死せる馬に安らかな眠りを

■ショートシナリオ


担当:猫乃卵

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月30日〜09月04日

リプレイ公開日:2006年09月07日

●オープニング

●依頼書内、依頼要旨全文
 先日、依頼解決後他の者と別れてパリに帰還していた二人組みの冒険者が、道中において強盗団の襲撃を受けた。数で押す強盗団に対し苦戦を強いられた二人は、一人を囮にして強盗団の目を引き付け、一人を確実に逃がす作戦に出た。逃げた冒険者は馬を全力疾走させてパリに戻り、事の詳細をギルドに報告した。
 その冒険者が依頼主として緊急依頼を作成、冒険者数人が囮役を引き受けた冒険者の行方を探した。その結果得られたものは、砕かれた武具と遺体一つだけであった。その囮役の乗っていた戦闘馬は見つからなかった。
 その後、強盗団の殲滅については改めて依頼が出され、今も冒険者が活動中だと言う。本依頼は、それとは別件である。
 囮役を引き受け殺された冒険者が騎乗していた戦闘馬であろうモンスターの件である。

 襲撃事件が起きて2日経った頃だろうか、現場から少し離れた街道で、奇妙な、しかし醜悪なモンスターの目撃情報が寄せられた。
 一見して戦闘用に訓練された生きている馬の様に見える。だが、喉元には剣で止めを刺されたであろう切り傷があり、その切り込みは遠目からもはっきり見える程だと言う。
 そう、死んで横たわっていなければおかしい状態である。だが、その馬は、何かを欲するが如く暴れまわっていたとの事。
 私は、この馬は彼が騎乗していた戦闘馬がアンデッド化した物だと思う。未だ主人を探しているのかは知らない。だが、既に死んでいる以上、土に返してやるべきであろう。
 出没付近の村民や旅行者に被害が出始めている。被害を食い止める為にも、迅速な解決を希望する。

●今回の参加者

 ea2499 ケイ・ロードライト(37歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb0607 タケシ・ダイワ(38歳・♂・僧侶・人間・インドゥーラ国)
 eb5977 リディエール・アンティロープ(22歳・♂・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 eb6340 オルフェ・ラディアス(26歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 eb6361 ネオ・パリス(24歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イスパニア王国)

●リプレイ本文

●事前調査
 冒険者一行は、まず依頼主の元へ向かった。依頼主は、強盗団の襲撃時逃走に成功した冒険者ではなく、この地域の治安維持に関する雑務を担当している男だった。強盗団対策についての上からの指示をまとめ、依頼の一つとしてギルドに提出したのだと言う。
 襲撃事件の詳細については、その逃走に成功した冒険者本人に聞いて欲しいと言われ、教えてもらった自宅の住所に全員で向かう。彼はそこに居た。

 最初に、タケシ・ダイワ(eb0607)が、馬に襲われた場所やその時の状況を訊く。場所の記憶は鮮明であったが、当時の状況については、二手に分かれ逃走を開始したのが襲撃を受けて間もなくの事であったので、それ以降の馬の事はよく分からないとの事だった。その後タケシは殺された者の名と馬の名を訊いた。

 オルフェ・ラディアス(eb6340)がアンデッドの性質について確認する。
「相手がアンデッド化したものであれば、銀の武器や魔法でしかダメージを受けないと思いますので、ケイさんにオーラパワーをかけてもらい応戦しようかと思っていますが」
「いや、もちろんオーラパワーは役に立つが、通常の武器でもダメージは与えられる。ズゥンビは、ただの死体だ。それが動くにすぎない」

 次はケイ・ロードライト(ea2499)が生前の馬について尋ねる。
「馬は、生前どんな気性でしたか? 走る時に見せる癖などは有りませんでしたか?」
「良く訓練されていたから、飼い主に極めて忠実だった。常に飼い主との一体感を感じさせる挙動をしていたと思う」

 リディエール・アンティロープ(eb5977)は、飼い主の匂いが残っている遺品が何か有れば借りたいと頼んだ。彼は、部屋の隅の収納箱を開けると、防具の欠片を取り出した。
「生前愛用していた防具の欠片だ。血が付いていないので、使えるだろう」

●準備
 逃走に成功した冒険者の自宅を出た一行は、馬が出没したという場所に向かった。
 リディエールが目を凝らして馬を捜索する。
 やがて街道の向こうに、御する人のいない馬がうろついているのを発見した。
「まず、あの馬と必要なだけ距離をおく様移動しましょう。そうして、罠設置です」
 オルフェを中心に、ロープを使った簡単な罠を作る。この罠で馬の脚を絡め拘束する手はずである。
 罠の設置が終わったら、次は魔法による戦闘補助に取り掛かる。
 タケシは三人にレジストデビルをかけていく。失敗によるかけ直しのロスがあった為、治癒に残す分も考慮すると、リディエールにかける事は断念した。
 ケイは、オーラパワーを自分とオルフェにかけた。
 準備が終わったら、次は馬を罠にかける段階に入る。

