貴方はモンスターを殺せるの?

■ショートシナリオ


担当:猫乃卵

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 80 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月30日〜04月04日

リプレイ公開日:2007年04月08日

●オープニング

 先日、新作お菓子の試食と紅茶を飲みながらの歓談を行う会に冒険者達を招待する依頼が出された。
 依頼主は、フォセットと名乗る女性であったが、ある地域の治安維持に関する雑務を担当している男の報告により、彼女が集団『コール』の一員ではないかとの疑惑が強まった。
 その後、お茶会当日に、依頼を受けた冒険者達に治安維持に関する雑務を担当している男が同行して、依頼者が用意した会場に向かったのだが‥‥

 二日後、依頼主フォセットからギルドに一通の手紙が届いた。
 依頼書を作成した受付嬢が開封し、中身を確かめる。
 手紙の内容の概略は、以下の通りであった。

『お茶会の依頼の件、ギルドのご尽力に、厚くお礼申し上げます。
 おかげ様で、私どもの目的を果たす事が出来ました。
 ただ、残念なのは、お集まり頂いた冒険者の方々のスキルが、一部我々の求めていた物と少し違っていた事です。
 今後の事を考えますと、せっかくお集まり頂いて恐縮なのですが、冒険者数名をそちらにお返ししようと思います。
 ご自由に扱って下さい。
 一度死んだアンデッドですので、モンスターとして処理するのが妥当とは思われますが。
 下記の日に、下記に詳細を示したパリ郊外の一角にお届けしますので、宜しくお願い致します』

 治安維持に関する雑務を担当している男のフォローが有ったはずだが、何かうまくいかない要因が有ったのだろうか。
 お茶会に参加し、フォセットの狙いを見破り、彼女を拘束して企みを阻止するはずであった。
 この時点においても、受付嬢はまだ信じる事が出来なかった。
(「まさか、依頼参加者が全滅したなんて‥‥」)
 心はその考えを拒否しているはずなのに、顔が青ざめていくのは何故なのだろう‥‥
 震える体をなんとか自制して、受付嬢はギルド内部にこの手紙の件を報告しに行った。

 ギルド内部で対応を検討後、ギルドは、治安維持に関する雑務を担当している男に仕事の指示を出していた男性を、ギルドに呼んだ。
 受付嬢の報告を聞き終わった男性は、しかしまだ信じられないといった表情で短くうなった。
「それがコールの罠でないという証拠は? 本人達に連絡は取れないのか?」
「本人達に連絡は取れていません。会場には誰も居ませんでした。‥‥それと、この手紙の筆跡が、貴方の部下のそれと同じなのです」
 受付嬢は、以前部下の人に書いてもらった文書と手紙を並べて置いた。
「我々は、両者をよく見比べました。結果出した結論は、この手紙は、本人もしくは憑依した者が操って書いた物であるという事でした。真似て書いた程度の物ではありません」
「女が殺してビフロンスが憑依し、そしてこの手紙を書いたという事か」
「ただ、冒険者達が無事の可能性は有ります。今どこに居るのか問われても答えられませんが、無事を信じたいです。被害を受けたのが部下の方だけで、その方を操って罠をかけたという可能性が有ると思います」
 腕を組み、不機嫌な顔で受付嬢の言葉を聞いていた上司は、立ち上がると、テーブルに両手をついて身を乗り出し、受付嬢を上から見詰めながら言う。
「我々から依頼を出す。依頼金は追って渡す。依頼内容は、先日の依頼に関する現在の状況の調査と、発生している問題の解決。この依頼において、フォセットと名乗る女性とアンデッドと化した者達の生死は問わない」
「‥‥承りました」
 受付嬢は下唇を強く噛んで、泣き出しそうになるのを堪えていた。

 依頼書に、先日の依頼に参加後行方不明になっている冒険者のリストが記載される。

 マルシュ・ベルスーズ(男性・人間) ナイト
 メス・アルモニー(男性・人間) レンジャー
 ムーラン・ドゥルール(男性・人間) ファイター
 レジーム・プラートル(男性・人間) ファイター
 リューム・マラディー(女性・人間) ウィザード
 ソワン・コリール(女性・エルフ) クレリック

 依頼書を見詰めている冒険者達がざわめく。
 名と顔を知っている者も居る様だ。依頼で一緒になった事があるのだろう。
 知り合いがアンデッドとなって自分に向かってくる、その情景を想像して身震いしている人もいた。
 それが、アンデッドとなって何日も経っていない、生前の姿をほぼ保っている新鮮なものであれば、なおさらであろう。
 生前の時、親しければ親しい程、戦いにくい。生前の姿に近いそれを、貴方は攻撃できるであろうか?
 自分の心と闘い、非情になれるのだろうか?

