流されて巨人島

■ショートシナリオ


担当:なちか。

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月23日〜05月28日

リプレイ公開日:2007年05月24日

●オープニング

●森の中にある、巨人が住まう島。
 アトランティス東方メイの国、セルナー領国西部。
 シーハリオンの丘とサミアド砂漠を覆う山脈の、更に北西へ抜けた辺りに深い森がある。
 まだ未開の地で、地図上にも載っていないような広大な森の中にそれはあった――。

 元々はアリオ王が命じた『阿修羅の剣』の探索に関する、どんな小さな噂でも確認する為に組まれた冒険者チームが持ち帰った、苦し紛れの未確認情報だった。

 森のはずれにある村の情報で、『森の中にある巨人が住む島』に巨人、つまりジャイアントですら恐れるという伝説の剣が眠っているという。
 人間よりも一回りも二回りも体格のよいジャイアントが恐れるほどの強大な力を秘めているらしいその剣は、島の守り神のような存在である。それだけの噂が並べば、例え正真正銘の阿修羅の剣でなくとも有益な情報であるようにも感じられる。
 ――ところで。
 森の中にある島、とはどういう意味なのだろうか。
 一瞬矛盾を感じ得ないこの状況は実に奇妙な偶然が重なったものだった。

 実はこの『島』は、確かに森の中にあった。
 森の中に大きな湖があり、そのほぼ中央にぽつんと孤島があるのだ。まさに陸の孤島と呼ぶにふさわしいその場所は古くから巨人が住むと伝えられている場所で、森の外れの村ではその場所を『巨人島』と呼んでいた。
 村人たちはこの島を特別なものとして、昔から大切に扱ってきた。それというのも、森の中にある湖――巨人湖――からは貴重な淡水魚が捕れ、それらは中央の島の守りがあるからこそであると信じられてきたからだ。

 阿修羅の剣捜索チームが偶然にもこの村に立ち寄った事で、ようやく明らかになった『巨人島』の存在。そして、その島に眠るという伝説の剣の噂。
 即座に確認に向かおうとした冒険者たちだが、残念な事に島に渡る船も用意できず、泳ぎの得意な者も、空を飛べる者もいなかった。
 そこで冒険者たちはギルドに報告を入れる為と、作戦の練り直しを兼ねてメイディアに帰還した、という訳だ。

●どうなつてるの、この巨人島(しま)は
 報告ではこの陸の孤島、なかなか見ることの出来ない形状である事が判明した。
 湖自体は山から流れてきたと思われる水が川となり、それがたまって湖が出来たものだという。ところがその中央、つまり見かけ島のように盛りあがった地形を囲むようにして湖が形成されてしまった為、完全に森と隔離された島が完成してしまったらしいのだ。
 さらに細い川が海側まで続いている。

 わかりやすく説明すると、上空から見ると、ギリシャ文字のファイの文字に非常に似た形状なのだ。とはいっても、別に島が分断されている訳では無いのであくまでもそれに近い、というだけにすぎない。
 川の存在を抜きにすれば、多少いびつではあるがリングドーナツ状であると言っても間違いではないだろう。
 つまり、この森の中に船を持ち込んで移動しなければ、島に到達する事が困難なのである。

 ちなみにこれまで森の外れの村人がこの湖に船を出した事はなく、島から何者かが渡って来たという目撃情報は皆無である。
 外部の者が侵入したかどうか、或いは島に住民がいるかどうかは村では確認されていない。
 ただ言える事は、村人はその巨人島をある意味で神聖視している事は間違いない。
 そして、どうしてそんな噂が広まったのかわからないが、伝説の剣の噂までがまるで当たり前のように浸透している事実。

