●リプレイ本文
李斎(ea3415)といい、暁らざふぉーど(ea5484)といい、時間は限られているのだ。毒草摘みをしたり、猟をしたりして行程を遅らせるのは如何なものか?
山賊撃破への強行スケジュールを立てたバルバロッサ・シュタインベルグ(ea4857)がふたりに苦言を呈する。
結果ふたりは余っている保存食料を持っている仲間から分けてもらいながら、前進する事になった。
一方、黄牙虎(ea4658)もやり玉に挙げられ、食料をいちいち調達するのに売り手とやりあっていては話が進まない、と釘を刺される。
「しかし、これだけ人数が集まると壮観だな‥‥」
と、寝所を造る為にあわただしく動く一同を見て、アズエル・フォルド(ea1594)は
「‥‥どう考えても討伐という規模ではないな。まあ、戦場には慣れているからいいが」
自分も手を動かしながら──。
「それでも戦力不足。数の不足は不正規戦で補う、か」
作戦会議で決まった自分の役割を思い出す。
「夜襲か。偵察、火付けに相手に隙があれば暗殺‥‥」
「‥‥どう考えても討伐という規模ではないな。まあ、戦場には慣れているからいいが」 ベイン・ヴァル(ea1987)はアズエルの言葉にどうという事はないという感じの言葉を返す。実際どれだけの業績を積んでいるか不明であるが。
何しろ自分自身の事の記憶が抜け落ちており、今の言葉は過去の残像か、はたまた新たに生まれ直して以降のものかはアズエルには不明である。
汗を流しながら自分の分担を終えた北道京太郎(ea3124)も論議に関わる。
「向こうが守りでこちらが攻め、集めたこちらが30そこら。依頼人も本気で俺達だけでことを片付けられるとは思っちゃ居ないだろう、これは‥‥・」
斎は一同に黄色い目印、鉢巻きや腕章などを、と主張したが、京太郎はそれに対し、鉢金にマークをつける案を主張。どちらにしろこの移動スケジュールでは確保が厳しく。また、相手の一兵でも残れば、向こうもまねをしてこちらが混乱に陥るという点からふたりの案は総勢一致で見送られた。
「ともあれ、これだけ大所帯だと食べ物を断つのが一番。炎で混乱させることもできるしね」
インフラビジョンを付与され、食料庫把握、使用言語確認。また敵軍の志気、練度を見計り指揮系統確認との大目的を掲げたシフールナイトのララ・ガルボ(ea3770)の率いるシフール部隊が山賊の街道の陣地に偵察に向かう。
食料は各自で持ち、使用言語はゲルマン語、志気は旺盛。連度は一部の例外を除いて低い──だが、集団としては乱れぬ動きをするだろう。
そこで見た光景。
無理を押して迂回しようとして、見つかった商人2名がクレリックの前に引きずり出された。
「お願いです。この道でないと薬を届けるのが間に合わないのです」
「セーラ神は寛大です。どちらか片方を通してあげましょう」
クレリックはにこやかに笑う。目はうつろであった。
「すみません、薬を運ぶのにどうしてもふたりいるんです」
「いいでしょう、通して上げましょう」
「ありがとうございます」
「ただし、真っ二つだがな」
髪の毛を鶏冠の様に逆立てた神聖騎士がふたりでそれそれの脇にいた商人の胴を一刀両断する。
「さあ、セーラ神はあなた方をお許しになりましたよ」
「ひどいよ、あれでセーラの信徒なんて信じられない!」
ペインは己の読みの甘さを思い知らされた。
自分の剣技で遠距離から丘陵攻めに入ろうとしたのだが、相手の飛び道具の方が間合いが上であり、盾を以てしてもなかなかに近づくのは難しかった。
エルド・ヴァンシュタイン(ea1583)はカイエン・カステポー(ea2256)の守護の元、ファイヤーボムの間合いまで近づこうとするが(さすがに油瓶を15メートル以上の距離からまともに当てる気概はなかった)、矢が刺さり、抜いた所をリカバーポーションで癒す。
「すまないな。意外と得物が重たいのでな」
野太刀を持ったカイエンは謝るが、どちらにしても癒しの技は彼の良くするところではない。
