『闇』の鎖、残された希望

■ショートシナリオ


担当:なちか。

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 98 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月23日〜06月28日

リプレイ公開日:2007年06月25日

●オープニング

●残された最後の――希望の欠片――ピース。
 闘技場襲撃事件の犯人グループとみられるカオスニアンの生き残り二体とその関係者と思われる冒険者二名。
 追跡任務は失敗し、『シルキー・ジョーンズ』と『ミス・シュガー』両二名はカオスニアンによって殺害された事がメイディアの官憲らに報告された。
 しかしその際戦闘痕があり、闘技場襲撃事件の犯人二名のうち、一名は冒険者の刃にかかり死亡している事が判明した。

 結局事件を知る手がかりをもった二名の冒険者の命は奪われ、闇の鎖に残された大きな謎は解ける事無く終えてしまうのだろうか?
 捜索チームが一足遅く到着して冒険者らの遺体を発見、回収したが、やはり手がかりとなるものは残されてはいなかった。
 唯一残された問題といえば、闘技場襲撃事件の犯人グループは三体のカオスニアンであった事。
 そして、そのうち一体は闘技場襲撃事件当日に死亡しており、前回の追跡任務において、一体の死亡が確認されている。
 つまり、もう一体はどこかで、まだ、生きている可能性があるという事だ。

 事件はまだ――全て終わってはいない。

 メイディアを震わせた前代未聞の事件を解決に導く為、最後の手がかりとなるカオスニアンを見つけ出し、事件の真相を明かす事が今回の任務となる。

●ジェットストリーム三人娘。
 ここまでで、判明したカオスニアンの情報を整理してみよう。
 闘技場を襲った三体のうち、メイディアでは滅多にというか恐らくメイの弓工技術では作ることの出来ない(可能性の高い)X字形状のコンポジットコンパウンドボウを持っていた『マーシュ』と呼ばれた女性のカオスニアン。
 彼女はかなりの弓の使い手で、当時その戦闘を目の当たりにした目撃者情報によると達人級だったのではないか? と言われるほどの名手だったようだ。
 そのマーシュは闘技場襲撃事件の際、鎮圧部隊によって死亡している。残念な事に、この時、マーシュは死亡したが、証拠品となる弓は残されたカオスニアンによって持ち去られた事が明らかになっている。

 偽名の冒険者二名の保護の為組まれた追跡任務において、発見されたのは『オルティ』と呼ばれた女性のカオスニアンだった。
 当時の事件の目撃者情報によると、盾と武器が一緒になったような攻防一体の装備を駆使して戦うスタイルの女戦士だったらしい。
 マーシュが弓で攻撃する時は援護に回り、リーダーが攻め込めばそれをサポートするという中衛の要として機能していたという。
 彼女が死んでいた場所からほとんど離れていない場所でエイリアス二名が死亡しているのを確認している。

 そして――。
 最後の生き残りにして三人組のリーダー格の女戦士が『ジーナ』とよばれる女性のカオスニアンだ。
 彼女の戦闘力は相当で、当時対峙していた鎮圧部隊も舌を巻くほどの強敵だったという。目撃情報からは彼女の扱う武器もまたやや特殊なもので、剣と斧が混ぜ合わさったような武器だったという。
 情報を整理してみると、それはおそらくワンハンドハルバードと呼ばれるものだったのではないか? との事だが、それを二刀流にしていたというのも追加情報として整理しておこう。
 戦い方からすると、そのワンハンドハルバードのような武器を斧というより鉤爪のように引っ掛けたり、その反対側にある突起した部分で突き刺したり、剣の部分で斬ったり突いたりとまるでセオリーがないみたいに一見めちゃめちゃなパワースタイルに見えて、予想がつかない大胆な戦法を得意としていたらしい。
 そして、やはりリーダーらしく、その統率力とコンビネーションの合わせ方はかなりのものだったという。

『トリプラー』と呼ばれる三位一体のコンビネーション攻撃は強力で、この攻撃で次々と闘技場参加者を叩きのめしていったが、弓のマーシュを失ってから、彼女たちがこの攻撃を使ったかどうかは不明である。

