狩猟の黄金律

■ショートシナリオ


担当:成瀬丈二

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや難

成功報酬:4 G 34 C

参加人数:14人

サポート参加人数:1人

冒険期間:07月19日〜07月28日

リプレイ公開日:2005年07月24日

●オープニング

 マントの街の衛士団からの依頼がパリのギルドの冒険者ギルドに持ち込まれた。
「オークロードとその一党の掃討ですと? この報酬では集まる冒険者も集まりませんよ。リスクが高すぎます」
 血相を変える冒険者ギルドの受付。
 オークロードと言えば、オーガの中でも比較的高位に位置しており、中堅クラスの冒険者ではタイマンでは中々に相手にし難いだろう。
「いえ、以前に荷物輸送の護衛をした冒険者がオークの集団に深手を負わせまして、崩壊寸前にまで追い込んだのですが、あくまで任務は護衛という事で、止めはさしていないんです。
 そこで痛手を被っている内に叩いてしまおうと、衛士の面々の衆議が一致しまして。
 でも、あくまでも衛士は街の治安の為に動かせません。代わりに冒険者に打って出て貰おうかと」
 話によると、他にも生き残ったオークが12、3匹いる。
 場所は険しい丘陵地帯から、しばらく行った地点らしい。
「まあ、深手を負っているなら、どうにか──この報酬でも動く人はいるでしょうね。ただ、そう多くは無いかもしれませんが」
 受付は妥協できるラインを見つけて、契約書をまとめつつある。
 任務はオークの殲滅。女子供であろうと容赦なし。その他にも街の治安に影響を及ぼすと思われた存在の排除。
 不安材料はオークの根拠地が不明な事。近場ではあるだろうが、先の護衛の冒険者が確認していないので、何とも判断し難い。
「まあ、別にデビルが出るとか、そういう話はないでしょう。出るなら、先の事件でもう出ているでしょうから」
 衛士団の使者はそう言って、話をまとめた。
 かくして、冒険者に向けて、告知が為された。

●今回の参加者

 ea1703 フィル・フラット(30歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea2005 アンジェリカ・リリアーガ(21歳・♀・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 ea2021 紫微 亮(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea2037 エルリック・キスリング(29歳・♂・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea2554 ファイゼル・ヴァッファー(30歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea2563 ガユス・アマンシール(39歳・♂・ウィザード・エルフ・イスパニア王国)
 ea2938 ブルー・アンバー(29歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3233 ブルー・フォーレス(26歳・♂・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
 ea4567 サラ・コーウィン(30歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea5415 アルビカンス・アーエール(35歳・♂・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 ea5512 シルヴァリア・シュトラウス(29歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea7210 姚 天羅(33歳・♂・ファイター・人間・華仙教大国)
 ea7363 荒巻 源内(43歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea8210 ゾナハ・ゾナカーセ(59歳・♂・レンジャー・エルフ・ビザンチン帝国)

