ナーガ族の憂鬱
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:なちか。
対応レベル:8〜14lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 15 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月29日〜11月03日
リプレイ公開日:2006年11月01日
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●オープニング
●『カオス』が何であるか?
実は、多くのアトランティス人は把握していない。ただカオスニアンや『カオスの魔物』などの存在から、邪悪で『このアトランティスを冒(おか)すモノ』であると認識している。
だが、その本質にまで迫った学者や魔法使いは居ない。それはこの50年変わらぬアトランティス各国の命題であり、そしてなんとか探りたい事物である。
なぜか?
話しは簡単だ。どうやって生きて(発生して)いるかが分かれば、滅ぼすことも不可能では無いからだ。
生物のメカニズムは、かなり解明されている。まあ、天界の知識でアクチン・シトミンといったアミノ酸の集合体であるという人間の構成が、アトランティスやジ・アースでは『六大精霊』によって構成されているものであったりとその有り様は様々だが、モンスターも含めて、解明された現象はあまり脅威ではない。ウィルスの発見により免疫学が発展したように、正体が分かれば対処のしようがあるからである。
だが、カオスだけは別である。現状その発生原因も分かっていないし、ある日突然『カオスの穴』が開口しサミアド砂漠が広がり、文字通り『世界が崩壊しかけた』この事象は、今だ謎のままだ。
そして、バの国の台頭。
基本的に『リーダー』という存在の無かったらしいカオスニアンたちは、バの国の『軍』というシステムを教えられ、『群体』から『軍隊』に変化した。それは身体能力にすぐれたカオスニアンに適合し、そもそもバイタリティあふれるカオスニアンを巨大な一個の『暴力』に作り上げたのである。
そしてカオスニアンの多くはどん欲で、実に凶暴である。そしてしたたかで、認めなければならないのは『賢い』のだ。
悪の賢人ほど始末の悪いものは無い。そして、彼らは虎視眈々と『何か』を狙っている。
●ナーガ族――竜人族と呼ばれる、竜の眷属である。
アトランティスでは知賢ある隠遁者であり、精霊竜を信奉するアトランティス人にとっては、天界の言葉で言うと『神の眷属』に近い。その能力も竜に準じ、翼を持ち炎の息を吐き、まさに『竜人』の名に恥じない能力を持っている。
彼らの多くは世俗との関係を絶ち、小さなコミュニティを作って生活している。それは自分たちの能力が、あまりにも強力であることにも無関係では無かろう。彼らのメンタリティに争いの選択肢というのはあまり無く、要は、現状の『人間の時代』を容認し不干渉を決め込んでいるのだ。少なくとも、メイの国ではそうだ。
が、ある村に一人の女性ナーガが現れた。
モンスターの襲撃か! と思った村人も居たが、人間の上半身に蛇の下半身を持つ女性の姿をしたソレを長老は竜人と看破し、酷く傷ついたその女性を介抱した村人は驚愕の事実を知ることになる。
――カオスニアンが竜人の村を攻撃している!!
