Thunder Bird a Go!

■ショートシナリオ


担当:成瀬丈二

対応レベル:1〜5lv

難易度:難しい

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:15人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月12日〜08月17日

リプレイ公開日:2004年08月17日

●オープニング

 鳥を捕ってきてくれ、と如何にも肌が白い学究肌の男は切り出した。
 彼の名はカーネル。近くの険しい山でサンダーバードと呼ばれる怪物がいる事を聞き、彼の錬金術の研究に利用するため、羽毛と臓器を新鮮なまま持ってきて欲しいという。
 このサンダーバードという奴は厄介で、何かを見ればとりあえず逃げだし、おまけに全身を雷で覆っており、触れた者は感電するという。
 また、この山には妖精と呼ばれるウサギ──ライトニングバニーが10匹以上巣くっており、同じく全身を雷に包み、生半可な方法では相手に出来ないと言う。
「こちらは、別に捕まえるのは義務ではないが、研究材料としては面白そうなので、一匹生け捕りにすれば、10Cの賞金を出そう」
 だが、6匹も居れば十分なのでそれ以上は支払えないという。
 ウサギは生け捕りが必須なので、囓っても壊れないような頑丈な木の檻などの準備が必要だろう。
「サンダーバードは確認されただけで4匹いる。臓器も羽毛も1匹ぶんずつあればいい。もし、この情報がガセで足労願った場合でも、収入は出そう。あと、食事に関してだが私がシュミで作っている保存食があるので、それを持っていってくれ」
「お味の方は如何でしょうか、失礼ながら?」
「旅の時には重宝している。もっとも私もあまり外に出ないからな」
 こうしてギルドとカーネル氏の間には冒険者を雇う契約が結ばれた。
『──依頼内容、サンダーバードの臓物、羽毛の回収──』







●今回の参加者

 ea0907 ニルナ・ヒュッケバイン(34歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea1661 ゼルス・ウィンディ(24歳・♂・志士・エルフ・フランク王国)
 ea1996 シリン・シュトラス(15歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)
 ea2030 ジャドウ・ロスト(28歳・♂・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea2388 伊達 和正(28歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea2843 ルフィスリーザ・カティア(20歳・♀・バード・エルフ・フランク王国)
 ea3233 ブルー・フォーレス(26歳・♂・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
 ea3397 セイクリッド・フィルヴォルグ(32歳・♂・神聖騎士・人間・ロシア王国)
 ea3412 デルテ・フェザーク(24歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea3738 円 巴(39歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea4290 マナ・クレメンテ(31歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea4473 コトセット・メヌーマ(34歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea4944 ラックス・キール(39歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea5512 シルヴァリア・シュトラウス(29歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea5776 セイリオス・アイスバーグ(59歳・♂・ウィザード・エルフ・イスパニア王国)