●迫られた二つの選択。
 今回は最後の生き残りであるカオスニアン、『ジーナ』の確保が任務となる。
 サミアド砂漠に逃げられてしまえばその足取りを追うのはかなりの困難となるが、どうやら逃走ルートは砂漠地帯の横断ではなく、その北側にある山脈の麓をつたって逃げているという。
 どちらにしても、リザベの国境付近を突っ切る事になるだろう事は容易に予想できる。だが、あれだけの事件を起こし、そして執念ともいえる追跡劇を演じ、それでも生き残っている強運と実力の持ち主である。
 連戦によって相当疲弊しているであろうジーナだが、簡単に捕まえる事が出来るか、と問われれば‥‥たった一人ではあるが、イージーな仕事ではないと思われる。

 そこで、彼女たちの得意な『罠』を逆に利用して迎撃作戦を立てる事になった。
 彼女の逃走ルートは最後の情報からすると、危険なルートだが味方の多いリザベ国境を強引に抜けるルートと、やや遠回りで見付かりにくいセルナー領をシーハリオンの丘にある――『嵐の壁』の――懐を抜けながら半時計回りにカオスの地へと抜けるルートのどちらかを使うと見られていた。
『嵐の壁』の――ある種の結界じみた――謎の現象を隠れ蓑にする、なんて事は、なかなか思いつかない戦法で彼女がいかにも選択しそうな予測ルートだが、彼女の目指す最短コースであるリザベ領国境を抜ける強行策はリスクも大きいがリターンも大きい。
 彼女は裏の裏をかいて、こちらを選択する可能性もある。
 迎撃作戦に参加する冒険者たちは、そして、この大きな二択を迫られたのである。

 今回はどちらかの逃亡ルートに先回りして、迎え撃つ方式を採用するが、どちらを選ぶかは冒険者らが決定する。
 今回冒険者が選択するルートが『外れ』た場合、高い確率でジーナはカオスの地へと逃亡してしまう可能性がある。そうなれば、悪夢の闘技場襲撃事件の真相は完全に『闇』に閉ざされる事になってしまうだろう。
 配備条件的にみて、どちらかのルートをリザベ或いはセルナーの国境警備隊らの協力をあおぐ必要があるかも知れないが、ハズレなら突破されるかも知れない。
 ジーナのクセを見抜き、二択のルートを引き当て、どのように対処するかが今回の任務の重要なポイントになる。

●今回の参加者

 ea0447 クウェル・グッドウェザー(30歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea2449 オルステッド・ブライオン(23歳・♂・ファイター・エルフ・フランク王国)
 ea6382 イェーガー・ラタイン(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea7482 ファング・ダイモス(36歳・♂・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 ea8594 ルメリア・アドミナル(38歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 eb4322 グレナム・ファルゲン(36歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)

●リプレイ本文

「‥‥ふ、私の命もここで潰える‥‥か。それも面白い」
 口元に薄っすらと笑みを浮かべながら木陰で呼吸を整える、黒い肌の女性。自分達の役目を終え、後には何も残らなかった。
 彼女の人生は、全て復讐の為に費やされてきたからだ。
「奴らに一矢報いた。それだけで充分だな‥‥」
 短い休憩を終えたジーナは、歯を食いしばるようにして立ち上がり、ゆっくりと歩き出した――。

