デビルはトモダチコワクナイ
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■ショートシナリオ
担当:成瀬丈二
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:10 G 13 C
参加人数:3人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月24日〜01月02日
リプレイ公開日:2009年01月03日
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●オープニング
師走の空気が張り詰める中、身長2メートルはあろうかという、般若面を身につけ、大鎧を纏った武者姿の殺人鬼が、江戸市中に出るという。胸には無数のレミエラの輝き。
3で割り切れる日の晩にだけ現れ、出会った元源徳家家臣を3人だけ斬り捨てる、残った者には見向きもしない。帯びた武具は艶のない黒い具足。そこだけ異質感を想起させる真っ赤な般若面‥‥何より月光を照り返す1メートルはあろうかという黒く鍛えられた、赫い炎に包まれた太刀。そして、首を一刀両断──。
死体が運び出されたそれを見たキャプテン・ファーブル(本名はアンリ・ファーブルだが、あまり定着していない)は、最近地獄から来たデビルの新種ではないか? とりあえず自分のしっているデビルの魔法的な儀式では思い当たる筋がない。
「これは、ひょっとしたら、江戸にデビルを召喚する為の何かの儀式かもしれないな──? それ以外に、これほど大胆に行動する理由が思いつかない。だけど、このジャパンでデビル信者となると‥‥」
キャプテン・ファーブルは困惑顔だ。
ジャパンは、ごく最近までデビルのデの字も殆ど見聞きする事がない国だった。陰で動くモノ共は居たのだろうが、普通の魔物と同一視されている事が、ジャパンのデビル被害の少なさを物語っている。
「強力な悪魔信奉者、それこそ聖者の魂を捧げて人間をやめるほどの者が生まれる土壌が無いこの国で、何かが起きようとしている‥」
だが江戸には冒険者が居る。
ジャパンがどれほどデビルに免疫が無い国だとしても、ギルドに行けばいつでもその道のプロが居るのだ。これも月道解放のおかげだが、デビル事件の急増と時期を同じくするのは、宿命というべきか。
「どうやらデビルの仕業らしいね」
キャプテン・ファーブルはその話を自警団に持って行く。
しかし、デビルだとすれば、最近の冒険者ギルドの八方美人振り、源徳、反源徳構わず傭兵を回す、その仕事ぶりには考える所があった。とはいえ、自警団に術者や銀の武具を調達するのは酷だろう。
キャプテン・ファーブルは決断して冒険者ギルドに仲介を頼んだ。
今や江戸の治安維持は信用できない、しかし‥‥。
──かくして、師走の疾走は始まった。
●リプレイ本文
12月30日──。
ようやく追い詰めた巨躯の浪人、榛八郎(はしばみ・はちろう)の姿があった。
「こいつが血を吸いたがって射るんだよ〜」
般若の面に顔を隠し、炎に燃える太刀を持ち、黒い具足を身に纏ってはいるが、
3人が追い求めた敵の姿である。
胸に5つのレミエラの光が点り。般若面、太刀、具足のそれぞれにもレミエラと思しき光が輝く。
「待ちやがれ、殺人鬼!」
闘気を振るわせ、ピンク色の光に自らを包み、バーク・ダンロック(ea7871)は自らを闘気で鎧う。生半可な得物では傷ひとつつけられない堅固さ。
数多の試練を潜り抜けたものだけがなれる、地上最強の魔法戦士と言われたパラディンの一翼を担う勇者である。
(‥‥デビルってレミエラも使うのか?)
頭上に疑問符が残ったままのバークだが、デビルだろうと悪魔信者だろうと単なる殺人鬼だろうと、パラディンが倒さなくちゃならない『悪』に間違いは無い。
たとえ源徳に恨みを持つ人間の犯行だとしても、戦場でもない場所で法に背いて大勢の人間を殺してるなら、ただの犯罪者である。政治に関わる事を禁ずるパラディンにとっても、これは正当な戦いだ。
武藤蒼威(ea6202)は、そんな確固たる自信を持つバークに安心感を覚え、目の前の八郎に向き合う。
(──デビルか。それとも気が触れた志士か。何れにせよ危なくて野放しにはできねぇな)
「日が暮れるまでが勝負か」
二天一流の定石を敢えて外し、両手で虎徹を構えた蒼威は無愛想な顔に微妙に笑みを浮かべる。
そして、八郎の前へ進み出ると烈火の如き気勢で上段に構えた。
相手が抜き放つなら、こちらはそのラインを見切ればいい。
万全の体勢で、ただ蒼威は戸惑いを覚えていた。
(何故前に出ない──ヤングヴラド?)
