メモライズド〜進展〜

■ショートシナリオ


担当:なちか。

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:6人

サポート参加人数:1人

冒険期間:10月24日〜10月29日

リプレイ公開日:2007年10月27日

●オープニング

●新たな真実と傷跡。
 前回の依頼でセルナーの病院に入院していた男の『言葉』を得た冒険者たち。
 バの国の鎧騎士と思われる彼の『言葉』は以下の通り。

 ウドの海
 金属ゴーレム
 三機の試作型
 ゴーレムグライダー
 ブラックバード計画
 永久氷海
 シーハリオンの丘

 また、セトテの『言葉』を今一度まとめる。

 カオスニアン
 ゴーレム
 黒いゴーレムグライダー
 恐獣
 船
 二騎
 海路封鎖
 海上騎士団
 迎撃
 派遣

 これらをそれぞれの状況や目撃情報、これまでの依頼における情報整理等の観点から照らし合わせると、複雑に絡み合っていながらもいずれ繋がりあうであろういくつかの答えが浮かんでくる。

 先ずは黒い怪鳥墜落事件だ。
 これは黒いゴーレムグライダーが三機、試験飛行をしていた。そのうちの一機が墜落しセルナー領海岸に打ちあげられた。
 それらはメイの国のホワイトホース隊、通称・辺境遊撃隊の手によって回収されている。そしてゴーレム工房での修復が進められたが結論としては完全な形では修復する事は出来なかったのである。
 かろうじて当時の復元スケッチを見ることが出来た冒険者は、そのゴーレムグライダーのボディを見て、『水上飛行艇』のそれに酷似していると感じる。
 そして残された怪鳥は、二機とも行方がわからなくなっている。状況的に見て、カオスの地に辿り着いた可能性がある。シーハリオンの丘周辺の嵐の壁を越えられるほどの性能を誇っているのかそれとも抜けられる空路を発見したのかは現時点で不明だが、メイの国では以降、この黒いゴーレムグライダーの目撃情報は得られていない。
 もしカオスの地から飛び立てリザベを攻撃出来るほどの航続距離を得、海にも着水可能な――ゴーレムシップとゴーレムグライダーのハイブリッド的な――機体であれば、メイではゴーレム開発事情から見送られ続けた『空からの強襲』を敵国が実践してくる可能性はゼロではない事が伺える。試験飛行とはいえ、実際に飛んでいる所を目撃されているのだから‥‥。
 しかし。
 もし相手が空から来るなら、こちらもいずれ対空防御、あるいは制空騎‥‥ドラグーンまでを見越して開発が進められる事となる。
 当然ウィルから相当の技術力が提供されている今日において、メイがバの国にゴーレム技術で劣るというのは考えられないし、考えたくも無いが――もし、一部でも上回っていたら、どうなるだろう?
 確かに現時点では『たった二機』しかないバの国のオリジナルと思われるゴーレムグライダーだが、それでも実戦で実績を立てられるほどの性能を発揮したとしたら。量産されない保証はどこにもない。
 元々不穏な動きがあるバの国だけに不気味な、異質なゴーレム兵器が投下されてもおかしくないのである。

●官憲モーリィの深手。
 官憲チームがカオスニアンと恐獣の足取りを追っていた途中の事だった。
 西方動乱において一時的に防衛が成功したと見られていたカオスニアンらの進攻に、穴があったのだ。
 何か別の意図で動いていたのか今となっては不明だし、もしかしたら、今回の一連の事件に関与していたのかも知れない。
 モーリィが間一髪、命拾いして目覚めたベッドの上で悔しさを滲ませる。
 峠を越え、何とかベッドから起き上がれるまでに回復した彼女は自分の至らなさと最後の光景に怯えた。
 ――あの悪夢が甦る。
 そう、片目をくりぬかれて痛みとショックで気絶してしまったのだ。包帯でぐるぐる巻きにされ、全身が思うように動かない。
 退院できたとしても、通常の任務には戻れないかも知れないほどの重傷だった。
 それでも。
 それでも彼女はしぶとく生き残った。
 そして、冒険者たちに、今は動けない自身を呪いながら、託したい『強い想い』があった。
 彼女は医師の絶対安静の忠告も無視して、冒険者ギルドに伝令を伝え、病室に来て全ての事情を聞いて動いて欲しいと依頼してきた。
 官憲側はすでに追撃体勢を整えつつあるが、それに追加する形で討伐部隊に編成してもらえるようにも用意してくれていた。
 遂に本格的に動き出した官憲側、対応の遅れがこんな最悪の結果を生み出したのだが、今はそれをどうこう言えるような状況ではない。
 モーリィの持つ情報を余すところ無く聞き、討伐隊への協力をせよ。
 ショック症状の為か、記憶の一部を失っている可能性もある。セルナーからメイディアに帰還した魔女の協力も必要になるかも知れない。冒険者たちがどのようにモーリィから情報を受けるかは自由だ。
 特に彼女は今、重要な要素を握っているので必要そうな情報は彼女から聞き取る事が出来るだろう。
 状況が状況なだけに『全て』に返答する事は厳しいが、質問関係をまとめておくのがよさそうである。

