ウタウタイの弓

■ショートシナリオ


担当:なちか。

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:6人

サポート参加人数:4人

冒険期間:08月12日〜08月17日

リプレイ公開日:2007年08月14日

●オープニング

●完成した、至宝。
 考古学者であり、吟遊詩人、そして復元師としての顔を持つ男ユニウス。
 彼が目指していたリュートベイルの復元はオーク材の入手とガット材の入手を経て、遂に、ほんの二台だけだが完成した。
 現時点では彼の手元にあるが、長く使いたいという者があらわれたら、譲る事も考えているという。

 それはともかく、今回はそんなユニから新しい依頼がもたらされたのである。
 一体どんな依頼か、というと――。

●和弓? 洋弓?
 リュートベイル製作の為に切り出したオーク木材のいくつかのパーツ群がちょうどよく弓にも使えそうな形状で残されていた事から、せっかくの木材を無駄にしない為にオークボウを復元しようという運びになったそうだ。
 しかし今回は少々変則的な復元で、弓に使われる木材こそオーク材だが、作りそのものはいわゆる和弓に挑戦したいと言うのである。
 一体どういう事か。
 元々、弓は天界でも紀元前から用いられてきた狩りの道具であるが、それらは各地に広まるにつれ形状などがどんどん変化していった。
 そして、どんどん独自化していくのである。

 今回はそのうちの一つ、ユニ特製の『梓弓(あずさゆみ、或いはあづさゆみ)』をメイの国で復元してしまおうという事なのだ。
 梓弓とは、文字通り神事などに使用されるアズサの木で作られた弓の事で、今回はその神木であるアズサから木材を同じ神木であるオークに変更して、ずばり。
『和製オークボウ』或いは『洋風梓弓』を製作しようという訳である。

●必要なものは――。
 ユニがこの梓弓を製作しようと思ったきっかけは、この神に捧げる弓が狩りや武器としてではなく、『魔除けに鳴らす弓(鳴弦)』として使用されたという、音楽の面から見ての歴史的な文献の再現を試みる事から始まっていた。
 現代のメイにもいくつか存在するハープ類も、元々は弓から生まれた楽器だという説も残されており、弓そのものを『鳴らす』という事で弦楽器が生まれたのではないかという説を証明するひとつの手段になるのでは? という事から来ていた。
 
 そこで今回は、本来、竹との複合弓(コンポジットボウ)である和弓の元祖である丸太弓に注目した。しかしそれでは飛距離も威力も出ない。元々和弓は耐久性がなく、深く引ききると弓が戻りにくいという性質があった。
 そこで遠くを射るには弓そのものを大弓にする必要があった。いわゆる長弓(ロングボウ)が一般的なのはそういう理由である。
 しかし目的は武器としてではなく、あくまでも儀式としての弓の再現。威力は別にして、鳴弦の音色はより近いものを甦らせたいものである。
 必然的に、弦そのものに注目せざるを得なかった。

 和弓に使われる弦は、『カラムシ』などの麻(正確には苧麻)である。後期には麻糸をよったものに『ウルシ』などを塗りこんだものを使っていたという。
 麻そのものは、カラムシはメイでは入手不能な為ラミーと呼ばれる麻で代用し、ウルシはブラックツリーの樹液で代用する事が適当であると判断された。

 ちょうどユニの村から北西側にいくと山林があり、そこで目的のものが採れそうである。
 しかし最近、その山林で不意に妙な物音がしたり、夜中にはうめき声のような声まで聞こえる事があるという。
 村人は怖がって近付かないようにと子供達に注意するほどであるから、よほどの事かも知れない。
 襲われたとか、怪物が出たといった情報はないが、奇妙な声が夜中に響き渡っているのは何件か確認されている。
 その正体が何かは不明だが、冒険者に調査兼任として採取してきてもらいたいというのが今回のユニの依頼だった。

