メモライズド〜告白〜

■ショートシナリオ


担当:なちか。

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:5人

サポート参加人数:1人

冒険期間:01月12日〜01月17日

リプレイ公開日:2008年01月15日

●オープニング

●『夜鷹』と『シス』
 遂に黒いゴーレムグライダーとその目論見『ブラックバード』計画は冒険者たちの手によって完全に阻止された。
 メイの国に降り注ぐ『空』からの脅威は一時的にだが、阻止された事になる。
 これも全て冒険者たちの活躍の賜物だ。

 そんな冒険者たちの功労が落ち着く間も無く、事件は解決へと向けて前進し続ける。
 まだ、全ての関連事件が解決した訳ではないのである。
 セトテやモーリィらが奪われた『眼球』や『片腕』の謎が解けていない――。
 だが、どうやらそれこそが『シス』が、そして『夜鷹』が関わったとある計画の中に組み込まれていた事件であるらしい事が明らかになる。

 今回は夜鷹、シスにとって達成しなければならなかった黒い鎧騎士への復讐が完遂した今、全ての事件に関与する二人の自白による供述、事情聴取を行う事とする。
 先日帰還した官憲モーリィはあまりの無茶がたたったのか、またもやメイディアの病院に引き戻され、担当医らにこっぴどく叱られたらしい。
 その為、今回もその事情聴取を冒険者たちに依頼してきた、という訳である。
 なおモーリィの部下はモーリィが勝手に辺境遊撃隊を動かした事への事後処理に奔走しているとの事。いくら官憲でも独断タイプのモーリィは後でこってりしぼられる事になるらしい。
 しかし、結果的に重大事件の一つを解決させたという事もあり、処分は重くはないようである。この辺りは作戦に協力した冒険者たち、辺境遊撃隊の艦長ラピスも頭を下げたおかげ、とも言えなくもなかったようだが‥‥。
 モーリィ本人はよくある事、と涙目で語っていた、とか――。

●告白、『クレヤボヤンスド』――。
 ブラックバード計画が全てだと思っていた官憲側だったが、これまでの事件や事実関係を整理すると、実行部隊は基本的に他の作戦には関与せず、単一の目的で動く別働隊がごくごく少数で暗躍している事が明らかになった。
 そして結果的に生き残った二人は、ブラックバード計画ともう一つの計画、ゴーレムスコープ計画と呼ばれたとある計画にも関与している事がこれまでに明らかになっている。
 直接的には、『夜鷹』はブラックバード計画の一員であったがもう一つの計画に関与していた事からブラックバード計画に賛同して参加した黒い鎧騎士たちの裏切りにあい、事故死に見せかけて『暗殺』されてしまう。しかし彼は奇跡的に生きていたのである。
 そしてそれがブラックバード計画が潰えるほどの致命的なミスだったのは、前回までの依頼で明らかとなった。

 そしてセトテたちを殺し、眼球を奪った真犯人『シス』は、殺された『夜鷹』の復讐の為にブラックバード計画の黒い鎧騎士たちに協力すると見せかけて黒い怪鳥ごと全てを葬ろうと考えていた。
 しかし彼女の『部隊』の目的は復讐ではなかった。
 彼女、シスの本当の目的は夜鷹が語ったゴーレムスコープ『クレヤボヤンスド』計画の成就、それだったのである――。
 通常、複数の目的を持たない実行部隊だが、彼女もこうして二つの計画を同時に関与していた事になる。

 二人の重要参考人はそして、真の目的――だが、既に終わってしまっていた――計画の全てを語りはじめる。
 更に、そこには、まだ残っていたのである。その事件を裏付ける『証拠』が――。

 今回は自白による供述が基本だが、二人は全てを語った後、死刑を望んでいるらしい。
 二人の刑罰をどうするかはまだ決定はしていない。メイの国に帰属させるのは、だが、セルナーの使者やメイディアの官憲殺しなどがどうしても事実として残ってしまい厳しいだろう。
 それでなくとも本人は明確に答えてはいないがバの国の者だ。国民感情がそれを許さないだろう。