●罠への誘導
 タケシは罠付近で待機しながら自分にレジストデビルをかけている。
 オルフェ、ケイ、リディエールの三人は、ゆっくりと馬に近付いていく。
 馬がこちらを向いた。じっと三人を見詰めている。
「馬が私達に気付きました! 誘導始めましょう!」
 オルフェの一声で罠への誘導が開始された。まずオルフェ、続いてケイ、リディエールが、遺品の匂いで馬の注意を引き付けながら、静かに罠の方向へと歩き出した。
 馬をゆっくりと歩かせる様に注意深く移動する。馬を暴走させてしまったら、誘導は失敗するからだ。
「意外と、馬の歩みが速いですね」
 ケイが呟く。馬の進路を確認しながらの移動とはいえ、そんなに自分達がもたついている訳でもない。逆に、死んでアンデッド化したとはいえ、元々は良く鍛えられた馬だったのだと感じずには居られないほど、馬の歩みが速かったのである。
「馬を走らせては失敗します。距離を開け過ぎずに」
「リディエールさん、距離を開け過ぎるほどの余裕無いんですけど」
 オルフェの一言にケイが頷く。その隙を突いたのでは無いのだろうが、馬は突進して、顎をケイの頭にぶつけて来た。
「うわっ!」
 骨がぶつかる鈍い音がした。ケイは頭を抱えながら誘導を続けようとした。馬はケイの手首を噛もうとしている。
 即座に、リディエールがケイとオルフェに声をかける。
「馬から離れてください! 私なら、馬に追いつかれずに誘導する事が出来ます!」
 確かに、常に馬と一定の距離を保てていたのはリディエールだけなのである。ケイとオルフェが馬の攻撃を受けながら誘導するというのは、後の事を考えると辛い。二人は左右に分かれ、馬から離れた。リディエール一人が馬を誘導する。

●罠発動、そして戦闘開始
 リディエールの誘導により、馬は罠付近までやって来た。
 罠地点で待機していたタケシは、馬の進路を乱さぬ様注意しながら、馬の攻撃を受けたケイの元に向かって行く。ケイをリカバーで治療する為だ。
 ケイとオルフェは、馬の後方から、馬を刺激させない様に距離を取りつつ、馬を追っていた。

 やがて、馬は仕掛けた罠にかかる。ロープが馬の両脚を絡め取り、脚の自由を奪った。馬は理由不明の拘束におののき、上下前後にもがいて抵抗している。
「かかりましたね」
 立ち止まり息を整えたリディエールは、飼い主の遺品である防具の欠片を馬の鼻に近付けた。
「貴方の探す方は、もう現し世にはいないのです。神の御許で貴方を待っておられますよ!」
 馬は、その匂いを懐かしむ様な、しかしそれは飼い主本人ではない事のもどかしさからか、悲しげな声でいなないた。自分の身を傷つける者が居なくなって久しいのに、なぜまだ彼に会えないのかと。
 ズゥンビとなったこの馬には、自分の死も飼い主の死も理解しがたいものとなっていた。馬は、事件当時、自分が人間に傷つけられてしばらく気絶していただけだと認識しているかもしれないが、実際には、まず馬が殺され、その後で冒険者が殺されたのだった。馬は飼い主の死を知らない。この辺りの事情はその場に居た強盗団しか知らない事であった。
「解ってもらえない様ですね」
 リディエールはため息をついた。

「離れて居てください。しっかりと昇天させてあげましょう」
 オルフェがリディエールと入れ替わり、馬の前に立つ。杖を掲げ、力を込めて馬に向かって振り下ろす。鈍い音を立てて杖は馬の身体に当たったが、ダメージを与えた感触は得られなかった。
 馬はズゥンビとなり、鈍重になる代わりに頑丈な身体を手に入れた。簡単に攻撃は当たるのだが、威力の弱い武器では倒せない。オルフェは今の試しの攻撃で、その事を痛感した。

 一方、馬から離れ、タケシにリカバーをかけてもらっていたケイが戻って来た。
「脚を重点的に狙って、折ってしまいましょう」
 オルフェは頷く。二人は左右に分かれ、前脚を攻撃し始めた。
 ケイの日本刀が前脚の肉と骨に切り込んでいく。オルフェの杖も脚の細い骨に少しずつダメージを与えていった。
 リディエールは二人を援護しようと、ウォーターボムで馬を攻撃したが、攻撃による目立った成果は得られなかった。

 やがて、ケイの日本刀が脚の骨を折った。馬は自由になった片脚を上げるが、折れた先は力無く垂れ下がっている。馬は片足に感じる違和感に戸惑っていた。
 遅れてオルフェが残る脚の骨を折った。前脚の支えを失った馬は、前のめりに倒れる。驚いた馬は、後ろ脚を蹴り出して暴れ、横倒しの格好となった。横倒しになってもなお蹴りを止めない。
「大丈夫ですか?」
 倒れる馬に巻き込まれたオルフェをタケシが助け出す。
「私が止めを刺します」
 タケシがオルフェにリカバーをかけている間、ケイは馬の心臓を狙い、攻撃を続けた。
 ズゥンビは死者である。死者の心臓を狙う事がより効果的な攻撃なのかは誰にも解らなかったが、兎も角もダメージを受け続けた馬は、次第に動きが鈍くなっていった。

●永遠の眠り
 やがて、馬の動きが止まる。
 それを確認後、オルフェが馬のたてがみを切り取る。たてがみは所々血と泥で汚れていた。
 その後、皆で木の枝などを集め、馬の上に盛る。ある程度盛った所で、ケイがランタン用の油を振り掛ける。
 タケシがお経を唱え始める。ケイが馬の身体に火を点けた。
 煙を昇らせながら、馬の身体が燃えていく。
 遠くで待機させていた冒険者一行の馬達が寂しげな声でないている。

 その後、冒険者一行は飼い主の墓に寄った。
 馬の骨とたてがみを供え、皆で馬と飼い主の冥福を祈る。
「貴方の忠実なパートナーがそちらへ参りました。今度こそ互いを見失わぬよう、ずっと傍にいてあげてください」
「二人で、安らかに眠って下さい‥‥」