まさに神に弓引く行為。その行為に恐怖した村人は、すぐに領主の元に駆けつけた。
そのナーガの話しでは、竜人の村を襲ったのはカオスニアンと恐獣、そして見たこともない『巨人』であるという。
話しを聞いた分国領主は、『巨人』という言葉を聞いて戦慄した。ナーガを屠れる巨人など、ゴーレムしか考えられないからだ。
分国領主はすぐさま私兵と冒険者を募り、バガン級ゴーレムの貸与を一騎分決め、使者を送り出す事を決定した。
●リプレイ本文
――美しい。
『美』という価値に対して、当然価値観の差はある。だが、神秘的なオーラみたいなものに感化され、心が震える事はあるのだろう。
ナーガの女性はそれだけ、美しかった。
今は傷つき、その翼や身を覆う鱗の美しさもカオスの脅威により汚されてしまったが、人知を超える彼女の存在はたった一人でさえも神秘的な魅力を与えていた。
そんなナーガの女性、レイネは貸与されたバガン級ゴーレムを見上げると驚愕の表情を浮かべる。
「こ、これは‥‥『巨人』!」
その言葉に、ジャスティン・ディアブローニ(eb8297)とガイアス・クレセイド(eb8544)は確信した。
パーティにはマグナ・アドミラル(ea4868)や黒 風怪(eb3502)といったジャイアントがいるにも関わらず、ゴーレムにだけ反応を示したからだ。
「相手はゴーレムか。やはり一筋縄ではいかないようだ」
「更に恐獣、カオスニアンですか。しかしどうして彼らはナーガ族を襲ったのでしょうか?」
アルフレッド・ラグナーソン(eb3526)、エル・カルデア(eb8542)のエルフ組も素直な疑問を浮かべる。
カオスニアンたちは突然現れて、攻撃をはじめたのだという。何か意図があるのか、特に酷かったのはやはりこの世のものとは思えぬほど凶悪な風貌の巨人だった。恐獣に対してはなんとか対抗手段はあったものの、巨人の怪力と頑強な鎧はナーガの持つ力を持ってして驚くべき耐性を持っていたという。
「まったく歯が立たなかったという訳ではなかった様ですが、いくらナーガ様でも生身で直接ゴーレムとやりあうのは‥‥」
癒しの奇蹟を与えながら、アルフレッドは心配そうにレイネを覗き込む。
「初めてだったのだ。まさかゴーレム、だったか? あの巨人があれほどのものとは‥‥」
森と森の合間。地図には記されていない場所。『迷いこむ』事すら出来ない、不思議な森の中にそこはあった。
「別に特殊な封印を施されたという訳でもないのに‥‥こんな場所があるとはな。なるほど隠れ家というに相応しい」マグナは腕を組みながらうんうんと一人肯いた。
「こんな場所に的確に狙いを定めて攻めてこられるものでしょうか」
「他のナーガ様方の安否が心配ですね」
ようやく広がった場所へと辿り着いたナーガ族の住むという村の様子は比較的、大人しいものだった。争いの跡はあるが、今は交戦状態ではないようだ。
レイネと護衛を担っている六名は村長のもとへと向かう。
村長は残ったナーガたちを集め、レイネと六名をまじえ状況報告を交わした。
それによるとカオスニアンたちの勢力は二、三十。巨人と恐獣はそれぞれ一体だったが、何とか村を死守する為交戦。
カオスニアンを半数以上、そして死力を尽くして恐獣を退けた。その段階で彼らは一時撤退したという。
撤退とはいうが、完全に姿を消した訳ではなかった。このままでは再度増援された兵力で圧倒してくるだろう。
村長も残ったナーガたちも口を揃えるは『巨人の脅威』だ。ゴーレム一騎でこれだけの打撃を受けるとは! あのナーガ族が屠られるほどの圧倒的な力の前に、改めて全員が息を飲み、決死の覚悟をする事となる。
「だが、あなた方を守る為に私たちは来た。その為のゴーレムだ。私がその巨人とまみえよう!」
ジャスティンの力強い言葉で肩を落としていたナーガたちも少しだけ気持ちを取り戻した。
増援を待っているのかわからないが、とにかく一時撤退した今が好機。少数精鋭の部隊を編成し、奇襲戦法を取り再度攻め込まれるのを阻止するという作戦に出る。
マグナ・黒組は正面からジャイアントの体躯を活かした囮役(といっても大暴れしてもらうのだが)、ガイアス・エル組は真後ろから混乱しているカオスニアンたちを各個撃破。
私兵たちは左右から挟み込むようにガイアスたちの狙いをサポートする。
更にジャスティン駆るゴーレムは村の護衛を兼ねてマグナたちの背後に配備、巨人が動き出したところを正面から力押しで退ける、というものだ。アルフレッドは奇襲から漏れ、村側に侵入したカオスニアンを足止めさせる側に回った。
分国領主の私兵たちにも協力してもらい、アグレッシヴな布陣で電撃奇襲を仕掛ける!