●サポート参加者

安来 葉月(ea1672

●リプレイ本文

「あっそ。クライアントの方からは情報は何もない? ま、そういう訳だ。頑張って探してくれ」
 口を開くのも億劫そうにフィル・フラット(ea1703)
 彼は事前にクライアントの衛士達の方に現地近辺の水場や風雨の凌げそうな洞窟等についての情報を持っているなら提供を要請。
 しかし、街の衛士達が街から外れた所までの情報を持っている事はなく、あっさりと断念。
 一方で紫微亮(ea2021)はと言うと──。
「さて‥‥久方ぶりの冒険者らしい依頼‥‥修業には持って来いなんだな、これが」
 と、まめに御者達から水場を聞いて回り、大雑把ながら地図に記しをつける。
「じゃあ、本隊はここで待ち伏せて、オークが来たら、送り狼になればいいんだね♪」
 アンジェリカ・リリアーガ(ea2005)は大きな帽子が落ちない様、押さえこみながら、地図を覗き込む。
 同じく、エルリック・キスリング(ea2037)も前回の遭遇地点から思ったより離れているのに若干驚く。
「オークロードも三匹寄れば賢者の智恵と言った所ですか‥‥今は一匹、それも重傷を負っていますから、以前ほど規律はしっかりしていないかと思いたいです。水場には馬を連れて行くには難しそうですから、置いて行かなければならないのが、不安材料ですけれど‥‥」
「獣道ならぬオークろ‥‥駄洒落になるのか」
 と、汗を滴らせつつ、ファイゼル・ヴァッファー(ea2554)が認められた地図を確認する。彼の持ち込んだ情報も、以前の情報と比べても口コミならではの誤差程度しかなかった。
「私が土地勘に長けている森も無いようですし、目を活かす事くらいしか私には事前の活動で打てる手はないようです」
 堅い口調で、ガユス・アマンシール(ea2563)が自分の戦力としての分析をする。
 風のウィザードとしての決定打の安定性に欠ける現状では、自分の知力をフルに利用するしかない。
「幸い相手にも、以前の報告では飛び道具を使った記述はありませんし、この人数で攻めれば、押し切れるでしょう」
 そのガユスの意見に対し、慎重論を唱えるブルー・アンバー(ea2938)。
「オークの残党ですか‥‥周囲の村などに被害が出る前に何とかしなければなりませんね──手負いの者ほど危険と言いますから」
「自衛の手段のない村人にとっては、オークは1匹でも村を壊滅させるモンスターだ。
それが集団で行動しているとなればおちおち生活できないだろう。いつ、その一団が襲撃してくるか心配になる」
 ゾナハ・ゾナカーセ(ea8210)が極論を唱えるが、単純にオークと言っても、一匹居れば、村を壊滅できるオークロードから、気合を入れた村人の袋叩きで壊滅させられる単純なオークまで格差は大きすぎる。
 更にオークに対する戦術論に踏み込み。
 オークの分厚い皮による耐久力の高さから有効な刺突と、ある程度の威力の武器の使用を薦める。
「不適な武器では何回も当てないと倒せない。その間に1発でも喰らったら終わりだ。リカバーで傷口は治せても、潰れた眼球が治るかどうか」
 その言葉にブルーは──。
「そうですね、オークがそこまでの狙い打ちが出来るかはともかく、油断はせずに心して掛かりましょう。僕は普通のオークの相手をしますから。皆さんはオークロードをどうにか」
──と返すが、姚天羅(ea7210)は薄化粧した顔に僅かな皺を寄せて、ブルーに問う。
「俺と同じで、多数のオークを相手取る事になる同志となるならば──人の意見に口を挟みたくはないが、以前のオーク退治でも同じ事をしようとして、体術がついていかず、オークの群れに袋だたきにされた仲間を見た記憶があるのだ。今回は命さえあれば、如何なる怪我でも治す程の癒やし手はいない。エルリックを悪く言うわけではないがな」
 エルリックは肩をすくめ、ブルーは困ったように天羅に返す。
「いえ──それほど、体術には自信がある訳では、つまり一対一の戦いとはまるで異なるという事ですね。武道会の様には行かないと?」
「言ったはずだ‥‥人の意見に口を挟みたくないと」
 その天羅の言葉に打って響くように、アルビカンス・アーエール(ea5415)が返す。
「しかし皆単独行動好きだよなー‥‥オレはだらだらこそこそ探しますかっと。
 さてはて、オークの後掃除っと〜。狙うは大将、先制攻撃でオークロードにウィンドスラッシュぶっ放すぜ」
 そのアルビカンスのウィザードとも思えぬ、動きの素早さに、ブルーは苛立つが、サラ・コーウィン(ea4567)が彼の背中に声をかける。
「あなたに背中を預けますね──乱戦では仲間同士の団結が欠かせませんから」
「すまない──だが、二撃必殺の手並みは安心してくれ、確実に仕留める」
 ブルーの言葉にシルヴァリア・シュトラウス(ea5512)は唇に手の甲を当てて笑みを隠しつつ──。
「二撃必殺とは格下相手に情けない事です。
 しかし、いつもは捜索やら遺跡の探検ばかりしてますけど、たまにはこうやって本格的な戦闘を体験するのも悪くありませんわね」
──と呟く。
 荒巻源内(ea7363)は彼女の言葉に対して──。
「『たまには』か。だが、仕事は『見敵必殺』‥‥容易い仕事、だな。‥‥いや。奢りや油断は死を招く。‥‥心して掛かろう」
 と鋭い耳で漏らしたフレーズを逃さない。
「そういえば、そうでしたわね『見敵必殺』。浮ついた気分では居られませんね」
「精霊魔術の広域一掃は、多数対多数において、大きなアドバンテージをもたらす。期待しても良いか?」
「『奢りや油断は死を招く』とは、そちらの言葉──そこまで期待されては困りますわね、正直な所」

 そして、丘陵地帯にて──放置されたオークの死体が腐臭を放っている地点から奥へ向かう一同。
「濁った理由を問う、疾く答えよ」
 スクロールを広げ、淡く青い光に包まれた、ゾナハは濁った泉に問うた。地図に記された水場のひとつだ。
「豚みたいな顔の人間大の連中が乱暴に水を汲んでいったそうだ。多分、この泉で間違いないだろう」
 そこで待ち伏せする本隊と、偵察隊とに分かれる。
 数分後、爆音が本隊に谺した。
「源内からの合図だ」
 誰とも無く呟いた。
「‥‥いましたよ。用意はよろしい?」
 サラの言葉により戦いの幕を切って落ろされた。

