ノルマンとジャパン料理の華麗なるコラボ

■ショートシナリオ


担当:成瀬丈二

対応レベル:5〜9lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 64 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月23日〜10月26日

リプレイ公開日:2005年10月31日

●オープニング

 満月が天頂より照らす時──。
「ノルマンよ私は帰ってきたのじゃ!」
「はい、お爺さん、後がつかえているからね‥‥」
 ジャパンの月道から押し出されてきた美食ウィザード『カナルコード』。
 重たげな荷物──アイスコフィンで固めた新鮮な味噌の樽──を侍従に持たせての帰還である。
 自宅に荷物を運び込ませた後、明朝、早速に冒険者ギルドに向かい、新たな冒険のオーダーをする。
「──という事で、ジャパンで料理の修業をしてきたワシとしては、こちらのローマ=ゲルマン風の食材と合わせる事で、スクリーマーの味噌焼きを作るのじゃ、前にワシがパリ近辺で食材捜しをした時、スクリーマーが生えているが、狼の群れがおって、ひとりで行くには危険な森があると聞いたので、中堅どころの冒険者を雇って護衛にしたいのじゃ。狼をどうこうして、スクリーマーの絶叫も無視できる神経の太い冒険者募集じゃ。もちろん、料理の腕も上手ければ、それに越した事はないぞ。どうじゃ!?」
 受付に一気呵成に畳み掛けるカナルコード。
「で、狼をどうこうして──とは? 具体的にどの様な状態を指すのでしょうか?」
 おずおずと尋ねる受付。
「ぶっちゃけ、料理の邪魔が出来なければどうでも構わんのじゃ、たとえ──石になっていようが、氷漬けだろうが、眠っていようが、死んでいようが──どうなっていようと、ワシには関係ないのじゃ」
「はあ、漢らしい事で」
 そして、スクリーマーの所在地はパリから往復2日かかる森にある事。狼の群れの規模は30匹を切る事。スクリーマーは6体のみである事。最後に、その森への先導はカナルコード自身が行う事を確認した上で、冒険者ギルドに仲介料を支払って、スクリーマーの味噌焼きを森で一緒に味わう事を冒険の至上命題として、契約は成された。
 冒険の幕が切って落とされる。

●今回の参加者

 ea1798 ゼタル・マグスレード(28歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea1860 ミーファ・リリム(20歳・♀・ジプシー・シフール・イスパニア王国)
 ea3233 ブルー・フォーレス(26歳・♂・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
 ea5227 ロミルフォウ・ルクアレイス(29歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea8284 水無月 冷華(31歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea9142 マリー・ミション(22歳・♀・クレリック・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 ea9543 箕加部 麻奈瑠(28歳・♀・僧侶・パラ・ジャパン)

