シフール快適生活プロジェクト!
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■ショートシナリオ
担当:なちか。
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:4
参加人数:5人
サポート参加人数:3人
冒険期間:02月17日〜02月20日
リプレイ公開日:2007年02月20日
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●オープニング
●ちいさな巨人? シフール!
シフールはアトランティス全土に限らず、非常に広範囲に生息するデミヒューマン種族のひとつだ。
にも関わらず、実はシフールの武器や防具、衣服や雑貨、楽器等に至るまでそのバリエーションはそんなに多くない。
「しふしふだって、おしゃれしたい!」
という声も多く聞かれる。
しかし、やはり現状は人間サイズが標準的に多く流通しておりシフール専用というのはほとんどがオーダーメイドという状態だ。
そこで生まれたのが、今回の『シフール快適生活計画』である。
文字通り、世界各地に散らばるシフールたちに朗報といっても過言ではないこの快適生活プロジェクト。
一体どのような事をするのか、というと。
先ずはシフールたちの要望をより多く取り入れ、その要望にそった形で生産性をより高める為の施設、或いは協会を作って多くの存在に広く認知してもらう事。
そしてショップなどに、よりよい形でシフール用品を流通してもらうのが主な目的だ。
しかし――。
その為には、一体何を、どうすればいいのだろう?
そんな中。一先ず、意見を多く出せる場所を確保すべきだ、という意見が多く寄せられた。
至極当たり前のようだが、まさしく正論である。
そこで、『シフール快適生活計画』の第一ステップとしてイベントホールを貸切、大意見会を催す事にしたのだった。
参加条件は特になし。
シフール以外の種族も、もちろん参加可能だ。
より多くの参加者から、より多くの意見を得ることが目的であるから、来るもの拒まずである。
しかしながら、メインがシフールの為の会議であるのでシフールの参加を優先するものとする。
●――お題は、あいうえお作文!?
基本的な題目としては、『衣』『食』『住』のみっつ。
他にも不便だと思っている事の改善や、その要望などの意見。
冒険者としては扱い自体は平等である場合は多いが、人間の多い文化圏ではほとんどのモノが人間サイズであるので、相当不便であるという事はあるだろう。
例えばトイレ。
天界の先進国では水洗の個室トイレなどがあるが、いくらメイディアに上下水道が巡っているとはいえシフール用のトイレなどは見たことがない。
こういった文化的な利便性や不便さは、実はシフールに限らず、ジャイアントにも及んでいるというのだからなかなか肩身が狭いといえるだろう。
そういう訳で、もっと多くのシフールから生の意見を出してもらい最終的にはアリオ王以下各領にも上申し、極小区画でもそのコミュニティを形成してもらおうというのが『シフール快適生活計画』の狙いでもある。
尚、スケジュールの調整が取れにくい忙しい冒険者からの意見も気軽に取り入れるため、設定日数は非常に短く設定されている。
●リプレイ本文
●シフールたちの主張!
アトランティス、メイの国。更にその局地的に何やら緊張感と熱気溢れる場所があった。
ざわざわと賑やかな会場を埋め尽くすのは、小さな妖精シフール。そしてそれにまじって、人間、エルフ、ドワーフ、パラ、ジャイアントと様々な種族が一同に集った。
一体、何が起ころうとしているのだろうか。
だが安心してほしい。
――その答えは、すぐに出る。
「こーんにーちわー! あれあれ? 元気がないね、それじゃいつもの挨拶いってみようか。せーの、しふしふ〜☆」
元気よくひらひらとステージに飛んできたシフールは、以前合唱団が使っていた拡声器(のようなもの)を使って、大声で挨拶をした。
すると、会場からは待ってましたとばかりに大声で「しふしふ〜☆」と返ってきた!
