新春仮装!パレパレード!

■ショートシナリオ


担当:なちか。

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月03日〜01月08日

リプレイ公開日:2007年01月06日

●オープニング

●ニューイヤーパレード!
 アトランティス東方・メイの国。
 その首都メイディアに新しい朝日がのぼる。
 混迷の中にあっても、暦の上ではとてもめでたい事がある。年が明けたのだ。
 もちろんメイディアだけが明けた訳ではない、全国各地、一斉に新年を迎えた。

 その首都メイディアでは新春お祭りイベントを色々と催しているが、その中でも一際目を引くものは、大通りを様々な人々が踊りながら行進する仮装ダンスパレードである。
 歌や楽器の演奏をメイン或いはバックに、楽しく踊りながら今年一年の勝利と平和と豊作と‥‥つまり色々な事を同時にお願いしながら踊り明かすという、結構派手なお祭りだ。

 天界の『正月』というのとは少し意味合いが違うが、いわゆる正月休みはメイにもある。ほとんどの店はこのパレードの為に店を閉め、わざわざ地方から首都に集まり、参加或いは見物するという訳だ。
 もちろん、どこの国でもそうかも知れないがこういう時こそ書き入れ時、という店もある。
 地方や分国からも一斉に首都に人が集まる訳なので、いつも賑わっているメイディアも輪をかけて騒がしい。
 そして、そういう時には大抵トラブルが巻き起こる。
 毎年盛り上がりすぎて一部暴走する輩も出てきたり、酒が入りすぎたのかケンカがあちこちで繰り広げられたりと、華やかで楽しいイベントではあるのだが少々やりすぎてしまう民も出てくるのだ。
 そういうトラブルや警備を、ニューイヤーパレードの前後では特に重点的に警戒して巡回が行われる。
 しかし行事が行事なので警備に回る人員が、毎年、圧倒的に足りていない。
 そこで今年もパレードの警備やメイディア巡回の手伝いを冒険者たちに求める事になった。

 警備の報酬としてギルドからの成功報酬とは別に、昼の部で警備する者は夜の、夜の部で警備の者は昼の部の、二日間共通で可能なそれぞれの見学席が用意される事となった。
 仮装ダンスパレード自体は計二日間だが、後夜祭を含めその前後は人の出入りが非常に激しくなるので注意が必要だろう。

●今回の参加者

 eb2093 フォーレ・ネーヴ(25歳・♀・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 eb4426 皇 天子(39歳・♀・クレリック・人間・天界(地球))
 eb4590 アトラス・サンセット(34歳・♂・鎧騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb8162 シャノン・マルパス(23歳・♀・鎧騎士・エルフ・メイの国)
 eb8962 カロ・カイリ・コートン(34歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb9422 佐倉 望(25歳・♀・天界人・人間・天界(地球))

●リプレイ本文

●ア・ハッピー・ブランニュー・イヤー
 新しい年、新しい風、新しい光。その先にあるのは光射す未来か、混沌へと向かう果てしない戦乱か。
 アリオ王による新年の挨拶には多くの民が集まり、彼の決意は国の意志として広まる事となるだろう。

 国の行事もさる事ながら、娯楽としてはやはり盛り上がるのは祭の開始である。
 国民性といえばいいのだろうか、明るく楽しいひと時は誰もが求める平和の象徴でもある。祭りが嫌いな者は、むしろ少数なのではないだろうか。
 賑やかで華やかで、派手なお祭りが好きな人々の望みが成せる一大行事であるニューイヤー仮装パレードは、それを如実にあらわしている。主催はあくまでも国ではなくとある団体の主催ではあるが、一際注目されている祭りの一つとして徐々に浸透しつつある。

