●リプレイ本文
河童の磯城弥魁厳(eb5249)曰く。
「猿もおだてると魔法を使えるようになるのでございまするな。
いや、世の中はまだまだ広い」
良く変化し、魔法を使えるとは最早猿ではない、狐が化け狐、妖狐と発展していくように、元は猿だった『何か』だ。
「狒狒はただでさえ手こずる。動きも素早く力も強い。その上妖怪変化で魔法も使えるとは。 用心せねば」
超美人(ea2831)は先人の教えを元に狒々をイメージする。
森の中に踏み込んでいこうとする魁厳を、マクファーソン・パトリシア(ea2832)が───。
「森の中なら私に任せて!」
と、森の水先案内人を自称する自分が先陣を切ろうとする。
森の奥まで進むつもり満々。美人が同行しようとする。
自慢の視力で狒々を先に見つけ、有利な状況で攻撃を仕掛ける為にも
先に発見される訳にはいかない。
やる気だけはいつもあふれている。
「森の案内と、こっちが見つかる前に猿共を発見する事が最優先事項ね。頑張るわよ!」 日向大輝(ea3597)がそこにストップをかける。
「なあ、分散して行っても、狒々の各個撃破に合うだけだし、相手は地の精霊魔法を使うんだから、フォレストラビリンスの餌食にならないか」
「だから、フレイムエレベイションの使える私が」
とマクファーソンが進み出ようとするが、魁厳が止めに入る。
「いや、わしならばマクファーソン殿、貴殿の『目』に勝てなくても、隠密行動には幾らか、自負があるのでのう」
「私も帰ってきた者のいない森でも、これまでの多大な経験の積み重ね───」
───待ってくれ、と朧虚焔(eb2927)が止めに入る。
「私は犬を同伴してきました。前回は1匹しか退治することができませんでした。己が未熟を恥じるばかりです。ですが、これ以上の非道を許すつもりはありません。今度こそ決着をつけます」
うんうんと大輝少年は頷いて───。
「正直、前はちょっと甘く見てた、剛毛に覆われてるだけじゃなくて体力まで馬鹿高いなんてな。
1匹、数は減ったって言っても森はは向こうの領域、油断は禁物、褌締めなおしてかからないと」
「前回、狒狒の1匹を倒したひとりで有る事を利用し、相手にとっての仇として、囮を務めます」
ルーラス・エルミナス(ea0282)が宣言し、なし崩しに全員が森に分け入る事になった‥‥かに思えたが。
「極悪非道な狒々どもめ許さん。無残な死を遂げた人々に代わって、拙者が退治してくれる。外道相手に手段は選ばん目にもの見せてくれる。という事で拙者は村の周りを警戒するでござる」
と、結城友矩(ea2046)が宣言、一行は一気に分裂の危機に陥った。
かたや、西中島導仁(ea2741)も───。
「‥‥問題は向こうも阿呆じゃない事か。罠を仕掛けるなら、三段構え位を考えないといかんな。
ただ、そこまで精巧なものを作る時間も技量もないからな‥‥まあ、みんなが打って出るというのであれば、手すきになった村を守るために使えるだろうし、ひっかかって躓くくぼみを仕込んで置いても悪くはないだろう。
まあ、あとは戦いになるまでに自分がやれる事と言えば、せいぜい力仕事や見張りかな。
もし狒々が警戒して近づかないのであれば‥‥不利を承知で奥に踏み込むしかないか‥‥? みんなの意見を参考にしよう」
という消極論が出て一同の足元をさらう。
とはいえ、罠の管理と村の警備を友矩が受け持ち。
西中島を含めた一同が森から狒々を追い出す事に決まった。
「狒々と戦うときは急ぐでござるよ。オーラパワーを付与するのに時間が相応に必要故」
魁厳が先導し、マクファーソンが森の当たりをつける。道無き森の中、大輝少年がつけている木の傷跡だけが頼り。ルーラスがオーラ系の魔法を定期的にかけて、緊張の糸が緩まないようにしている。
やがて、マクファーソンの愛犬が声を上げ始めた。
褐色の淡い光と共に放たれる、遠距離から放たれる狒々が放つ、グラビティキャノンの黒い閃光! マクファーソンは咄嗟に青い淡い光に包まれながら、空中に印を描き、解き放ったウォーターボムでそれを相殺する!!