どうやらアトランティスだけでなく、全世界に広がるシフールたちの共通語の中でも、この挨拶は非常に定番の挨拶のひとつであるようだった。
シフールたちだけでなく人間たちやエルフ、パラたちの間でもこの挨拶は浸透しているらしく、一緒になって元気よく「しふしふ〜☆」なんて返しているのだから、なかなか圧巻である。
「今回は『シフール快適生活計画』のイベントに集まってくれて、ありがとー! あたしは今回司会をする事になった『必殺! お探(おさが)シフール』ってよろず屋さんをやっているしふしふだよ。名前は‥‥まあ、いいや、とにかくよろしくねー! それじゃ早速このイベントの説明をさせてもらうね」
司会のシフールのお姉さんは軽やかなトークをまじえつつ、今回のイベントの主旨を説明する。
『シフール快適生活計画』とは――。
全世界に広がるシフール文化。しかし人間社会においては、そのサイズの小ささは非常に不便である事が多い。そんな『不便さ』をまとめて、或いは要望を集め、少しでもシフールたちの生活を人間たちに理解してもらい、協力してもらおう。
と、いったものである。
主な議題は『衣』『食』『住』のみっつ。ほとんどが人間サイズであり、シフールたちにとってはオーバーサイズである。
基本的な事柄でも、まとめると一つの意見になると考えたシフールたちは様々な土地で、色々な不便さを感じていただろう事をここでひとまとめにする事でメイの国にもシフールたちの存在をもっと認知してもらいたいという思いがあった。
●第一のテーマ『衣』
「それじゃあ、早速! 衣食住の衣からいってみよー! がんがん意見言っちゃっていいからねー?」
すると、大変な事になってしまった! あちこちから、わいのわいのと誰も彼もが自分勝手に喋りはじめてしまったのだ!
一瞬呆気にとられていた司会のお姉さんだったが、ふと我に返ると慌てて制止した。
「まってまって! 取り敢えず、ちゃんと意見を聞きたいから、ちゃんと手を上げてひとりひとりご意見を聞かせてもらうよ。そうだなー、それじゃあ、そこの人からお願いね?」
第一のテーマ、一番手で指名されたのは利賀桐 真琴(ea3625)だった。
「お。あたいからでやすか。あたいはしふしふさんたちの衣装についてイロイロと考えてきたでやすよ」
そう言うと、こほんと軽く咳払いして喉の調子を整え、発言をはじめた。
「シフールの背中にゃ羽根があってつっかえやすしね。羽根を避けて簡単に着易れてなおかつお洒落‥‥となるとやっぱ帽子とかでやすかねぇ」
「ふんふん。帽子、ね‥‥」
「あと、シフール独特なお洒落は着脱可能な追加付け羽根とか羽根を綺麗に染めるフェザーアートなんてどうでやす?」
「それは羽飾り、って事かな?」
彼女は仕立て屋を生業としているだけに、服飾品の事に関しての興味からの貴重な意見だった。
それに彼女の格好もなかなか見栄えのするものである。
どうやらメイド服らしく、生地はしっかりしていながらも機能性に優れ、それだけではなく彼女のキャラクターがそうさせているのだろうか――見事なまでに着こなしている。
「利賀桐さんの着てるその服もかわいいね。あたしたちもそういうのをぜひ着てみたいな」
司会のお姉さんはメイド服がお気に入りの様子だった。また、彼女の着ているメイド服にセットになっているエプロン。
なお、エプロンならば背中の羽を気にする事もなく着用出来るのではないだろうか、という案も出ている。
――帽子。
小さな妖精シフールにとって、更に小さく軽い服飾品を作るのはなかなか難しいものだ。何せ自由に空をひらひらふらふらと飛びまわるのだから、頭に乗せるだけではいつ風に吹かれて飛ばされるか知れない。
だが、方法がないという訳では決してない。
例えばドレスハットやヘッドドレスのようにリボンなどで固定したり、幼稚園の園児たちが登下校時に着用する園帽のようにゴムひもなどで頭に固定するようなもの、或いはカチューシャのように髪をまとめるような髪飾りであれば身軽なシフールたちでも有効活用できるだろう。
流石に一から作り出すのは骨が折れるだろうが、人形師などが作るミニチュアの服飾品を流用すれば、或いは。