だが、迫り来る山賊どもをパートナーが一撃必殺で守ってくれる。
シフールたちが空中から火球を放ち、外見だけは盛大に爆発をする。
矢の雨の前にジャイアントのバルバロッサがギリギリで急所を外し、防具をフル活用しているが、それは自らの前進を諦めた一歩であった。
だが、確実に矢の本数を殺いでいく。相手がアルスターあたりを学んでいたら危険だったかもしれないが、そこまで相手はご都合主義ではない。
木々の枝が動き、一部の山賊が無力化されると、突破口を広げるようにグラビティーキャノンの黒い線が敵陣目がけて走っていく。更に弓が射かけられ浮き足立たせる。
そこへ追い打ちの手をかけていく。
『それじゃあ‥‥‥‥さよならだ‥‥』
へらへらと邪悪な笑みを浮かべつつ、忍術を活用し、らざふぉーどは敵陣の後から潜入するが、陸奥流の基本技で相手を無力化しようとするが、それ以前に自分の腕の差があって、盾で攻撃は弾かれ、剣で切り替えされる。五分五分でよけたものの、次が無いのは目に見えてきた。
それ以前に相手は山賊仲間に警告の声を上げているというのが大問題であった。
整然と逃げる振りをし、へらへらと──。
「弱者の戦い方、見せてあげますよ〜」
その言葉に相手は警戒したのか、追撃はなし。らざふぉーどは命を拾った。
一方、セーラ神の加護を受けたシフール部隊の牙虎はララと組んで空中からレイピアの衝撃波を撃ち放つが、最初の一撃はともかく、続く攻撃は盾で軽く弾かれてしまった。さすがに格闘武器そのものの技能に重点をおかなければ、この手の技は通用しない。
一方、仲間からの雷撃や、武器の貸与などで援護されたベルナルド・シーカー(ea4297)は神聖騎士とクレリックらしいコンビと対峙していた。
周囲の山賊は春の花の如き香りに眠りに誘われている。
「風上に立ったが、うぬが不覚よ!1」
更に相手は雷撃をおそれてか魔法を使った気配があった。
「こんなん、何処が盗賊なんや! 訴えたる!」
良いながらもベルナルドの足取りは相手の間合いを侵略し、クルスソードでの一撃を許す。敢えて攻撃を受けてそこから、斬鉄の一撃と斧の加重による必殺コンボを狙ったが、相手が悪かった。相手はコボルドではないのだ。
剣理を知り、知恵もある。
反撃を狙うが、剣での一撃を裁ききれず、もろに全身に浴びる。負傷で万全の体勢を整えられない反撃も回避され、一方的に深手を負うに止まる。
援護組が飛び込もうとするが、遠い間合いでの戦闘を前提にしていた為、そう軽々しくは近寄れない。
カアラ・ソリュード(ea4466)も倒れ、必至になって怪我を癒そうとする動きがあるが風前の灯火だろう。
一方で、馬の首が落とされた。我羅斑鮫(ea4266)が相手の機動力を弱めようと言う策である。無論、見張りは縛り上げられた。
夜陰に乗じて彼に化け、神聖騎士、相方の僧侶を起こし、向こうが気づく前に微塵隠れの術を発動。全身を煙でドロンと被い、爆発が炸裂する──かと思われたが、向こうが存在が確認されていなかった高速詠唱で全身を白く淡い光で包まれたかと思うと、金縛りにし、魔法を未然に防ぐ。
そこへレジエル・グラープソン(ea2731)のナイフが飛び、スモールシールドで受けきれなかったクレリックに突き刺さる。 続く2本のナイフで動きが止まったところを斑鮫が脇腹から滑り込ませるような一撃を決め、止めを刺す。
どこも一筋縄でいかなそうだ。 しかし、60発以上の爆発が発生し、更にエルドの魔法で炎が荒れ狂い、相手も退却の決意を固めたたようだ。角笛が吹き鳴らされ、
夜の戦場を散々一騎駆けしたオラース・カノーヴァ(ea3486)はようやく傷に気づいたように、リカバーポーションを飲み始める。
後衛に回っていた面子も仲間のクレリックの手当を受け、傷は癒されていく。
1日の休息を取って次の強襲に備える間にもララは領主への手紙に余念がない。もっとも、一介の冒険者の手紙が会合で忙しい貴族達の手に止まるかは甚だ疑問だが。