●今回の参加者

 eb2363 ラスティ・コンバラリア(31歳・♀・レンジャー・人間・イスパニア王国)
 eb5486 スラッシュ・ザ・スレイヤー(38歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 eb6340 オルフェ・ラディアス(26歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 eb8642 セイル・ファースト(29歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

●依頼日初日
 ギルドに集合した冒険者達は、早速調査を開始した。

 ラスティ・コンバラリア(eb2363)は、まずギルドにフォセットの居場所を尋ねる。
 依頼人フォセットの住所の記録は有ったが、その住所は空家の物であった事が確認されている。お茶会の会場に指定されていた場所も、既に管理する人の居なくなった空家であった。
 ラスティは、次に行方不明となっている冒険者達がどんな能力を持っていたか尋ねる。
 アンデッド化していた場合、生前の能力がどれだけ使えるかは、その人に理性がどれだけ残っているかに因るだろうとギルド員は前置きした。
 ギルド員は、記録を参照しながら、行方不明者達の能力について述べていく。
 マルシュは剣の名手だったらしい。メスは弓での後方支援を得意にしていた。ムーランとレジームは片手剣でフェイントを織り交ぜた戦い方をしていたらしい。リュームは、クーリング、ウォーターコントロール、クリエイトウォーター、フリーズフィールドとアイスブリザードが使えた。ソワンは、ギブメンタル、リカバーとメンタルリカバーを使えたとの事だった。

 スラッシュ・ザ・スレイヤー(eb5486)は、手紙に指定された場所の下見に向う。
 向かった場所は、郊外とはいえ、建物の立ち並ぶ住宅地であった。一番大きな路が交差する十字路の中央に少し開けた場所が有る。この十字路を、手紙は指定している。
 普段なら露地売りやその客など居るのかもしれない。ギルドから既に連絡が行ったのか、今日は十字路には人一人居ない。明日起こる戦闘の為、住民達は家にこもっている。
 窓の隙間からこちらを見詰めている視線を感じる。それも一つや二つではない。
 スラッシュは、下を向いて舌打ちする。
「チッ‥‥気が乗らねぇ依頼だな。観客に囲まれて、知った奴を‥‥」
 スラッシュの脳裏にリューム・マラディーの照れ笑いする顔が浮かぶ。
「リューム、あの馬鹿‥‥一回くれぇはデートの誘い、受けてやりゃ良かったな‥‥」
 路の小石を蹴り飛ばし、スラッシュは小声でつぶやいた。

 オルフェ・ラディアス(eb6340)は情報屋としてのルートを使い、ギルドから入手した似顔絵を元に情報収集をしていた。
 顔は知っていても『フォセット』という名前は知らない様だ。本当の名前ではないのだろう。どの程度偽名を使っていたかは分からなかったが。
 見た目はごく普通の住民ではあるが、観察する為に尾行すると撒かれる事が多かったという。何をしているのかは未だよく解らない。デビルとの関係性が言われるようになってからは、あまり突っ込んだ調査は出来ていないそうだ。
 コールという組織についても、何人で構成されているのか、それがまだ不明な内は、極めて慎重に調べるしかないと言う。今回冒険者達でさえ殺した。情報屋も、追跡中の不意打ちによる襲撃を恐れているとの事だった。

 オルフェはセイル・ファースト(eb8642)と合流し、お茶会が行われていた場所へと向かった。
 その空家は、お茶会が行われていたという痕跡をほとんど残していなかった。
 充分な時間が有ったのだろう。消せる痕跡は徹底して消した様である。お茶会で使われていただろう食器も無い。
 わずかに、地面にこぼした飲み物の跡などが残されているだけである。