●リプレイ本文

「‥‥険しい山とは聞いていましたけど、こんなに険しい山だとは思っていませんでした〜。知識の裏付けを取るのも大変です」
 デルテ・フェザーク(ea3412)が厳しい隘路を抜け、腰を落とし、呟く。
「サンダーバードは一度実物を見てみたいと思っていましたけど、捕獲するのは物凄く難しいですよ」
 冒険者一同はそれをきっかけに休む。そこで──。
「少し試したい事があるんですよ」
 ゼルス・ウィンディ(ea1661)がサンダーバードの捕獲の合間、ライトニングバニーにライトニングトラップは利くのか、という命題に挑もうとしていた。
 だが、考えてみると、互いにライトニングトラップの魔法(の効果を持つ、特殊能力)を持っている同士でふれ合えなければ、交尾などの行動に支障を来すだろう、という理論で学者のコトセット・メヌーマ(ea4473)は納めた。
「雷鳥、黒死鳥(ヒュッケバイン)に捕らえることができるでしょうか。あ、ウサギさんはなんとかなりそうですけど」
 ニルナ・ヒュッケバイン(ea0907)は一同に自分の立ち位置を明らかにする。
「サンダーバードか‥‥どういうのなんだろう? とりあえず、足だけは引っ張らないように、だね。あ、今のは自分に言ったんだよ」
 シフールのシリン・シュトラス(ea1996)が慌ててうち消す。
「こんな段取りで上手くいくかのぉ‥‥しかし、サンダーバードで一体何を?」
 老エルフにして錬金術師、セイリオス・アイスバーグ(ea5776)は同業者の仕事の謎に迫ろうとするが、知識があまりにも足りない為、保留にしていた。
「さあ、個体が同じで無くても構わない、とにかく内蔵一式を、と言ってましたよ」
 一応の参考にと依頼人のカーネル氏から聞いた条件をシルヴァリア・シュトラウス(ea5512)は繰り返す。
 その後、カーネル氏とブルー・フォーレス(ea3233)を交え、暫く保存食談義に浸っていたのは内緒である。
「こ、これは‥‥このまったりとしてしつこくなく、えもいわれぬこの臭い。あの幻といわれた肉ではありませんか!!」
「そう、君はだから若いのだ──最もエルフという点を考慮すると少々失礼かもしれんがね。イギリス渡りの薫製だよ。銘は───」
(ライトニングバニー‥‥護身用のペットとしてはいいかもしれませんわね。中々可愛らしいし、一匹飼えないかしら)
 彼女は堂々と考えていた、もっとも表に出すことは無かったが。
 一方、コトセットが一同に釈明をしているのが聞こえる。
「いや、そうは言っても、自分のクリーチャー系モンスターに関する知識の蓄えは、唐突にモンスターと会った場合、その名前が判る程度で、生態だのまるで判らないレベルでな。残念ながら生態から巣を探そうという皆のリクエストには応えられない」
 結局、人海戦術にならざるを得なかった。
 その中でルフィスリーザ・カティア(ea2843)が鳥からテレパシーで『行ってはいけない所』、即ちサンダーバードの巣を発見し、一同の意気を上げ、早速待ち伏せ作戦を開始した。

 オーラパワーとバーニングソードの魔力を同時に付与した矢は加えられた力に震えるかの様であった。
 コトセットがラックス・キール(ea4944)の矢に炎の精霊力を付与し、ラックスも己の闘気を同じ鏃に込めたのだ。
 更にラックスはコトセットの魔法を付与されて、士気も高まっている。
「前の依頼で買ったけど大して役に立たなかったロングボウが役に立つときが来た〜っ! 冒険者準備が大切だね」
 マナ・クレメンテ(ea4290)も同じ処理をコトセットだけでなくラックスに頭を下げて行って貰う。
「それにしても、サンダーバードの強さって、未知数‥‥。私の射撃の腕、どこまで通じるんだろ‥‥。でも、サンダーバードと勝負出来るなんて、滅多にない機会だし! 天敵‥‥とまではいかなくても、雷の霊鳥の好敵手と認められるくらいには、頑張らないと!」
 一同が隠密行動と言えないまでも息を潜めていると、空中を横切る影。青き雷に包まれたその姿は──。
 誰も叫ばなかった。ただ己のポジションへと急ぐのみ。
 ブルーはボーラを投げつけようとするが、回転はあらぬ方向に跳び、空中分解する。
(そう、相手の動きを封じる為には羽根の筋肉を裂くしかない。だが──普通に狙い打っただけでそうなるだろうか? ここは一か八かに賭けるしか──)
 行って限界まで目を細めて一矢への集中力を高める。
 機は熟し、放たれた矢は見事サンダーバードの翼の腱を傷つけ、大地に落とした。
 とどめを刺すラックスと伊達和正(ea2388)
「狙って撃つ、鴫撃ちして討ち取る俺は“魔弾の射手”になる! 南無八幡大菩菩薩」
 叫びながら練った気塊を叩きつける和正の一撃でサンダーバードはショック死。
「死にたての今の内に──急ぐのじゃ」
 セイリオスが率先して、解体にかかる。
「気絶しそうじゃわい。バードの死体が腐らないようにアイスコフィンをかけながら帰る事にするのじゃ」
 だが、一同からはこの険しい山をどうやってアイスコフィンを維持しつつ、降りるのかという疑問が頻出した為、皆肩まで血塗れになりなが臓物を樽に納めた。
 樽はセイクリッド・フィルヴォルグ(ea3397)が担いで降りることになる。神聖騎士だけあって、かなり頑健である。
「鳥も啼かずば撃たれまいに‥‥いや囮となって仲間を護ったか‥‥これも生きていくための業、甘んじて受けよう」
 円巴(ea3738)は合掌する。
 同じく、沈んだ顔をするルフィスリーザ。
 その肉と皮をブルーが調理し、一同に振る舞う。
「カニでも鳥でも何でも来て下さい」
「むむ、このサンダーバードの唐揚げは一端蒸して、余分な油を落としてあるのがポイントだな。私は味気なく思ってしまうが、これを好むものも多かろう‥‥体重の節制を心がける者には特に」
 巴はひきしまった肢体を持ちながらも自戒する。
 ジャドウ・ロスト(ea2030)は何事も無かったかの様に立ち上がると『ウサギ狩り』を宣言した。