ワザと煙が出るように相手の退却路上で生木を焼くが、これも効果はあまり望めそうにない。
アズエルはこの山賊の背後を浮かび上がらせるような資料を探していたが、そういった資料は出てこず徒労に終わった。
だが、そういった事の疲れを取る前に丘陵地帯から山賊の本隊が押し寄せてきた。
「行くぞウィザーズッ、魔力の補充は充分か!?」
エルドが各員に体調を問うた。
6時間の準備時間が功を奏した様であり、クレリック達以外は魔力は万全である。ベルナルドも夜中に教会に連れ込んで傷を癒してもらっていた。「
「精霊よ私に力を」
前衛が走る中、後衛の魔法も飛ぶ。
シフール達の嫌がらせの砂も、こう乱戦になっては敵を有利にするばかりであった。
ペインの予想とは裏腹に敵の幹部らしいクレリック、神聖騎士の姿が見える。
騎乗しての突撃に合わせて、衝撃波を放つ。今度は相手から間合いを詰めているので、馬に命中。膝を折らせる。しかし、神聖騎士は見事な体裁きで地上に降り立つ。
その次の瞬間、ペインの肩からも血が噴き出した。相手も衝撃波を切り返したのだ。
しかし、次の瞬間、己の術で傷は癒された。ペイン大危難。
一方、カイエンは後ろに回り込んできた神聖騎士に奇襲をかけた──と思ったが、巨体が仇となり、かなりの距離からも山賊の矢の対象となった。
「神よ──」
言ってカイエンは野太刀を構え、そのまま神聖騎士に突撃をかます。
タロン神の加護でもあったのか、カイエンの野太刀はそのまま相手が受ける間もなく、首筋から切り下ろす。
だが、カイエンもその代償は大きかった。腹が割け腸が飛び出してくる。相手の返しワザである。
しかし、相手の動きが止まったところでバルバロッサの配下から、魔法が飛び魔法ダメージ自体は無力化できても、無効化できない質量でたおされる。さらにバルバロッサの仲間により完全に止めを刺される。
更に助けに入ろうとした山賊陣を魔法の十字砲火が浴びせられ大損害となる。
ペインの危機を救ったのはバルバロッサだった。
「ペイン。貴殿では力不足だ。俺がやる──こい、山賊だか神聖騎士だか判らない奴。初手は譲ってやる」
その声よりも烈しく、強打が降ってきた。クルスソードの重みも十分に加えた一打。
鎧をすり抜け、烈しく血を降らす。だが、重要な臓器は全て刃からは外れている。
そこへ、バルバロッサ逆撃が迎え撃つ。幸運にもその一打は相手の盾を抜けた。そう、非常な幸運である。もし、先にペインーの一撃を浴びなければこの僥倖は無かっただろう。
まさしく紙一重の差であった。
ジャイアントとはいえ、バルバロッサが生きているのが不思議な位の一撃である。
そうしている間にも斎が敵をたこ殴りにし、無手の女にここまでやられるのか、と総崩れになった所への痛打となり、山賊達は鼠族となり潰走していった。
だが、人数が多すぎるため、ウィザード達が魔法を乱射しても追いつかない。クレリック達も人混みに紛れて逃げ出したようだ。
クレリック達に助けられた冒険者達は貴族の城に招待され、一時の休暇を味わっていた。
ジャパンからの輸入品であるSOUMENに舌鼓を打ち、冷やした果実を存分に味わう。
貴族ならではのゴージャスな時間であった。
一方、この山賊に関する貴族達の見解も一致して神聖ローマの何かの策略だろうということであったが、斑鮫の 装備や指揮官を考えると騎士達が山賊に武器を与え支配下に置き運用テストをしていると言う感じか、という意見に一同は納得しているようであった。
もっとも、相手は物証など残さないだろうし、一番情報を握っていそうなクレリックや神聖騎士の捕獲に繋がらなかったのがノルマン王国に対して心残りであった。
尚、彼等の人間関係的を観察したバルバロッサは、猟主間の調整はとてつもなく手間取りそうであり。最悪、城のひとつも奪われるケースに発展したのではないだろうか、というのが見解であった。
冒険者達も夏のしばらくの間を涼しく過ごし、冒険を無事終えて一同は馬車へ乗り、パリへと凱旋するのであった。