 冒険者達がギルドに戻ると、打ち合わせが始まった。
 スラッシュが得た指定された場所の情報、ラスティの得た行方不明者達の能力を元に、明日の行動内容を煮詰めていく。

●依頼日二日目
 冒険者達は、十字路の中央に待機している。
 十字路の中央ゆえ、4方向全てで、敵の出現に注意する必要があった。
 一人一方向を受け持って監視している。
 ラスティがテレスコープで索敵した限り、今怪しい動きをしている人は居ないとの事だった。

 それからしばらくして。
 十字路の三方向の路にそれぞれ一人ずつ、人間の男性が十字路中央から遠く離れた建物の陰から現れた。冒険者達は警戒を強める。男性達は、生きている様だ。
 男性達は、布で軽く包んだ大きな荷物を引き摺って現れた。
 荷物の傍にしゃがみ、なにやらやっていたかと思うと、荷物を包んでいた布を取り去った。男性達は布を抱えて走り去った。女性のフォセットらしき姿は見当たらない。
 人の形をしたものがむっくりと起き上がる。ゆっくりとこちらに向かって歩き始めた。
 ラスティがその仕草を見る限り、ズゥンビの様に思えた。
「冒険者です! ズゥンビの疑い有り! 右方向、マルシュ! 正面、ムーラン! 左方向、メス!」
 ラスティの放つ鋭い声を合図に戦闘が始まった。
 セイルとスラッシュが前に出て、ラスティとオルフェが後ろに下がる。
 ラスティは、鳴弦の弓をかき鳴らしてみたが、その効果をもって3体がアンデッドかどうかは判断出来なかった。
 だが、ズゥンビ達が近付くにつれ、その異質さがズゥンビである事を確信させる。
 ズゥンビ達は、傷ついても腐ってもいない。肌に血の気が無いだけで、見た目は生きている者と変わらない。だが、彼らは武器・防具を持たない状態で、のろのろと両手を伸ばし、こちらに襲いかかろうとしているのだ。武器の使い方を忘れたかのごとく。
 セイルはラスティから受け取った清らかな聖水をマルシュの肌にかける。
 違いはよく分からないが、見た目ラスティは浄化された様にも見える。もちろんこの聖水だけでラスティを消滅させるだけのダメージは与えられない。
「名をあげて国へ戻る‥‥そう言っていましたね。マルシュさん‥‥貴方の名誉、誇りだけは私が守ります」
 ラスティは、鳴弦の弓を握り締める。

 スラッシュが、鞭をズゥンビの体に絡めて動きを止める。それを受けてセイルが剣をズゥンビの体に突き立てる。
 生きている者ならば一撃で深いダメージを与えるだろうその攻撃は、しかしズゥンビにはダメージを与えているものの、生き物ほどには効きにくい。
 セイルが何度も突き立てると、ようやく弱ってきた様だ。その間、スラッシュはセイルに襲い掛かろうとするズゥンビの動きを止めていた。
 ズゥンビが弱ると、今度はスラッシュが武器を短刀に持ち替え、ズゥンビの体に素早く斬り付ける。
 威力が弱いので、止めを刺すまでには相当の時間がかかった。

「本当にメスさんなんですね‥‥出来ることなら‥‥あなたを撃ちたくは無かった」
 オルフェの放った矢がメスの体に突き刺さる。
 生きていれば深いダメージを与えただろう。だが、メスは苦痛に身をよじったが、なおも冒険者達を襲おうと歩き出す。
 ラスティはトルネードでメスの足を止める。トルネード自体は大したダメージをズゥンビに与えていない。

「‥‥ムーラン‥‥畜生! すぐ楽にしてやるからな!」
 スラッシュが拘束したムーランにセイルが斬り付け、オルフェとラスティがメスを足止めしている最中、突然体の力が全て抜けたかの様にズゥンビ達が崩れ落ちる。
「クリエイトアンデットの魔法が切れたのですね‥‥」

 3人の遺体は、近くの教会へと運ばれた。

●三日目以降
 フォセットは現場に現れなかった。3人の男達が何者なのか疑問が残るが今の時点では何も手がかりが無い。
 三日目以降はフォセットを探し出す事を優先した。
 だが、彼女はどこかに潜伏したままなのか、冒険者達がパリの街を周って捜しても発見できなかった。

 依然行方不明なのは、3人。コールは、3人を確保して何をしようというのか?