燃える街の謎を追え!
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■ショートシナリオ
担当:なちか。
対応レベル:8〜14lv
難易度:普通
成功報酬:4 G 15 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月08日〜11月13日
リプレイ公開日:2006年11月09日
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●オープニング
●メイの国の隠れた観光名所のひとつとしてあげられるものといえば、やはりここしかないだろう。
その名も『ねこ屋敷』名前の通り、屋敷中を埋め尽くさんばかりの猫たちが暮らしている癒しのスポットだ。
のんびりお昼寝する猫。元気に走りまわる猫。じゃれあって転げまわっている猫。
猫・猫・猫。
四方を見回して猫の姿が見えないところなどまったくといってないような猫だらけの屋敷である。そんな猫好きにはたまらない名所中の名所が、ねこ屋敷だ。
ちなみに入場料は募金制度となっており、基本無料。手続きを踏まえれば正式登録してある猫を引き取れるという制度もある。
屋敷の猫たちのほとんどは雑種であるが、別館として血統書付きの猫たちの部屋がある。
その名所ねこ屋敷が先日、不審火により一部が焼け落ちてしまった。そして、その影響で大量にいた猫たちはそこから逃げ出してしまったのだから大変だ。
今回はその不審火の原因と、逃げ出してしまった猫たちを回収するのが目的となる。ついでに今回は屋敷内の猫だけでなく、野良の猫も同時に回収する依頼を加えておく事とする。
ねこ屋敷の猫たちは特別な首輪をしており、すぐに他の猫たちと区別出来るだろうから発見次第回収の事。
特別な――と言ってもねこ屋敷オリジナルデザインの首輪という程度で、登録の関係上、シリアルナンバーが刻印されている。
逃げ出した猫の数は現在確認されているだけで四十二匹。
まずは正式登録されているねこ屋敷の猫たちを優先的に回収してほしい。
また、首輪のない野良も発見次第回収してもらいたい。こちらは追加的に登録する猫たちになるので、多少後回しになっても構わない。
それから火事の原因だが、最近妙に不審火が多発しており放火の疑いもあり、それについても調査してもらいたい。
単に不注意からの火事なのか、火の気のない所からの出火だったのか。
ねこ屋敷の火事と同日に他二件。計三件の不審火の報告が来ているが、その関連性はあるのか。
一週間の間に十二件の同様の報告がある事から同一人物、或いは複数犯による放火の可能性もあるが、これはあくまでも可能性であり、はっきりした事はこれからの調査報告に期待する。
対策本部を設置し、本部長として任命されたのは先日地方から栄転してきたアーケチという官憲だ。彼は冒険者ギルドに協力要請を出し、捜索の協力を求めた。
そんなアーケチと共に二つの事件とそれに関わる捜査を行う。
「しかし、この街の治安はどうなっているんだ‥‥」
思わず呟いてしまったアーケチだったが、その治安を守るのは彼自身なのだ。
しかしながら、さすがに一官憲がただの猫探しというのも情けない。が、一方で放火の可能性も否定できない以上は無視する事は出来ない。
まったく頭の痛い話である。
●リプレイ本文
街の癒しスポットへの市民の結束は固かった。
『ねこ屋敷』から逃げ出してしまった猫たちの情報は、冒険者ギルドに依頼を出している頃から既に自主的に発見・回収をしているボランティアの人々が少なからずいたというのだから、それだけ愛されていると言っても過言ではないのだろう。
猫たちは屋敷のすぐ近くに戻ってきていたり、市民に拾われて連絡を受けたねこ屋敷の世話係が回収に向かったりして比較的早い段階で約半分の十九匹を回収出来ていた。
残りは、二十三匹! 空からぐるりと見回るティス・カマーラ(eb7898)や柴原 歩美(eb8490)の月の聖霊の力は猫たちの捜索だけでなく、不審火の被害を受けたと言われる場所のことごとくを見つけ出す事に発揮された。
どうやら、不審火の被害は一番最初の被害から数えて、徐々に北側へと移動してきている。正確には、南東から北西へとほぼ一直線のルートを辿って起こっている事がこれにより明らかになった。
「何だかこれならすぐに次の被害やルートを把握できそうですね」
田原 太一(eb8436)は単純そうな、だが計画的な不審火報告の履歴を見直しながら嘆息する。
「そう単純じゃないな。それならすぐに疑わしい人物や、不審者の影を聞くだろう? だが、今回に限ってはこんなに多くの被害報告が上ってきているのにも関わらず、放火の可能性をもった容疑者のひとりも出てはきていないんだ」
アーケチも昼夜を問わず奔走し、その報告をまとめながらも最大の疑問点に頭を抱えていた。
夜間の担当はアルミラ・ラフォーレイ(eb7854)シルビア・オルテーンシア(eb8174)の鎧騎士組だ。
「女性同士だと、なんだか気兼ねが無くていいですね」
「そうね、遠慮なく動けると思うわ」
女性同士とはいえ、二人ともが戦いの道を選んだ者たちだ。何かあればすぐに動ける瞬発力を持ち合わせているのだ、夜更かしはお肌に悪いなんて事を笑い話にしながらも二人の目は警戒を怠らない。
少しの違和感も見逃さない、これが戦いの中で生きる為のスキルだと二人は体に覚え込ませている。
「‥‥あら、あの人たちは?」
シルビアの視線の先に、夜の闇の中に溶けていく人影を発見した。暗黙の了解でふたりはその影に近づいてゆく。
「こんなにも早く見付かるとはね。少し様子を見てみましょう、実行犯で捕まえることが出来るかもしれないし」
アルミラも同様、その影を視界に捉えた。
今のところ怪しい動きは見えないが、こんな夜更けに何をしているのだろうか。
そんな中、何と人影は徐々に一人から二人、三人と増えていった! やはり複数犯だったのだろうか。
二人は息を飲み、その様子を伺う。
「これは厄介な事になりそうね‥‥一度戻って応援を呼んだ方がいいかも知れないわ」
「しかし、その間に彼らが行動を起こすかも知れません。ここは更に増える前に、何とかしておきたいですね」
二人は目で合図を取ると、みっつの人影に向かって一気に間合いを詰めた!
