雷鳴が砦を奪還せよ
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■ショートシナリオ
担当:成瀬丈二
対応レベル:1〜3lv
難易度:難しい
成功報酬:0 G 93 C
参加人数:12人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月14日〜06月21日
リプレイ公開日:2004年06月22日
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●オープニング
オゾン臭がその男が腕にする雷鳴の剣より発せられていた。そして、その臭いが漂う間、次々と『彼』の仲間は切り伏せられていったのだ。否、逃れた者はいたが、周囲を囲む山賊により各個撃破されていったのだ。
そして、残るは『彼』のみ━━恐怖を感じる暇もなく雷鳴の剣が振り下ろされた。
「いやぁ、手強い相手らしくって、もう2回討伐に失敗しているんですよ」
冒険者ギルドの受け付けは人事の様に言葉を続けた。
パリから3日程行った山林の中の砦が山賊に占拠されて二週間程も経ち、週に一度は討伐の冒険者を送ったのだが、砦近くの街道に彼らの首が晒されて、討伐の失敗を無言ながら雄弁に物語っていた。
首の断面の焼け跡から、ライトニングソードではないかと予想され、風の系統の精霊魔法の使い手ではないかと推測された。
どうやら、今までの討伐隊にライトニングソードを受けられる術者が居なかったのが敗因らしい。
闘気でも、神の加護でも、精霊との契約でも何でもいい、ライトニングソードを受けられる物品を創造するなり、受ける武具に術で付与してでも相手の動きを封じられれば、勝つ見込は大いにあるだろう。
「まあ、後は配下の山賊をどうするかですね。まあ、魔術の使える方なら簡単でしょうが」
などと偉く魔法万能な亊を受付人は言った。
周囲の物品の略奪などの食料の量から、推定して山賊らは親玉も会わせて10人前後。
「まあ、この3度目の討伐が失敗したら、とうとうブランシュ騎士団のお出ましでしょうからね」
死地に冒険者を送り込む者の態度としては受け付け係は気楽なものだった。
「とにかく目標は砦の奪還ですから、派手な行為は砦の中では慎んでくださいよ」
●リプレイ本文
「ロの字型の城壁の真ん中に櫓が一本。東に面した方の部分が厚くなっており、そこに物品の収納庫がある、塔を挟んで門があり。単純だけどこれが判らなかったら辛かったでしょうね」
月読 玲(ea1554)とパラのバロム・ペン(ea2705)は地面に簡単に略図を書き、一同に説明する。そして、周囲の地形を聞き込んで、入念に探りつつ、周囲の民人から仕入れてきた情報を一同に披露する。
「どうやら、敵の山賊は夜間に隊商などを襲うのが手口みたいにゅ。皮鎧に手斧というのが大体の装備にゅ。後は短弓が3人にゅ」
ナイトのマリウス・ゲイル(ea1553)が続ける。
「敵のボスはすっぽりとローブを被っている。これから暑くなるのにどうする気なのか不思議なものだ」
「何、それは関係ない。牢屋かどこかに送り込めばすむ事だ」
エルフのジャドウ・ロスト(ea2030)が真剣な表情で端的にその言葉を切り捨てる。
「その『どこか』というのが曖昧だね。とりあえずアレだ、いかなる悪党にも神の慈悲は下される」
苦笑いする神聖騎士のカイエン・カステポー(ea2256)。だが、シャドウの表情は変わらなかった。
一方、ジプシー達はテレスコープで砦の造りと、警備の具合を確かめる。
情報に誤りはなかった。
月読のはしゃぎ気味な声が小さく響く。
「じゃあ、このタイミングでだね」
──様々な思惑を孕みつつ、作戦は決行される。
黄昏時に茜色に染まりしは、白い甲冑、白いマント、りりしき騎士の集団。
ブランシュ騎士団であった。
だが、彼らが幻影であるというのはマジカルミラージュで誤認できる範囲である1キロメートルを遥かに割った100メートルという間合いでは丸わかりであった。
右は赤瞳、左は碧眼に赤毛のシフール、ターニャ・ブローディア(ea3110)の陽精霊魔法であったが、彼女も含めて、おこちゃまウィザードのアンジェリカ・リリアーガ(ea2005)が放った稲妻や熱線といった派手な魔法は相手に多少のダメージを与えたものの、山賊はますます幻影に関する信憑性を疑い。結局敵襲を告げる角笛が響き、砦の防護を固める形となってしまった。