 今回の任務は、人類未踏の島への上陸と伝説の剣の捜索が主となる。
 上陸方法は船を利用するのが最善かも知れないが、村人たちはあまりよい顔はしないだろうと思われる。
 汚される事を嫌っているからだ。
 それも兼ねて、村人の案内も必要な為、村への説得と協力要請が第一になるかも知れない。
 なお、海から湖までゴーレムシップで進むことはほぼ不可能である。また、フロートシップの借り入れも難しい。
 実は一隻準備中であったのだが、別の作戦が急遽組み込まれてしまった為だ。ついでにいうと、空から上陸できるような島の構造かどうかまでは地上からは判断がつきにくい。
 チャリオットでは湖上を渡る事は不可能だし、かろうじてゴーレムグライダーなら可能性はありそうだが参加者が毎回ゴーレムグライダーを操縦する事が可能かどうかを考えると妥当とは言えない。
 消去法で残るのは、水泳で渡るか船で渡るかであり、全員が泳ぎが得意でない場合を考慮すると最後に残るのは船で渡る事だ。
 問題なのは――この深い森の中をどうやって船を持ち込むか、である。

 それらを冒険者のアイディアで乗り越え、何とか島に上陸し、伝説の剣を確認する事が今回の目的である!

●今回の参加者

 ea0827 シャルグ・ザーン(52歳・♂・ナイト・ジャイアント・イギリス王国)
 ea2449 オルステッド・ブライオン(23歳・♂・ファイター・エルフ・フランク王国)
 ea3329 陸奥 勇人(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3972 ソフィア・ファーリーフ(24歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea7482 ファング・ダイモス(36歳・♂・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 ea9907 エイジス・レーヴァティン(33歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb1633 フランカ・ライプニッツ(28歳・♀・ウィザード・シフール・ノルマン王国)
 eb8985 暁 幻二(37歳・♂・天界人・人間・天界(地球))

●リプレイ本文

●もとめて、伝説の剣
「森の中の孤島か‥‥確かに曰くありげだぜ」
 これといって、村の様子は驚くようなところはない。陸奥 勇人(ea3329)は唯一人里離れた『巨人島』を知る、最果ての人里とも言うべき村を見渡しながら口元を緩める。
「何かこう、ものすごく胡散臭いですよね」
 どんな小さな情報でも確定情報とするべく送らされた阿修羅の剣捜索チームとして参加していたフランカ・ライプニッツ(eb1633)は、やや半信半疑、というより、大分疑いの感覚が強かった。
 陸奥もそうだが、『それ』が本当に阿修羅の剣なのか、そもそも誰がそんな噂を流したのか――。
 未だ前人未到の島であるはずの陸の孤島、『巨人島』に、そんな剣があるという事実を誰が、どうやって知ったのか――。
 だが、もしそれが本物であれば、世界は劇的に変わる。メイの国に再び平和をもたらす事が出来る。
 ともかく全ては噂の島に上陸してからだ。

 冒険者一向は巨人島の事を知る村人たちに、その情報提供と探索協力を仰ぐ為説得交渉を行う事にした。
 前回の探索チームの交渉が悪かっただけなのか、意外にもすんなりと情報を提供してもらえる事になったのだが‥‥。
 村人たちは確かに湖や巨人島に対してある種の神聖視を示していたが、絶対不可侵領域という訳では無い。
 過去には湖の主の怒りに触れるから近付いてはならないなどという、いかにもな建て前があったようだが、それすらすでに風化した戒めのひとつでしかなかった。
 だが、湖で捕れる淡水魚やザリガニ種のような食材は村にとっては貴重なもので、乱獲や絶滅を恐れて警戒を促したという部分も、少なからずあったようだ。
 ならば――伝説の剣の噂は偽りなのか?
 交渉にあたり、ジャイアントであるシャルグ・ザーン(ea0827)とファング・ダイモス(ea7482)の二人の存在は意外にも高い効果を生み出した。
 何せ『巨人族』なのだ、深い森に囲まれているこの村では時折エルフが訪れはするものの、ジャイアントはほとんど見かけない。
 物珍しさだけでなく、やはり彼らジャイアントに対して一種の憧れのような意識がこの村には古くからあったようだ。
 同時に森と深く関わりのあるエルフのオルステッド・ブライオン(ea2449)ソフィア・ファーリーフ(ea3972)の存在も今回の交渉に対し非常によい印象を与えたようだった。
 反面やや難しい位置にいたのはエイジス・レーヴァティン(ea9907)だった。
 下手な刺激を与えないように耳を隠してはいるが、人間とエルフの子の弊害はこんな小さな村でも大きな衝撃となる可能性があった。本人も充分に理解しているからこそ事を荒立てないように『隠して』いたのだが。
 誠意が通じたのかどうか、ともかく、村長を含めた村の代表らの集会で冒険者の湖の立ち入りを許可された。

