熱い想い全部受け止めた
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■ショートシナリオ
担当:成瀬丈二
対応レベル:1〜5lv
難易度:難しい
成功報酬:2 G 26 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月02日〜11月11日
リプレイ公開日:2006年11月10日
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●オープニング
「豚鬼王ですか?」
「いかにも豚鬼王でござる」
八王子代官所に務める武士だという、その男は断言した。
豚鬼王と言えば、豚の頭を持つ、豚鬼の頭。数多あるオーガの輩でも中堅どころの相手であり、力任せの戦闘法が一段と抜けて強いことで知られている。
現在、八王子は代官が不在な為、軍備を不用意に動かせない、というより、軍を動かすより、冒険者で十分ではないか? という判断があるらしく、数を任せに攻めれば若手の冒険者でも十分に倒せる、という結論から冒険者達に依頼が回ってきたというのだ。
この豚鬼王からして、以前に冒険者を放って討ち取ろうとした所、部下の豚鬼を使い捨ての駒にしたあげく、あっさり敗れ去り、蛮勇だけで、包囲網を突破したという卑怯者の最たるものであり、深手を負ったところを奪ったポーションで傷を回復して逆襲した老獪な一面を持っている。
今は相模原の付近で潜伏しているらしい。かなり大雑把な情報だが、詳細な情報が入っていれば、代官所の居残り衆の取った行動も自ずから変わってくるだろう。
という事で、この豚鬼王が配下を集める前に叩いて潰せ、というのが冒険者ギルドに八王子代官所から持ち込まれた依頼であった。
──豚鬼王を巡る冒険が始まる。
●リプレイ本文
カタリナ・オーガスタ(eb8652)は相模原までの道中で、ひたすらナンパに打って出る深町旱(eb6646)の言葉に、滋愛みなぎる笑顔で返していた。ジャパン語は良く判らないので、迂闊なリップサービスはしない。
ただでさえ、親子ほどに年が離れているのだ、クレリックとして迂闊な対応は出来ない。
そんな異様な空間を作り出すふたりからは一歩引いた、ブレイグ・ダークチェット(eb8651)は道中で買い込んだ食料──全員がそろいもそろって迂闊なことに保存食を買い忘れたのである──の事に頭を痛め。また、豚鬼王の事でも頭を悩ませていた。
(冒険者で十分とは、言ってくれたもんだぜ。いや、依頼が簡単って意味じゃなくてだな。むしろ逆で、これっぽっちの人数で──最低限の人数すら確保出来ていない現状で──どうやって豚鬼王を探し出して退治しろって言うんだ、って意味でだ。
全く、初依頼だって言うのに、信じらんねー。‥‥まあ、愚痴ばっかり言ってても仕方ねえよな。やるっきゃねねえか)。
「豚鬼王ってのは、配下を集めるために相模原に潜伏してるって聞いた気がするんだよな」
とブレイグは、敢えて旱に声をかける。
「相模原で『潜伏』ってこたぁ、やっぱ人間に見つからないような場所──たとえば、洞窟や廃屋──なんかに住み着いてるんだろうな。
ま、今回は「相模原付近」っつー曖昧な情報しかない訳だから‥‥仕方ねぇな、俺の相棒の柴犬に活躍して貰うとするか。コイツは一回、豚鬼と遭遇した事も有るし、豚鬼の匂いを追わせてみるぜ。上手くすりゃ、豚鬼王とやらの居場所を突き止める事が出来るかもしれねぇからな。‥‥まあ、全く関係ない豚鬼の居場所を突き止めちまう可能性も、無くは無いがな」
「だよな。てーコトはだ。その豚鬼王ってのに、何らかの『配下を集める方法』ってのが有る筈なんだ。そんでもって、今は、その『配下を集める方法』によって、豚鬼達が豚鬼王の下に集まっている状態だと思うんだ。
つまり、『豚鬼達が向かっている場所に豚鬼王がいる』って考えても良いんじゃねぇか? ってコトなんだけどよ。
ま、とりあえずはその柴犬が適当に見つけた豚鬼達の後でも追ってみるか。もしかしたら、ビンゴかもしれねぇからな」
カタリナはそこに──。
(ふう‥‥‥‥この依頼、初心者には荷が重いんじゃないかしら? って、私も初心者だけどね。
一緒に行く皆は、皆揃いも揃って戦闘しか出来ない人たちだし‥‥‥‥仕方ない、私が守ってあげなくちゃ)
「ん〜‥‥そうね、まずは相模原で情報収集かしら? 豚鬼王って、先の戦闘でかなりの手傷を負っていたって聞いたもの。それだったら、血の跡を残しながらどこかに逃げたって考えても、おかしくないと思うのよ。
それで‥‥もし──最近どこかに血の跡や、何かを引き摺った跡がある地域や場所がありませんでしたかって、周囲の民家の人たちに、情報収集に行きたいの。血の跡や、豚鬼王の通った道が見つかれば、後はそこを辿れば潜伏先を突き止めることが出来るからね」
どちらにしても、場所を特定できない事には変わりなかった。
旱が柴犬を放せば、得意げに尻尾を振ったそこは、豚鬼が代官所の手勢とやりあって、討ち取られた跡であったり、カタリナが血の痕跡について聞いても、最初の情報の段階で、ポーションで傷を治したという所を思い出して、途中で取りやめる次第となった。
そんな3人が豚鬼王に偶然出くわしたのは天の配剤であった。いや、悪魔のイタズラかも知れない‥‥。
相模原と言えば、火計をしかけられたヤマトタケルノミコトが、草薙の剣で風を操り、逆に相手を火攻めにした──というまことしやかな、しかし、ジャパンでは事実として記紀に記されているエピソードのある土地ではあるが、その膨大な草原を歩む一同に、豚鬼王の不意打ちがかかる。
一番無力で、騎乗していない、カタリナが槌の一撃であっという間に無力化される。
騎乗していてはその力を存分に発揮できない旱は日本刀を手に鐙から降り立つ前に血の匂いに興奮した馬を制するので手一杯となった。もともと、武士の嗜みとしてしか乗馬を覚えていない旱はしたたかに地面に打ちつけられる。
一方、ブレイグは愛馬を華麗に操り、続けて旱に振り下ろされた一打に割って入って、身体で受け止める。
ここから逆撃に返せれば格好良いのだが、相手の攻撃は予想外に重かった。何とか馬体から滑り落ちないようにするのが精一杯。
そこへ旱が足元から組み討ちに入り、陸奥流の当て身を食らわせようと試みる。
豚鬼王はその組み討ちより速く、槌を振り下ろし、旱は口の中に溢れる血の匂いに辟易しながらも、相手の股間に頭突きを食らわせる。
瞬間、出来た隙。
ブレイグがこれ以上の反撃をさせない為にコナン流の破壊力を尽くして、剣の重みをかけ、槌を破壊し、かかる余勢で、鎧をも吹き飛ばす。
「終わったか──」
しかし、互いに余力はなく、豚鬼王はあたふたと草原の中に消えていった。
意識がもうろうとするカタリナの提案で、八王子代官所まで脚を伸ばすが、それだけの手傷を負って、倒せない相手では『力不足』であったと素直に労われ、報酬はやや下がるが、出る事となった。もっとも3人の怪我を癒す報酬としては果てしなく足りなそうであったが──カタリナの傷も癒えず、癒し手もいないまま、一同は江戸に向かうのであった。
これが豚鬼退治の冒険の顛末である。