蒼威の焦りを知らず、ひとり後方に居たヤングヴラド・ツェペシュ(ea1274)の声が響いた。近年になって身長も急上昇し、少年から立派な若者へと変貌を遂げている。まるで芋虫が蝶になるように。
「ふははははは! 戦乱のジャパンで世間と関係なくデビル退治も悪くないのだ。
まあ、話を聞くだけではデビルにしてはなんか妙な気がするのだ。
江戸の防備を固めるため、包囲戦の際に内部工作の懸念材料となる元源徳家臣をよんどころのない事情をでっち上げて斬り捨ててるようにもみえるのだ。我が輩の神の御技を見るのである」
これもセーラ神の加護と祝福を一身に浴びた、アビニョン法皇直々にテンプルナイトである事を許された最強が魔法騎士の一角である。
そして予め唱えておいた『江戸を守る』という誓約に加えて、白い光を漏らしながら、圧倒的な神気が押し寄せる。
刹那、八郎の体勢が崩れた!
一瞬の隙、だがそれを見逃す戦士達ではない。間髪いれず、バークが踏み込む。持つ武芸は己の首を革一枚でぶら下げるもののみ、故にいつも全回!
波濤の如き一撃が押し寄せる。
八郎は躱そうとしたものの、ヤングヴラドのカリスマティックオーラの前に、ギリギリ避けられなかった!
「何!」
直撃を受けた鎧から黒い何か──敢えて云えば血が滴っている。
八郎の血ではない。どう見ても、流血しているのは鎧そのもの。
「生きた鎧か、鎧と繋がってるのか‥いや、関係ねえ」
驚きを心の奥に鎮め、蒼威が必殺の猛連打で詰め寄っていく。蒼威にとっては、目くらましのつもりの乱打だった──、一発当てれば上等と思っていたが、バークの一撃とヤングヴラドの奇跡がそのチャンスを格段に跳ね上げていた。
加えてアルマスの力である。
暴力的に鎧を破壊、すると鎧が黒い霧と変じた──。
「この鎧──デビルか!?」
バーグが喚起を促した。
八郎はよろめき、後退する。般若面がまるで生きているかのように、口元をゆがませた。魔法の詠唱、紡がれる呪文に合わせて面の口が動く。
「何をする気だ?」
般若面が黒い靄に包まれたかと思うと、八郎の姿が歪んでいく。黒く、肉体は艶やかな羽に覆われ、足は細く、腕は黒翼に、顔に長い嘴が現れて‥
一瞬後、そこには武者の代わりに大空を懸ける大鴉が居た。
腕を離れた刀は、それ自身が意識があるかのように宙に浮かび、バークに襲いかかる。
「ちっ!」
バークは高速詠唱で闘気を爆発的に吹き上げる──般若面が半ば割れ、刀が地に落ちる。
だが、大鴉は大きく羽ばたき、夜空に飛び上った。バークは高速詠唱の硬直で追えない。
「待ちやがれ!」
良く肥えた肉体を振るわせながら、バークも空に駆け上がるが、刀が再び浮き上がって追い縋った。妖刀を真っ二つにした時には、夜空に鴉の姿はもはや見えない。
「すまねえ、逃がした」
「追おう。八朗とやらの家に踏み込むんだ」
蒼威が仮面に止めを刺した後、十手持ちの同行の上で八朗の自宅へと踏み込む。
部屋はもぬけの空だったが、家探しすると、ぬか床の中から悪魔との契約書が見つかった。
「これは!」
八郎が契約した悪魔の名は七大魔王の一角、マンモン。目的のため強くなりたいという八郎の欲望をかなえる為、三体のデビルを貸与した事が記されていた。面貌の形をしたデビル『般若面』。刀の形をしたデビル『妖刀』、具足の形をしたデビル『魔鎧』に殺した相手の魂を捧げていたらしい。
八朗はどこに逐電したのか、そのヒントはない。とりあえず、夢想流名誉の使い手である彼がどこにいっても武芸者として抱えられる事は間違いないだろう。
「後味が悪いヤマであったあるな──とりあえず年越しか?」
ヤングヴラドが思い人の姿を脳裏に描く。
「俺は阿修羅神の正義の為に、正当なる戦いを探す」
「ジャパンでは細く長く生きられるように、と蕎麦を食べる習慣があるが、どうだ、今年の年越しは俺と一緒にやらないか?」
そして百八つの鐘が鳴る。
これが新年を彩る冒険であった。