【預言前調査】獣の氷像
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■ショートシナリオ
担当:猫乃卵
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 69 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:01月16日〜01月21日
リプレイ公開日:2007年01月24日
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●オープニング
瓶の水も沼も人の血も凍りつくだろう。
死者のよりの手紙は前触れなく届き
村の中の栄光に包まれた碑(いしぶみ)は凍りつく。
人々の願いは天に届くことはないだろう。
穏やかな午後の日差しが降り注ぐ中。厳重な警戒をしている警備兵が見えるコンコルド城前の広場に、1人の女性がやって来た。緩やかに波打つ黒髪を揺らして、何気なくベンチに腰掛ける。
「このような所にお呼び立てなさらずとも、使いの方をよこして下されば宜しいですのに」
「せっかく貴女に会える機会が出来たというのに、それを他の者に譲ろうとは思わないよ、フロランス」
背後の木に寄りかかっている男が、穏やかに話しかけた。金の髪が光を浴びて煌き、見る女性を虜にする微笑を浮かべている。最も、誰もその現場を目撃している者はいなかったのだが。
「情報がね」
そして、彼は穏やかな口調はそのままに話し始めた。
何者かの策謀で情報の流れが停滞しており、国王の元にそれが届くのが遅れかねない。迅速な対応が求められるのに、そんな事になれば致命的だ。だから正規のルートだけではなく、別ルートでの情報源も欲しい。
「君と繋がっている事が分かると困るからこっそり来てみたのだけれども、迷惑だったかな?」
「秘密裏にいらっしゃったのでしたら、そのようにおっしゃって頂かないと」
辺りを窺うように目を配りながら、冒険者ギルドのギルドマスター、フロランス・シュトルームは答え。
「それで、何の情報を?」
「ノストラダムスについては、どこまで情報を?」
「ジーザス教白の神学者ですわね。預言書を記す前は、ノルマンに居なかったようですけれども」
「各地を転々としていたようだ。今は行方が知れなくてね。探している所だが」
「えぇ」
「他にも、復興戦争時に私が居た町村の石碑なども確認させている。ノルマン各地の直属の者も含めて動くよう指示を出しているが、足りている状態ではないな」
フロランスは黙って頷いた。それは長年の経験で勘付いていたので。
「別ルートの情報源と、人手不足と。動いてもらえるかな?」
「承りました」
静かに頭を下げた所で、男は頷きその場を去った。
木の根元に、羊皮紙の包みを置いて。
その夜。
冒険者ギルド内の様々な係の責任者が集まり、会議を行っていた。
「では、お願いします」
皆に事の次第が記された石版を配り、それに一同が目を通した所で、フロランスが号令を出した。
「必ずこれらの調査条件を満たす形で、足らぬところがないように依頼を出してください。これは、国からの依頼です。遅れれば、ノルマンに、引いては我々ノルマンの民にも甚大な影響を及ぼす事でしょう。良いですね?」
皆は真摯な表情でその指示を聞き、しっかりと頷いた。
時を同じくして、一人の男が冒険者ギルドを訪れていた。
ギルドの受付は男の顔を見て、以前ノストラダムスの預言の内容に関連した調査を依頼した人間だと気付く。
男は受付の前に立つと、軽く一礼した。
「先日の災害現場と堤防の調査、ご協力ありがとうございました。モンスターの目撃情報、大変役に立ちました」
受付は男に椅子に座る様促すと、声をひそめて訊ねる。
「依頼報告にある『巨大な人間の頭部』って、やはり、ビフロンスですか?」
「こちらでも過去の事例や文献を調べて見ましたが、どうやらその様ですね」
「過去に事件を起こした事があるモンスターでしょうか?」
「それは判りません。『ビフロンス』が滅多に見かけないモンスターだとしても、そういった形のモンスターをひとくくりに呼んでいるだけですから。新たな一体が現れたのかもしれません。それは今後の調査で明らかにしていただければ」
「それで、今回のご依頼は?」
「奇妙な目撃情報を入手しました。先日北東の方向の山に登った者達が雪に覆われた氷像の群れを見たのだそうです」
「氷の塊ですか? 自然現象で出来る様な?」