「ひい、ふう、みい、よ‥‥結構戻ってきましたね! アケチーさん」
「登録された猫たちのほとんどは君達のおかげで回収されたようだな。だが、依然戻ってこない猫たちもいるようだ。市民の協力も得て、更に捜索の範囲を広げているところだがね」
丸一日をかけただけで、十四匹の猫が回収された。残りは、九匹!
その報告と状況検討を兼ねて集まっていた田原、柴原、ティスの三名はおなかを空かせたのかにゃあにゃあと可愛らしい声をあげる猫たちに囲まれ、思わず顔をほころばせていた。
その時、柴原はふと不思議な顔をして、猫たちの言葉に耳を傾けていた。
「‥‥ん? なに、『ふわふわ、めらめら、燃えてるとかげがいたよ』? そりゃどういう事だい」
柴原は猫たちの声を感情で受け止める。はっきりとは言葉になっていないが、絵本の挿絵のようなイメージが感覚として聞こえてくるのだ。
――燃えているとかげとは、一体なんなのか。
「こ、これは失礼しました!」
アルミラとシルビアはぺこぺこと頭を下げながら、頭に大きなコブをつくって苦笑している三人と収集された三人。計六名の正規騎士団員達に平謝りしていた。
「まさか、メイの国が直々に動いているとは思わなかったもので」
「そうだろうな、これは極秘任務でね。君達には誤解を生んでしまって申し訳なく思う」
「い、いえいえあたしたちこそ‥‥」
苦笑する他、ほかになかった。彼らは容疑者ではなく、むしろ真犯人を追う立場の人間だったらしい。
猫探しよりも先に、あっさりと不審火の犯人は確定された。
彼らと共に犯人確保の為向かった先は、何と、アトランティスに数匹いるかどうかという超希少なベビィサラマンダーが傷を追って疲れて眠っている場所だったのだ。
本来、知性ある精霊種はめったな事では人間に干渉しようとはしない。
だがこのサラマンダーの子も、自らの命の危機を前に、隠れ蓑として高い壁や死角の多くなる街中を必死の思いで逃げ延びて来たのだ。
その情報をいち早く掴んだ国の上層部は秘密裏にこれを保護、傷を癒し、誰に知られる事なくベビィサラマンダーを脱出させようとチームを組ませ極秘で街を巡回させていたのだった。
傷ついたベビィサラマンダーは街を隠れ蓑にしていたが、何せ入り組んだ街の作りだ。途中で迷ってしまい、更にその生態のせいで火災が発生。そして、驚いたベビィサラマンダーはその場から転々と逃げ回ってしまったのだ。
「どうりで犯人が見付からない訳よね」
「まさかこの子が、火事を起こしていたなんて誰もわからないわ」
二人は思わず顔を見合わせてしまう。
はたして二人の見守る前でベビィサラマンダーは無事保護された。
他言無用という事で、二人はその後アーケチたちのいる対策本部へと帰還したのだった。
三日後、ぱったりと不審火の報告が途絶えたまま『ねこ屋敷』に登録されていた猫たちすべてを無事回収する事に成功。
その後も結局犯人不明のまま、一連の不審火事件は迷宮入りとなり捜査は打ち切られた。(アーケチには捜査を中断するよう国から通達が来たらしい)
野良猫たちも市民の協力により、十数匹が回収されたという。
ねこ屋敷はその後、改装し、リニューアルオープン。多くの市民が招待された。
もちろん協力に応じた冒険者たちも招待され、存分にもふりまくった事が確認されている。
「ああ ねんがんの もふりまくり ですわ」
シルビアは細長い耳を嬉しそうに震わせながら、猫たちの中に突入していった。
「結局、犯人みつからなかったけど、よかったのかな?」
ティスの素朴な疑問に、アルミラとシルビアは微妙な笑顔で答えるしかなかったようだったが。
「まあ、猫たちも元気で戻ってきて万々歳じゃないのさ! 個人的には燃えてるトカゲってのが何なのかもう少し調べたかったけどね」
「そんなファンタジー系のゲームじゃないんですから。とはいえ、異世界ですからね、燃えてるトカゲっていうのがいても不思議じゃないですけど」
そんな言葉に、またもやどきりとさせられるアルミラとシルビアの二人。
どうやら関わってはいけない問題に立ち会ってしまったみたいにして、それでも、このねこ屋敷と街の平和と安全を守った達成感は人一倍得ることが出来た。
『ねこ屋敷』からの依頼である猫の回収を完遂させた事で、冒険者への依頼は成功を得る事となった。
アーケチからも捜査の協力をしれくれた冒険者たちに感謝の意を述べる。
「事件は一応の解決を見たと思ってくれて間違いない。猫たちも無事回収できたし、君達にはとても感謝しているよ、ありがとう。これにて捜査本部は解散だ。皆、お疲れ様! これからも一人の冒険者としての道を立派に歩いてほしい。君達ならば、それが出来ると信じているよ」
これにて、冒険者たちはギルドへの報告を持ち帰る事となる。