●今回の参加者

 ea2606 クライフ・デニーロ(30歳・♂・ウィザード・人間・ロシア王国)
 ea8594 ルメリア・アドミナル(38歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 eb4322 グレナム・ファルゲン(36歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4494 月下部 有里(34歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb8475 フィオレンティナ・ロンロン(29歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb9949 導 蛍石(29歳・♂・陰陽師・ハーフエルフ・華仙教大国)

●サポート参加者

リィオ・イースタン(eb7932

●リプレイ本文

●いつまで続くのか――。
「‥‥こんなのは‥‥絶対許さないんだからっ!」
 フィオレンティナ・ロンロン(eb8475)は思わず噛み締めるように叫ぶ。
 一連の事件が『どこから』始まって、そして『どこまで』行くのか、まだ誰にもわからない。それでも、少なくともカオスニアンたちが暗躍している更に深部にバの国が絡んでいるのはほぼ間違いなかった。
 クライフ・デニーロ(ea2606)の言うように、ジェトの鎧騎士、或いは立場を利用して暗躍するのは冒険者の可能性は無いか?
 確かに幾つかの事件に、或いは起こってしまった事に矛盾点はある。
 だが相手はカオスニアンだ。
 冒険者たちのようにセオリーから攻める人格的な種族ならともかく、そもそも彼らにセオリー通りの行動をするとは到底思えない。
 いつも決まって神出鬼没で奇襲を好み、徹底的に暴力で進攻してきたカオスニアンに『矛盾』なんていう人間の考え方の基準そのものが当てはまろう筈もない。彼らの予想を遥かに越えたやり方をこれまで冒険者は何度も味わってきたでは無いか。
 それを後ろで操っているであろうバの国の影を、だが、どうしてもはっきりとした形で明かす事が出来ないのは非常に巧妙で悪質で悪辣な手口を使い、あくまで自分達の手はほとんど汚さないで済ませようという意図が感じ取れるからだ。

 またクライフの言うところのジェトの鎧騎士が怪鳥を奪取した、という可能性だがこれは実質的に無理があるだろう。これは当時の状況から読み解けば理解してもらえるだろうが、もし外部の人間だったとしたらジェトの鎧騎士よりも天界からの冒険者の方がよほど可能性としては高い。
『闇』の鎖での一連の事件で最悪の結果を生み出したのも天界からの偽名の冒険者だった。勿論、今回の事件に関わりがあるとは言い切れないが、これはあくまでゴーレム搭乗者という場合の可能性の話である。
 また、三機しか確認されていない怪鳥は三機編隊で飛んでいた。そのうち一機だけが強奪された場合飛行中に奪われたか、飛び立つ前には既に搭乗者が変わっていたという事になる。
 そんな搭乗者――記憶を失った彼――が、そもそもあれほどの情報をどうやって得ていたのか。
 そう考えるとやはりスパイなどを行っている外部の、ジェトの鎧騎士や天界人という可能性はやはり低すぎる。
 では彼はバの鎧騎士で、バを裏切ったのだろうか?
 或いは、何か別の目的で彼を『消す』必要があったか――。
 事故に見せかけ撃ち落し、とどめを刺した。だが、奇跡的に命だけは取り留めた。
 彼の言葉にあった『ブラックバード計画』がどんなものかを知ることが出来れば、もっと大きく全容が明らかになりそうなのだが。
 現時点ではどうしても――ブラックバード=黒いゴーレムグライダーという以外にパーツがはまってくれそうも無い。