だが、相も変わらず、まばらに稲妻や熱線が空中を走り、塔の見張りを牽制している。
マリウスは自分が見ても、幻影と看破できる騎士団を背景に降伏を勧告する。
「そちらの首領と話をさせてもらえるなら、命は許しましょう」
「とりあえずアレだ、いかなる悪党にも神の慈悲は下される。負けは見えてることだし、退去せんかね? 我らは別に追わないぞ?」
カイエンが言葉を添えるが、返る言葉はなかった。
門扉に近寄るとおもむろに剣を抜き、気合いを込めて剣を振る。爆発的に広がる衝撃破! だが、目立ったダメージはない。
一方、潜入に回ったのはビザンチンの女神聖騎士、クリスティア・アイゼット(ea1720)とエルフの青年ウィザード、ゼルス・ウィンディ(ea1661)である。忍び足には自負があるが、入れなくては仕方がない。
「守りは頼んだぞ」
困るふたりにと、相馬 景滋(ea1561)が慣れた手付きで、閂を針金一本で外そうとする。
大和撫子、玲も壁に張り付き、内側に耳を澄ます。
(潜入がうまくいくのといかないのとでは大違いだからな、慎重にっと)
「ちょっと待ってねぇ、そういうのは任せて欲しいですぅ」
クリスティアが剣の柄に手をかけて祈る。黒く淡い光が彼女を被い、生きるものの位置を彼女に告げる。
4メートル先に3人。
部屋の中ではないだろう。
「開いた」
鎧戸の蝶番に油を差して、音もなく開くと、息を殺して、潜入する一同。
「まずはその4人から攪乱しよう‥‥」
景滋はバロムと頷きあう。
そんな最中にも──。
(過去は全て捨ててきたつもりだ。だが、砦攻めなんざ久しぶりだと胸が躍る‥‥さてはて)
「くっ、しまった! 見つかった!?」
「大変だー!」
とふたりは叫びながら、物置だったらしい部屋から飛び出していく。
後ろを見せながらも、山賊達の攻撃はあたりもしない。卓越した体さばきである。
「ヘイヘイ、オイラの華麗なステップについてこれるかい? ウキッ、ウキキキー!」
と、猿の如く挑発するバロム。
薄暗い砦の中、子供に見える彼の言葉にいきり立つ山賊。
「ふたりが行った逆を行きましょうよぉ」
と提案するクリスティア。
そして、月読は淡い煙に包まれて発動した疾走の術に任せて、先鋒を務めたが、ゼルスが術で得た情報を伝えるより早く一行は『ふたり』のローブ姿と山賊二人と向き合う。
「ひとりじゃないってオチ〜?」
「そういう事だ」
と思わず日本語でもらした月読に一方は返事する。
つまり志士である。
フードを払うと、30絡みのジャパン人と、40代のエルフであった。
「じゃあ、日本刀はどこよ、日本刀は?」
「食うのに困って売っ払った。だが、我が剣はそれだけではないぞ」
「この食い詰め志士が!」
状況が判らない
まま止まった月読に、一同の動きも止まる。
「さて、君たちの頭領が待っている城門に行こうじゃないか?」
後ろはに下がればバロム達も巻き込むが、敵も増える、ここは門の騎士達を信じるしかない。
それを確認した所で、虜囚の気分で一同は城門を裏側から見る事となった。
ふたりはまだ逃げているのだろう。足音、怒声が聞こえる
その合間にひとりづつ呪文を唱え緑色の淡い光に包まれ、雷の剣を手にする。志士の方は──二刀流であった──稲妻の刀である。
。手の動きから察するに両手効きでもあるらしい。
どうやら、本気で6分間でケリをつけるようだ。
そして、城門は開かれた。
夕陽は既に落ち、牽制に回っていた3人の魔力もつきた。
現れた一同にマリウスは思わず漏らす。
「ジャパンの志士に、エルフとは‥‥あなた方がライトニングソードの使い手ですか。まさかこんな人だったとは」
そこへ気合い一閃、エルフの戦士レーヴェ・ツァーン(ea1807)が周りを囲み始めた雑魚に斬りかかる。剽悍な一撃が山賊を怯ませる。
その隙に闘気を練り、淡い桃色の光に包まれ、アリアス・サーレク(ea2699)とマリウスは盾を作り出す。シャドウも精霊との契約の元、淡い青い光に包まれながら多量の水を発生、 次の一手に備えた。
(しまった。今の荷物では、水を操りながら、術を新たに発動する事などできない!)