 また、今回は自白による供述だがとある目的でメイディアの国立図書館に魔女が向かっているらしい。彼女による『言葉』の引き出しも、協力要請によって得られるかもしれない。
 使う必要があるかどうかは不明だが、一応、彼女も事件の解決まで付き合うと言ってくれた協力者だ。一言声をかけておいてもいいかも知れない。

●今回の参加者

 ea2564 イリア・アドミナル(21歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea2606 クライフ・デニーロ(30歳・♂・ウィザード・人間・ロシア王国)
 ea8594 ルメリア・アドミナル(38歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 eb4494 月下部 有里(34歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 ec4322 シファ・ジェンマ(38歳・♀・鎧騎士・パラ・メイの国)

●サポート参加者

コゼット・ルゥ(ec0861

●リプレイ本文

●魔女召喚。
 ルメリア・アドミナル(ea8594)は丁度タイミングよく王都に向かっていたという魔女に事件の事を含めて話しておきたい事や協力してもらいたい事があった為、シファ・ジェンマ(ec4322)とクライフ・デニーロ(ea2606)に先に向かっているという図書館へと向かってもらった。
「ふむ、あの男がメイディアに来ていると。ほほう、それは興味深い。ただこちらはこちらで少し約束があってね。協力はさせてもらうが、全部に付き合えないかも知れない」
「ぜひ、足を運んでいただきたく思い馳せ参じました」
「わかった。どうせ一度は関わった身、その顛末をみてみようかしらね‥‥」

「お久しぶりです、魔女様」
「話は道中聞かせてもらった。一通りの決着を見ているようだな」
「はい。今度はその証言を取らせて頂くことになりました。その裏づけと言っては何ですけれども、魔女様の力で言葉を引き出してもらいたいと思いましたの」
「ああ、それじゃあ先ずは彼らの話をじっくりと聞こうじゃないか」
「はい、そうですわね」
 今回はイリア・アドミナル(ea2564)が書記を務める事になった。
 シファは周辺警護を買って出てくれた。
 また黒い鎧騎士やカオスニアンらの強襲を受けないとは言い切れないからだ。その為、クライフも同様に周辺警備を交代で担当する事にした。
 ルメリアのサポートとして、天界などでの医学的見地などを含めた追求も行おうと月下部有里(eb4494)も取り調べ室に入室した。
「今後の事も考慮したいから、しっかりお話していただきたいのよね」
 月下部の言葉に、二人は深く肯いてみせる。
 そして、遂に二人の事情聴取がはじまった。
「クレヤボヤンスドって、一体どんな計画かしら?」
 ブラックバード計画が本体だと思われていたこの一連の事件は、最後、このクレヤボヤンスドという名の計画へも繋がっていた。
 そのある意味『事件の本質』と思われるゴーレムスコープ『クレヤボヤンスド』計画について、そしてそれが奪われた『眼球』もそれに関与している事が遂に明らかにされる――。

●タブーと机上の空論。
 奪われた『眼球』は作戦参加及び関与した全ての者に刻まれる印。敵味方関係なしで刻み付けられる痛みだ。
 そして、それにはもう一つの理由がある。例えば、ドラグーンにナーガが深く関わっている事はまだ開発されていないメイの国の中でも知っている者がいたように、他国にもそれなりに情報が飛び交っている事は明らかだ。
 それは隣国にも同じ事。
 だが、噂には尾ひれがつくもので、メイでは正確に伝わっている情報であっても、他の場所で正確に伝わっているとは限らない。
 例えば、ドラグーンを製作する為に、ナーガの肉体を媒介にして作り上げる、『生体ゴーレム理論』というまるでおとぎ話みたいな迷信も、何も知らないどこか小さな村では信じられてしまう可能性は往々にしてあるのだ。
 実際に起こった事件としては、カオスニアンが以前ナーガの村を襲い、墓を暴きナーガの遺骸を奪い去ったという事件もある位だ。