「予想以上に、事態は進んでいるみたいですね」
 導 蛍石(eb9949)も真相に近付くにつれ深くなる傷跡にもどかしい思いを感じずにはいられなかった。
 それも、とびっきり最悪の方向に、なのだから。
「魔女殿の意思を尊重した上でお力をお借りしたいとお願いしてきて頂けませんか」
 フィオレンティナ、ルメリア・アドミナル(ea8594)、グレナム・ファルゲン(eb4322)の三名は魔女の協力を仰ぐ為にメイディアを駆ける!

●反撃へのきっかけ。
「――さて、今度はこっちの番ね」
 月下部 有里(eb4494)はクライフと導と共にモーリィの病室へと向かった。
 クライフから提供されたヒーリングポーションで何とかモーリィを死なせないように、自分の命をかけてでも救いたいという導の思いは月下部にも痛いほど理解出来た。セトテが死んだのは彼女のせいではなかったし、ジーキスを殺したカオスニアンを追って傷付いたモーリィ自身の甘さからだ。
 誰のせいでもない。
 それでも、一度は関わった問題から目を背ける事なんて、出来やしない。
 いや、一度動き始めた歯車を逃げるとかそういう生易しい方法で逃れる事など出来る筈が無かった。
 悲劇の連鎖を止めるには、根本から叩くしかない。
 その為には、今、モーリィの情報が必要だった。彼女が命をかけて持ち帰った『全て』を受け止めなければならない。
 それがこの一連の事件の先にある答えに近づけるものだと、今は信じるしかない。
「だから‥‥生きて下さい‥‥モーリィさん!」
 皆、必死だった。
 モーリィも死ぬつもりが無いようだった。月下部の言う通り、精神力だけで持ちこたえている節がある。
 それだけ生きる事に執着するのには理由があった。全てを伝えるまでは、絶対に死ぬ訳にはいかなかった。
 果たして――。
 果たして神聖魔法の、神の息吹が込められた奇跡の聖水から、文字通り奇跡が起こる。アトランティスという世界にも、『神の御加護』はやはり届くのだ!
「まだですよ、ここからです‥‥」
 導は祈りを込める。本当の奇跡はここから始まるのだ――!
「何度も魔法を見てきたり自分でも使ってみた事はあるけれど、神聖魔法がここまでのものだとは‥‥」
 本当に自分の命を分け与えるという事が可能であるという事が、天界人からすると常識を逸脱したものである事は確かで、尚且つ医学的見地からも有り得ない事なのだが、実際に目の前で起こっている事を説明する事は――事態が事態なだけに、奇跡としか言いようが無かった。
 そして、だが。
 それこそが『奇跡』なのである。

「やはり、まだ、終わらぬか‥‥」
 魔女は搾りたての柑橘系ジュースを飲み干すと、肯いてみせる。
「予感はしていた」
「敵の実像に対して、手掛かりが少なすぎる、嫌な予感がする」
 魔女とグレナムの思い描く『それ』はほとんど同じだったようだ。と言っても、魔女の予感は、もう少しだけ『先』までを読んでいたようだが‥‥。
「何度もお願いをして申し訳ないのですけれど‥‥今一度手助けをしていただきたいのですわ。お願いいたします」
「冒険者だけじゃない、メイの国を守ってくれていた人があんな目に遭うなんて、そんなの‥‥だから!」
「モーリィ殿が絶対安静の身に関わらず自分に知りえる記憶の全てを答えたいと冒険者を呼んでいる事から、奪われた可能性がある記憶の一部でも取り戻す事で、その思いに答えたい」
「モーリィという官憲も片目がくりぬかれていたのだな? ‥‥ふむ‥‥」
 やはり記憶を奪われている可能性は否めない。もしそうで無くとも、モーリィの容態が気になっていた魔女は承諾する。
 フィオレンティナは借りていたペガサスに魔女を乗せると、ふわりと浮き上がって空を駆ける。
「何度乗っても不思議な感覚だな、『これ』は」
「あれ、魔女さんはペガサスに乗った事があるの?」
「うむ。先日セルナーに赴いた時にな。まったく面白い生き物だ、こいつは」
「空を飛ぶって気持ちいいよね。でも、浮かれている場合じゃないよ。グレナムも言ってたけど、私も嫌な予感がするもの」
「もっと深い部分を探る必要がありそうだな」
「‥‥うん」