 その際、村側の要求が少しあり、湖と巨人島を汚さないようにしてもらいたいという事を前提とした条件付けがなされた。
 この条件は元々冒険者たちが用意した『約束事』とほとんど一致した条件であり、改めて確認しあう事で村は協力要請を受け入れる形となった。
 ただし、唯一意見がぶつかったのが島にある伝説の剣の持ち出しも遠慮してもらいたいという事だった。
【冒険者らの意見】
・阿修羅の剣、もしくは剣探索につながる物以外は島から持ち出さない。
・専守防衛、また可能な限り島の生物および環境を傷つけない。
・村に島探索の結果、および持ち出したものを報告する。
【村側からの意見】
・湖と島を傷つけない、汚さない。
・巨人島探索の結果を報告報告する。
・基本的に持ち出し禁止。

 難しい条件だったが、体裁を整える為、『阿修羅の剣』である事が確認された場合にのみ持ち出しの許可を得る事に成功した。
 これは王宮からの要請がある事を伝え、同様に全ての領国でも阿修羅の剣の探索を進めている事を説明した為である。

●飛べ!ガンボーイ
 この湖――通称『巨人湖』――がどうしてリングドーナツ状の湖になったのかは誰も知らない。だが、少なくとも人工的なものではない事は、見ればすぐに理解できた。
 どちらかというと、まるで隕石が落ちて出来上がったクレーターような凹状の湖で、暁 幻二(eb8985)はそれが恐らく火山の影響で形成された『カルデラ湖』ではないかと予想した。
 だが、すでにこの湖周辺には活火山はない。古代に活動していた火山がカルデラを起こし、それに長い年月をかけて山々からの水が流されて川になり、溜まり、湖が出来たのだろう。
 案内係を請け負った村人たちは湖畔で待機し、帰りを待つことになっていた。
 冒険者らは空からの侵入を試みる事にしたが、問題はその水深である。
 正確な水深は測ったことがないため計測値は定かではないが、フランカが湖の上空をひらひらと飛んで浅そうな場所を指示する事で何とか全員が飛行アイテムで湖を荒らすことなく上陸する事に成功した。
 これには村人も驚きを隠せなかったようである。何せ誰一人として『空から上陸』しようなどと考えるものがいなかったのだ。
 難なく空を飛べるシフールのフランカはともかく、全員が空から島にあがろうとしていたというのが村人は信じられなかったが、実際飛んでいってしまったのだから、驚くしか他なかった。

 ちなみに、飛行高度から察するに平均水深は約11メートル程度である事が明らかになったが、最大水深は30メートルはゆうに越えるだろう事が上空から見てとる事が出来た。完全な円形ではなく、多少いびつなリングドーナツの形状が空からの上陸を成功させる好条件となった事を幸運と見るべきだろう。
 無事全員が島に到達し、さて、ここからがあらゆる意味での本番である――!

「さて、班分けだな。一応案を出しておいたんだが‥‥問題あるか?」
 事前に仮組みしていた班分け案に対して、特に意見がなかった為陸奥が最初に提案した三班に分かれての行動を取ることにした。
 第1班:ファング、暁
 第2班:シャルグ、フランカ、オルステッド
 第3班:ソフィア、エイジス、陸奥
 以上がそれぞれ別行動で島を探索する事になった。

●さまよって、冒険者
 探索の基本――絞り込みを地道に行うのが基本戦術である。
 つまり、大きく捜索範囲を取り、そこから徐々に内側に絞り込んでいく方法だ。今回は既に外周が湖という状況なので最大範囲はそこから中央に向かって絞り込まれる。
 フランカのいる第2班だけでなく、フライングブルームや空飛ぶ絨毯を駆使しての地上と上空を同時に捜索出来たのはかなり有効だった。これが船などで地上班のみの探索であったなら、効率は今より大幅に悪くなっていただろう。
 島に渡る、という単純な理由だけに留まらず島の探索でも『空から』という選択は今回の依頼では最大の効果を発揮してくれていた。
 