 そして実際にはそれらとは全く異質なゴーレム技術に対してのタブーに近い、いわゆる『生体ゴーレム』の計画に『使われる』予定だった。
 人間の目を、ゴーレムに組み込む、という計画だ。しかも一つ二つではない。それを経由して全方位を見渡せ、透視や暗視までを行える隠密偵察型のゴーレム兵器――人型かそれ以外かは不明――を生み出そうと、とある(狂った)ゴーレムニストが提唱した独自理論だった。
 これがゴーレムスコープ『クレヤボヤンスド』計画の真の目的でもある。

 だが、その計画はすぐに頓挫する事になる。机上の空論でしか無いプランが実現にまでこぎつけられる筈も無い。
 しかし実行部隊はその計画の中止を知らされる事は無かったのである。
 それが今回の――メモライズドの――もう一つの終局だ。
 彼ら実行部隊は命令通り、実験用素材である眼球を集め続けた。だが、それは、すでに不必要なものと化していたのだ。
 眼球を提供した全ての実行部隊員、そして無関係な被害者も、たった一人の狂った男の狂った計画によって無意味に繰り返される悲劇の連鎖に組み込まれていたという訳だ。
 なお、これは後日明らかになったのだがそのゴーレムニストは、謎の事故死によってこの世からすでに消えていた‥‥。
 いや、恐らく『殺された』のだろう。それを確かめる術はないが、夜鷹はそれを知って、そう洩らした。そしてそれが計画の破棄に繋がる事は二人も感じ取っていたのだ。

●記憶を失う副作用
 今回の事件、メモライズドで記憶を奪われたと思われたいくつものケースについても、ここではっきりした事がある。
 これはモーリィや白いフードのウィザード、シスがそうであったように、『個人差』があるのだが、眼球を失ったものに対して実行部隊はカオスニアンが調合した強力な痛み止めを投与されていた。
 しかし強力な副作用もあり、そもそもカオスニアンの秘薬(?)であるから、人間にはある種の毒であったとも言えた。
 そのせいで一時的に、或いはある種の記憶喪失に似た症状があらわれる場合があるのだという。記憶を奪ったというよりも、痛み止めによって記憶が飛んでしまったともいえる。
 もちろん、腕や眼球を奪われた痛みやショックによってもかなり影響があった。ショック性の記憶障害というやつだ。
 血液が一気に大量に噴き出た場合、致命傷になる事は魔女も覚えがある、既に通った道だ。
 ただし、知られたくない情報も当然あった為、敢えて副作用の強い――ただし強力な効果のある鎮静剤を投与したのである。殆どは止血されないままだった為、元々、そう長くはもたなかったのかも知れないが。
 ともかく一時的な、という部分だけで言えば主な副作用としてはかなり頻繁にそういった一部の記憶喪失症状が出ていたため、事件の前後の記憶を曖昧にさせる程度であればこちらの方が手っ取り早かったのだ。
 ただ、先の通り個人差があるため、薬の効きはそれぞれ。そして副作用も出ることは多いが、元々煙管を吹かしていたモーリィにはある程度の耐性のようなものがあったため効きにくかった、という部分があった事が判明した。
 逆にセトテはこれのせいで、昏睡状態に陥り、結局帰らぬ人となってしまった。
 痛み止め、という事は天界医学的には脳への痛覚伝達などを阻害、或いは麻痺させるという部分に繋がる。
 この脳への影響が結果的にセトテを殺し、或いは被害者らの記憶を曖昧にさせたという部分があったのはこれまでの事件ではっきりしている。
「解剖学的に記憶が喪失することはありえないわ、一連の記憶喪失については医学の範疇の超えているわね」
 もちろん、月下部の言う通りいくらカオスニアンの特製の薬とはいえ薬物だけで特定の記憶のみを消す事は物理的に不可能であるから、それだけではないだろうが。
 また、完全に記憶を奪う事が出来ない事は、魔女によるリシーブメモリーから引き出した『言葉』で現れるように、全てが失われている訳ではない事も、証明されている。

