●リプレイ本文
「何やらイヤな臭いですね‥‥。闇目幻十郎(ea0548)、参加させてもらいます」
高尾山の修験者達の救援に赴く幻十郎は、敵の背後を厄し、精神的な動揺を誘うと同時に、以前から戦い続けている修験者達に加わる圧力を減殺する。更にその上でデビルの存在を警戒する目算まで立てていた。
「戦いの場は移動しているであろうが、大体の場所を教えてもらおう」
十郎坊に案内を頼む。彼も冒険者と一緒に戻ってきたが、何と言っても高尾山は彼らの家も同然。不案内な冒険者がばらばらに動くよりは良い。
「すみません、おそらくは大山伯耆坊様と白乃彦様の隠れ里のある滝を中心に攻め寄っているはずです」
「それさえ判れば重畳」
「十郎坊さん? 武道家の荒巻美影(ea1747)と申します。幻十郎さんとノルマンで契りを交わした中ですわ」
その会話の中、愛馬に荷を積み込み現れた結城友矩(ea2046)は───。
「敵ながら大胆不敵な奴等でござる。流石に此度は奴等も本気でござろう。首魁が出てくるかもしれぬ。あわよくばデビルの首級を挙げたいものでござる」
手綱を握りしめ断言。
「皇虎宝団いやデビルから白虎殿と大山伯耆坊殿を護りきる」
そんな友矩は依頼を受けると、慌てて住処に戻り急いで装備を整え終え。手持ちの装備で可能な限り精霊魔法対策と物理防御を両立させた装備を引き出す。
これらはこの様な時の為にエチゴヤで集めた自慢の装備達。買った値札以上の働きをしてくれると確信していた。
ギルドで仲間と十郎坊に合流すると馬首を高尾山へ巡らせるのであった。
超美人(ea2831)も高尾に向かいながら相手の心理を探る。
(騒ぎを大きくし、意識を向けさせ、本来の狙いを達成させるのが陽動。今回はそのものずばりこれに当たる。当然、白虎の白乃彦と十大天狗の一人、大山伯耆坊が狙いだろう)
「事が派手だが、相手はそれだけ確実に仕留めたいということ。
この場が落ち着けば早急に向かう必要がある」
息を切らしながら、マクファーソン・パトリシア(ea2832)は韋駄天の草履で美人に追いすがる。
「荷物ありがとうございます」
「女の荷物は大荷物」
そう言って美人は笑ってみせる。
「いい加減迷惑ばかりかける彼らを潰したいから、こんなに大掛かりなら幹部のひとりぐら居そうだし、何とか生け捕って色々情報を引き出したいな」
彼女らに並び走る、カイ・ローン(ea3054)は想いはふたつ。───高尾山の天狗らを助け、封印を守ること。可能なら背後の結社の情報の入手。
皇虎宝団の狙いが判らない事は一番の重大事である。単なる虎スキーなのか、霊的な背景を狙っての行動か。まあ、前者の線は限りなく薄いが、更に並列して走る少年は日向大輝(ea3597)であった。
(‥‥もう一年経っちゃったけど、あのときの枝理銅との約束はまだ有効かな?
こんなことで来ることになっちゃったけど、これもなにかの巡り合わせだ。『おの』にちゃんと言おう)
言うに言えない思春期の悩みと、若さ故のパトスが大輝少年を高尾へと駆り立てていく。
一方、愛馬にまたがったアイーダ・ノースフィールド(ea6264)も想いを馳せる───。
(皇虎宝団の奴ら、まだ高尾山を諦めてなかったのね。
最近見なかったのは、戦力を補充して立って事かしら。
50人もの忍者や魔法使いを雇うなんて、どこからそんな資金を調達してるのか不思議なくらいね。
その名のとおり、宝の山でも持ってるのかしら?)
その思考を発展することなく、張り詰められた弓の様な心境で、高尾へと一路目指す。
颯にまたがった虎魔慶牙(ea7767)は、山地では、毒使いに颯を殺されるかもしれないというおそれから、山中は歩行で行く事にした。
「つまんねえじゃんか? なあ、白蛇」
「その名で呼ぶな───」
押し殺した声を発する口元を黒覆面で隠した氷雨雹刃(ea7901)もとい白蛇丸は、韋駄天の草履で、皆の馬と同じペースで走りながら───。
「このペースで、白影、黒影を連れてこれなかったのは───痛恨だな」
さすがに草鞋を忍犬に履かせる事は能わず、一刻を争う依頼故、江戸に置き去りにせざるを得なかった。
黒崎流(eb0833)は───。
「可能であれば‥‥お話を聞きたくもある」
(人は弱いが、無力ではない筈だ)
確固たる信念。
高尾だけではなく、ジャパン全土が動乱の渦中にある。
(自分は真実を知りたい。何故、奴らは封印を解く事を望んでいるのか?)