「いえ、自然には出来ない‥‥目撃者達の推測ですが、犬程度の大きさの獣がそのまま凍らされて出来た様な塊だったそうです」
「凍らされた?」
受付は眉をひそめる。
「一箇所にその様な塊が数個有ったそうです。人為的に凍らされたのであれば、新たなモンスターの存在を感じるのです。デビルの類が関与していなければいいのですが」
「ビフロンスも片付いていないというのに!」
「お願いなのですが、その場所に行って状況を調査し、研究の為に、出来ればその何かが凍った塊を数体持ってきていただけないでしょうか」
「溶けるかもしれませんが、宜しいですか?」
「凍った状態がありがたいですが、氷が溶けた死体の状態でも構いません」
「解りました。依頼内容は、現場の調査と凍った塊の採取」
「これが依頼金です」
「承りました。では依頼書を作成しますので、もう少しお時間頂いて、依頼の細部を詰めさせていただきます」
それからしばらくして、一枚の依頼書が張り出された。
●今回の参加者
ea1225 リーディア・カンツォーネ(26歳・♀・クレリック・人間・神聖ローマ帝国)
eb2355 マクダレン・アンヴァリッド(61歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)
eb6508 ポーラ・モンテクッコリ(27歳・♀・クレリック・エルフ・ビザンチン帝国)
eb8121 鳳 双樹(24歳・♀・侍・人間・ジャパン)
●リプレイ本文
●事前準備
冒険者一行は、まずギルドに集まった。出発前にしておく準備作業にとりかかる為だ。
4人が揃った所で、最初に顔合わせが行われた。
「鳳双樹(eb8121)です。よろしくお願いします」
双樹がペコリとお辞儀をする。
そうやってそれぞれが挨拶を交わした後、どの様に作業を進めるか打ち合わせが行われた。
ポーラ・モンテクッコリ(eb6508)が提案する。
「氷像を運ぶ為に、ソリを借りようと思いますわ。それと丈夫な麻袋か何か」
リーディア・カンツォーネ(ea1225)が言う。
「凍らせたのが人為的であるなら、何かが潜んでいるかもしれません。それに、凍死してない可能性は、とってもありそうです」
「アイスコフィンの魔法で凍らされた状態という事ね。あるかもしれないので用心ですわ。麻袋で氷像を包む時、両端を厳重に縛れば何とかなるかしら」
「ソリをひく為に馬を連れて行くとなると、防寒対策をした方が良いだろうね」
マクダレン・アンヴァリッド(eb2355)は、そう提案した。
「防寒対策、ソリの準備‥‥ただの調査なら、それくらいで、まずは良しという所だろうね」
馬を3頭、ロバを1頭、連れて行く事になる。
アンヴァリッドは最初、雪山を越える隊商が用いる様な馬着を捜し求めていたが、ポーラの助言で、自分達の持ち物で流用出来る事に気付く。毛布を動物の胴体を包むぐらいの大きさに畳み、その中に厚手の布や綿など保温に良さそうな物を挟み込む。紐で括って固定すれば防寒具が出来上がる。
「ハクト、山は寒いかもしれないけど、頑張ってね」
双樹はハクトの首を優しく叩いて励ます。
ポーラがどこからか借りてきたソリを持って来た。麻袋は丈夫な物が調達出来なかった様だ。毛布で代用する事となる。
最後に各自の荷物を確認すると、一行は出発した。
●野営
次の日、山のふもとに着く頃には、あたりは暗くなり始めていた。
野営は、より暖かい場所が良い。氷像の捜索は明日とし、今日は冬山での野営を避け、風や雪を弱める林の側でテントを張る事となった。
ポーラのテントに馬達を入れる。もっとも、テントは風雪をしのぐ為だけの物であるので、テントの中に入るのを怖がって拒んだ馬は無理に入れず、木につなぎ止めておいた。テントの中でパニックに陥ると他の馬にもうつりかねない。
リーディアのテントに冒険者達が泊まる事となる。
ただ、テントだけでは寒さはしのげない。テントの隙間から入る夜風や地面の冷たさから身を守る為、交代で担当する見張り役を除いた3人は、寝袋に自分の体を収めて眠りにつく。
寝袋に入る際、毛布を二つ折りにして後頭部を覆う。首も覆う様にしながら、毛布の端は寝袋に収める。
「美しくうら若き乙女達と一緒のテントとは嬉しいなあ。娘達が小さかった頃添い寝してあげた時以来だよ、うんうん‥‥」
前日に見張りを務めたマクダレンが笑顔で呟く。今日は気持ちよく眠れそうだ。
見張り役は、夜が明けるまで、焚き火を絶やさぬ様注意しながら、周囲の警戒を続ける。
一日目も二日目も、モンスターの襲撃は無かった。