●モーリィの言伝。
 長くなるかも知れない。
 最初にモーリィが発したのは、少しだけトーンの低い、申し訳なさそうな表情のか細い声だった。
「落ち着いて、情報の整理はこちらでしっかりサポートするから」
 月下部はそう言うと、導の回復を確認してから机を用意して書記を任せる。元々はスクロール用の巻物だったのだが、こういう時にこそ活用すべきだと彼自身の提案によって書面への記載が実現した。
 後日モーリィの証言という事で官憲、引いては王宮への届けにもなると考えたからである。
「ともかく、最悪だった。いや、こっちが迂闊だったんだ。完全にやられた‥‥カオスニアンの残党を追跡していたのはもうお前達も知っている事だと思うが、前々から噂だけはあったカオスニアンが使っていたっていう『抜け道』をようやく発見したんだ」
「抜け道、ですか?」
 ただの獣道だと思われていた噂の抜け道は、メイの国を東西に横断する長い山脈にある深い山林にあるとされている。
 一時、以前の依頼でも噂だけはあったものの姿が確認されなかったという事で保留されていた場所だ。
「しかも只の抜け道じゃない。巧妙に偽装された拠点だったのさ。アタイらはそこでミスを犯しちまった‥‥応援を待たずに少数で潜入を開始したんだ。ところが、それが全部アイツらの狙いだった。アタイらは誘い込まれたんだ」
 思い出したかのように包帯に包まれた片目の闇が恐怖と共に甦り、思わず両手で包帯に触れる。痛みは回復魔法などのおかげで殆ど残らないが凄まじい『消失感』が彼女を襲う。知らぬ間に、全身が震えていた。
「相手の規模はどれ程だったのですか」
「わからない‥‥もう必死で、とにかく生き残る事だけを考えていたから。体が勝手に反応していた。カオスニアンを五体、恐獣‥‥足の早い奴だったがそいつを二体殺した所までは覚えてる」
「も、モーリィさんお一人で、ですか?」
 正直言って、それだけで彼女が半端の無い戦闘力を有している事は明らかだった。しかしそこまでやっても相手はそれを遥かに圧倒していたのである。
「三倍以上はいたんじゃないかと思う。正直、ぞっとしたよ‥‥無我夢中だった。今こうして生きのびてあんたらに話せてるのが信じられない位最悪の光景だった。くそ‥‥早く仲間を助けにいかないと‥‥」
 そこまで言って無理やり体を起こそうとするモーリィを全員が取り押さえる。
「ま、待ってー。無理、無理だから!」
「無茶だモーリィ殿、今は落ち着いて」
「前にも、こんな事があったと前任のアーケチから聞いた事がある。ナーガ族の村に所属不明のゴーレムがカオスニアンたちと一緒に襲ってきた事があった、って。それと同じような布陣だったのかも知れない。ゴーレムもあったんだよ‥‥動いちゃいなかったがね」
 だが、不思議な事があった。そのゴーレムもやはり所属不明だったのである。
「ゴーレムをカオスニアンが動かせるなんて聞いた事が無かったし、アタイは確実に鎧騎士がいると感じたのさ。確認はしてないがゴーレムニストもいるだろうと踏んでる」
 それとは別に――。
「それとは別に、人間も絡んでる。それも洒落にならないツワモノウィザードがね‥‥」
 モーリィの両拳がぶるぶると震える。
「アタイの目を潰した本人だ――」
 カオスニアンが行っていたと思われた片目のくり貫きは、実は一人のウィザードが行っていた事が、そこで遂に明らかになった。
 その目的が何であるかは不明だ。また、同じ人物が使者たちの目を奪ったのかも不明だが、その魔法使いがモーリィの右目を奪ったのは確実である。
 モーリィは片目をくれてやる代わりにウィザードの片足を切り倒し、その場から離脱。そこからどうやって里に降りて来たかは覚えていないと呟く。