 源内は愛鳥『飛影』を頭上に周回させ、本隊合流の為の目印とし。忍び、かつ迅速に接触したオークと付かず離れずの距離を保ちつつ、住み家へと泳がせる。
 源内の右翼左翼にも、百メートルの距離を置いて偵察隊の面々が追従し、オークの影を確実に捉える。
 そこで彼らが見た物は、丘陵に穿たれた天然の洞窟。そして、丘陵の上に立つ物見オークであった。
 源内は舌を打ちつつ、百メートルまでの距離を切った段階で、呪文を唱え、印を結ぶ。
 煙に包まれた彼は──。
「‥‥陸奥亜流。‥‥駿動瞬歩」
 と呟くと、騒ぎ出そうとする物見オークに、当て身を食らわせ、未然に騒ぎを止める。
 しかし、同時に逃げ込んだオークが甲高い声で騒ぎ立て(どうやら、雌だったようだ)、オークの兵士達が剣と盾を携えて、洞窟から湧き出てくる。その数、十二匹。
 追いついたエルリック達一同の内、サラと天羅、ブルーが主体となって、ひとり四匹のノルマをこなそうとする前に、淡い緑色の光に包まれたアンジェリカの雷霆、同じく青い光のシルヴァリアの氷雪、緑のアルビカンスの暴風を以て、次々と切り崩していく。
 それでも突撃しようとする所へ、アルビカンスは容赦なく、風刃を浴びせ切り刻んでいく。

「見切れるか! 無足、舞葉‥‥!」
 亮も華麗なフットワークを以て、オーク達を挑発する。しかし、魔法を盾で受けるという、対魔法戦術の初歩も知らないオーク達は(もっとも知っていても複数同時攻撃には対処しきれなかっただろうが)、これでオーク戦のノルマは3匹に下がる。
「一対一なら、別にオークロードだろうとオーグラだろうと何とかしてみるが…。とりあえず、囲まれて悲惨な事にならないよう数を減らす所からいくか。
 かかってくる敵は返り討ち、距離のある敵にも容赦なく‥‥。これぞ師匠直伝の必勝戦法、蛙待ちの陣!
 まあ、これも仕事だ。オークども、諦めて地獄に堕ちてくれ」
 遠くの間合いより放たれた衝撃波による、フィルの参陣により、オークのノルマはひとり二匹に下方修正。
 ファイゼルも日本刀の鯉口を切ると、苦笑いしつつ。
「暴れまわったツケだ!! 覚悟しなって言っても通じないんだよな〜」
 と、生き生きと刃を振るう。
「でも、デビルなんかは出るなよな!」
 一方、ブルーは──。
「はぁぁぁっ! 斬!!」
 とオークを峰打ちに捕らえ、動けなくなった所を──。
「喰らえ!スマッシュEX!!」
──と太刀の重みと己の全体重を乗せた刺突をオークに浴びせていく。

 だが、オークロードは出てこない。その時間を縫ってペットの鷹と己の身に、スクロールからバーニングソードの魔法を発動させるアルビカンス。スクロールの扱いは不慣れな為、2回、成就させるのに、2度の発動では足りない。
「魔力がギリギリか。さっきも大技連発したし──」
 言いながらも体力と魔力に任せ、オーク達を更に洞窟へと追い込むべく、前進していく。
「魔法拳士の力‥‥みせてやるぜっ! オレはお前らをブチ砕く、てめぇらだけの死神だっ!」
 叫びながら、健気にも棒を持って立ちはだかるオークの幼子を撲殺していく。
「クライアントの意向だ、死ねぇっ!」
 奥に控えしオークロードらしき巨大な影。
 ゾナハが後ろからスクロールを広げ、銀色の淡い光に包まれる。
 途端に動きが鈍るオークロード。
 そこへ炎の拳を乱打しようとするが、ゾナハの忠告を思い出し、一旦退くと、淡い褐色の光に包まれながら、スクロールからクリスタルソードを現出させ、それでもって突きかかるアルビカンス。
「拳士が剣士になったが、弱点を突けるなら、そちらの方がいいぜ」
 しかし、オークロードはうろうろするばかり。
 斬撃に反応して、防御しようとはするが、間に合わない。
 そこへ、屍の山を乗り越えて源内が突入し、後ろに微塵隠れの術で回り込み、刺突でオークロードの人生を終わらせた。
「一体、何の術をかけたんだ?」
 ゾナハに問う、アルビカンス。
「いや、目が見えなくなって、体が石化していくというイメージを送り込もうとしたけれど、石化するっていうのが、全然、自分の中でイメージ出来なくなって、視覚を潰しただけに留まったらしい。オークロードにはもう聞けないけれど──」
 ともあれ、デビル等の治安を乱す存在が居ないかと、サラが中心に洞窟内を探索するが、見つかったのは、荷箱数個分のベルトのバックルのみ。冒険者達以外に動くものはいなかった。
 一同はバックルを製造していたギルドに返還して、金貨十枚を超える礼金を受け取り、オーク殲滅の報を衛士に報せたのであった。 予想外の報酬を受け取った一同はパリに凱旋する。
 これが冒険の顛末であった。