 また、第3班のソフィアがバイブレーションセンサーとグリーンワードを併用してマッピングを担当していたおかげで地上組もある程度の情報を得ることが出来ていた。
 生物は少なからずいる。だが、大型の生物は少ないようで、ほとんどいないようだ。初期捜査では、巨人の集落などがあるような気配はなかった。
 島の木々たちもシャルグやファングなどの『ジャイアント』の存在をほとんど認識していないようである。
「不思議な島ですね‥‥」
 まるで封印された聖域のような、空気の違う空間に放り込まれた感覚に、酔いそうになる。
「剣の噂が故意に流されたものである可能性もあるよね。ここに踏み込まれたくない誰かが、そうやって不可侵にしたっていう」
 エイジスも島に上陸してなお警戒を強めていた。
「伝説という以上、言い出した奴がいるはずだが‥‥」
 誰が伝説の剣の噂を村に流したのか、そして、何故それが定着したのか。

 第1班のファング・暁組も、マッピング担当が土地勘の強いファングが担当していたおかげか、他の組よりはスローペースながらも着実に捜索を進めることが出来ていた。
 人数が少ない分暁も気を張り詰めなくてはなかったが、本物の阿修羅の剣であればどれほどのものか興味がある。まだ本物と決まっている訳では無いが、多少の期待も感じずにはいられなかった。

「‥‥巨人どころか、人の気配がほとんどしないな‥‥」
 オルステッドは島の木々たちの様子を肌に感じながら先を進むシャルグを追う。
「だが、今住んでなくともかつて住んでいたと考えれば、剣を捜索する価値は十分あろう?」
 目的はあくまでも剣の探索であり、島の住人を確認する事ではない。
 シャルグの言う事はもっともである。
 少なくとも、人工的な形跡が皆無という訳ではなさそうである事は、空からの調査を進めていたフランカも確認していた。
「本物の阿修羅の剣であれば尚の事、最終的にカオス戦に役に立つ物なら持ち帰りたいところですね」
「そうだな‥‥ジャイアントすら恐れるという伝説の剣か‥‥強大な魔力が込められているのかも知れないな」

●平原と卵
 それを発見したのは、島の北側から捜索を進めていた第3班だった。
「‥‥卵? という事は、少なくともこの卵の親がいるって事だよな」
 陸奥がやけに巨大な卵を発見したが、普段は見かけないほどの大きさを持つ殻を持つ卵から、その場の全員が緊張した。
「何人分のたまご焼きができるんでしょうねぇ〜?」
「美味しいかな?」
「喰うのかよ!」
「それより、親が卵を守る為に襲い掛かってくるかも知れないね。警戒を怠らないようにしよう」
 ソフィアとエイジスのダブルボケに陸奥が突っ込む形でショートコントを繰り広げる三人だが、エイジスが周囲の警戒を強める。
 回りは森から切り離されたような平原になっていて、剥き出しの岩場なども見える。過去、この場所に人――或いは巨人――が住んでいた可能性がある。だが、今はそういった形跡も残されてはいなかった。
 もしこの平原で巨人が暮らしているとしたら、近くに伝説の剣が隠されているかも知れない。
 だが――。