●今回の参加者

 ea2449 オルステッド・ブライオン(23歳・♂・ファイター・エルフ・フランク王国)
 ea6382 イェーガー・ラタイン(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea8594 ルメリア・アドミナル(38歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea8773 ケヴィン・グレイヴ(28歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb3527 ルーク・マクレイ(41歳・♂・鎧騎士・人間・イギリス王国)
 eb9949 導 蛍石(29歳・♂・陰陽師・ハーフエルフ・華仙教大国)

●サポート参加者

イリア・アドミナル(ea2564)/ ファング・ダイモス(ea7482)/ シュタール・アイゼナッハ(ea9387)/ トシナミ・ヨル(eb6729

●リプレイ本文

●静かな夜と不穏な影。
「今度は楽器としての弓ですか。オーク材もいろいろ用途があるんですね」
「これが、メイで作られたリュートベイル、惚れ惚れしますわね」
 導 蛍石(eb9949)とルメリア・アドミナル(ea8594)は嘆息まじりにユニの復元したリュートベイルを眺める。
「芸術的にも価値の有る武具作り、そして、その武具で音楽を奏でるなど、素晴らしき試みですわ、是非協力致しますわ」
 そう。今回はリュートベイルに続き、またもや音楽からの視点で再現する弓作りを試みようというのである。
 だが、今回の依頼で気になる事がひとつある。それは夜な夜な響き渡るという噂があるというのだ。その調査を含めた形での依頼という訳なのだが‥‥。
「実はこんな事をいうのも何だが、僕は少々怖がりでね。そういうのは苦手な口なんだ」
 彼は臆病という訳ではないのだが繊細さが時として怖がりに映ってしまう事がある。苦笑いを浮かべる彼も、しかし冒険者たちの強い願いによって、結果的には同行する事になった。

 また、イェーガー・ラタイン(ea6382)とケヴィン・グレイヴ(ea8773)の二人のレンジャーは儀式用の弓とはいえ同じ弓使いとして強い興味を持っていた。楽器としての弓という近年稀に見る逆転の発想に、物作りとしての血が騒いだのかルーク・マクレイ(eb3527)もユニの弓作りの手伝いをしたいと願う。
「物を作り出せる事は羨ましいな」

●いざ、山林へ。
 ラミー麻とブラックツリーの樹液を得る為に山林へと足を踏み入れる冒険者たち。しかしオルステッド・ブライオン(ea2449)、ルークらのファイター組、レンジャーのイェーガー、ケヴィン組。そして魔法組であるルメリアと導。
 全員の能力をフルに活用して警戒したが不審な物音もうめき声も聞こえてこない。やはりただの噂話だったのだろうか?
「まだ朝だからね。そうそう、ブラックツリーの樹液の採取方法だけれど‥‥」
 ここでユニから冒険者らに注意事項がいくつか明かされる。
 植物知識のあるオルステッド、イェーガー、ルメリアと土地勘のあるケヴィンには多少おさらいになるかも知れないが、実はブラックツリーという樹木はウルシ科の樹木で、天界では実に600種も存在している一般的な落葉樹である。
 あまり知られていないかも知れないが、南国のフルーツである『マンゴー』も実はこのウルシ科の木の果実である。
そういう意味でも、ウルシ科のブラックツリーの樹液は非常にかぶれやすい為、充分な注意が必要なのである。
 特に樹液採取や精製、それに塗る時にも細心の注意が必要なのは言うまでも無い。
 痛みに耐えられる戦士である冒険者でも、痒みに耐え続けられる人間はそういない。耐えられずに掻いてしまうと更に事態は悪化するという非常に厄介な樹液なのである。
 ルークと導はそれを聞くと確認するように肯いた。

 ラミー麻にの採取については特に注意する事は無い。麻の繊維質は非常に細かく、何より強い。それゆえ麻袋などは非常に重い荷物を入れて運んでも破れたりしないし、丈夫である。衣服にも、寝具にも使え重宝される繊維だ。
 当然今回の依頼でいう弦にとっても充分に機能する強度を持っている。