●『闇』の鎖、最終決戦!
 選ばれた冒険者たちは、最終決戦の地にセルナールートを選択した。
 ジーナの逃亡経路はシーハリオンの丘を囲むように発生している『嵐の壁』を隠れ蓑に、迂回するルートだと踏んだのだ。
 答えは間もなく明かされるが、もしそれが正解でなかったとしてもクウェル・グッドウェザー(ea0447)やルメリア・アドミナル(ea8594)らはもう一方の逃走経路と思われるリザベ国境警備隊に事前に連絡を入れ、警備強化と周辺捜索などの協力を要請してある。
 もしそちらに逃れられたとしたら、一応のフォローはされるだろうが、完璧ではないだろう。不安は募る。
 そもそも、彼女だけでなく主犯の彼女たち三名を確実に捕らえる事が出来なかった事に原因があった。だがその責任は誰が取るという訳ではない。特に今回の依頼に参加した冒険者たちにももちろん、実質的な責任はない。
 それでも、どうにもすっきりしない事件だった。
「捕獲して尋問、か。しかしまあ、襲撃の理由も大事だがメイディア侵入の方法を問いただしたいところだ」
 トラップを自作しながらオルステッド・ブライオン(ea2449)は事件の発端にも留意していた。彼の言うとおり、あの未曾有の強襲事件はメイディアの防衛機能を嘲笑うかのように発生した大問題だったからだ。
 また、イェーガー・ラタイン(ea6382)も関連資料を繰り返し頭に叩き込みながらもその捕獲の難しさを思い知らされる。噂通りならば、決して一筋縄ではいかない事は容易に知れていたからだ。
「闘技場襲撃と言う、大胆不敵な行動をやらかした女カオスニアンか。面白い、このまま逃すのも、誰かの手に掛けられるのも望まない。その腕前を確かめてみたい所だぜ」
 胸の奥がぐっと熱くなるのを感じ、不敵な笑みを浮かべるファング・ダイモス(ea7482)。いくら疲弊している可能性があったとしてもあれだけの事を平然とやってのけたカオスニアンだ。ガス・クドやネイ・ネイといった『有名どころ』の様に名声こそ広くないものの、退けを取らない実力者だという認識は、間違いではなさそうである。
「カオスニアンとはウィルでも聞いた事が有るが、此処まで大胆な事を起こす娘等知らないのである。このリスクを犯してでも行おうとした事は何か、気になるのである」
 闘技場襲撃事件から噂は聞いていたグレナム・ファルゲン(eb4322)はいよいよ事件の解決に迫るであろうこの依頼に妙な感触を抱いていた。
 事の顛末を自らの目で見届けたいという気持ちは、それだけで充分にこの依頼を受ける資格があるという事なのだろう。それが自負ともなっているのだから。

 カオスニアンにも、頭の使える奴がいる。それはメイの国でも悪名高い『彼ら』のような者が度々現れる事でもわかるように、間違いない事実である。勿論、頭がいいというだけではなく、腕にも相当の自信があるからこそ大胆な行動も結果を残せるのだ。
「彼女程の戦闘能力が有り、苦境に耐ええる人材は惜しいですわね、可能なら、アートルガン懲罰隊に加えたい所ですわ」
 カオスニアンに――罪を償う――心があるのならば、という意味で、ルメリアはジーナの『個』の戦闘力と強靭な精神力を買っているようだった。
 味方になればこれ以上ない心強い仲間だろうが、あの事件を見る状況において予断を許さぬ強敵であるのは想像に難しくない。
 捕縛し、説得交渉が出来るなら――或いは条件次第で――連れ帰る事が重要な今作戦の中に、『最後の希望』が残されているなら。

●嵐の壁をぶち破れ!
 シーハリオンの丘にはまだまだ謎が多い。そもそもその内部に侵入する事は不可能とまで言われている。
 もし仮に可能だったとしても、今度は出られない可能性が残っている。どちらにしても、深い謎のヴェールに包まれているのだけは確かだった。
 その謎の一つが、シーハリオンの丘を囲むように発生する『嵐の壁』だ。
 どうやって発生しているのか。
 その発生原因すら掴めない異常現象だが、噂によると怒れる風の精が聖域を拒むように強烈な咆哮をあげているからだとか、嵐の壁の中には風を司るドラゴンがいて飛び回っているのだとか、とにかくその真相は未だ明らかにされてはない。
 ただ一つ言える事は、いくらカオスニアンでも、絶対にここを直進しては行けないだろうという事だけだった。それだけ異様な空間なのだ。もちろん、冒険者たちだってこれ以上は近付く事は出来ない。
 逃げる側からすると、こんなに適した場所は無い位に完璧な混沌だ。
 冒険者たちは罠を用意し、誘導するようにベストポジションに誘い込むという方法を取る。残りは優良視力やブレスセンサーなどでカバーしていくつもりだ。
 果たして、本当にこちら側が『正解』なのだろうか――。