計算ミスを恨みつつも、次のコントロールウォーターの準備に入る。
そんな悔恨をよそにマリウスvsエルフ、アリアスvs志士という形が出来あがる。
山賊の首領達は警戒して水には近寄ろうとしない。
そして、飛びかかるエルフの首領の剣の連打、力量の差とカウンター狙いの為、盾で受ける暇もなく、深々と腹部を抉られる。 魔力に必死で抵抗しようとするが、それも叶わず深手を負う。
だが、その怪我をも乗り越えて反撃の一打を浴びせる。
刹那の攻防にかわしきれずマリウスの剣を食らったエルフ。膝がゆるむ。
荒い呼吸の中、マリウスは呟く。
「ゲイル家の武勲を継ぐもの──この程度は出来なければ‥‥」
残った体力を振り絞って、剣を支えに立ちつくす。
そこへシャドウが水を操り、エルフの足下から水を這い寄らせる。
精霊魔法を操るものの常として、その抵抗力も高いはずだが、深手を負った今となっては抗しきれない。
空いた方の片手で払いのけ、何とか呼吸を維持するが、気を失ったようだ。
「‥‥消えろ蛆虫。貴様等に生きる価値など無い」
シャドウは超然とした表情で呟いた。
その一方、苦戦しているのはアリアスであった。
彼もカウンター狙いであり、回避のギャップは足裁きで埋めようとするが、相手の二刀流はそれをうち消した。
右へよければ、右へ。左へよければ、左へ。
更に相手は3発目もあるのだ。体力が伺える。
だが、アリアスは負ける訳にいかないのだ。
「義妹との約束があり、此処で死ぬ事は絶対に出来ないし、同時にこいつ等に苦しめられる人々が居る限り、負けるわけには行かない…その決意を見せてやろう」
ノルドの定石に則った型から、一変して山の如く静かな体勢に。柔剣の型を取り入れた流派の型というより、彼の心情を雄弁に語っていた。
だが、志士は轟く稲光を片手に携えたまま斬りかかる。
またしてもカウンターを狙うアリアス。
今度は最後の一発は盾で受けるしかない。
奇跡とも言える間合いでオーラと精霊力が互いに弾きあう。
だが、続けて乾坤一擲の上下からの同時攻撃。
下からの一撃は敢えてさけ、上からの一撃を受け流す。
──しかし、受けられそうになかった。
轟く声。
「ヨシュアスさんから連絡がありました。ブランシュ騎士団がすぐ近くまで来てくれているそうです」
ゼルスは潜入する前に唱えておいた呪文で、志士の後ろから大音声で飛ばしたのだ。
志士もノルマン解放戦でのこの勇名は知っていた。
それが雷剣に迷いを与え、動きが止まった。
(この一瞬に全てを──セリア、力を貸してくれ!)
志士の臓物をぶちまける一反撃の一打を浴びせる。
血がシャドウの作った水を薄紅色に染めていく。
「なぜ、あの土壇場で動けた‥‥」
血を吐きながら志士が訪ねる。
「お前には護るものがない、それだけだ」
首魁を倒された山賊はお縄につき、砦は開放。見事、冒険者ギルドからの依頼は成功した。バロムと景慈は投げられた手斧を避けきれなくなり手傷を負っていたが、深手でない為、リカバーポーションで治す羽目になった。だが、リカバーポーションを商っている旅商人からひとり頭2本を礼として貰えたのだが。
それでも治らない傷は近くの教会で傷は癒された。
「さあ、パリへ凱旋だ!」