●腕を落とした理由
 これは生体ゴーレムなどの無茶な理論ではない。
 妙な話だが、これはあくまでも狙いを眼球だと絞らせない為に始めた事なのだという。
 最初は殺して両目を奪い、死体をどこかに埋めるかして証拠を隠滅した事もあったらしいが、それではすぐに足がつく。そこで戦死者の目をくり貫くという方法に挑戦するも、腐食の進みが早い眼球はまるで役に立たなかった。
 そこで殺さずに眼球を奪うという事になったのだが、普通に眼球だけを奪う事は不可能に近かった。
 抵抗する事もできないような状況をつくりだし、奪う必要があり、最も効果的なのが利き腕を『壊す』事だったのである。
 つまり、剣を持っている手を奪う事で、抵抗力を奪う、という事だ。だから、必ずしも『右腕』である必要は無かった。
 単に、殆どのものが右利きだった、というだけの事なのだ。

 奪った眼球の『右目』については、これはまた逆に生体ゴーレムに関わる下らない理論が当てはまる。
 実行部隊としては右目にこだわる必要も無かったのだが、右腕が利き腕という事は自然と(無意識だろうがなんだろうが)右目で物を捉える事になる。そういう目の方が、ものを捉えるという意味でも、また視力の確保という意味でも効果的だろう等というゴーレムニストの理論で利き腕の側の目を使いたいという依頼があったという訳だ。

●消えた計画と抹消された命
 これらの計画は提唱したゴーレムニストの事故死によって『破棄』される事となったのは先の通り。
 また、それによって実行部隊の存在も『無かった』事にされる事になる。そこで計画に関与していた夜鷹やシスは抹消されるべき存在として母国から切り離されてしまう事になった。
 当然バ国はそんな計画を公に認めるはずもない。もちろんこれまでのケースでもあったように、メイの国としてそれをバに認めさせる事も別の意味で困難であるし、それを確かめる方法も今となっては――状況的に――ほぼ不可能であるとも言える。
 つまり、便宜上彼らは彼ら自身の為に独自で動いた、という事になる。
 二人は。
 国からは完全に消されてしまっている。
 彼らはこのまま生きて帰ってもまたいつか必ず殺されるであろう事を悟っていた。だからこそ、彼らはこの地で死ぬ事を望んだのである。
 また本人達だけでなく今回の事件で多くの被害者を出したセルナー領にとってみれば、どんな事があっても許されることは無いとして処刑を強く望んでいるようだ。
 しかし国から見離され、今は消滅した二つの計画に決着を着けた二人はメイにとって――特にセルナーに対しての圧力を二つ同時に止めたにも等しい功績である事も否めない。
 特に黒いゴーレムグライダーを叩いた事は非常に高い戦果となった。あれが飛び立ったなら、まずセルナーの港、そしてあの時眠っているはずだった夜鷹のいた病院付近は大打撃を被っていただろう。
「今までの行為がそう簡単には許されない事も解ります‥‥そしてこれからの未来が難しい事も解りますが、二人なら乗り越えられるかも知れない。そして出来るだけの弁護は我々が行います」
 イリアは続けた。
「互いを思いやり、その為に命を棄てる事も出来る。その気持ちが有るお二人なら、やり直して、今度はお互いの為にその命を使えないのでしょうか。償いとは、そういうものじゃないですか」
「充分な貢献がなければ死刑も追放もないし自殺もさせないよ。それこそ許される事じゃないからね」
 クライフもそう言って、二人にはたらきかける。
 食事を取りに戻ってきたシファを含め、全員が見守る中、二人は最後の供述をはじめる。
 全ての決着、その終局は、驚くべき内容だった。

