ファーブル大昆虫記〜大蟷螂の段〜
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■ショートシナリオ
担当:成瀬丈二
対応レベル:3〜7lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 92 C
参加人数:14人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月09日〜11月24日
リプレイ公開日:2004年11月17日
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●オープニング
先日切断された腕を軽々と振り回す。キャプテン・ファーブル。
クローニングの魔法でついに接合したのだ。げにセーラ神のお力は偉大である。
「さて、何だかんだ言って諸君、もう11月だったりするから、ちゃっちゃと仕事を進めようじゃないか?」
ドレスタットに来た赤毛の『大』昆虫学者、キャプテン・ファーブル。数々の偉業(ジ・アースの役に立っていない気がするのは気のせいである)、溢れる知識(最近冒険者に追いつかれつつあるのは禁句である)の彼が、先日、といってもかなり前の事だが、ドレスタットで大蟷螂の雌雄を発見し、それを捕まえて交尾の様子を自分の研究所で克明に記録したいという学者の血が騒いだのである。
だが、戦闘能力皆無、持っている魔法はグリーンワードとバイブレーションセンサー。ただし、実力は達人級というだけのキャプテン・ファーブルは、インセクトの知識を覚えるついでに教え込まれた万能のモンスター知識と、愛する快速船であるコメート号を駆り、ノルマンから果ては暗黒大陸まで日夜冒険の度を広げているのだ。
「いやー、一遍ジャパンに行ってイナゴなるものを食べて見たかったりするけどね」
などとキャプテン・ファーブルは真剣に語ったりするが、今回の彼の目的は根拠地に長細い檻に入れたシーワームを、更には大蟷螂を2匹連れて帰る事なのだ。
尚、帰りは冒険者は連れていかず、自分で操船していく予定である。
という訳で文通仲間ウィッグルグズワースから教えてもらった地点に買ってきた子牛を1頭ずつ放し、おびき寄せの餌にする。雌雄の縄張りは結構離れているので、時間差をつけて捕獲するか、同時に展開するかの判断は冒険者達に委ねられた。
時間差をつけての捕獲の場合も、先に船に連れ込んだ大蟷螂が逃げ出さない様に見張りをつけなければならない。海賊騒動の収まったこの港にこの大怪物を放せば、楽しい光景が見られるだろう。
同時に捕まえれば、港の危機は去るが、戦力分散はやはり避けられない。
「ま、雌の縄張りにはボクが。雄の縄張りは我が心の友、ウィッグルズワース君が案内をしてくれる、恐れるべきものは、逃げるべき時に逃げない無謀さだね」
キャプテン・ファーブルからは足一本欠ける事無く、捕まえてきたら、そちらのグループにはひとり金貨5枚出そうという申し出である。
「そうそう、インセクトは『デス』以外の精神系の魔法は利かなかったりするからね」
さらりとスリープの存在意義を否定するような発言をして、ファーブルは作戦の詰めに入った。
さて、キャプテン・ファーブルの今年の成果は期待できるか否か、それはみなさまの活躍次第。
●リプレイ本文
「いやぁ、私も以前の依頼で腕を引き千切られそうになった事がありまして、ファーブル先生には親近感を感じます」
と、マリウス・ゲイル(ea1553)。
「でも、ラテン語が出来ないので、ウィッグルズワース先生の雄組の方々とご同行させていただきます。ゆっくり話すのはまた今度の機会という事で。ところでこのトライデントで地面に押さえ込めるほど、大蟷螂って細い部分がありますかね?」
「無いね」
三叉戟の凶器を見せられて、ファーブルは首を横に振った。
「じゃあ、私は壁役という事で」
同じくファング・ダイモス(ea7482)はその誘導役という事になった。達人の腕前は大蟷螂をきりきり舞いさせるだろう。それだけの地金がある。
一方、ブルーになりながら、マリウスは旅路についた。
「貧すれば鈍する‥‥くだらん仕事だ。全く、仕事で無ければ──」
トール・ウッド(ea1919)は独り言を呟く。
不死の輩、悪魔ども世の中には斬れない連中が多すぎる。
だから、他人の手を借りず、人外の者と対峙する為の牙が欲しかった。いつも、親切なナイトやウィザードが隣にいるとは限らないのだから。。
彼は先行し、トラップを作るのを持ち前の技術で作る。もっとも、落とし穴という非常にシンプルだが、効果は抜群というものだ。
だが、雌班に行けば、確実に自分を鍛えられるだろう。魔法の武具の力があると言っても、当人の力が無ければどうしようもない。
「わたくしもついたばかりで右も左も判りませんので、よろしくお願いしますね」
エレーナ・コーネフ(ea4847)も雌班で頑張るつもりである。相手が抵抗に失敗さえすれば、動きを半減させる魔法を持ったダークホースである。
「後ろから、応援させてもらいますから」
地の精霊魔法の使い手ではエスト・エストリア(ea6855)がいたが、使える呪文はストーン。
神聖魔法の使い手でニュートラルマジックを使えそうな面子は誰もいないため、彼女のストーンの呪文で石化を試みると、解呪手段が調達出来ないため、彼女は後ろから見守る事になった。
(この依頼が世の中に役に立っているかどうかはともかくとして、浪漫は強く感じますね。
‥‥というより、浪漫だけ?