「敢えて見付かりやすいリザベを陽動に使ったが、く、まさかこんな場所にまで先回りされているとはね」
 ここまでは、何とか彼女の想定範囲内。ジーナの作戦は、やはり、『嵐の壁』突破ルートだった!
 ここからは、冒険者ら追撃班とジーナの読みあいが勝負となる。
 だが――。
「な!? くそ、しくじった。『向こう』にもここまで精巧なトラップを仕掛けられる奴がいたとは‥‥気付かれた可能性が高いな」
 いつもなら、絶対に気付けるような罠の存在。しかしここに来て疲れと痛みとが注意力をも削ぎ落としていた。

 そして、その様子を上空から見下ろしていたのは、クウェルの友マチだった。
 マチの異変に気付いたのは、ちょうど交代時期に差し掛かっていたクウェルやルメリアたち。
 すぐさまブレスセンサーを発動させたルメリアは、恐らく『それ』が目的のカオスニアンである可能性が高い事を知る。
 しかし、この不規則な呼吸は何だろうか? 動きも噂とは程遠い。やはり、傷付いているのだろうか?
 それとも、彼女の特殊な呼吸法なのか。
 どちらにしても、ジーナはすぐそこまで迫ってきていた!
「ここで逃すわけにはいきません。全力で逃亡を阻止しましょう」
 クウェルは嵐の壁の奥に潜む影を見つめながら、ゆっくりと剣を引き抜いた。
「お手並み拝見といきますか」
 ファングたちも覚悟を決める。一気に張り詰めた緊張感の中に突入していく冒険者たち。

●決着の刻。
 ギラギラとした敵意剥き出しの瞳。異様な雰囲気を醸し出す全身に刻み込まれた呪文のような刺青(タトゥー)。傷付きながらもなおそれを感じさせない闘志。
「こんな所にまでお出迎えがやってくるとはね。退け、貴様らに用はない」
「そっちにゃなくても、俺たちには大アリでね! そうか。あんたがジーナか、俺はファング、悪いが捕えさせて貰うぜ!」
 見たところ、確かに単身である。大掛かりなトラップも仕込まれていなさそうだった。
 既に満身創痍といった所なのだろうか、今なら、或いは交渉に応じてくれるかも知れない――ルメリアは剣を収めるように言いながら、ゆっくりと確かめるように問いかけはじめる。

「‥‥全ては終わった。あの忌々しい人間共を叩き潰した事でな!」
 闘技場襲撃事件には幾つかの不明な件があった。そのうちの一つが、偽名の冒険者の行方不明事件だった。
 実は死亡した偽名の冒険者二名はジーナたち三姉妹の両親を殺した冒険者グループの最後の生き残りだったというのだ。その敵討ちを果す為に彼女たちは国家を揺るがす大事件を巻き起こしたのである。
 真偽のほどはわからない。だが、結果的にはジーナは妹たちを失いながらも目的を果したのである。
 しかも敵の冒険者たちはどうやら彼女の言葉から推測するとどこかの国からバの国に渡ってきた人間だったらしい。それがメイなのか天界からなのかは今となっては不明だが、ともかくそこで小競り合いがあり、その刃に伏したのがジーナたちの両親だったという訳だ。
 自分達の居場所を踏みにじられて黙っているほどカオスニアンは大人しい種族ではない。
 当然、応戦し、しかしそれでも圧倒され、遂には全滅した。
 その時、まだ小さかった彼女たちは戦う武器すらなく、ただ悔しさと憎しみだけが充ちていた。
「必ずあの時の人間どもを殺す、その為だけに我々は生き延びてきたのだ。そして、奴らは、この国にいる事を知った‥‥」
「親の‥‥敵討ち‥‥」
「全部で六人。最後の二人には相当てこずったが、それももう終わった。何もかも、終わったんだ」
「違う! そんな事では何も終わりませんわ!」
「何が違うというのだ! それとも人間は親を殺されても何も思わない種族なのか! 我々は違う、どんな事をしてでも必ず討つ!」
「そ、それは‥‥」
「言っただろう、もうこの国になど用はない」
「あなたは、これからどうするおつもりですか」
「お前らには関係のない事だ。邪魔をするなら、容赦はしない。もう一度だけ言うぞ‥‥退け」
「‥‥退きませんわ」
「だったら――!!」