だからといって見張り役は、気を抜くという事が出来なかった。うたた寝をして焚いている火を弱めてしまえば、冬の夜の冷え込みに襲われる。都合悪い事に、両日とも夜は晴れており、一段と冷え込みが厳しかった。
●調査開始
三日目、移動を再開した冒険者達は、報告のあった場所と思われる場所に着いた。
周辺を捜索し、氷像の在る場所を探す。まもなく氷像は見つかった。
ポーラは耳をすまし、変わった音がしていないか、探った。遠くで鳥の鳴く声が聞こえる。生き物が近くに居る様子は感じられない。
双樹は、辺りを見回し何か変な匂いがしないか探る。周辺からは特に異臭は漂って来なかった。ここに『生きていた』物が今も居たとしても、雪に埋もれているか、凍らされているかしているので、腐臭は漂ってこない様に思えた。
この場所には、積もった雪と氷漬けにされた物しかない。リーディアはそれでも周囲を警戒したが、生物の気配は感じなかった。
木々は雪に覆われ、一部は凍っている。何故か、なぎ倒されかかった様に見える木々が何本かあった。
積もった雪の表面には吹雪いて出来た様な跡が見られる。マクダレンは周辺に足跡が無いか調べたが、吹雪に消されたのか、自分達の足跡以外はっきりとした跡は見当たらなかった。
しかし距離をおいて観察してみると、うろつきながらもある方向へと移動していく何者かの通った跡が、吹雪いた雪に覆われている事に気付く。
数メートルはあろうか、跡の幅が大きすぎて、雪のへこみに気付き難かったのだ。
「吹雪で足跡は消えてしまっていますが、何か大きな動物が最近通ったのかもしれませんな」
大きな動物の通過と吹雪の関係はよく解らなかった。大きな動物が吹雪を起こした可能性も考える事は出来る。
「この動物達、凍らされたのですわ」
動物達の半数以上は力尽きて倒れた上に雪が覆い被さっていたが、何体かは立ったまま氷漬けにされている。
その動物達の向いている方向を調べると、動物達は遠巻きに何かを取り囲んでいた様にポーラには思えた。
リーディアは、氷像に近付き、調べ始めた。
「フロストウルフさんでしょうか‥‥? フロストウルフが沢山いたって書かれていた報告書が最近あった様な気がするのです」
氷像に積もった雪を払い、観察する。しかし、リーディアの持っている知識では、氷漬けにされている動物がフロストウルフであるかどうかは判断できなかった。むしろ、観察すればするほど、これらの動物は『狼』達ではないかと思えてきた。
狼達は、何かに向かって歯を剥いて唸っていた様に見えた。何かがここに居て、縄張りを侵していたので、凍らされる直前まで相手を追い払おうとしていたのかもしれない。
「可哀想‥‥何があったんだろ‥‥」
双樹が呟く。
マクダレンは、オーラテレパスを氷像の中の狼にかけてみるべきか悩んだ。生きているかどうか判断出来なかった為である。もしこれが何らかの魔法の力に依って凍らされており、氷の中の狼が生きていたとしても、まだ意識は在るのか、オーラテレパスに反応出来るのかは解らなかったという事もあった。
「氷漬けのこれ自体がアンデッドだったら、どうしたものかしら?」
ポーラはデティクトアンデットを使ってみた。しかしアンデッドの類の気配は感じられなかった。周囲を回ってみたが結果は同じだった。
●運搬作業
マクダレンは、ソリの大きさや運び易さを考慮しながら、氷像をソリに載せる作業を始めていた。
リーディアが、氷像を毛布でくるむと両端を縛って袋詰め状態にする。
載せ終わり、運び始めようとした時、マクダレンはふと気付いた。
帰りは下り坂の道になる。ソリが勝手に滑り落ちていくのを人の手で防がなければいけないのだ。
安全を考慮し、載せる氷像の数は少し減らさなければならなかった。
荷物をロープで固定し、下り坂でソリを御する事が可能な事を確認すると、一行は帰路についた。
パリに近付くにつれ氷は溶けていった。双樹は、狼を包む際に氷が融けてしまわない様雪を詰めていたのだが、それでも一体は氷が溶けたのか、息を吹き返した。
毛布の中で暴れ、抜け出すと逃げていった。
「アイスコフィンで凍らされていたのですわ」
ポーラは狼の後姿を見ながら頷いた。
●結果報告
依頼人に会い、氷像を引き渡す。
現場で見聞きした事を整理して依頼人に伝えた。後日ギルドから調査報告書が依頼人に渡される予定である。
「何かが通って、狼達を凍らせていったのかもしれませんね」
依頼人は受け取った物がありふれた動物であるという事に若干の不満を感じていた様だったが、冒険者達の成果には関係が無い。
冒険者達には厚く感謝の意を示した。