「おいおい‥‥マジで来ちまったぜ、お父さんお母さんお兄ちゃんお姉ちゃんとぞろぞろと雁首揃えて‥‥ッ!」
 まさにイレギュラー。
 ――しかもかなりの悪い状況が突発的に展開してしまう。
 陸奥は突如現れたそれに、戦慄を覚える。
 そこに現れたのは、小型だが素早さと狂暴さが厄介な野生の恐獣四体だった!
「離れた方がよさそうです! 距離を取ればもしかしたら卵を守る為に追ってこないかも知れませんから」
 ソフィアの機転で、最大最悪の状況がどこまで回避できるのか――。
 運が良かったのか、卵を守る為だったのか。異様な緊張感の中、四体の恐獣はそれ以上踏み込むようなそぶりは見せなかった。
 空飛ぶ絨毯やフライングブルームなどを使って、上空に逃げる方法もあったがぎりぎり最悪の事態を招かずに済んだのだった。
「これ以上この付近を探索するのは難しいかも知れないね。先を急いで、早めに合流しておきたいところだよ」
 エイジスも内心、かなり動揺していた。
「ああ、無駄な争いは避けたかったし、これ以上あいつらも追ってこないなら、その方が好都合だ」

 だが、平原を好む恐獣がなぜこんな森の中――といっても、島の中だが――に暮らしているのだろうか?
 もしかすると、シャルグの言うとおり、過去この島には確かに巨人が暮らしていたが、何か別の理由があっていなくなってしまったのかも知れない。
 例えば、第3班が発見したように恐獣に襲われ、この島から住人が離れた、とか。
 何にしても、仮説にすぎない。
 結局3班は平原の調査を諦め、やや捜索範囲を切り詰める形で絞り込みする事にしたのだった。

●みつけて、伝説の剣
 島の中央に近付くにつれて、所々で人工物の形跡を発見する比率が多くなってきていた。
 だが、一向に人気は感じられない。やはり、既に巨人はこの島に暮らしていないのだろうか?
 偶然ルートが重なって合流した第1班と第2班はそのまま島の中央を目指し突き進む。

 島の中央には大きくえぐられたような凹地形が広がっていた。その更に中央に亀裂があり、そこから突き出るように岩が盛り上がっていた。いや、見方によっては、大きな岩が『突き刺さって』いるようにも見える。
「まさか、この岩が『伝説の剣』という訳では‥‥ないよね」
 エイジスは岩を見上げながら、苦笑いをしてみせる。フランカも短い嘆息を洩らしながら、ようやく羽を休めて地上に降りてきた。
「確かにこれだけ大きな岩が『突き刺さって』いれば、巨人も恐れをなすかもしれないけど‥‥」
「‥‥魔力は感じられない‥‥」
 どうやら、島の中央まで探索を終えても巨人と剣の行方は確定する事が出来なかった。
 残りは、まだ合流していない第3班の到着を待ち、互いの情報を交換して整理する位だろうか。
 道中、毒を持つ蛇が数体彼らを襲ったが、殺さず振り払うようにして遠ざけた事などを話して、ほぼ二日半の日程をあっという間に消化してしまった。

 他に危険な動植物は見受けられず、亜人間種も発見することが出来なかった。
 村の形跡もあるにはあったが、すでに廃墟と化し、しかもそれもかなり風化した状態で自然の一部になっていた。
 当然剣の捜索もしたが、魔力を放つ感覚もなく、剣どころか金属の一部すら発見するに至らなかったのである。
 三日目の正午前になってようやく第3班が合流し平原の恐獣の情報が冒険者にもたらされたものの、伝説の剣の発見までには至らずじまい。やはり、阿修羅の剣はこの島にはなかったのだろうという結論を、ギルドに持ち帰るしかないのだろうか?

 それにしても――この中央盆地の岩場――あまりにも不自然である。
 こんな巨大な岩が縦に突き抜けるように盛り上がるものなのだろうか?
 或いは本当に『突き刺さって』いるのかも知れないが、だったら、誰がどうやって『突きたてた』のだろうか?
 そんな事が人間に出来るのだろうか?
 まるで天界から強大な岩の形をした剣がメイの大地に突き刺さったかのような神秘的な光景を前に、冒険者たちは圧倒される。
 奇跡にも似た不思議な岩を、古代の人々は『天からもたらされた神聖なもの』と考えてもおかしくはない。
 それは古代の人間から見ると、巨人すら恐れるほどの巨大な戒めの剣にも見えたのかもしれない。

 不思議な岩が守り神となった、かつて巨人が住んでいたという『巨人島』の捜索は、こうして終了したのである。