魔法使いするのに必要な道具を揃えたいの!
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■ショートシナリオ
担当:猫乃卵
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:0 G 52 C
参加人数:5人
サポート参加人数:3人
冒険期間:09月23日〜09月28日
リプレイ公開日:2006年10月01日
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●オープニング
●依頼書内、依頼要旨全文
こんにちは。私、マルグリットと申します。兄クスターがお世話になってます。ありがとうございます。
先日の依頼の件で、ご迷惑おかけしました。あれから私も改心し、獣使いの道をあきらめ、魔法使いとして精進していく決心をしました。
まだまだ魔法を習得出来る様な技量では有りませんが、魔法使いとしての知識を深めるべく、日々努力している所でございます。
さて、今回、私が依頼を出しますのは、その魔法使いに関してでございます。
魔法使いになる勉強を続けている最中ではございますが、加えて、魔法使いとして生活するに必要な道具を揃える必要がある事を強く感じております。
とは言いましても、魔法使いになる決意を始めたばかりの身、黒マントこそ購入しましたが、その他についてはどの様にして道具を揃えていったらいいのか解りません。
そこで、恐縮なのですが、先輩冒険者の皆様方のお力を少しばかりお借りしたく、お願いする所存でございます。
以下の品物を買う為に、ご同行・ご指導いただけないでしょうか?
一、つばが広く頭頂部が折れ曲がった黒いとんがり帽子 壱個
一、材料をぐつぐつ煮る為の幅1メートル程度の大釜 壱個
一、先端が大きく太く巻いている迫力の有る木の杖 壱個
一、ふてぶてしく愛想の無い太った黒猫 壱匹
一、移動する乗り物としてのホウキ 壱個
大釜で煮る材料は、後々揃えて行きたいと思っています。その他にも必要だと思われる物がございましたらご指摘いただけると幸いです。
では、皆様、なにとぞ、宜しくお願い致します。
(追伸)
お兄ちゃんへ
これ見たら私に連絡する事。身内には報酬無しだからね。
●リプレイ本文
●9月23日は、大釜の日
シャーリーン・オゥコナー(eb5338)が、クスター宅のドアを叩く。
「マルグリットさんですか? こんにちは。あたし、シャーリーン・オゥコナーと申しますの。ご依頼の件で来ましたの。ほら、ブリストルも挨拶するの」
「ワン♪」
「ご協力ありがとうございます。ああ‥‥獣使いを廃業したとはいえ、犬の可愛らしさには弱いものですねぇ♪」
マルグリットは思わずしゃがみこんで、ブリストルの頭を撫でる。
「他の方々は?」
「ああ。何か適当にやって来るってギルドに聞いてます。その内にはこちらに来るんじゃないですか。私も一遍にお相手出来ないですし、皆さんも準備が有るでしょうし」
「そ、そうですの‥‥」
シャーリーンは苦笑いする。
「で、あの、大釜は、一つ心当たりがありますの。お友達がパリのイリス通りに工房を開いてますの。武具が中心なのですけど、こういう変わったものでも大丈夫と聞いてますの。でも、出来上がるのに時間が掛かるかもですの。なので、早めに発注しに行った方が良いと思いますの。他の物を調達して回っている間に完成するですの」
「それなら、早速行きましょう。道案内よろしくお願いしますね」
「はいですの」
二人は、工房へと向かった。シャーリーンの知人には、快く大釜製作の仕事を受けてもらえたようだ。
その帰り道。
「ねぇ、大釜の代金はお兄様が払う事にして、本当に良いですの?」
「大丈夫♪ 気にしない、気にしない♪」
クスターは、数日後自分に襲いかかって来る災難の存在を知るよしも無かった。
●9月24日は、空飛ぶホウキの日
今日もクスター宅。遠くから、陽気な歌声が聞こえてくる。