「楽器とは関係ないと思うが‥‥これを見てもらいたい」
 一休みをしている間、導は非常に現代的な弓を取り出して見せた。
「ふむ、これはアーチェリーに使われる弓だね‥‥滑車がついているという事は、これは『コンパウンド・ボウ』という種類だ。これはこの滑車の部分が作用して力の弱い人でも比較的強く引けるようにされているんだよ」
 天界でつくられたアーチェリーの技術をそのままメイに移植する事は(現時点では)不可能だ。こうして現物があってもそれを再現するにはあまりにも難しい。
 楽器としての面影は無く、むしろ狩りとして、どちらかというと『狙撃』という点において最大の効果をもたらすアーチェリーの進化は現在のメイにおいては実は喉から手が出そうなほど必要な技術なのだが。特に複合素材による弓そのものの強度や命中精度は計り知れず、これをゴーレム魔法で巨大化させ、弓特化のゴーレムに持たせる事ができれば、メイだけでなくアトランティス全土の世界ががらりと変わるのではないだろうか? まだ誰も試していない上に、本当にそれが可能かどうかは誰もわからないのであるが‥‥。
 また、全く関係無いという訳では無いが、メイディアの闘技場を襲ったカオスニアンの弓使いが使っていた弓もこのコンパウンドではないかという調査報告があがっている。しかしどこでどうやって手に入れたものなのかは今となっては『闇』の中だ――。

 またオルステッドが見せたオークボウと梓弓と鳴弦の弓はユニにとって、それぞれ非常に役に立つ資料として興味をひいた。
 特に鳴弦の弓は非常に強い意味があった。イェーガー、ケヴィンも同じものを所持していたが、今回はオルステッドが掲示した為敢えて出さなかったのだが。
 ユニは興奮気味にそれを借りると、高ぶる気持ちを抑えられないように『それ』を弾いて見せる。
 緑豊かな山林に、癒しの歌声が響き渡った。

●遂に出た!?
 実はウルシの樹液の採取方法は結果的に木を切り倒してしまう事が多く、伐採という最終手段をどちらにしても余儀なくされてしまう。
 しかし切り倒された木は漁業の『ウキ』として使われる事があったという。
「ウキ、ですか? 水の上に浮かべて腐ったりしないのですか」
 天界ではすでに別の材質で作られている為、今では薪として使われるばかりだが、実はウルシ樹木というのは腐りにくいという性質がある。
 今回の件でもウルシ代わりのブラックツリー樹液を採取するのに、最終的には切り倒される事になるのだが。
「しかし、この木はすぐに芽を出すのですよ。もちろん育つにはまた幾年も待たなければならないですが」
 とても生命力の強い木なのである。

 夜まで樹液の採取とラミー麻の採取は続いた。ラミー麻の方は量的にはかなり確保でき、後は加工するだけというほどの量を得る事が出来た。取りすぎて余らせるという訳にはいかないので、必要最低限(もちろん、いくらか気持ち大目になってしまうものの)で抑えたいというのがユニの意見だった。

 ブレスセンサーやデティクトアンデットといったサーチ魔法を駆使しながら警戒を行っていたが、特に怪しげな動きは見られなかった。
 ただの杞憂であればいいのだが‥‥。
 ユニも夜を迎えてどんどん表情が硬くなってきている。緊張、といえばいいのだろうか、例のうめき声の事で不安になっているのが見える。冒険者たちも野営の為に準備をしているが、レンジャー二人の見解からすると少なくとも『魔物』の形跡はなさそうである。
 もちろんだからといって安心は出来ないが、それでも突然襲われたりという事はよほどの事がない限り、なさそうだった。