●リプレイ本文

 昼なお暗き森の中、キノコ狩りに赴いた一行は早速、狼たちの洗礼を受けていた。
 最初に箕加部麻奈瑠(ea9543)の愛犬ハルは、狼の匂いにうなり声をあげる。
 ややあって各員の乗馬が緊張し始める。
 その雰囲気を感じ取って白い淡い光に包まれ、彼女は菩薩の加護を祈りながら、一同に触れて回る。
 一方で、ゼタル・マグスレード(ea1798)は悔恨にくれる。
 魔法の乱発しすぎで魔力を消耗しすぎ──彼の魔法では通常で10秒、失敗を覚悟して6分の時間のみで、半径100メートルの空間プラス移動距離分の範囲しか、ブレスセンサーはフォローできない
 これで場所が判っているだけの所に向かうのに、安全地帯を探し出し続けるのはいささか無理があった。
「僕のペース配分ミスだ、魔法を過信しすぎた」
 一瞬の詠唱と結印の後、ゼタルは言いながら10匹は居ようかという方向に目がけてウインドスラッシュを撃ち放つ。
 枯れかかった下草を切り払う真空の刃が、緑色の淡い光に包まれた彼の掌から放たれる。
「ミーちゃんも頑張るのら。この日輪の輝きを恐れぬのなら、かかってこいなのら」
 シフールのミーファ・リリム(ea1860)も淡い黄金色の光に包まれ、狼目がけて熱線を放つ。
 愛弓で矢を射込みながらブルー・フォーレス(ea3233)は叫ぶ。
「どうやら、狼の類は魔法に対する防御力が強いようです──かといって撃たないよりは──ああ水無月さん、危ない!」
「女だからと莫迦にしないでいただきたい、援護をよろしく御願いします!」
 水無月冷華(ea8284)は日本刀を両手で持って前線に出る。
 しかし、戦いぶりは一撃は狼と互角、かといって、相手の手数の方が多く、完全に数に押される。
「文字通り“キノコ狩り”の依頼ですね。そう──私が狩られに来た訳ではない!」
「そうそう、あるものは何でも有効活用しなくては、ですわ。はい☆」
 ロミルフォウ・ルクアレイス(ea5227)が血塗れの彼女の背中を庇うように、背と背を合わせる。
 彼女は白兵戦だけ言えば、この中随一の手腕の持ち主であった。
 勿論、遠距離から攻撃するブルーはロミルフォウとは一線を画した技量を保持する。
 しかし、前線に立ってみれば、ロミルフォウの方が圧倒的な強さを持つのは確実であった。
 魔法も剣も、両立させようとした冷華と、前線主体をバランス取りして育てたロミルフォウの力は一応、同等である。
 方向性が違うだけであった。
 今もロミルフォウに襲いかかろうとした狼に対し、冷華はアイスコフィンの高速詠唱で動きを封じる。
「冷華、あなた後ろがお留守ですよ」
 マリー・ミション(ea9142)が、一瞬の合掌と共に、白く淡い光に包まれると、放たれたホーリーの光が集中し、狼を打ち据える。
「カナルコードさん、そろそろ潮時です。下がってはどうです」
 ブルーが後ろも見ずに、依頼人を護るべく、矢を射続ける。
 その言葉に後方からアイスコフィンの魔法をかけていたカナルコードも、魔力の消耗に降参。
「どちらにしても多勢に無勢じゃ。魔力が幾らあっても足りぬ!」
 とうとう、拡大する負傷者の数に依頼人のカナルコードは音を上げた。
「むう、今度は前に立てる人材を募集するのじゃ」
 何しろ相手の手数が多いのだ。前衛では己の技量だけで善戦出来るのはロミルフォウだけであった。
 彼女ひとりでは戦線の維持もへったくれもない。
 撤退となるとブルーが前線に立って土地勘を活かし、皆を先導。ロミルフォウが殿を受け持つ事になる。
 ロミルフォウに攻撃が殺到。文字通りのウルフパックであった。
 ロミルフォウは回避に一日の長あれど、数の暴力に押し負かされて、全身傷だらけとなり、ポーションの世話になる。
 勿論、狼も森を住処とした優位性を活かし、四方八方から飛び出してきては、中央にいる者に襲いかかる。
「やっちゃえなのらー!」
 ミーファがフルパワーでサンレーザーの魔法を使い、狼を足止めする。その間に──。
「オン、カカカ、ビシャンマェイ、ソワカ」
──菩薩の力を借りた麻奈瑠が、その力で手傷を負った仲間を癒やす。全方位からの攻撃に傷ついた者の怪我を治すので手一杯であった。
「足一本の代償‥‥前脚にお返しします」