技術的には職人の腕次第で、値段も生産量などの関係から多少高価にはなるだろうが、実現されればシフールたちのおしゃれにも幅がひろがるだろう。期待したいものだ。
また、このテーマの中には冒険の必需品ともいえる武器防具などの装備品についての意見も聞かれた。
軽量で、かつ効果の高いもの‥‥というのは高望みすぎるかも知れないが、アイディアと工夫、試行錯誤を繰り返せば製造不可能ではないのかも知れない。
今回あがったアイディアのひとつとして、裁縫道具である『裁縫針』をレイピア風に加工する事でシフール用の武器にならないか? でるとか、大きな鳥の羽や大きな葉などを使ったいわゆる流体力学における『リフティングボディ』を応用したの移動兼用盾などのアイディアが出た。
しかし残念ながら物理の理論や概念は天界から流入していても、技術がまったく追いついていない現状では実現には更に長い年月を要しなければならないのかも知れないが‥‥。
●第二のテーマ『食』
いつでも元気、いつでもはらぺこ。忙しく飛び回るシフールたちは好奇心だけでなく、実は食欲も旺盛である。
そんなシフールたちにとって、食事というのは生活に密着したテーマでもある。
やはりこの中では量に関する不満が多かったようだ。
どういう事かと言うと、いくら食欲旺盛とはいえ、食べられる量は人間以上にはなれない。どんなに頑張ったって人間サイズのものをぺろりとたいらげるというのはかなりのチャレンジャーである。
意見は意外と多く出てきており、盛り上がりを見せたが、そろそろ次の議題というところで最後に指名されたのは結城 梢(eb7900)だった。
「取り敢えず、脇田さんから現時点のシフールの方の実態調査などをまとめたものを教えていただきました‥‥何かと不平不満が多いみたいですね。食器類が特に大変みたいですね〜」
「食器、そうそう。食器ね! 大変なのよね、人間サイズのナイフじゃ大きすぎるし、フォークだってないんだもの」
「そうですねえ。体に合わないサイズのスプーンやフォーク、ナイフ類‥‥これを作るには、何かと大変かと思いますが、専用のものを作るのが良いと思いますねえ」
「お皿とかコップも欲しいところね。うん、食器、それはいいご意見だよ! ありがとう結城さん。お友達の方も協力してくれたんだって? いいお友達だね」
――食器。
食事を円滑にする為、そして食事を楽しむ為の食器の充実は、食事そのものと密接に関係するだけあって非常に重要な項目であるといえる。
ナイフ、フォーク、それにスプーン。更には器やコップなども欲しいところだ。
かなり細かいものではあるが、あればきっと利便性はとてもよくなるだろう。
冒険中でも使えるように頑丈な、そして錆びたり腐ったりしないような素材で作られれば、携帯性もあいまって冒険中も普段でも食事をより楽しめるというものだ。
セットで購入できるようになれば生活はとても楽になるだろう。
また、つまようじなどをフォークの代用品として使えないか? という案も出たが、メイでは現在普及していないという理由から、あまり現実的ではない状況である事がまとめられている。
●第三のテーマ『住』
シフールの生活は人間たちから見るとかなり自由度が高い。
その大きな理由のひとつとして、性格的なものからくる好奇心や冒険心というものがある。どういう事かというと、明るく好奇心旺盛なシフールは『土地にしばられない生き方』をしている種族なのだ。
そういう意味からすると、議題からみると一番縁遠いと思われるみっつめの議題。
しかしここでも意見を聞くと、意外と問題点は浮上してくる。
「それじゃあ、今度は衣食住のラスト! 住、いってみよー!」
「はーいはーい! 今度はうちに言わせて〜!」
「おやおや、元気なお嬢ちゃんが登場だね。それじゃあ、あなたのご意見をいただいちゃおうかな? 先ずはお名前から、どうぞ!」
満を持して登場――といった感じでにっこり笑顔。
きらきらと瞳を輝かせているシフールの少女は、クリスタル・ヤヴァ(ea0017)である。
「作ってというか、誰か作って欲しいな〜っていうのはあるよ〜。それは、うちらしふしふ専用のベッド! 人間サイズのベッドは大きすぎて布団も重くてかなわんのよ〜。ちょうどこれくらい?」
言いながら両手をぐぐっと大きく開いて、大体の形を空中でなぞる。