「何故逃げる!」
 ニルナはたった3メートルの距離まで近寄ろうとしただけで逃げ出すライトニングバニーに憤慨する。
 逃げる先を追い巣穴を確認するルフィスリーザ。
「これであらかた穴は確認したですか?」
 さあ、デルテの魔法は当てにならないしね、とラックスは応えた。
 セイリオスが準備した檻も複数の入り口付近に設置し、捕獲しようと言う基本的な作戦だ。
 果たして作戦は発動した。次々と衝撃音が響き、ライトニングバニーが檻に当たっているのが感じられる。
 戸は閉められた。走る雷に、急ぎ離れ、6匹のライトニングバニーたちはセイリオスのアイスコフィンの魔力で封じられ、その上から鎖をかけ、氷が融けるに従い、徐々に他の面子が閉めるようになっている。
 それに反発するデルテ。初心者レベルのウィザードの調べられる範囲は限られている。 しかも、全てがルフィスリーザ達の元に捕まえられていた。もしくは煙に巻かれ死にかかっている一体がいた。
「この子をカーネルさんに引き渡すんですか? 研究材料と言ってましたからきっと、あんな事や、こんな事して苛めるに決まってます。可哀相です。このまま帰すべきです」
 その一体をレジストライトニングの術を唱えた上で抱きしめる。
「山の妖精と言われるだけあって可愛いです〜。このビリビリ感がまた良いです」
 ライトニングバニーは彼女の手の甲に牙を立てた。
「痛い!」
 出血、思わず取り落とすデルテ。
「あなたのやっている事だって、ただモンスターをおもちゃにしているだけだろう?」
 その死にかけのライトニングバニーはそのまま息絶えた。
「可哀想なんて言葉は、依頼を受けた時から関係ないでしょう。それともカーネルに代わって、全員分のボーナスを出せます? 出来なければ、ご破算」
 ルフィスリーザは敢えて厳しく言う。
「私だってテレパシーで言い聞かせたんですよ。出来れば逃げないで欲しい事、カーネル氏の所へ行っても(多分きっと)怖くないですからって。勝手なお願いだって判っているって──返事は『出せ』でしたよ。でもね、ボーナスがかかっているのです引くわけには行かないでしょう」
 そして、アイスコフィンは融け、ライトニングバニーたちは鎖で縛られた。
「勝手なお願いって──」
 手をあげるデルテ。その腕をゼイリオスが掴む。
「仲良くしたい相手をボーナスの為に、実験動物にするのがあなたの願い!?」

 こうして分裂の中、一同はパリへ戻る。冒険者は各々の報酬を受け取り、冒険者街へと消えていった。
 ルフィスリーザは楽曲でライトニングバニーを慰めようとするが、テレパシーでの返答は常に“ここから帰せ”だった。

 ただ、パリで喜んだのはカーネル氏だけだった。
「これでようやく実験が行えますよ」
 ギルドの記録係の記録を依頼人に確認してもらった後
「カーネルさん、お願いがあるのですが、よろしいでしょうか? あなたの感性で、私に称号を一つ考えていただけませんか? え、何故ですって? そうですね‥‥『己を知るために』ですかね」
「私は人に称号を与えられるような大層な身分ではない。只の‥‥錬金術師だよ」
「ダメですか‥‥残念です」
 こうしてカーネルは去っていった。彼の実験内容を知る者はいない──。