●そして終着点へ――。
 イリアたちは証言を書き記しながら、二人の処分についても考えていた。
 罪を償うつもりならば自害などせず、この国に貢献してから処分を受け入れるべきだという意見が大半を占めた。
 公的には名を捨て――その名は処分されたという事にして、もう一度更生すべきだという考えだ。
 自国やセルナーの地へはもちろん、リザベの地へも恐らく二度と踏めないだろう。もちろん、これはごくごく一部の関係者、及び上層部にあたる重役が許すべきでないとしている事であり、全土国民が知る事ではない。一般人にまで極秘の計画が漏洩している筈もないのでこれはあたり前かも知れないが。
 メイディアでも官憲の一部や一部の冒険者以外はほとんどこれらの事件、計画は知られていない。そういう意味で、名前を捨ててメイに一定期間奉仕する事で情状酌量の余地を与えようというのだ。
 また、先日の西方動乱から始まった『第三次カオス戦争』と呼ばれる戦によって西方だけでなく中原までもが脅威に晒された今、『敵』は既に国内にまで及んでいる。
 もし強制送還したとしても暗殺される可能性の高い彼らを保護するというのも妙な話だが、夜鷹のゴーレム操縦技術(この場合はバ仕込みのゴーレムグライダーや空戦技術などを含めた情報や技術提供と考えるのが正しいか)や、シスの爆発的な魔法攻撃力(一種の『砲撃手』に相当する能力)は味方にすれば強力な武器になる。
 だからという訳では無いが、やり直す機会を与えぬまま処刑させるには、余りにも惜しい人材だと冒険者たちは考えたのである。
 そんな彼らの願いが届くかどうかは、今はわからない。

 ただ。
 すぐに『処刑』されるという事はなさそうである。

 というのも――。
 シスが、最後に今まで奪ったとみられる証拠品、『眼球と右腕』の場所を明かしたのだ。
 全ての実行部隊員が確保された今、破棄された計画と共に、その悲劇も終焉を迎える事となった。
 当然それらは『素材』として確保していた為、現在までに全ての眼球と右腕は大切に保存されていた。既に死亡している者の分を含めて、それらは充分な検証ののち返却(再生や接着などを含めた処置)される事も可能となったのである。
 今は真冬のセルナー中央の山岳地帯にある、別荘に偽装した保管所(冷暗所のようなもの)に、作戦実行部隊の隊員以外で集めた眼球などは全て保管されているらしい。

 そして。
 その場所には、モーリィの失われた右目も含まれているらしいのだ。
 その証言から得られた情報を元に、『証拠品』の押収をすべく、最後の旅がはじまろうとしていた。
 だが――その場所には護衛のカオスニアンと恐獣部隊が配備されているらしい。
 合言葉さえあれば中に侵入できるだろうが、持ち出すのは容易ではない。また持ち出せたとしても管理が出来なければ腐らせてしまう可能性も高い。
 迅速な対応と適切な処置を行い、持ち帰るにはやはりその護衛しているカオスニアン部隊を叩く必要がある。
 しかしカオスニアン部隊は襲われた場合、証拠隠滅として保管されたそれらを破棄する命令も下っている。それを実行されたら、被害者らの形見となる部位は全て失われる事となる――。
 計画の完遂の為に徹底されていたとはいえ、非常に厳しい展開である。
 シスや夜鷹を囮に使ったとしても全てを無事に回収できるかどうかは保証出来ないという。

 だが、そこに被害者達の――仲間の遺品があるのなら。欠片でもいい、取り戻したい。
 自分の眼球の事はさておき、モーリィならその場でこう言うに違いない。
 皆も、思いは同じだった。シスも、これまでの罪を償うつもりで告白したのだろう。

 メモライズドの旅の終着点。
 それは幾多の犠牲を払いながら成し得る事のない、まさしく悲劇だった。

 しかし。その長い旅は終わりを迎える。
 遂に、その悲劇が生んだ残された『欠片(ピース)』を――全てを取り戻す旅がはじまる。