ジェスチャーを見る限り、大体シフールの平均身長の二倍ほど――だろうか。60cm四方くらいをイメージしているらしい。
「座布団くらいの大きさで十分なんよね〜☆ その上に、若干薄目の布団があれば完璧や!毛布でもええんだけどね〜。どう? 誰か作ってくれない??」
「お布団にベッド、ね。確かに冒険者街や宿屋さんなんかのベッドは重くてしかたないね。もっと軽くて小さいものがいいよね! なかなか無いんだよね。小枝に吊るせる小型のハンモックとかでも面白いかもね」
――寝具。
住む場所、というよりも寝泊りに関する意見は多く寄せられた。
その中でも冒険にも持っていける超小型の寝袋などの要望は強く、携帯性の高い超小型、超軽量というシフールにとっての最大のネックである『重量問題』をどうやって改善するかが焦点となった。
●その他の自由テーマ――そしてまとまりのないまとめ。
「それじゃあ、ここからはテーマは自由だよ。思ってる事をばーんばん教えてちょうだいね。んじゃね、あ、それじゃあ、そこの人。お願いね」
指名されたのはフィーラ・ベネディクティン(ea1596)だ。
ゆっくりと立ち上がると、これまたゆっくりとした口調で発言した。
「やはり、こっちでもシフールの方が、この町でうまくなじめるような学校を作るのが良いのではないでしょうかねえ?」
「学校? ふむふむ」
「シフールの方は自由に今まで生きていらっしゃっているでしょうから、町でのルールを把握していない方もいるかと思うんですよ。そういう方をうまく教育して、シフールの特徴である機動力とネットワークを駆使した新しい世界を作るのが良いのではないでしょうか?」
「教育、って事はお勉強しましょう、って事だよね。ふーん、そういうのも必要かな」
技能を修得する場。という事なのだろう。
また技能関係では、アクロバットや高空飛行の訓練などを通過したシフールにはしふしふ飛行章を叙勲――という技能イベントの提案も出されている。
――技能イベント。
施設の建設に関しては、現時点では現実的ではないが特殊技能試験などを催すというのは実現不可能ではない。
シフール同士で飛行技術を競い合うというのは、意外とにぎやかなお祭り好きなシフールたちにとって好材料であるかも知れない。
イベントとして成立するかはまだ不透明ではあるが、大掛かりな施設や整備が不必要という面からみると、或いは。
また、自由テーマ内ではシフール専用の楽器類などの提案がだされている。
以前、シフールたちが一同に集まって一夜限りの合唱団が結成されたが、楽器が充実すれば今度はシフールたちの演奏会などを催せるかも知れない。ただし、人間サイズの楽器も現時点ではまだまだ原始的なつくりであり、精度はまだ甘い。
だが、技術の進歩で、これからもっと高度で精度の高い楽器類が開発される可能性は残されている。
衣食住、すべての問題において最大の問題点。
それが『重量問題』である。
メイの文化では、まだまだ人間サイズの装備品や日常品等の問題でも重さのネックはついて回る。
軽量化と強度を両立する技術が追いついていないのだ。
また、小型化の技術面においてもまだまだ課題が残っている。
だからこそ、シフール専用のアイテムなどを考える際もサイズと重量の問題は回避する事の出来ない問題なのである。
新たに作るというのは非常に手間が掛かるが、既存のものを流用して活用するというのは現時点でも有用だ。
そういう意味では、アイディアと工夫を怠らず、常に切磋琢磨してゆく事が実現への第一歩といえるだろう。
沢山の意見や要望が出され、大盛り上がりを見せた『シフール快適生活計画』のイベント。
意見書はまとめられ、先ずは実現レベルの高いものから整理され国側に提案する形となった。
全ての案が承認されるかは今のところわからないが、世界中で一般に普及しているシフール便などでも認知されている通り、シフールたちの意見を完全に無視はされないように思う。
希望は最後まで持っているべきだ。
非常に短いイベントではあったが、主催側はこれからも第二回、第三回と続ける予定はあるらしい。とはいえ次回開催は未定である。
要望が強ければ、早い段階で次回の開催も検討される事だろう。
こうしてシフールたちの快適生活プロジェクトは閉幕した。