされた蝙蝠が零の一閃で両断されていく。
「ここまで苦戦することになるとはな・・・・もう少し事前情報を元に作戦を立てておくべきだったな」
 苦笑しながらストリュームフィールドを展開するエルンスト。
 普段なら特に苦戦する相手ではないが、制限つきの戦闘では連携を取ることが結果的に消耗を減らす。苦い経験と共に遺跡の調査は続けられた。

●調査終了。
 調査は一昼夜を通して行われた。空洞をある程度まで進んだところでひとまずの終了を迎え、一同は外の空気を力いっぱい吸っていた。
 最初のうちは全く揃わなかった足並みも、戦闘を繰り返すたびに修正され、それぞれが役割を持って蝙蝠の掃討にあたったため、最後の方は特に苦労することなくゴーリキを護ることが出来た。冒険者一行が必死の思いで戦っている間、ゴーリキは完全に調査に集中することができたと深々と礼を述べた。
「おかげで城に傷もつきませんでした。今回の調査で新たな道が広がったのは紛れもない事実です。近いうちにまた調査隊を編成しますのでそのときはまたお願い致します」