「この世に生まれて179年。魔法使いのこのワシが〜♪ ホウキに乗ってやって来た。駆け出しのお嬢ちゃんに〜♪ 正しい魔法使いとは何か、教えてしんぜようぞ〜♪ ほっほっほ〜♪ の、ほっ!」
前足でブレーキをかけ、フライングブルームの動きを止めたルーロ・ルロロ(ea7504)。マルグリットは、瞳を輝かせながらルーロを見つめる。
「空飛ぶホウキ! ね、ね、ね! それに乗って飛び回るんでしょ!? 私も乗ってみても良いですか?」
「まだまだ駆け出しのお前さんが手にできる物ではないわ! まずは、これを身に付けるが良い!」
ルーロは、千早を手渡した。白布に花鳥草木の柄が入った袖無しの服だ。
「それに袖を通してみぃ。そしてこれを振るのじゃ!」
ルーロは、更に白御幣をマルグリットに渡す。
「そう、もっと左右に大きく、一生懸命念じながら振るのじゃ!」
「うむむむむむむ‥‥」
「どうじゃ、ワシがジャパンで仕入れてきた最新の魔法使いファッションじゃぞ!」
「‥‥なんか、違う‥‥」
「なんじゃい、その目は。179年生きてきたこのワシの言う事が信じられんのか!」
「よく解んないけど、これって、ジャパンの方の『ソウリョ』と言う職業か何かの服装じゃないの?」
「なにを言う! これはれっきとした‥‥」
「要らない。これとこれ、返す‥‥ん? それって、タヌキ?」
マルグリットは、ルーロのバッグパックの中に在る浴衣の存在に気付く。
「ん? これか? これは、普段着じゃな」
「か、わ、いい〜! タヌキ〜!」
「気にいったか? やるぞ?」
「これ、いただきます〜 かわいい〜」
マルグリットは、浴衣に頬擦りをしている。
●9月25日は、とんがり帽子の日
アリーン・アグラム(ea8086)は、マルグリットの腕に絡みつくと、楽しそうな声で誘った。
「買い物するなら先ずエチゴヤをチェックよね♪ 行きましょ、行きましょ」
「ルーロさんがかぶっていた様な、とんがり帽子、売ってますかねぇ‥‥」
二人は、エチゴヤへと向かった。
「冒険に使う品ならそこにある。好きなだけ見ていくがいい」
「あの人怖い。こっち睨んでる‥‥」
「仕方ないわ。会計済ませる前に勝手に持ち出されたり、壊されたりしたら困るもの。それより、欲しかった物は、何か見つかった?」
「ううん。ざっとチェックしたけど、無かったですね」
「そぉね。じゃあ、福袋買いにいきましょ♪ お金を握り締め、港に行って買い占めるのよ!」
「大当たりを引き当てて、手に入れるって寸法ね♪」
「‥‥まぁ大当たりなんてそうそう出ないんだけどねぇ」
「大丈夫。私は強運の女です。さくさくっと、欲しいアイテム引き当ててみせます♪」
そして、二人は港に着いた。
パリの港は、変わらず、いつも通りの賑やかさを見せている。
歩いて行くと、エチゴヤの屋台が見えてきた。理由は解らないが、屋台を出している様だ。
「‥‥そこの方、ぜひ寄っていってくれませんか? こちらでは噂の福袋を売らせていただいております‥‥いかがでしょうか?」
「私、魔法使いを目指しているのですけれど、何かそれに合うアイテムとか、有りますか?」
「はい‥‥魔法少女に相応しい品など、色々と取り揃えさせていただいております」
「何が出るかは運だけどね? とりあえず、福袋一つ買ってみたら?」
一つ買って済めば良いのだが、それは福袋の持つ魔性の魅力が許さないのである。その後しばらくすると、空の財布を握り締め座り込むマルグリットの目の前には、彼女には使えそうにも無い品物が幾つも並んでいた。
「福袋って、こわい‥‥つい夢中になって‥‥」
期待通りの結果になって、苦笑いを隠せないアリーンであった。
●9月26日は、杖の日
ここは、ちょっとした空き地。マルグリットは小丹(eb2235)と向き合っていた。
「ほっほっほっ‥‥わしは、小 丹という者じゃ。よろしくのう」
「こちらこそ、宜しくお願い致します」
マルグリットは丁寧に礼をする。