嫌いじゃないですけどね、こういうの)
雄班の皆に向かって、上品そうに見えてもトラップ造りの名人であるリセット・マーベリック(ea7400)も営巣地に向かい、進みだす。
「ごきげんよう、キャプテン・ファーブル。今回は雪辱戦という事ですの‥‥私も連れていって下さいな。なぜって‥‥キャプテン・ファーブルの腕を切り落としたという大蟷螂さんをこの眼で見ておかなくては、歌にする時にどう歌って良いか困りますわ‥‥」
「はっはっは、雪辱戦とは大げさな。私は戦いを好みません。これは昆虫採集だったりしますよ」
蟷螂捕獲のトラップ作りに先行した面々と、後続。ふたつのグループに分かれた一団の内、アイネイス・フルーレ(ea2262)はは夜に皆の緊張を解すべく歌う。
「竪琴の糸のように、張り詰めた心に。
水底に沈む鉛のように、疲れた体に。
今この一時 暖かき炎に守られ。
眠る仔羊のごとき安らぎを」
一方、ドレスタットの冒険者で、一、二の争う著名人である、イリア・アドミナル(ea2564)さえウィザードとしては修行中である。
「強くなる為に多くの経験を積まないとね、依頼達成の為に気合を入れて頑張るよ」
「その意気でお願いしちゃったります。まあ、あなたほどの実力者ならば、前衛の壁役がいますので、安心しちゃえばいいですけんどね」
とキャプテン・ファーブルの楽観論に現実という水を掛けるイリア。
「安全な所までアイスコフィンを掛け続けたいのですが良いでしょうか」
「お願いできれば。海に出れば相手は飛べないので、最悪でもシーウォームと乗組員と道連れという事になるでしょうし。リスキーですよ、結構」
ウィッグルズワースさん、よろしくと声をかけたのはオラース・カノーヴァ(ea3486)であった。
「しかし、牛を誘き寄せの餌にするのですから、相応に金は持っているのでしょうね、キャプテン・ファーブルは?」
「子牛を使うと聞いています」
言葉少なげに彼は言葉を返す。
そこへセイリオス・アイスバーグ(ea5776)が。
「ウィッグルズワースや、よろしく頼むぞい。四肢が離れたときはお主が頼りじゃ」
と笑い。
「わしは対雄班じゃ。お主らのやっていることも面白そうじゃのぉ。ファーブルとの冒険話でも聞きたいのぉ。
ともあれ、なるべく傷をつけんように頼むぞ。わしも全力で固めるでの」
と前衛の戦士達に蟷螂を傷つけないように釘を刺すセイリオス。
「落とし穴か‥‥今さらじゃが蟷螂は飛ぶじゃろう?」
「いえ、体が重すぎて飛べないでしょう」
「落とし穴にもう一工夫で、ロープ等で蟷螂の足を絡めたりする罠を提案しよう。作るのはレンジャー達に任せるが‥‥。それに大蟷螂は、明かりに寄ってくる可能性もあろう。交替で見張るとしようか。」
一方、割波戸黒兵衛(ea4778)の危惧。
(ジャイアントマンティス‥‥天然で蟷螂拳を使う恐ろしい奴──)
気が付くとキャプテン・ファーブルの物好‥‥子供の様な探求心旺盛な依頼の常連になっておる事に気が付く黒兵衛。
(彼がただの昆虫──常軌を逸しかけている‥‥研究家だからいいが、どこかの海賊みたいな連中に目を付けられなければいいが‥‥ならば今回もガマ助にガンバってもらおう。なんだか、どちらが主従なのか判らなくなってくるが)
と11月寒の風に脂汗を流す。
「これも学究のため、致し方あるまい」