 実はその部分を補完する情報がひとつ冒険者たちに事前に入ってきていた。
 モーリィの愛馬、真っ白な毛の愛馬が血塗れになりながらも彼女をメイディアまで運んだのである。
 彼女は朦朧としながらも愛馬にしがみ付くようにまたがり、そのまま気を失ったのだ。よくそんな状態で帰還出来たと思えるが、実際そうやって彼女だけが戻ってきたのだから、他に言うべき言葉は見付からない。

「全滅、かも知れない‥‥だけどね、捨てておけないんだよッ!! 絶対に持って帰るんだ‥‥仲間を‥‥」
 モーリィの赤い瞳が潤んでいる。
「魔女、とか言ったね。アンタに頼みがある」
 モーリィは自ら体験した全てを補完するように、正常に判断出来なかった当時を振り返る事が出来るのではないかという理由から記憶を引き出して欲しい、と願う。
 全員がそれに賛成、魔女も出来る限りの事をしよう、と肯いた。

 白いフードのウィザード
 隻腕のゴーレム
 カオスニアン
 恐獣
 鎧騎士
 ゴーレムニスト

 強烈な印象を受けた事が殆どだったのか、やはり今話した通りの部分が多い。ただ、魔女は少し迷った挙句、もうひとつ引き出せたが事件には関係なさそうな事だと判断したのか、口が濁る。
 ルメリアは何かヒントになるかも知れませんし、全てお話ください、と言ってみるもやはり少し困ったような表情を浮かべるだけ。
 モーリィも自分の記憶であるにも関わらず、隠されるのは少し気持ちが悪い。言ってくれ、と頼んで、ようやく最後の言葉を引き出した。

 アーケチ様、大好き

「‥‥‥‥ヴァーー!? 言うな! ってか聞くな! あ、てめえ、何書いてんだ!」
「だから言わぬ方がいいと念を押したのだ‥‥」
「い、いえ、これも一応証言のひとつですし」
 生死を分かつ一大事に彼女の深層部分がえぐられているのだ、心に残る言葉にはやはり説得力がある。導はすらすらと書き込みながら、笑いをこらえるのに精一杯だった。
 というか、魔女とモーリィ以外は全員驚きながらも口元が引きつっていた。
「(そんなに好きなんだ)」
 フィオレンティナに至っては既に噴き出しそうになっている。
「こ、コホン。ともかく、だ。アイツはヤバすぎる‥‥あのウィザードには注意しろ」
「隻腕のゴーレム、には覚えがありますか?」
「暗かったからよくわからなかったが、破損した感じには見えなかった。最初から無かったのか換装中だったのかはわからない。所属不明なのはさっき言った通り」

●討伐隊への協力要請
「さて、後は質問に答える番だな」
 先ずはクライフの質問に関して。
 二騎、迎撃、派遣という言葉は未解決との事だが、現在官憲側でも海上騎士団と連携して調査中の件も多く解決はしていないとの事。
 入院中の鎧騎士に関してはジェトから公式にそういう返答は無いとした。
 ウィルでの似たような件だが、これも上記の通りウィルからの公式の返答は無いとの事。
 次いでグレナムの質問。
 警備隊、又は、周辺にゴーレムを所持している部隊は存在しているか。ゴーレム整備用で、恐獣を隠せるような建物は有るか? だが、現時点では周辺には自警隊が点在しているがゴーレムは無し、建物というより、カモフラージュだったと説明されている。
 更に月下部の確認。
 襲撃場所は、セルナー領とステロイド領の境にある山脈の今まで確認出来なかった『抜け道』だ。橋を工事していた際の警備担当については直ぐに再調査する事を約束した。
 なお現時点で判明しているモーリィの言う白いフードのウィザードは雷撃を操っていたとの事。細い腕や声質から女性だとモーリィは証言している。
 フィオレンティナの質問、どうして『鎧騎士』がいると確信したのかについては、先にモーリィの仮説によって証言が取れている。あくまでも彼女の『読み』だが。
「直ぐにでも討伐隊を結成して出撃してもらいたい。その時は‥‥頼む。部下を、仲間の亡骸を必ず‥‥」
「モーリィ様の無念、必ずやお晴らします」
 モーリィの悲痛な心の叫びを察して、全員が決意を胸に深く肯く。