 メイディアの北から南を突っ切るような形で、中央広場を中心に北通りに三つ、港へと続く南通りに三つ。そして中央広場の合計七つのポイントを演舞ポイントとして、チーム毎に歌い踊りながら行進していく。
 天界にもこういう祭りがあり、元は学生主体の団体が主催し、恒例の行事へと進化していった。このメイディアで行われるニューイヤー仮装パレードも年々徐々にだが参加人数も増えている。
 チーム参戦という事で少ない所で二十人ほど、多い所となると五十人を越えるチームが多数参加した。
 もの珍しさや、派手で華やかな見た目のインパクトから、歌や曲に乗せて、綺麗に揃ったダンスの素晴らしさは見た者を圧倒する。
 ちなみに以前シフール合唱団が使用した拡声器(のようなもの)を使い、音や歌が遠くまで響くようになっており、見た目だけでなく、遠くにいても音で楽しめるようにしてあるのが特徴だ。
 この拡声器(のようなもの)はゴーレムなどにも利用されているような小型化したもので国に申請して借りているものを使っており、祭りが終わると返却するようになっている。

「うんうん、祭りはええもんだにゃあ!」
 大変な賑わいを見せるニューイヤーパレード昼の部の警備を担当するのは、カロ・カイリ・コートン(eb8962)佐倉 望(eb9422)そして皇 天子(eb4426)の三名だ。
「お祭りといえば、怪我人が続出するときです。こんな時こそ医師たる私ががんばらなければなりません」
 気合を込めて挑む皇に対し「パレードなんて、遊園地でしかみたことないなぁ。楽しみ!」と警備よりもパレードに興味津々の様子できょろきょろと辺りを見回す佐倉。
 対照的な二人を見ながら、豪快に笑い飛ばすカロという構図がなかなか祭りにはぴったりの構成となっているようだ。
 一番の見所はやはり中央広場の固定ポイントである。そして、最も混雑する場所もここだ。
 中央広場を南北に分けて延びているのがパレードなら、中央を東西にわけて延びているのはお祭りに欠かせない屋台列だった。
 祭りを楽しみながらも、飲んだり食べたり、踊り歌うパレードの主役たちよりもリラックスして自由に愉しんでいるのもパレードでは定番のスタイルとなりつつある。
「この調子だと、ケンカや怪我よりも悪酔いして具合が悪くなる方が多くなりそうですね」
「飲めや歌えやの祭りじゃきぃ、たまにハメを外しすぎるお茶目もいるって事ぜよ」
「なんだか私も楽しくなってきちゃった!」
「ま、皆が楽しんでる時にこそ、あたしら冒険者が働かにゃならんぜよ」
 カロの笑顔はそれでも仕事は仕事、というしっかりとした意志の中にあった。
 もちろん、昼の部の担当は彼女達三人だけという訳ではない。何かあれば巡回している他の連中にも素早く連絡事項が伝達される仕組みになっていた。
 パレードは午後に入り、特に不都合などを起こすこともなく順調に続いていた。さすがに初日からトラブルなんていうのは調子が狂ってしまう所だが、無事初日の昼の部は終了した。
 交代の時間になり、カロ・佐倉・皇の三名は初日の警備を終える。佐倉はなんだかふわふわとどこかに行ってしまい、夜の喧騒に消えてしまった。

●ヒートアップ! パレパレード!
 夜の部がはじまると、新たにフォーレ・ネーヴ(eb2093)アトラス・サンセット(eb4590)シャノン・マルパス(eb8162)の三名が警備の担当になった。
 日が暮れはじめ空が暗闇に染め上げられても、パレードの熱気は冷める事無く、むしろ逆にヒートアップする一方だ。
 祭りの本格的な盛り上がりを見せるのはやはり夜なのだろうか。宴会でも屋台でも、昼間よりも夜の方が盛り上がるのは何かそういう自然の摂理に基づいた本能のようなものなのだろうか。

 特に人間は、炎とはじめて接したときから、夜は眠りや休息の時間から『闇への恐怖』を取り除くことに成功した。
 夜は危険だという感覚は、人間が火というものに守られてから、闇を楽しむという『余裕』まで彼らに与えることになったのだ。
 それから幾年が経ち、夜は人間の友となる。もちろん、自然の中では火や灯りというものはあまり相容れないものだが、人間は自然の中で精霊とのコミニュケーションを取ることで自然との共存を果し、今や別次元といっていい程のコミュニティを形成した事になる。