友矩の慣れ親しんだ宿望に荷物を預けると、一同は高尾山のいく場へと足を踏み入れていった。
韋駄天草履で急行して、宿望に着いたらバックパックは放り出す。
「忍びや前線の戦力は陽動と言う可能性も高い。
何人か仲間が向かうようであればお任せするが、無い場合は自分が向かおう。
おふた方の下に向かう敵にはデビルが居る可能性もある」
石の中の蝶を持つ闇目殿か、荒巻殿どちらかと、とりあえずもうひとりふたりがくるが、‥‥但し、前線が砕け雪崩れ込まれるようでは意味が無い。その辺りは状況を見て判断するしかなかった。
カイは山について状況を確認すると、敵の背後等の死角から攻めこむ。
そして、その前に山の天狗らと密かに連絡を取りオーラテレパスで挟撃を提唱。
攻め込む前に自身にグッドラックを、その後で仲間と十郎坊と自身のペットにかけた。
「成功率は高くないけど、最終的にはこっちの方が時間の節約になる」
また後衛らが移動しないのならホーリーフィールドの守りを作っておいた。
魔法を発動時の白く淡い光が漏れないように人影等工夫するが、どの程度のものであろうか‥‥。。
幻十郎は戦場に近づいたら、敵の忍者による不意打ちを先ず警戒。
だが、それの意味する所は此方に人数を割り振るという事は、それだけ向こうに加わる圧力が減る事であり、此方が向こうの不意を撃つことには頓着しない。
「此方に戦力を割くか、逃げ出すか、時間差で撃退する賭けに出るか‥‥。さて、向こうはどう出ますかね‥‥?」
この忍者としての読みならば、忍者は死ななければもう一度、という考え方もするらしい。
皇虎宝団に対して絶対的な服従をもって無ければ、逃げる事を選ぶだろう。
エレノア・バーレン(eb5618)は 神出鬼没な忍びや、姿が見えない相手に対応する為に、バイブレーションセンサーを使用し、周辺を探知。
敵の類の位置を探知し仲間に伝えていく。
そして、山狩りが始まった。
相手は5人ひと組で行動。どうやら、精霊魔術師達は修験者の言では姿を見せなくなったそうだ。
「空を飛ぶ者の対策であったでござろうか?」
マクファーソンが部隊部隊を自分の初めて試すカイのグッドラックとフレイムエレベイションを加えてアイスブリザードを解き放つ。青い淡い光に包まれた彼女はまさに水と氷の魔術師であった。
オーラテレパスとオーラセンサー、バイブレーションセンサーのネットワークにより創られた、修験者達と冒険者、天狗達の包囲網から忍者達は落ち延びていった。
しかし、射竦めのカイを恐れてか、遠距離から散発的に手裏剣を飛ばすだけであった。しかし、アイーダの矢が二本、三本と突き立っていく。
死体を放棄して、忍者達は逃げていく。
虎牙は豪快にして派手。戦さ場で育った根っからのいくさ人ぶり忍者にを見せ、怪我を負うほど気合が入る。白蛇に背後を任せ───。
獅子か、虎かの破竹の進撃、
「派手に死合おうか」
「散!」
かけ声と共に散開して逃げる忍者。
「生き延びる為にあがくか! はっ、そうでなくては面白くない!」
手近な忍に者痛烈な一撃を加え、手傷を負いつつも逃げるのを───興が殺がれる、という理由でやめる。
「弱っちぃ相手を後ろから斬っても、つまんねえ。おい、次はもっと強くなってから来いよ」
その頃、友矩は。皇虎宝団の逃走路を後ろから突けるように森林を移動する。
懐中の水晶のダイスを握る。さらに幸運のわらしべ、テイル・リングの効果でグッドラック2.5回分相当のツキがある筈と信じる。実力を底上げする訳ではないし、運頼みを仲間に苦笑された。だが戦士はげんを担ぐものだ。己を信じ、分の無い勝負でも恐れず飛び込む為には必要とも言える。
「‥‥来たな」
敵を発見した友矩はオーラエリベイションを発動するまで唱え、その後得物にオーラパワーをかける。