一方、セイリオスが懐古に耽る。
「まあ、幼い頃、雌が雄を食べてしまう話には驚いたものじゃ。たまには童心に帰って昆虫採集といこうか‥‥とは言ってもこちらが採集されそうじゃな。」
「まあ、童心に返りすぎとは思うが」
口を挟む黒兵衛の言葉に一括する
「何をまだ若い!」
シフールのジョン・ストライカー(ea6153)がピリピリした空気を柔らげおうと囁く。
「まあまあ、ご両人、 LET! TRY! 冒険者合言葉!」
やおらテンション高げなジョン。
「両手に──ショートボウ」
と言うや否や弓をかかげ。
「ポイント1:力押しは最後の手段。正義の冒険者様でも即他人に斬りかかっては犯罪者だ!!」
次に懐から金貨を出す。
「懐に──星の金貨」
それを指でもてあそびながら。
「ポイント2:あぶく銭はすべて自分の肖像画と越後屋に使え! 後のことは何も考えるなギャンブラーたち!
」
最後に空の袋を出すと。
「唇に──古ワイン」
そこでガッツポーズを取る。
「ポイント3:でも酒場の代金はセコクただ酒利用!
背中に──人生を!」
そして、最後の締めに入るジョン。
「ファイナルポイント★
冒険者は背中で人生を語るキミのベストマイポーズで冒険者らしさをスーパーアピールだ!! 」
その頃、ジョンの側からは誰もいなくなっていた。
「話聞けよ」
そして、ケージを設置して十数日、ようやく準備も整った頃、
アッシュ・クライン(ea3102)は雌を探す見張りの時、偶然にコンビを組んでいた、シフールのダージ・フレール(ea4791)と歩く音を感じていた。
キャプテン・ファーブルに蟷螂の死角から攻められないかと尋ねてみたが、広い範囲をフォーロー出来る複眼が左右に位置している事と、視界そのものの広さから、その策は諦めざるを得なかった。
「こうなったら、真っ向勝負!? 皆を信じよう」
一方、雄側も縄張りを周回し終えたのか、気配が近寄ってくる。
蟷螂の手足を飛ばせば、実験の結果に支障が出るとの事で、迂闊な事は出来ない。マリウスは皆にオーラボディを掛けようとしたが、無理があったようで、自分のみ付与する。
更にオーラで盾を作り出す。
しかし、前衛の踏ん張りはともかく、それまでの周到な準備により、戦いは呆気なく終わった。
オラースの石投げなどの露骨な誘導に引っかかり、掘られた落とし穴に呆気なく大蟷螂は捕まり、そこを逃げ出さない様にアッシュが指揮する前衛と黒兵衛が作り出したコンストラクトのガマ助がふんばり、エレーナのアグラベイションで動きを封じられた雌は最後は動きを思うに任せず。蟷螂はダージの粘り強いアイスコフィンの攻勢で氷付けになっただけであった。
後は馬車を使って、大急ぎでドレスタットの港に係留していたがコメート号に戻る事になる。
この間も冒険者たちは献身的にアイスコフィンの呪文を唱え続けていた。
「蟷螂の腹の中ってハリガネムシがおるんじゃろう?」
セイリオスが尋ねると、キャプテン・ファーブルは──。
「それは海岸沿いの虫を食べた場合です。ここは海から遠いですからね」
「‥‥やれやれだぜ」
死闘の予感がしていたトールはため息をつく。
アイネイスも手書きのレポートをゲルマン語で出し、これで有意義なレポートが書けそうだ。
怪物をわらわらと引き連れて、ファーブルのドレスタットでの仕事は終わった。
また、戻ってくるかもしれないが?