●終焉――顛末。
 朦朧とした意識の中で、それでも夢中で振り回した。
「あと、少し‥‥ですのに」
 六対一という圧倒的な戦力にも関わらず、嵐の壁を見上げながらの激闘は、かくして二時間以上の長期戦となっていた。
 元から体力のないルメリアは魔力を残しながらも思わず膝をついてしまう。一体、このカオスニアンの体にあとどれ位の体力が残されているのだろう? 疲れを知らない機械人形のような正確さとタフさに舌を巻く。
 それでもやはり連戦に次ぐ連戦――しかもそのどれもが乱戦だったが――にジーナも既に限界を越えているようだった。

「もう、終わりか‥‥ジーナ!」
 正直、正面からぶつかって戦ってここまで相手が倒れなかったのは、初めてだったかも知れない。
 ファングは真剣勝負で『充実』したのは、久々だった。
 命のやり取りで、満足する戦いなんてのはそうそうお目にかかれない――。
 イェーガーも携帯していた矢を撃ちつくしてもなお立っている敵を前に、戦慄を覚えながらも、全身から感じる『何か』に心が震えて止まらなかった。バックパックに伸ばす手も僅かに震えている。
 何度かコンビネーションアタックを仕掛けたものの、やはりジーナにはその攻略法が体に染み付いているのかほぼ無効化されてしまっていたオルステッドやグレナムたち。オールラウンダーという存在は彼らにとっても自己の戦い方を見直させるに充分なほどだ。
 ――その戦いに終止符を打ったのは。
「まさか、ここまで何もさせてもらえないとは思いませんでした」
 クウェルは愛馬カルネアデスから降りると長い嘆息を吐いた。
 最後の最後で一瞬足を止めたジーナをクウェルのコアギュレイトが捕捉したのだ。
 その瞬間、もう自分の舌を噛み切るほどの余力が残っていない事を悟っていたのだろうか。それとも、もう既に意識が完全に飛んでしまっていたのか。ジーナはその場で膝を落とし、前のめりに突っ伏した。
 
 その後数日間泥のように眠り続けたジーナは冒険者たちによってメイディアに連れ帰られた。
 もちろん自害しないようにしっかりと処置を施して。
 闘技場襲撃事件の犯人であり、その主犯であるカオスニアンを捕獲できた事は大きな功績となった。いや、それ以上に――。
 この戦いを通じて、六人の冒険者はレベルとはまた違った意味でジーナに引き上げられるようにして一歩大きく前進した事を実感する。
 混乱を演出し続けて来た彼女が見せた、真正面からのぶつかり合い。それでも譲らない不屈の闘志。
 こんな戦い方も出来るのに、どうして――。

 このまま彼女は重要事件の犯人として死刑に処されてしまうのだろうか?
 目的を果した彼女にとって、自分の命などどうという事はない筈である。
 むしろ望んでいる節があったからだ。
 ならば、死刑を彼女に与えても、償いにはならない。
 ルメリアも事情を聞いた一人であったし、当初から考えていた事もあり、意見書をギルドと王宮側に送ることにしていた。
 ジーナがどう処分されるのかは、これからしばらくの協議が必要になってくるだろう。

 ともあれ、首謀者の逮捕が成功した事で長かった闘技場襲撃事件は一先ずこれにて解決を見た。
 ――『闇』の鎖の真実は。
 これからようやく、ゆっくりとだが。

 解かれていく事となる――。