 しかし――。

●風が、変わる瞬間――。
 山の天気というのは変わりやすい。それは土地勘を持つ者だけでなく、冒険者なら何度も体験して体で覚えている事だ。
 海、山、川、森、平地、谷。いたる場所での対応が求められる冒険者たちにとって、山の天候の激しさは身に染みている。
 森の民であるエルフやレンジャーらにとっては常識ではあるのだが、それでも天候の変わりやすさには舌を巻く事がある。状況的に悪化させたくない場合はウェザーコントロールという局地的な天候操作も可能ではあるが、自然を操作するというのはあまり良い事ではない。
 ケヴィンはスクロールを持っていたが、使わずに済ませられるならその方が良いと判断し、使わなかった。
 だが、それとは別に、突然全員がその異変に気付いたのである。
「これは‥‥風が‥‥?」
「風の流れが変わったようだな」
 それまでは山頂側からゆるやかな風が下って来ていたのだが、突然風の流れが逆転したのだ。
 つまり、山頂に向かって吹き上げるように風が吹いてきたのである。
 その直後――。

 ヴォオオオオ‥‥。

「この音は!」
 風に混じって、今まで聞こえなかった音が聞こえてきたのだ。
 ただの風切音じゃない。複雑に絡み合った、深く、腹の底から響くような低い唸り声のような音が響く。
「獣の、いや、違う‥‥」
「風が強くてうまくブレスセンサーで判別しにくいですわ、でも」
 ルメリアのブレスセンサーが正しく発動しなかった訳では無い、聞き取れる音そのものの複雑さ故にはっきりとした正体が『わかりにくい』のである。
「いますわ‥‥こちらに近付いているようです。その数、人間よりも大きい体で二体ほどです。かなり大型のようですわね」
「カオスニアンにしては少ないな。だがデティクトアンデットでは反応はない。アンデットの類ではないか‥‥?」
 ルメリアと導の魔法組からは正確な詳細が掴めない。ルーク、オルステッド、イェーガー、ケヴィン。そして息を飲んで額に汗を滲ませるユニ。全員がその音の中に投げ込まれていく。
「こんな時間に、灯りもなしで人間が上ってこれるか」
 ルークは軽く舌打ちすると、処刑斧をぎりりと握りなおす。
「回りが木でよかったかも知れないな‥‥」
 ユニを守りながら戦うのは難しいが、遮蔽物が多いという点から素人でもやりようによっては回避を高める事は出来る、が。
 ケヴィンとイェーガーは素早くフォローする為に射撃姿勢をとる。
 ユニをガードする導も位置を確認すると万全の態勢を整える。
「来るなら、来いッ」
 だが。

●怪しげな風音の正体は?
「アーアーアーアーアー」
 ゴアオオオオ‥‥。
「アーアーアーアーアー」

 強い風の中に、僅かに聞こえる人間の声。うめき声とはいかないが、低い声は確かに響いていた。
「‥‥この音は、声?」
 イェーガーは、ふと風の中に紛れる低い男の声を感じていた。
 イェーガーの疑問の答えは、意外なところから返って来た。
「歌――歌を歌っているのか」
 ユニが音の中に潜む声の正体に気付いたのである。
 だが、こんな夜更けに灯りも持たず意気揚揚と歌いながら山をのぼるというのはどうかしている。
 常識的に見ても可能性は薄かった。
 しかしユニにはそれが歌だと理解出来たのは、その声が自分の知っている歌の『それ』と非常に酷似していたからである。
 練習曲(エチュード)の旋律である事が理解できたのはユニただ一人。
 もし冒険者たちが危険だからとユニを連れて行かなければ、この音の正体に対し問答無用で攻撃を仕掛けていたであろう。
 ユニにとっても、冒険者にとっても。そして、その音の正体にとっても、ユニを連れてきたのは限りなく正解に近い選択だったといえた。

 冒険者たちはその正体を探るべく、ユニと共に風の歌声の発生源を注意しながらおりていった。
 するとそこにはふたりの大柄の、いや、巨体の男性。ジャイアントの二人が発声練習をしていたのを発見したのである!
 突然声をかけられ、二人は驚いて武器を構えた。声をかけたルークら冒険者も思わずそれに反応してしまうが、ルメリアとユニはそれを止めに入る。
「お待ちを、少々落ち着きましょう」
 二人の言葉に剣を収める冒険者チーム。それを見ると驚いていたジャイアント二名もようやく警戒を解いた。
 それにしても、一体どういう事なのだろうか?