準備が整った時には敵もこちらに気づいていた。指輪をさすり、敵の最も密集した所へ突撃する。当るを幸いに前後左右縦横無尽に刀を振るい、忍者達に斬りかかった。微塵隠れも例え真後ろにいようとも発動前にそ奴を切り捨てれば怖くは無い。いや怖くない訳もない。いつか確実に野たれ死ぬ戦い方だ。
新陰流の刃は近くの木々を斬り払っていった。
美人は戦闘開始と同時にマクファーソンにフレイムエリベイションを付与してもらう。
「相手の力は侮れん。少しでも有効と思えるものは使わねば」
基本は所持する武器の通常戦闘で相手の攻撃を凌ぐ。しかし、手裏剣などの飛び道具の防御は受けきれず毒に体を侵される。
息を切らしながらも、カイが応急手当をする間、前に出て相手を引き付け時間を作る美人。
「少し前に出よう。 その隙に詠唱を成就させてくれ」
マクファーソンは美人の声に───。
「そこっ! 全く油断も隙も無いわね。
これじゃぁソルフの実がいくら在ったって足りないわ!」
敵と仲間との間に距離が出来、味方に影響が及ばないと判断できた瞬間。 アイスブリザードで広範囲に攻撃。
「美人に今まで散々やってくれたわね。
5割り増しでお返しするわ! 出血大サービスよ!」
マクファーソンにしてはここまで大出力で魔法を何度も使ったのは、初体験であった。
改めて、自分の限界や可能性を見つめ直す。
「私もまだまだね。 でも、出来る事と出来ない事も色々見えて来たわ。
やってみなくちゃわからないものね。」
エレノアは落ち延びようとする、忍びの敏捷さや、高速詠唱微塵隠れに対する対抗手段として、アグラベイションを使用。
忍びの動きを低下させる事を主な方針として、格闘に優れた仲間の攻撃が先に来るように魔法を使用し、後方から戦闘を支援していく。
又、精霊術師や、まだ5人組が有効な敵には、グラビティーキャノンによる貫通と転倒を狙った攻撃!。
更に広範囲に渡り、ローリンググラビティで、重力を反転さ、空中に落とした後、せ叩き付け、行動を封じる事で、敵の連携を乱すように魔法を使用します。
「デビルに操られし、魔道の技を振るう者達よ、この地を侵す事は、まかり為りません」 エレノアの壮烈な意志。
白蛇丸は後方に大きく跳び退きつつ詠唱。敵術者の位置が把握出来た場合は、術に対し逆撃、相手の背後に現れて、峰打ちで落として喉笛を斬りトドメ───と行きたかったが、スタンアタックの抵抗には闘気が関わっており、忍者は闘気魔法のひとつ忍者魔法の使い手である。止めをさそうにも業の相性上、破壊色の強い業を白蛇丸は持って居らず、決定打に欠け、敵陣に逃走を許した。
こうして勝敗は決した。
山伏達の手当も含めてポーションが、毒消しがみるみる内に消費されていく。カイは医者としても久々に充実した(もちろん医者が充実などしない方が世の中平和であるが)時間を送っていた。
そして───。
滝の中の天狗が隠れ里で、流が初めて逢う全身純白の大虎───白虎の白乃彦に封印の中身に問い質す。
返って曰く。
「封印に何がいるか、それすら判らなければ、封印の内容を教える訳にはいかん。それが最低限の立ち位置だ」
そして、この年頃の少年だけが持つストレートさで、大輝少年は『おの』と再会していた。
「俺、お前のことが好きだ。お前さえよければ一緒に江戸に帰らないか?」
そこには1年の時を経て、華開く匂い立つ少女の姿があった。
「ごめんなさい───多分、わたしの先走りでなければ『所帯を持とう』って言っている様な気がするんだけど───駄目だよお武家様と町民の娘じゃ───大輝とわたしとじゃ釣り合いが取れないよ」
「俺、志士の位なんかどうだっていいんだ。ただ、お前と一緒に居られれば」
「とってつけた様なんだけど、冒険者って命のやりとりするんでしょう? 何時かは大輝さんが帰ってこなくなる日があるかと思うと───考えさせて」
「ああ、俺はまだ若いんだ。何度でも───何度でも会いにくる。絵理銅もそう言ってたしな」
こうしてひとつの冒険の幕が降りた。
しかし───戦いはつづく。