「‥‥確か、水妖の杖があったはずなんじゃが」
小丹は、バックパックの中を掻き回しながら杖を探している。
「おぅ、これじゃ。どうじゃな?」
小丹は、マルグリットに水妖の杖を手渡した。先端に透き通った水晶が付いている1mに満たない青い杖である。
「ちょっと嬢ちゃん、モンスターを攻撃する様に、その杖を振ってみてくれんか」
言われた通りに杖を振るマルグリット。その隙に小丹はバックパックから何かを取り出そうとしている。
「うーん‥‥何か違う。元々イメージしていたのは、ゴツゴツして不恰好というか、先端の形も違うし‥‥」
「うおっ! っと、嬢ちゃん避けるんじゃ!」
ばふっ。
マルグリットは、分厚い事典に顔を挟まれ、仰向けにひっくり返っている。
起き上がると、鼻の頭をさすりながら、小丹に猛抗議した。
「なにするんですか〜!!」
「‥‥回避能力、素質無しか‥‥きびしいな。お嬢ちゃん、冒険者たる者、これくらいの危険は避けねばならぬ」
「えー! 今のは、油断しただけですよぉ!」
「その本をお嬢ちゃんにやろう。わしには難しくてよくわからんが、ゲルマン語で書かれてある」
マルグリットは、分厚い事典を拾い上げた。
「ロシア王国博物誌? あの博物誌のロシア編? え? あ、もらっていいんですか?」
「よいよ。魔法使いを目指しておるなら、ある程度の知識を持つのも大事じゃな」
「ありがとう、お爺さん!」
「わしはまだ30代じゃ!」
「あ、あ、あ、杖はお返ししますねっ」
顔を赤らめたマルグリットは、杖を小丹に押し付けて、そそくさと退散した。
●9月27日は、黒猫の日
最終日、アリスティド・メシアン(eb3084)がクスター宅にやって来ている。
「精霊は、地、水、火、風だけじゃない。バードは月の精霊の魔法が使えるし、ジプシーは太陽の精霊の魔法が使える。何を目指すかに依ってすべき事は変わってくるよ」
「うーん‥‥私は、サイレンスという魔法を受けた人生初の体験が影響しているだけで、特別、何かの資質が有るっていう訳では無いですし」
「魔法使いが全て、資質を持って産まれたわけじゃない。君の思いの強さを試されていると思いなさい」
「私の思いの強さですか? うーん‥‥」
「それはそうと、黒猫を探しに行きましょう」
二人は郊外の空き地に移動した。
「ちょっと、こっちに来て。僕達は怪しい人間じゃないから」
「アリスティドさん、誰に話し掛けているんです?」
「ん? この猫に、猫達が集う場所を聞いているんだ。僕達を仲間の居る場所に連れてってくれるかな? 解る?」
「え? え? そんな事出来るんですか!?」
「バードが使える月の精霊魔法で『テレパシー』と言うんだ。あ、逃げてった‥‥」
「そ、それが使えれば、動物達と会話出来る様になるんですね!?」
「そうだ」
マルグリットは頭を抱えてしゃがみ込む。
「ああ‥‥今、愚かな私は自分の本当の気持ちにようやく気付きました。私、魔法使いを廃業します! そして、バードになり、獣使いの修行を一からやり直します! 私は、自然のままに生きる動物達が好きなんです! 一生の友となりたかったんです!」
「生き物の命は、物とは違う。大事にするんだよ」
「それで、お願いがあるんですけど。あの‥‥バードになる為に必要な知識を教えて欲しいのですけど‥‥」
「いや、ちゃんとした師匠の元で修行した方が良いだろう」
「そうですか。では、皆さんにありがとうございましたと言っていたとお伝えください。失礼致しました」
●その後
実家に帰ったマルグリットと入れ替わりに、クスターが帰って来た。
「あれ? また、マルグリットと僕の犬達が居ない?」
「クスターさん、いらっしゃいますかしら? お釜が出来上がったのでお届けに参りましたの!」
「え? え? え?」
「それで、配達料込みで代金は‥‥」
訳解らぬままにお金を払わされるクスター。
その後、ベッドの上に置かれた置手紙の存在に気付くまで、クスターは、大きな釜を見つめながら呆然とする事しか出来なかったのであった。