 どうやらユニのいる村ではこれから二週間ほど先の話だが、村興しの為に音楽祭が行われるという。
 このジャイアント二人はその音楽祭に参加する為に密かに練習をしようと、村を外れた山中に吹き上がる強い風に混じってその太い声で歌っていたという訳だ。
 とてつもなく人騒がせな話である。しかも彼らはあの村に流れる噂の事をほとんど知らないというのだから困ったものである。
 気の抜けた冒険者たちだが、あの深く響き渡る音の正体を突き止めた事でユニを安心させる事が出来た訳だから、ある意味、村の不安要素も解決したといえる。魔物や怪物、或いは不審者による徘徊などという物騒な話ではなかった分だけ村にとっては朗報だった。

「実はね、その音楽祭で先日作ったリュートベイルや、今回の梓弓‥‥つまり鳴弦の弓の演奏をしようと思っていたんだ」
 ユニも武器としての弓ではなく、音楽祭にあわせて『楽器としての弓』を披露すべく今回の依頼を冒険者たちにその協力を仰いだのである。
 この音楽祭には、以前一度だけ結成され大きな反響と大事件を巻き起こした合唱隊、『シフール合唱団』も限定復活で参加するという。
「そして、鳴弦の弓にはもうひとつだけ大事なものが必要だという事がわかったんだ。今回は時間的に余裕がないから追加で頼む訳にはいかないのだけど、近いうちにもう一つ依頼を頼むかも知れないな」
 ユニが必要だという鳴弦の弓の大事なもの。
 それが何なのか、イェーガーとケヴィン、それから今回の再現に深い関心を持っていたルメリアやルークまでもが興味を持ったのは言うまでもない。

 先に村に帰ったジャイアントたちには例のうめき声の正体を明かしてもらい、早く村の不安を解消させてもらう事にして別れた。
 ユニと冒険者らは一先ずうめき声の正体が判明した事で護衛から採集の作業にまとまり、全員で注意深く樹液の採取を行う事にした。
 ところが――。

「ま、まさかこれほどとは思いませんでしたわ‥‥」
 最新の注意をはらわなければならない作業だったのだが、器用さの点でやや精彩を欠いたレンジャー二名を除く、全員が見事なまでにウルシかぶれにやられてしまったのである。
 オルステッドと導はかろうじて軽傷だったものの、ルメリアとルークはややかぶれに弱い体質だったのか、痒みを強く訴えていたという。
 しかし数日もすると自然と治まるものらしい。実はウルシの樹液にかぶれても特効薬というのは天界においても存在しないという非常に厄介なもので、民間療法では塩水や海水で洗うというものがあるが、決定的な効果は得られないという。
 ルメリアとルークはそういう意味では今回、敵と戦うよりも厳しい深刻な精神的ダメージを負ったといえた。それでも冒険者の回復力というのは凄まじいもので、ルメリアは森の民エルフという事もあるのかルークよりも早く回復したようである。
 一番長く苦しんでいたのはルークだったが、それでも採取が終わり樹液の精製作業を手伝う頃には大分回復していた。

 村に戻った冒険者らは無事、うめき声の正体も突き止め山林に不審者がいない事を証明した事で村人たちからも感謝された。
 そして数日の製造過程をユニと共に手伝うと、帰り際にユニや村人たちから、時間があれば音楽祭に立ち寄ってもらいたいと招待されたのである。
 しかしその前に、もうひとつだけ、ユニにはこの弓を完成させるまでに必要なものがあった。
 音楽祭までに、手に入れなければならないもの――。
 それは。
 はたして――。