狙いは敵ゴーレムだ。それさえ叩けば戦況は大きく有利に持ち込める。
カオスニアン側の残存兵力は村長から言われていたよりもぐっと少ない様子で、負傷した者がいくらかいるようだった。
見たところ、カオスニアンが十体、そしてゴーレム一体といったところだ。「これならいけそうだな」とマグナと黒は見合わせるとゆっくりと位置取りを確認した。
――異様なほどの静けさを切り裂くように、マグナの咆哮が奇襲の口火を切った。
「カオスニアンとやら、『静かなる暴風』の前に立つ勇気は有るか!」
大地を揺らすほどの名乗りに、カオスニアンたちも戸惑いを隠せない。マグナと黒の作戦は成功し、兵力を分断させる。
混乱の中、ガイアスたちは背後を取ることに成功! だが、ガイアスは戦いの合間に見えるゴーレムを見て、妙な違和感を覚えた。
「なんだ、あのゴーレムは? 今まで見たどのゴーレムとも違うぞ、どこの国のものだ!」
その違和感は正しかった。ゴーレムというのは現在、主に国家単位で運営されるほどの超貴重品である、一騎運営するだけでも桁違いの費用がかかる。
その為、通常は『どこ』に属しているゴーレムなのか、ゴーレムの知識があればおおよそを知ることが出来る。
だが、それがはっきりしない。言ってみれば、『正体不明』のゴーレムなのだ。エルの知識の中にも、それを確定するものはなかった。
そんな中、遂に――正体不明のゴーレムが動き出した!
マグナと黒はゴーレムの動きを確認すると、弱体化したカオスニアンたちを突っ切ってガイアスたちの援護に回った。
ここからはジャスティンの腕前を頼りにするしかない。
カオスニアンたちが消耗していたからなのか、戦闘が長引けば長引くほど彼らは弱まっていく。確かに強い、が、崩れた体勢で戦えるほど熟練されたカオスニアンがいなかったのが幸いした。
マグナ、黒、ガイアス、エルの独立遊撃部隊はゴーレムの動きを誘導しながらカオスの者共をむっつ、ななつと確実にひとつずつ撃破していく。
「私の‥‥出番だな」
ジャスティンは静かにその青い瞳を見開くと、ぐぐっ、と奥歯を噛み締めて動き出したゴーレムを見据える。
だが、対峙したゴーレムは見たことのない異様な姿で現れた。
本当に『巨人』なのではないかと思ってしまう位、元の姿もわからない程偽装されているゴーレムに一瞬躊躇したが、どうも敵側ゴーレムの様子がおかしい。
奇襲作戦が成功したと見て間違いなかった。
――討つのは今しかない!
どうやら一時撤退した際、ゴーレムの修復が間に合わなかったらしい。切れの悪い巨人の動きを軽く上回るバガン級は、正面から激突して大地を大きく揺らす!
巨大なゴーレム同士のド派手な一騎打ちは冒険者たちの目にも、ナーガ族の目にも、そしてカオスニアンらの目にも凄まじいものがあった。一撃一撃がまさに激震、純粋な力と力のぶつかり合いは、見る者を圧倒する。
動きの悪い巨人の一瞬のスキを突くように、ジャスティンの駆るバガンが突撃! バランスを崩したところを、一気にとどめを刺した――。
ジャスティンが巨人を行動不能にした頃には、カオスニアン残党も敗色濃厚と見て、逃亡。
ナーガたちの村はこうしてカオスの脅威から守られた。
ゴーレムの搭乗者やゴーレムニストを捕獲し尋問するはずだったが、戦闘終了後その死亡が確認された。
結局。
『巨人』の正体はわからずじまい。
カオスニアンとゴーレムの組み合わせとして考えうる最悪の事態、『バの国』の影が怪しく蠢いている様に思えて仕方ない。
だが、それを確認するものは何一つ見付からなかった。
はっきりした所属がわかればメイの国も政治的に動けるのかも知れないが、最大の謎は明かされぬまま一連の騒動は終結に向かっていった。
戦い終わってナーガの女性レイネは、村長と共に人間たちの協力に最大限の感謝の意を表した。そして、レイネはこのまま村に残り村の修復を手伝う事になった。
後日談だが、村に残った私兵とバガン級ゴーレムは村の復興に尽力し、比較的早い段階で村は元通りとなったらしい。
正体不明の敵を倒したものの、その正体を探ることが出来なかったのが非常に心残りではあるが、カオスニアンの再度侵攻を防ぎ、これを撃破。成果は作戦成功となった。
冒険者と私兵の一部はギルドへの報告の為これにて帰還する事となる。