 右足に噛みつかれた冷華も返し技を相手に放つが、深傷を負わせられない。アイスコフィンという切り札に使う魔力が尽きた今、彼女に決定打を与える力がなかった。
「皆さんついてきていますか?」
 森を、入ってきたのと別方向に抜けたブルーが振り返ると、彼とミーファ以外は血塗れ、傷だらけ。
「何とか──大丈夫そう‥‥」
 麻奈瑠が、まだ足を引きずっている冷華にリカバーを施すと、ようやく埒が開いた。
「む、この匂いは‥‥?」
 カナルコードが鼻をひくつかせると、向いた視線の先にはけばけばしい、まるで魔法のキノコといった案配の、ジャイアントでも一抱えはあろうかというキノコが2本生えている。
「幸運じゃ、あれはスクリーマーじゃ」
「スクリーマー取る時は、ミーちゃんが飛んでって、ロープかけて引っ張るらね〜〜。
 れも引っこ抜く時に鳴くかな〜?? どうらったっけ〜?」
「うむ、鳴くのう、そして狼を呼ぶ」
「狼はもういやなのら〜〜」
「そうじゃな、まあ、群体としては小さい規模じゃが、狼の群れのなかに突っ込むよりはマシなのじゃ。頼むぞ、ブルーどの」
「了解、てーっ!」
 魔力を唯一使っていないブルーが一生懸命にスクリーマーを射止めようと、ショートボウから持ち替えたロングボウに2本同時に矢を番え、狙いを定め、一気呵成に撃ち放つ。
 連撃により絶叫をあげさせる間もなく、確実に一体、一体を仕留め、スクリーマーは全滅。
「まあ、味噌焼きがしたかったのじゃが、火を炊くのは不味い。という事で生に味噌ソースじゃ」
 ゼタルは狼が周囲に居なくなったのを確認してから、こそこそとハーブを取りに行ったが、いかんせん、魔法の援助が無いため返り討ちに会って、血塗れのハーブを持って帰ってきた。
「やはり、魔力配分のペースを間違えました──」
 それでもブルーはにっこり微笑んで、香りをよくするためにハーブを混ぜてみようかな? と呟く。
「まずは、ゴマ味噌だれでいただきます。柄の部分の中をくりぬけばなんとか食べれるでしょう。本命、味噌焼きだったのですが‥‥」
 味噌のアイスコフィンが解除されるまで、待つことしばし、食堂店員のロミルフォウは岩塩を取り出し、擂り粉木で擂りつぶしていく。
「やっぱり火は──」
「うむ、使いたいのじゃが、狼の注意を引きたくないのう、やはり、とりたてを食べたいものじゃし」
 カナルコードは残念そうに呟く。
 調理光景を眺めるマリー曰く。
「どんな出来上がりかなぁ? 楽しみ!」
 という彼女を余所に、麻奈瑠は──。
「お味噌か‥‥。ジャパンを出て以来、口にした事が無いな〜」
──などと言いながら、パン、ゴマ、ネギに、保存食の干し肉と、蜂蜜の壺を出す。
 蜂蜜はもちろん、ゴマも薬効云々と言われるもので結構高価である。
「たまには文献や遺跡から離れて、食の探究も良かろう‥‥。
 ああ、僕の分の料理は、甘めにしておいてくれたまえ。
 何ならこれを上からかけてくれても」
 と蜂蜜壷を差し出すゼタル。
 麻奈瑠は、更に増えた蜂蜜に眉をひそめずに──
「味見、味見♪」
「あ、ミーちゃんも、むう。味わい、ゆらかにして、それれいれ、くろくなく‥‥」
 などと石突きと傘の味見をする。
 味は大味なキノコであった。
 その間に解凍というか、アイスコフィンの封印が解け──樽に早速飛びつくマリー。
「味噌ってしょっぱい! でも中々の味よ。美味しいわ」
 それを見た冷華は、フライングしようとするマリーに懇願。
「ああ‥‥、そんなに味噌は、盛り付けないでください」
 麻奈瑠は、封印解除の間までに浸しておいた、干し肉の戻し水を3つに分け、味噌と普通に合わせたもの。ワイン(カナルコードの従者持参)、ゴマ、蜂蜜を混ぜた胡麻味噌。ネギと味噌を混ぜたネギ味噌、そして、プレーンな味を楽しむコースと、スクリーマーを4分割する。
 一番の好評はネギ味噌。
 次は岩塩フリと合わせ味噌が同等。
 最悪が金がかかった割りには報われない──合計で金貨10枚以上はかかっている胡麻蜜味噌であった。
 若干一名をのぞいて、甘すぎるという酷評である。
 それでも──。
「やっぱり危険と隣合わせとはいえ、自然のなかで食べるのが最高です〜〜〜。今回は美人も多いですし、言うことないですね〜」
 ブルーが美を目と舌で堪能する。
 一同は若干の満たされ無さを感じつつも、満腹感だけは確実に、パリへと戻るのであった。
 これが冒険の顛末である。