地底GOGOGO!
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■ショートシナリオ
担当:成瀬丈二
対応レベル:1〜4lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 30 C
参加人数:15人
サポート参加人数:1人
冒険期間:08月08日〜08月16日
リプレイ公開日:2004年08月16日
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●オープニング
その仰々しい封蝋で閉じられた手紙を受付嬢は厳かに受け取った。
まるで、主君より褒美を賜る騎士の如く。
そして、開かれた書類の内容は‥‥。
「で、何です? ミミズ部というのはというのは?」
「まあ、有り体に言って、良い土を造るのがお仕事の部門ですな──村を上げての大仕事です」
そう言った男は精一杯飾り立てた田舎者丸出しの風情であった。
「で、何ですか、この土壌改良の為に捕獲した、ラージウォーム4匹を撃破してくれというトンチキな依頼は?」
「ほほほ、ミミズを正しく飼えば、土壌がこなれて農業に良い土を作れるとういのは知ってますな?」
「存じません」
そう受付嬢が返答すると、依頼人はミミズに関する情熱をノルマンの平均気温を約1.2度2度上昇させるような弁舌でもって解放した。
「判りました。効率よく土壌を改良するために捕まえてきたラージウォームが4匹、地面に潜り込んだまま出てこない。おまけに土壌改良をしないどころか、偵察に出た シフールが丸飲みにされて『食べられた』と。一応、畑の周囲はラージウォームが嫌いな香を炊いて、実験用のエリア、1キロ四方からは出られないようにしているが──後、一週間でその香も切れる。という事でよろしいですか?」
「おお、話がよろしい。では、腕利きの冒険者を頼みましたぞ」
「ご予算の範囲で」
受付嬢の一言で新たな冒険が準備された。受付嬢の一言で
●リプレイ本文
岬芳紀(ea2022)は筋肉質の腕を組み、大きく嘆息した。
「ゲルマン語は読めん──人魚モドキに吸血鬼‥‥。今回は,この暑い中で蚯蚓掘りか‥‥。今回は情報が少なすぎる」
「それ以前に‥‥熱帯性のものを、温帯のノルマンに持ち込むのが問題のような気がしますが‥‥」
と苦笑いするクレア・エルスハイマー(ea2884)。
「とりあえず、捕獲することが先ですので、私はそれが無理となった場合のために控えておくことにしますわ。
どちらにしろこのノルマンで、熱帯性の生き物の記述を探すのは、針の穴に駱駝を通す位の難事ですから、この短い時間では成果を望めないと思いますよ。皆さんミミズ部の方に向かっているみたいですよ」
一方、ミミズ部。
床、天井、壁一面にミミズがはい回り、作りつけの棚には無数のミミズの蠢いている、という訳ではなかった。
むしろがらんとした小部屋である。
アストレア・ユラン(ea3338)がその遍のミミズに関する話を聞くと、ラージウォームが好む匂いは定かではないが、わざわざ食べに来る位だから──やはり、シフールが好物ではないだろうか? と疑問符付で返答を返した。
エルフの看護人ラヴィ・アン・ローゼス(ea5780)は明確に質問立てる。
・捕獲した際に使用した罠と、その方法(罠の道具があるなら借りる)。
・なぜ大ミミズは畑を耕さなかったのか?
「解明しないと捕縛できても再利用できないでしょう」
「駄目っぽいなぁ。肉食のミミズじゃ、畑は耕さないのは当たり前でしょうに‥‥アホだわ」
アミ・バ(ea5765)が見事な正論を吐きつつもラヴィの質問は続く。
・足場固めに必要な農具を借りれるか?
・ミミズは食べるとどんな味か(?)。
「罠は専門の冒険者に任せていましたが、彼等は今エジプトでラージウォーム捕りに勤しんでいると思います。大ミミズが畑を耕さなかった理由は、私たちには判りません。土質が合わないのか? それとも寒すぎたのか? 再利用の時にはまた冒険者ギルドから水系魔法が得意なカナルコード氏というウィザードがいますので、そちらと調整中です。
罠の道具と足場固めの道具はお貸ししましょう。人手も安全そうな所なら出しますので、ご安心を。ミミズの味ですか? 詳しいことは私も知りませんが、3日間、部屋いっぱいのミミズの中に放り込まれた方がいらっしゃいましたが、ミミズから絞り出したエキスを与えると、廃人寸前だったのが、見事本復したという話を聞いたことがあります」
薊鬼十郎(ea4004)は手短に応える。
「いえ、結構」
大した講義を聞けるかと思っていたが、専門的な知識はさすがに頭の上っ面を撫でていくだけであった。
最後に芳紀が水風呂を要求した。
「さすがにこの炎天下ではな」
「やっぱり、シフールに囮で頑張ってもらうしかないのかしら?