「おー、凄い人だねー♪」
「随分人も増えてきました。祭りの本番、というものでしょうか」
「それにしても‥‥あのように露出度の高い衣装で恥ずかしくはないのか? いや、それ以前に夜だというのに寒くはないのだろうか?」
 シャノンが少し照れたような表情で見やる。
「それにしても本当、楽しそうだねー。昼間も色々催し物があったりしたけど、パレードはこれから本番って事なのかな?」
 昼の部の時点で人が少なかった訳では、決してない。むしろ、昼の部に更に観客を増やしたような状況だ。夕食などをとる為に入れ替わった客層もあるが、全体的な盛り上がりはやはり夜の部が圧倒的だ。

 そして、夜の部最有力チームと噂される『チーム快刀乱麻』が遂に中央広場にやって来た!
 名前が名前だけに、あの噂の美少女怪盗、『美少女風水怪盗らんま』がメンバーに加わっているのでは? 或いは、リーダーが彼女なのではないか? という憶測が乱れ飛び、結果、官憲アーケチまでもが会場に乱入しメンバーのチェックなどをはじめてしまい、会場は一時騒然となった。
「なになに、怪盗らんまって、あの泥棒さん? 本当にいるのかな、かな?」
「私はその名前を知らないが‥‥そんな賊までパレードに参加するとは聞いていないぞ」
 シャノンが一瞬緊張した表情を見せるも、アーケチたちのチェックは素晴らしく手際がよく、彼女達の手を煩わせるほどには至らなかった。だが、この祭りでも休んではいられないアーケチら官憲の仕事振りを見て、夜の部の警備担当三人も再び気を引き締める事が出来た。
 噂のチームの踊りは『噂通り』素晴らしく、見栄えのするものだった。
 皆の振り付けやポーズはことごとく決まり、乱れる事なく完璧に踊りきり、会場を大いに盛り上げたのだった。

●後の祭り? 祭りの後?
 二日目は、初日から反対側――つまり、初日が北側から南側へ行進したのに対し、『帰ってくる』という意味合いで南側から北側へと行進する事になっている。
 これは初日が、悪い習慣や厄災などの不幸を笑い歌い踊りながら外へ運び出し、二日目は喜びや幸せを運んで持ってくるという意味合いが込められているからだ。
 だから、祭りそのものは二日連続で行われるのである。
 そういう意味で、実は初日の方が強い意味を持つが、祭りとしてはこの二日目が皆が最も楽しめる一日となる。
 歌って、踊って、幸福を運んで持ってきてくれる幸せの行進。それがニューイヤー仮装パレードの本質だった。
「そういえば、昨夜はどこへ行っていたのです?」
 初日の警備の後、どこかへ消えてしまった佐倉を心配そうに覗き込む皇。
「え? ああ、いやぁ‥‥ちょっと面白そうなものを見つけたからついついふらふらと覗きに行っちゃったよ! そしたらパレード参加者と間違えられたみたいでさ。それで、ま、ちょっと踊ったり歌ったりしてたんだけど」
「確かにその格好は目立つにゃあ」
 佐倉の肩を軽くぺしぺしと叩きながら笑うカロ。
「で、私ってもしかして、この世界だとコスプレしてる? うわぁ、これじゃ毎日パレードだよ! ってな事に気付いてしまったって訳」
 言われてみれば佐倉の言う通りだった。天界からくる人間は、アトランティスの人間からすると普段着から仮装しているようなものだ。言うなれば毎日ステージ衣装で外に出歩くみたいなものだった。
 冷静に考えてみると、少し気恥ずかしくなってくる。

 ――パレード最終組が演舞を終える。
 大歓声が夜のメイディアに響き渡り、二日間の祭りは遂に終演を迎えることとなった。
 人々は笑顔に包まれ、これからも平和が続く事を望んだ。祭りの後、ようやく賑やかさは薄れ、人々の熱気だけが気配としてその場に残るだけとなる。
 まだ、祭りの余韻が残っている気がする。
 そんな『余韻』も愉しめるのが、本当の祭りなんだよ、と語る者もいる。
 後片付けを手伝いながら、徐々にいつものメイディアに戻っていく姿を見るのはどこかもの寂しいような感覚がある。それでも祭りはこの日の為に様々な人が色々な事に向き合って、はじめて実現するものだ。

 何もかもが終わりなのではない。新しい時代は、これからはじまるのだから。

 そしてまた、来年の為に。
 幸せを――次の年も迎える為に。

 新しい年の幕開けに相応しい祭りの夜が、こうして明けた。