向こうはフォレストラビリンスの様な搦め手よりも、自分の縄張りでじっくりといたぶる事の方が好みらしかった。
バウワウ吠える、マクファーソンの愛犬を横抱きにして、魁厳は森から抜け出す。大輝少年は暇を見てはファイヤートラップで相手の行く手を阻む、簡単な罠を作り出す。
強靭な腕力を以てして、狒々たちは木々の間を渡り歩き、速度は若干落ちるものの森の外へ飛び出す。
飛び出そうとした瞬間、1匹が淡い褐色の光に包まれて、重力を反転させるローリンググラビティーで一同を空中に放り上げる大輝少年は木にしがみつけば、と思ったが、木ごと空中に投げ出される。
「大丈夫でござったか」
さすがに村からは淡い光が明滅している光景しか見えなかったが、事情を悟った友矩が駆けつけてきたのである。
相手が木の枝から降りる前に友矩が数度淡い桃色の光に包まれて、闘気を虚焔と、己の愛刀に帯びさせる。
「狒々どもだ。此処で会ったが百年目、逃がさん」
美人、マクファーソン、魁厳と共に狒々の1匹に飛びかかる。
「我流魔剣───『昼月』」
で魁厳、微塵隠れの爆発による目つぶしと死角からの攻撃で狒々の動きを阻害。
しかし、我流の悲しさで術を放っただけで、もう残心がない、アニマルスレイヤーも力を発揮しなかった。化ける様なものは最早アニマルの範疇に入らないのだ。
美人が撃ち放たれたグラビティキャノンを回避しようとするが、根本的に魔法とは避けられるシロモノではない。例え、オフシフトを併用しようともだ。
抵抗したものの、直撃を食らい肋を砕かれる美人。
その隙をついて、友矩は扱いにくい重量の愛刀をもって斬り込む。
手応え在り!
しかし、それはストーンアーマーに阻まれた手応えであった。ストーンアーマーを破壊できるのは現状では、ニュートラルマジックのみ。如何なる剣技を以てしても打ち砕く事は適わない。
だが、相手の防御を打ち破ったのは事実であった。
マクファーソンが回り込んでウォーターボムを打ち込んで、注意を逸らし、負傷による行動の阻害が相次いだ所で、友矩の本気の太刀が襲い迫る。
「狒々討ち取ったり!」
一方では西中島が太陽を背にしようと動き───口上を上げる。
「1度ならず2度までも、猿ごときの分際で尊き人の命を弄ぶ事など許されぬ‥‥人それを『外道』と言う」
「ジャア、ヒトナライイノカ?」
「うるさい、お前達に名乗る名前はない!!」
鬼面頬を付けると同時にオーラパワーを最大力で発動しようとするが、そこへ迫り来て思いっきり怪力で抱きしめられる。
その貴重な口上の時間を活かして大輝少年はフレイムエレベイションを発動させる。
「外道必滅。天に代わってこの刃で打ち裂く!」
龍叱爪を以て、連打に入る虚焔。
大輝少年がそこに出来た隙に刀を身体の捻りを限度まで加えて撃ち放つ。
西中島はそこで解放され、鬼面を投げ捨てて、愛刀を以て一撃を加える。
完全にひるんだ所で、ルーラスが───。
「‥‥祖国の風の元、切り開け我が剣───『白い戦撃』」
───呟きながら、間合いを十分にとっての一撃は、深々と狒々の心臓を抉り抜いた。
その後、大輝少年が狒々の巣窟を漁り、彼らの戦利品を以て、自分たちの傷を癒すと共に、以前破壊した庄屋の補填費用に充てたり、ルーラスが僧侶を呼んで、復活する事の無いよう、念入りに供養するのに当てたのであった。
これが冒険の顛末である。