ちょっと危険だから、可哀相な気もするのだけど」
ミルドレッド・ヴァース(ea5240)は非情とも思える決断を下した。
「そうだね、シフールは僕たち全員で守って、ミミズが出てきたら全力で逃げる。僕はその隙に奥義を打ち込むよ」
インドゥーラの軽業師、シャラ・アティール(ea5034)だったが、彼女の無手の奥義では相手が止まっていてくれないと、当たる可能性すらない(それでも外れる可能性もある)。もう少し、格闘技の地力を上げるべきだろう。
「ファム、囮役いっきまーす」
赤い髪と目の持ち主、ファム・クライス(ea4732)は頭に羽根飾りを着けて全身を赤の衣装に身を包んで穴の近くに翔んでいった。
自称、通称の3倍の速度で天駆ける彼女を止められる者はもういない(だろう)。
「ひどくうーつろにほしがゆーれても」
等と歌いながら穴の周囲を旋回していると、地響きが始まる。
「おわーおわーミミズ出たー! ロープ引っ張って合図出してマッハで地上へー! 全力逃走」
開口部分から地下トンネルの穴に潜り込んでいたアストレアが、ラージウォームが飛びかかる前にロープを辛うじて引っかけ、地上近くまで引きずり出した、あるいは追い立てたのだ。
そこを豪快に一本釣りする鬼十郎とアルファリイ・ウィング(ea2878)。アルファリイはジャイアントならではの力業である。
飛び出した影の上部目がけて向かって、クレアがファイヤーボールを投射する。実験場を揺るがし、巨大な影が現れる。
アリス・コルレオーネ(ea4792)はその巨体に驚嘆した。
「これを封印するの?‥‥私、不細工なもの嫌いなのよ。
ミミズ‥‥いくら土に良くても、間近で見るのは願い下げだわ」。
絃也が刀で牽制している中、キチンと固められた足場へと一同はじりじりと下がっていく。所詮、虫けらの性。その様な罠にラージウォームが気づく筈が無かった。
彼女のとまどいとは別にミルドレッドは前衛の武器に術をかけていく。炎に包まれた武器がまばゆく燃えさかる。芳樹も切り込みに入る。
切り込んだ感触から、芳樹は行ける──と確信した。
この安定した足場なら十分に戦える。
炎を纏ったアミが持つ剣の衝撃波がラージウォームの肌を切り裂く。
更に数発のファイヤーボムの爆風が頭部を包み込んだ。
ネージュ・ブランシュ(ea3824)は一連の行動から、相手の環状部分のつなぎ目を弱点と看破。一点集中、まさしく針の穴をも通す様な一撃で幸運にも痛烈な一打を与えた。
シャラがこの動きならばフェイントをかけなくても良いだろう、だが、根本的な事にダメージが炎を纏ったナックルと合わせても弱すぎて、攻撃がかすり傷以上にはならない事だった。
「畜生、僕がそんなに弱いのか!!」
一方、アルファリイは戦場自体の『眼』となっていた。これだけの騒ぎが起きたのだ、次が無い筈はないだろう。
しかし、それらの間隙を縫ってイワノフ・クリームリン(ea5753)が自分を囮に反撃に転じ、圧倒的な技量の差から攻撃が炸裂。続く連発での剛打にラージウォームは遂に倒れ伏す。
だが、まだ動きは止まらない。
しかし、ギリギリの間合いで空を飛んでいたアストレイが弱まった所を魔法で眠らせ、抵抗の暇も与えず、アリスは仕事をやり遂げた。
「まず50C」
そんな戦いを3度繰り返したが、一同に損害はまるでなかった。赤衣のクレリック、ラヴィイも一安心の様子。
どうやらミミズ部はライトスタッフを選んだらしい。
そして芳紀達は水風呂を浴び、イワノフの氷雨の戦士ならではの体を視線で釘付けするかのようなネージュの姿があった。
そして、冒険者達は合計2Gという追加報酬を受け取り、パリへの帰路に就くのであった。